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キスと紙飛行機

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2008.06.09

#両想い #ラブラブ #ミハアル

 ミハエルが、やけに上機嫌に1枚の紙切れをひらひらと振って見せてきた。こんなに機嫌がいいのは珍しくて…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

キスと紙飛行機



 ミハエルが、やけに上機嫌に1枚の紙切れをひらひらと振って見せてきた。こんなに機嫌がいいのは珍しくて、俺は首を傾げたけど。
「なんだ?」
「面白いのもらったんだ、見ろよ」
 そう言われてその紙切れを見てみて、思わずゲッと声を上げた。
 そこには、アルバムのように、いくつかの写真が並べられていた。


 俺と、ミハエルの。


「な、なんだよこれ!」
「俺らのファンだって。文化祭でなんか展示したいとか何とか言ってたけど」
 こんなの、いつ撮られたんだ。俺こんな顔してたっけ? っていうか展示してどうすんだよこんなん。
「いちおう許可取りたいからってさっき渡されたんだ。案外よく撮れてると思わないか」
「思わねぇよ。こんなん許可出せるかっ」
 俺はミハエルからその紙切れをひったくる。
 改めて見てみると、本当に色々な角度から色んな場面を撮られていた。
 登校して門をくぐるところとか、紙飛行機折ってるところとか、あああ授業中に寝てるとこまで撮られてんじゃねーかよ。どっから撮ったんだよ。撮ったヤツもサボッてんだろ絶対!


 ミハエルのは……さすがになんか……見られ慣れてる、っていうのが伝わってくるな、写真からでも。こいつはやっぱ自分が女に人気あんの自覚してて、いついかなる時も【見られている】という意識を抜かないんだろう。
 悔しいけれど、無理のないそれが……好きだったりはするんだ。
 写真見てたらなんかムカついてきた。
 こいつは女からこういう風に見られてんだよな。……俺はこんなに近くにいるのに、そんなこと考えて見る余裕なんかなくて、こうして動かない写真でしか見ることができない。
「どうしたんだ? 姫」
「……別に」
 ミハエルといるといつも素直になりきれずに、どこかケンカ腰になっちまう。それをこいつがどう思っているかも分からなくて、余計に落ち込むんだ。
「許可、出さないのか? こんなに綺麗に撮れてるのに」
「お前はな」
「姫だって綺麗に撮れてるだろ。ほら、この……EX-ギアつけてるやつ」
 ミハエルが、うずもれた小さな写真を指差して呟く。あ、こんなんも撮られてたのか。油断できねー。


「俺がいちばん好きな角度だ」


「……っ」
 なんでこいつはこうテレくさい言葉をポンポンと出しやがるんだっ……!
 嬉しいなんて思ってねーぞ、思ってねぇからな! 絶対思ってない!!
「うーん……でもやっぱ、許可出せないか。こんな綺麗に撮られてるヤツ、大勢の人間には見せたくないね」
「お前、結構独占欲強いだろ」
 強いよ、と間を置かずに返ってくる。悪くも思ってないような顔に、片眉を上げる。こいつは、どこまで本気なんだろうか。
 本当は俺だって独占欲強くて、お前を独り占めしたいんだ。
 こんな写真、俺だって大勢の人間には見せたくない。またお前のこと好きになるヤツが増えるだけなんだ。
 絶対許可なんか出せねぇ。
「どうしよう、これ。返すか?」
「記念にとっておく?」
「なんの記念だよ、バカ。データだけもらってこいよ。お得意の手で」
 歯の浮くようなセリフで、喜ばせて。
 …………それもムカつく。
「わかったよお姫様。じゃあそれはお前のお得意の紙飛行機にでもするといい」
 ミハエルは肩を竦め、短い息を吐いた。
 妬いてもくれないのかと呟かれた言葉には、恥ずかしくて否定を返してやった。
 ああ確かに飛行機を折るにはちょうどいい。
 もうクセになっているような手つきで、俺はその写真のちりばめられた紙を折っていく。ミハエルはそれを、鮮やかだねぇと呆れ気味に見ているようだった。
 しょうがねぇだろ、ちっちぇえ頃から折ってたんだ。クセにもなるさ。


「ちょっと折り方変えてみた」
 紙飛行機にも色々な折方があって、折り方次第で飛距離が変わる。子供の頃はそれが面白くて仕方なかった。
「へぇ」
「こっちの方が、よく飛ぶんだぜ」
 そう言って飛ばそうと行き先を狙ってみたけど、ミハエルが肩を震わせているのに気づいて、なんだと見上げる。そこには、心底おかしそうなミハエルがいた。
「なんだよ、気持ち悪いな」
「いやいや、姫、気づかないのか? 俺はまた、狙ってその折り方をしたのかと思ったんだけどね」


 意味が分からなくて腹が立つ。
 普通に折っただけだ。


「翼の部分、見てみろよ」
 ワケが分からないと思っている俺を察したのか、ミハエルが指を指してくる。
 翼?と思って見下ろせる位置にまで腕を下ろした。


 そして。


「……! バ、バカか、誰が狙ってなんか!!」
 翼の部分、ミハエルの写真と俺の写真がくっついていた。
 そうだ、ちょうどキスでもするかのように。


 恥ずかしくて、俺は折った飛行機をくしゃくしゃに丸めて、ミハエルに投げつけてやる。断じて、狙ってこうなるよう折ったわけじゃない!
 だいたい、そんな計算できるか、あんなにいっぱい写真あんのに!
「おやおや。そうか、紙面のキスじゃお気に召さないのか、お姫様は」
「はっ?」
 ミハエルに顎を取られて焦る……ヒマもなく、キスされた。
 紙面のキスじゃ気に入らないなんて、誰もそんなこと言ってない。
 ……思ったけど。
「ん」
 でも、狙ったわけじゃ……ないんだけどな。
「さてアルト姫、続きはどこでやりましょう?」
「お前の手の速さは、どうにかなんねーのかよ」
「なんないね。はい、もう一回」
「ふざけっ……んむ」
 二度目のキスで口唇をふさがれる。今度はさっきのより深くて、呆れつつも嬉しくて、俺はミハエルの背中に腕を回した。


 実はキスが欲しかったなんて言えないし、あの写真だらけの紙切れに、少しだけ感謝してやろうかと思った。


#両想い #ラブラブ #ミハアル

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また今日も諦められず

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2008.05.16

#両片想い

-Alto- なんでミハエルなんだろう。 授業中にも関わらず、オレは机に頬杖ついて考えた。 そうだな…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

また今日も諦められず



-Alto-


 なんでミハエルなんだろう。
 授業中にも関わらず、オレは机に頬杖ついて考えた。


 そうだなんでミハエルなんだ。
 ミハエルなんか、意地悪いし女好きだし、オレのこと姫とか呼ぶし。
 なんであんなヤツ、好きになっちまってんだよオレ。


 オレだってそれなりに悩んだりもしたんだ。
 別に男に興味あるわけじゃないのに、ミハエルのこと考えるとすげぇドキドキするし、苦しくて泣きそうになって、一応オレも男だから我慢して、ため息ひとつで思考を変える。
 でもミハエルの姿が見えないと不安になるし、視界の隅にでも入ってこようもんなら途端に口の端が上がる。
 最初はただ、ライバルとして見てるんだと思ってた。
 筆記も実技も負けてんのが悔しくて、必死でやってんのにアイツはオレの前を走ってくんだ。だからずっと、ミハエルのこと見ちまうんだと思ってたのに。


 アイツが女と楽しそうに街歩いてんの見たら、ものすげぇショックで目の前が真っ暗になった。


 女の子は口説くのが礼儀。そう言っているのをいつだか聞いた気がする。実際、歯の浮くような口説き文句を使っているのも何度か見たことがある。
 だけど本心からの言葉じゃないことが分かっていたから、それでも平気だったんだろう。
 特定の女がいたことを知ってショックを受けて、次の日のテストはボロボロだった。
 不審がったミハエルに、何があったんだと顔を覗き込まれて、熱くなった身体にようやく自覚した。


 オレはミハエルのことが好きなんだ。


 だけどそんなこと本人に言えるわけもなくて、何でもないようにやり過ごしてきたつもりでいる。
 ミハエルのことを好きなんだと自覚してから、ため息は多くなってしまったけれど。
 彼女と別れてフリーになったと噂で聞けばホッとして、新しい彼女ができたと聞けばまたかと落ち込む。今は何人目なんだろうな。
 アイツはオレを姫と呼ぶけど、オレはれっきとした男だし、アイツの彼女にはなれそうもない。だいたい、好きだからどうしたいってわけでもないんだ。
 ただ、アイツが少しでもオレを見てくれるんなら、それでいいなんて女々しいこと考えて。
 なんだよこれ。あり得なくね?
 男なんか好きになって、こんなこと考えて、授業にすら身が入らない。
 ミハエルのせいだ。
 もういい、あんなヤツやめてやる。好きじゃねぇよ、あんな女たらしっ!
 今日だってきっとデートとか何とかで寄り道しやがるに決まってんだ。
 ミハエル、お前なんかな、


「アールトー姫ー。HRも終わったのに帰んねーの?」


 突然聞こえたミハエルの声に、え、と顔を上げる。
 うそだろそんな時間経ってんのか!?
 気づけば他のヤツらは帰り支度をしていて、オレは半分意識が飛んでいたことに気づく。


「授業中も上の空だったな。何か心配事でもあるのかお姫様」
「べ、別にねぇよ!」
 お前にいつ【本命】ができるかなんてそんな心配、してねぇ、し。
 よく考えたらお前みたいな意地の悪いヤツ、オレが好きになるわけねぇんだし。
 絶対ただの気の迷いだ。
「ふーん?」
 ……あ? 授業中も上の空って……み、見てた? オレのこと見てたのかっ……?
 あ、バカかオレ、たった今、気の迷いだって思ったはずだろ。こんなヤツ好きじゃないんだ。見てようが見ていまいが関係ねぇ。
「まあいいや、買物付き合えよ姫。アイランドに新しいとこできたらしいんだ」
「……え、買物? 今日はデートとかじゃねぇのか?」
「デートは明日」
「ああそうかよ」
 お前なんか。
 お前なんか。


「何か悩んでるんだったら、他のヤツより先にオレに言えよアルト。いちばん最初にだ」


 ……ちくしょう、大好きだこのやろう。




-Michael-



 なんでアルトなんだろう。
 本人が隣を歩いてるっていうのに、オレは大きくため息を吐いた。



 そうだよなんでアルトなんだ。
 アルトなんか、こんな見てくれしてても男だし言葉遣いも乱暴だし、テストん時なんかめちゃくちゃ敵意むき出しで突っかかってくるし。
 なんでこんなヤツ、好きになっちゃったんだろうな。


 オレだって悩んだんだ。悩んだなんてもんじゃない。
 オレは女の子の方がいいし、ゴージャスなお姉さんなんか、たまんないんだよホント。今までもそうだったから周りも当然そういう見方と付き合い方をしてくるし、このオレが男を好きになったなんて、いまだに信じられねー。
 でもアルトは……クラスのヤツが諦めちまった【首席】を本気で狙ってくるし、競う相手ができたのは嬉しかった。
 芸能科からの転科が来るって聞いて、どんなヤツかと思ってたら噂に違わぬ美人で言葉を失くした。
 それでも顔に似合わず激情家で、からかうと面白かったんだ。
 それを楽しんでいるだけだと思っていたのに。


 難しいコークスクリューを初めて成功させたあの日、嬉しそうに駆け寄ってきたこいつを見た時、心臓が鳴った。



 それから、どんな女の子といてもつまらなくて、デート中だって上の空。
 歯の浮くようなセリフがクセで出てしまうけれど、目の前にいるのがアルトだったらなんて考えて、何度か苦笑いをしたこともある。
 女の子は口説くのが礼儀だなんて言ってるけど、真実の言葉を向けた女の子なんていただろうか?
 デートしているところをアルトに見られて、でもアルトは声さえもかけてくれず、次の日のテストはいつもより点数が落ちた。
 落ちた点数よりアルトに見られたことの方がショックで、その時やっと認められたんだ。


 オレはアルトが好きなんだ。


 だけど女好きで通っているオレが、男を好きになっただなんて言えやしない。
 この世間知らずのお姫様を好きなんだと自覚した途端、ため息が増えてしまったけれど。
 オレが女の子と付き合っても別れても、気にもしてくれないし。オレがこんなに構ってんのに気づいてもくれないし。オレの小さな努力無視しやがって。
 オレはこいつのこと姫って呼ぶけど、別に女の子じゃなくてもいいって思う。でも付き合いたいのかって言われたら、……どうだろう、そうなのかな?
 こうしてときどき街に買物来るくらいできるし、同性じゃ堂々と恋人デートできるわけでもないし。
 ただ、こいつが少しだけでもオレを気にかけてくれるんなら、それでいいなんて思う。
 ……ハ、どうよ。このオレがこんな純情な恋してるなんて。
 アルトのせいだ。
 もうやめたい。やめてやる。こんな鈍感なヤツ好きになったって仕方ないじゃないか。
 今日だって、デートなんじゃないかなんて無神経に聞いてきやがって。今日も明日も明後日も、そんな予定入ってねーよ!
 アルト、お前なんかな、


「ミハエル、お前こっちの方が似合う」


 耳に入ったアルトの声にハッと顔を上げる。
 ああそうだネックレス選んでたんだっけ。特に入用でもないんだが、立ち寄った店に並べてあったから、何の気なしに見てたんだ。


「どうしたんだよ、上の空だな。てめぇの方こそ悩んでんじゃねーのか」
「別にないぜ悩みなんて。強いて言えば、明日何を着て行こうかってとこかな」
 どうしたらお前がオレの気持ちに気づいてくれるのかなんてそんな、思ってねぇ、し。
 あ、バカかオレ。もうやめるってついさっき決めたばっかじゃねぇか。
「ふーん、別にいいけど。だからお前はゴールドよりシルバーの方が似合うって言ってんだろ、こっちにしろよ」
 ……姫? もしかして真剣に選んでくれてたのか?
 いやいやでもな、今さらそんな可愛いとこ見せても無駄だよ。もうやめるんだ。
「こういうのって、普通彼女とかと……選んだりするんじゃねーの?」
「人それぞれだろ。姫はそういうことしないのか?」
「女と? そういうのめんどくさい」
「へぇそう」
 お前なんか。
 お前なんか。



「お前といる方が、楽だからな」



 ……ああもう、大好きだよこのやろう。

続編「また今日も言い出せず-Alto-
#両片想い

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見えない気持ち

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2008.05.04

#無自覚 #ミハアル

ミハエルは珍しく眉を寄せた。「お前がそんな顔をするとは思わなかったな。同級生なんだろ?」 オズマはそ…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

見えない気持ち


ミハエルは珍しく眉を寄せた。
「お前がそんな顔をするとは思わなかったな。同級生なんだろ?」
 オズマはそう言って無精ひげの生えた顎を撫でる。目の前で眉を寄せる男の表情が、本当に珍しかったのだ。
「別に、オレのところじゃなくてもいいじゃないですか。ルカだって今、一人部屋でしょう」
 急に呼び出されたから何かと思いましたとミハエルは続け、眉間のしわを更に深くした。
「ルカに新入りはまだ任せられんんだろ。お前の方が適任だ」
 オズマの言葉に、ミハエルは内心で嘆く。オズマ・リーから言い渡された、早乙女アルトとの宿舎同室に。
 宿舎の部屋は通常二人部屋だが、部屋数と人数の関係で今までは一人だったのだ。
 それが、ここにきて早乙女アルトと同室にさせられるとは。
「だいたいオレは、あいつが入隊すること自体反対なんですからね」
「なんでそんなに反対するんだ? 学校じゃいいライバルなんだろう、ミシェル」
「決断が早すぎると言っているんです。あいつの逃げ道作ってどうするんですか」
 そう言いつつミハエルはダーツの矢を投げる。綺麗にラインを描いたそれは、真ん中よりわずかに逸れて刺さった。
「何から何まで面倒見ろとは言っとらんだろ。何もできん子供じゃあるまいし」
 苦笑しながら呟くオズマに、ミハエルは自嘲ぎみに返す。
「子供ですよ。あいつも、オレもね」
 ど真ん中に突き刺さったオズマの矢に、ミハエルは肩を竦めた。やはり敵わないなと。
「隊長の命令なら、従いますよ」
「ミシェル」
 もともと、反対したって無駄なことは分かっていた。SMSの人員はまだ少ないし、技術のある人間が入隊するのは喜ばしいこと。
 アルトのセンスと技術はミハエルがいちばんよく知っていたし、彼が広い空に憧れていることもちゃんと分かっていた。
 来るべきとして訪れた、運命というヤツなのだろう。
「明朝08:00、早乙女アルト訓練生を出迎えます」
 ピッと敬礼をしたミハエルの頭を、オズマはくしゃくしゃと撫でる。
 子供扱いされているようにも思うが、ミハエルはオズマのその仕種がとても好きだった。
「じゃあ、明日からよろしく頼むな」
「イエッサー!」
 オズマのいなくなった講習室で、ミハエルはひとりダーツの矢を指でいじる。狙いを定めて放った矢は、ストッと真ん中に刺さった。
「さて、……どうするかなアルト姫」
 眼鏡をかけ直して、ミハエルも講習室を後にした。




 明朝、荷物をまとめてやってきた早乙女アルトを待っていたのは、意地の悪そうな笑みを湛えたミハエルと、天使のように笑うルカだった。
「おはようございます、アルト先輩っ」
「おはよう訓練生。一応、十五分前に着いたな」
 良い心がけだ、とミハエルは笑った。ここで一分でも遅れようものなら、門前払いしてやろうと思っていたのに。
「こっちだ」
 そう言って、ミハエルとルカはアルトを先導して宿舎に入る。
「必要最低限のもんしか持ってこなかったけど、大丈夫か?」
「大丈夫ですよ、生活用品は揃ってますし、服と学校関係だけでも」
 そうかとアルトは息を吐く。もともと、そんなに物に執着する方ではないし、無くても困らない程度の物なら必要ない。
「ルカ、こいつの荷物持ってってやれ」
 ミハエルはそう言ってアルトの荷物を引ったくり、ルカに投げてよこした。
「あ、はい。ミシェル先輩は?」
「艦長のとこ連れてかなきゃだろ。オズマ隊長もいるはずだ」
 来いアルト、とミハエルは踵を返し、着いていくしかないアルトは、ルカに荷物を頼むと呟いてミハエルに続いた。
 ────もう少しせせこましいところかと思ってたけど……
 アルトは辺りを見回しながら、ミハエルに誘導されるままに歩いていく。その気配には気づいていても、ミハエルが具体的な案内をすることはなかった。
「ミハエル・ブラン少尉、入ります」
「おっ、来たかミシェル」
 艦長室のドアを開け、立ち止まって敬礼を捧げるミハエルは、アルトにとっては珍しいものを見た気にさせられる。
 学校では常にミハエルが上位で、誰かに追従するなんてこと、なかったのに。
「それかい、新入りってのは」
 椅子ごと振り向いた人物に、アルトはぎょっとした。強面の顔は、さすがに修羅場をくぐってきたらしい。いかにも【艦長】らしい男だった。
「時間どおりだな。ご苦労さんミシェル」
「早乙女アルト訓練生、挨拶」
「え、あ」
 ミハエルに促され、アルトは艦長・ジェフリー・ワイルダーの前に出る。
「さ、早乙女アルトです。よろしく」
「歓迎しよう、同志よ」
 ジェフリーの低い声に、アルトはようやく認識した。仮とは言え、パイロットとしてSMSに入隊したのだと。




「とりあえず隊服に着替えろ、アルト。適性検査とシミュレーションやるから」
 艦長室を出て、どこに向かっているのかも分からないアルトは、さすがに不安になってくる。
 これからのことではなく、自分を先導している男の態度に。
「おい、聞いてんのか?」
 ミハエル・ブランの態度が、明らかにいつもと違う。いつもはもっと余裕綽々で、どんなときでもからかうことを忘れないような男なのに。
「ミハエル、なんでお前、そんなに不機嫌なんだよ」
 思い余って訊ねると、驚いたような視線が返ってきた。
 気づいていないとでも思っていたのだろうか。一年以上の学校生活を共にし、良きライバルとして過ごしてきたというのに。
「……驚いたね。お前がそんなにオレのこと気にかけるとは思わなかったよ」
 そして何より、この男がアルトのことを一度も姫と呼んでいないのに。
 アルトを最初に姫と呼んだのはミハエルだった。女形をやっていたこともあったのだろうが、その容姿を形容して呼ばれたあだ名が、今では学園で定着してしまっている。
「茶化してんじゃねーよ! 気に入らないことがあるんなら、面と向かって言えばいいだろ!」
 ────何が気に入らなくて、お前がオレにそんな態度取ってんだよ、ミハエル!
「気に入らないこと、か」
 アルトの言葉が癇に障ったのか、ミハエルの視線が鋭く変わる。アルトは思わず肩を竦めた。
「自意識過剰だな。まあ本当に気に入らないんだけど」
「だから、何が」
「言ったはずだぞ。オレはお前の入隊に反対なんだ。たかがマグレで一度ばかり戦闘に勝ったくらいで、知ったような口利きやがって」
 ぐっと詰まる。
 アルトには、今まで戦ってきたミハエルたちの気持ちは少しも分からない。
 ミハエルも、ルカも、自分の知らないところで命を懸けて戦っていたのかと思うと、どうしようもない悔しさに駆られてしまう。
 これは紛れもない、疎外感だった。
 もちろん入隊の理由はそれだけではないが、浮ついていると取られても仕方のない感情。ミハエルはそれに気がついているのか、ずっと入隊を反対していた。
「隊長に頼まれたから、お前のことはオレが見てやるけどな。ったく、隊長命令でなければ誰がこんな面倒くさいこと」
 ミハエルはアルトのことを気に入っていたが、それはあくまで学校内でのことだ。
 できるなら、命に関わる仕事などしてほしくなかったのに。
「だったらオズマに言って他のやつに変えてもらえばいいだろ!」
「オズマ隊長と呼べ、アルト!」
 ミハエルが声を張り上げて、アルトは半歩あとずさる。
 ミハエルの中で、自分がどの位置にいるのか知ってしまった。いや、オズマがよほど高い位置にいるのだろうか。
「……お前、下手に軍に入らなくて良かったかもな、アルト。礼儀も知らないお坊ちゃんじゃ、すぐに潰されるぞ」
「ミハエル」
「あと、オレも一応お前の上官だから。そこんとこ忘れないようにな、アルト姫」
 アルトは耳を疑った。内容にもだが、もういつも通りに戻ってしまった、ミハエルの口調に。
「ミハエルてめっ、性格悪いな!」
「おやおや、知っていると思ったけどね」
 ふふんと笑い身体を翻し、ミハエルは再び廊下を歩き出す。
 どれだけのことができるのだろう、とミハエルは考えた。
「あーもうちくしょう、てめぇなんかすぐに追い抜いてやるからな!」
 仲間となったこの男を、死なせないためには。
 だけど可愛い女の子ならともかく、男を守るためになど戦いたくはない。
「本当にそう思うなら、死ぬ気で着いてこいよ、アルト姫」
 自分自身で身を守ってもらうしかないのだろうと、ミハエルは眼鏡をかけ直した。



 鬼のようなしごきに、絶対立場を逆転させてやる、とアルトが決意を新たにしたのは、ほんの数時間後のことだった。

#無自覚 #ミハアル

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星のない夜に

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2008.04.26

#セフレ #ミハアル

 息苦しい、と目を覚ます。頬にかかる髪がうっとおしいと思っても、バッサリ切ってしまうのも面倒くさい。…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

星のない夜に



 息苦しい、と目を覚ます。頬にかかる髪がうっとおしいと思っても、バッサリ切ってしまうのも面倒くさい。
 アルトはもそりと身体を起こし、カーテンの隙間から指す朝日を眺めた。

「おい、退けミハエル。重い」

 アルトは眉を寄せて、息苦しさの原因であった男の腕を持ち上げて放る。
 男はそれで目が覚めたようで、目を擦りながら鼻を鳴らした。
「んん……ああおはようアルト姫。もう朝か」
「誰が姫だ! いい加減やめろよ」
 投げつけた枕は難なく受け止められて、それがまたアルトの癇に障る。この男から余裕の笑みを取り去るには、何をどうしたらいいのだろうか。
「いいじゃないか、似合ってるんだし」
「似合ってねぇ。胸もねぇどころかてめェと同じもんついてんだぞ」
 アルトはギッとベッドを下りシャツを羽織る。昨夜いたるところに付けられた赤い痕が目に入って、居たたまれなかった。
「ああ、うん。それはオレがいちばんよく知っているけど?」
 ミハエルは指で髪をかき上げ、サイドテーブルに置いていた眼鏡をかける。細められた目はアルトの肢体を舐めるように見つめ、その視線に気づいたアルトは思い切り眉を寄せた。
「朝っぱらからエロい目で見んな」
「だったら朝っぱらからエロい格好するなよ」
 くすくすと笑いながら、ミハエルもベッドを下りる。ベッドの下に脱ぎ散らかしていたパンツに足を通してシャツを羽織り、ミハエルはアルトの長い髪を引っ張った。
 急にかけられた強い力によろめいて、声を上げるヒマもなく腕の中に収められてしまう。いきなり何をするんだと紡ぎかけた抗議は、降ってきた口唇で遮られた。
「んんっ!」
 思わずぎゅっと目を瞑り、ミハエルを押しやろうとするが、キスの熱に浮かされてうまく力が入らない。


 この男に勝てることは、なにかあるのだろうかとアルトはぼんやり思う。


「は、離……せ、ミハエルッ」
 情けなくなって、振り絞った力でミハエルの身体を押しやった。
 濡れてしまった口唇を拭って、これ以上距離が近くならないようにミハエルの胸を腕で止める。
「目の前で拭われると少し傷つくな」
「知ったことか! だいたい、なんでてめェとこんなことしなきゃなんねーんだよッ」
 別に、恋人同士というわけではなかった。口づけを交わし、肌を重ねるような間柄でも、決して恋だとか愛だとか、甘ったるい感情はなかったはずで。
「何度も言わせるなよ姫。賭けに負けたお前が悪い」
「……っ」
 アルトは言葉に詰まった。
 ミハエルとの関係が始まったのは、ほんの些細なきっかけだった。
 考査での順位をネタに、勝った方がひとつだけ望むことをする、と。
「あれはっ……だって、お前がこんなこと」
 こんなことを望んでくるとは思わなかったのだ。


 涼しい顔でただ一言、抱いてみたいと。


 それでも好きだの愛しているだの、そんな言葉はひとつもなく、星のひとつもない夜に初めて繋がった。
「イヤなら、次こそトップ取ればいいだろう、アルト」
 この男に勝てるものなど、ひとつもない。
 アルトは口唇を噛んで、興味本位と肉欲で動いたミハエルを睨みつける。
「オレはお前が大ッ嫌いだ!」
「はいはい、親父さんの次にですかアルト姫?」
 肩を竦め笑いながらあしらうミハエルの頬を平手で打って、いつの間にかこの部屋に増えていた自分の着替えを手に背を向ける。
「シャワー借りるぞ!」
 答えも聞かずにシャワールームへと足を運んだ。それを別段気にした風でもなくふっと笑う。
 怒った顔も好みだなあなどと、考えながら。


#セフレ #ミハアル

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Oh Happy Day

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2006.12.25

#両想い #ラブラブ #クリスマス #ラビユウ

 あ、と顔をあげた。「ほらユウ、賛美歌が聞こえるさ」 頭の向こうにある窓を逆さまに見て、その音を追う…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

Oh Happy Day

 あ、と顔をあげた。
「ほらユウ、賛美歌が聞こえるさ」
 頭の向こうにある窓を逆さまに見て、その音を追う。
「あぁ? あー…」
 隣に横たわる恋人は、疲れきった声でそう返してきた。もしかして起こしてしまったのか、と詫びると、別にいいと頬を摺り寄せてくる。
 珍しく甘えてきてくれた、と頬を緩め、その身体を抱きしめた。普段の彼は、あまりこんなふうに人肌恋しい素振りを見せないというのに。
「無茶させたさ?」
「少し疲れてただけだ。気にするな」
 そういえば彼は今日任務から帰ってきたのだった。そのままコムイが主催するクリスマスパーティーに参加して、アルコールに少し火照った身体で、彼の部屋に二人でなだれ込んだ。
 そうだ今日はクリスマス。イエス様が生まれた日。
 別にクリスチャンではないし、祈ったってこの世界が平和になるわけではないことくらい、分かっている。ただ何かしらの理由を付けて、お祭り騒ぎがしたいだけ。
 教団の中にはちゃんとしたクリスチャンもいるから、そんなこと言って回ったりはしないけれども。
 だけど世間の恋人たちは、クリスマスにかこつけて、プレゼントを贈ったり愛を語り合ったり。一年に一度のこの特別な日を、幸福そうに過ごすのだ。
 世間一般の恋人たちのように、誰からも祝福されるような幸福な間柄ではなかったけれど、そんな日くらい、自分たちも特別な日を幸福に過ごしてみたい。
 数日前、彼が任務に出かけてしまった時は仕方ないかと方を落とした。
 自分たちはエクソシストで、何をおいても任務が最優先。クリスマスを共に過ごしたいからと言って聞いてくれるはずもなく、何よりもまず、彼自身がこういったお祭り騒ぎに興味がなかった。
 任務に出かける前ちらりと言ってみたけれど、だからなんだとでも言うようにため息をつかれたのだけれど。
「ユウ、今日はどうしたんさ? パーティー参加するなんて、珍しいよね」
 胸の上に乗せられた頭を撫で、柔らかな髪を梳く。そうされることが好きらしく、彼は猫のように身体を丸めた。
「ユウがこんな早く帰って来れるなんて思わなかったさ」
 その上馴れ合うのが嫌いな彼が、それに参加するなんて。
 そういえばパーティーホールに入ってきた彼は、ひどく急いでいたようなことを思い出す。任務から帰って、入浴でもしてきたのか少し濡れた髪が印象的で、思わず見惚れたのも覚えている。
 すぐさま駆け寄って、シャンパンを渡したら、少しだけ笑って受け取ってくれた。
 どこかホッとしたように。
「任務大変だった?」
「やめろよ、こんなときくらい、任務の話は」
 突然に彼は身体を起こして、眉を寄せて見下ろしてきた。何か怒らせるようなことを言っただろうかと考えているうちに、彼は寝転がって背を向けてしまう。
「ユウ」
 しまったと思った。彼は一度機嫌を損ねると、直るのに少し時間を要してしまう。何に怒っているのだろう、と覗き込んだ。
「ああ大変だったよ、レベル2が2体もいやがってな。一筋縄じゃいかなかったぜ」
「ユウ、ごめん」
 そんな任務を終えて、この教団に帰ってきた彼を酒の席に誘い、あまつさえ身体の負担になる行為を仕掛けてしまったなんて。
 クリスマスとかそんなことより、彼の身体のことを考えてやるべきだったのに。
「お前がそんなに鈍感だとは思わなかったよ」
「え?」
 何のことを言っているのか分からない、というように返したら、少しの沈黙を破って彼がゆっくりと振り向いて見上げてきた。明らかにこれはふてくされてる顔、だ。


「お前が言ったんだろうが、クリスマス一緒に過ごしたいって」


 目を瞠った。
 まさか…………まさかそれを叶えるために、急いで帰ってきたのだろうか?
 嬉しくて、泣きそうになって口を押さえる。
「……泣くなよ」
「まだ泣いてないさ」
 彼はごろりと仰向けになって、仕方ないヤツだと引き寄せてくれる。何気ない仕種に優しさを感じて、また泣きそうになった。
「ありがと……ユウ」
 何度恋をしても足りない。毎日恋をしても、きっと足りない。
「ユウ、何度も言ったけど、も一度言うね」
 笑ってそう言うと、ん?と首を傾げる、愛しいひと。
「メリークリスマス、ユウ。愛してるさ」
 嬉しそうに目を細めた彼が、髪を梳いてくれる。
「メリークリスマス、ラビ。愛してる」
 来年もまた、共に過ごせますように。
 引き合っていく口唇に、願いを込めた。


#両想い #ラブラブ #クリスマス #ラビユウ

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フォゲットミーノット

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2006.11.04

#両想い #R18 #ラブラブ #ラビユウ

「ねぇユウ。オレのこと好き?」 頬杖ついて、ラビは神田にそう訊ねた。 訊ねられた神田はまたかと呆れ顔…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

フォゲットミーノット



「ねぇユウ。オレのこと好き?」
 頬杖ついて、ラビは神田にそう訊ねた。
 訊ねられた神田はまたかと呆れ顔。それもそのはず、この問いが投げかけられたのは初めてではないからだ。
「お前さ」
 神田はため息とともに返してやる。
「この状況でそんなこと訊くのか?」
 恨めしそうにラビを振り仰いで。
 つい先ほどまで、これでもかというほど密着して、繋がりあっていたというのに、この状況でその質問はないだろう、と。
「ったく、何度ヤりゃ気が済むんだお前は」
「だーってさぁ、ユウに逢ったの久しぶりだったし」
 確かに任務ですれ違うことが多い二人には、こんな風にゆっくり過ごせることも稀で。
 抱きしめてキスをして、言葉を交わすヒマもなくベッドに倒れこんでいく。
「だからってあんなに立て続けにヤることねぇだろ。抜かずに3回とか、変態か貴様」
 声を出すのも億劫だ、とばかりに神田はため息混じりに吐き捨てた。そのままラビに背中を向けてやると、あからさまに不服そうな声が返る。
「変態じゃないさ。ユウだって気持ちいいくせに」
 ラビのこんな言葉にはもう慣れた。人前で言ったら切り刻んでやるところだが、ここには自分たちだけしかいないし、今はその力もない。
「否定はしねぇよ。だが物事には限度ってもんがあるだろ、限度ってもんが」
 少しだけ振り向いて、眉の下がった赤毛の男に言ってやった。翌日にお互い任務はないようだけれど、体力にも限界がある。
「でもオレがユウを愛してる気持ちに限度はないもん」
 口を尖らせて、拗ねた口調に神田は目を見開いて、次いでカッと頬を紅潮させた。
「バ、バカか!」
 向かってくる想いを跳ね除けて背を向ける。寒々しいレンガの壁が目の前にあるのに、顔は冷えていかない。トクントクンと鳴る心臓は、いっそ煩わしかった。
「と、とにかく俺はもう寝るからな!」
 不意打ちなんて卑怯だ、と思いながら神田は眠る体勢に入る。が、
「ユウ……ぎゅってしていい?」
 寂しそうな声が背後から聞こえてきて、チッと舌を打った。まるで捨てられた子犬。
 それくらいならまあいいか、と思って、勝手にしろと呟いた。……のが、間違いだったんだろう。
「おい」
 しばらくは大人しくしていたラビの手が、もぞもぞと動き出す。
「おい、ラビっ」
「んー」
 楽な体勢を取ろうとした、とかではない。明らかに、意志を持って。
 先ほどまで大人しく神田を抱きしめていたはずの右手は、神田の膝から太腿を上になぞり上げる。そしてゆっくりと、また降りる。
「んーじゃねぇ、その手退けろッ」
 手のひらで熱を伝え、指先で緩急つけて愛撫する。逃れようにも目の前は壁で、身体はラビのもう片方の腕で戒められていて。一緒に眠るとき神田を壁側に寝かせるのはラビの優しさかとも思ったが、こんな使い道もあったとは。
「ちょっと触ってるだけさー。それにオレ、何もしないなんて言ってないよ」
 考えてみれば確かにそうだ。抱きしめてもいいかと言っただけで、何もしないとは言っていない。
「ひ、開き直んなてめぇッ……絶対もうしねぇ、っあ!」
 ラビの指が、合わさった脚の谷間をツイとなぞる。思わず口を突いて出た声に、反応してしまった自分を知って居たたまれない。神田は頬を赤らめて口を押さえた。
「ユウのイイとこ見っけ。こんなとこも感じる?」
「か、んじて……ねぇっ」
 合わせる脚に力を込める。ラビはくすくすと笑いながらその合わさったラインを撫で、首筋に顔を埋めた。
「ぁ……っ」
 強く吸い、赤い痕を残す。数日も経てば消えてしまうけれど、自分が触れた証しを残したかった。
 自分が、愛した証しを。
「ユウ、感じてないって言う割にはビクビクしてるさ、身体」
 脚を撫で、肩に口づければビクリとしなる背。それは言い訳の仕様がない感覚で、神田の身体を支配する。指先は脚の付け根を走り、もう片方の手は胸を弄る。
 まるで、心音を確かめるように。
「っも……なんでてめぇはそうなんだ……っこっちの身にもなってみろ……!」
 ゆるりと与えられる快楽を耐えながら、せめてその行為に抗議をしてみる。湧き上がってくる感覚と、熱くなってきた吐息は、もう否定し様がなかったけれど。
「……ユウちゃん。オレだってね、疲れないわけじゃねーさ?」
「だったらすんなよ」
「それでもしたいの。次いつ逢えるかわかんないのに」
 ユウの体温覚えさせてよ、と耳元で囁く。お互い任務はないと聞いたけれど、アクマもイノセンスも、出動を待ってくれやしない。もしかしたら後数時間後に離れ離れになってしまうかも知れないのだ。
「で、ユウにもオレの体温覚えてもらうんさ」
 そのためにはこれくらいしないと、と身体を撫で回す。神田の中心はすでに反応を示し、さらなる快楽を求めていた。それでも思い通りにさせるのは納得がいかないと、神田はシーツを握り締めた。
「俺が……ッ物覚え悪いみてぇじゃねーか……!」
「じゃあオレの体温覚えてるさ?」
 ラビの手が急に止まる。本当に、ピタリと。思わず不思議に思って振り向こうとしたけれど、強く抱きしめられて肩にラビの頭を感じ、寸前でできなかった。
「ねえ、任務中……ていうか戦闘中はそんなん考えてられないってわかるさ。でも、移動中は? 眠るときは? 起きたときは?」
 今までの強引な行為が嘘のように、弱々しい声に打って変わる。ラビ、と呼んでやりたかったが声が出ない。
「オレは可能な限り、ユウのこと思い出してる。ユウの声とか、髪の手触りとか、肌の感触とか体温とか……そしてその度触りたくなるんさ」
 汽車での移動中・眠るとき、起きたとき、ゴーレムが鳴ったときでさえ、神田じゃないかと期待する。だけどそれは9割9分コムイからのもので、神田であった例はない。
「ねえ、ユウはオレのこと思い出したりしてくれてる? オレの体温とか、肌とかさ。少しは、寂しいとかって、思ってくれてるんさ?」
 女々しいな、とは自分でも思った。神田と恋人になれてから約2年余り。長いのか短いのか訊かれたらどっちなのかは解からないが、実質ともに過ごしている時間は実は少ない。この教団に正式入団する前から彼を想っていて、思い切って気持ちを告げたら、彼は笑って【知ってたよ】とため息をついた。
「いつでも思い出せるように何度でも……何度でも抱きたいんさ。オレの全部ユウん中流し込んで、いつも一緒にいられたらいいのにって……」
 語尾がだんだん掠れていくのに気がつく。弱気になってるラビを見るのは初めてじゃない。これまで、何度もあった。少し時間が経てば立ち直っているようなのだが、神田はその間気が気ではない。
「ごめんユウ……オレの勝手なワガママさ。もう何もしねーから一緒に寝よ」
 そうだ、こんな風に無理をして笑ってくる。根本は、解決していないのに。
 神田はため息をついて、呟いた。


「俺がお前を愛してねーみたいに言うな」


 どうして解からないんだ、と少しだけ怒りを込めて。
 神田の呟きに、ラビは案の定え?と訊き返す。
「抱け、ラビ」
 思わず緩んだラビの腕を絡め取って、自分の身体に触れさせる。自分の体温を覚えていて欲しいと思うのは、ラビだけじゃない。相手の体温を欲しいと思うのも、ラビだけじゃない。
「覚えこませてみろよ」
 離れていても、思い出せるように。
「いいの、ユウ、ホントに抱くよ?」
 恐る恐る手を伸ばしてくるラビにはこくりと頷いてやって、まだ背中に感じる体温に気づく。ラビの手がそれに触れる寸前、待てと神田の手が阻む。今さら止められない、とラビは眉を寄せた。
「この格好じゃ絶対嫌だ」
「え?」
「か、顔が見れねぇだろ」
 言われ気づいて、ラビは頬を赤らめた。実はものすごく愛されているのかと。
 首筋にひとつちいさなキスを贈って、腕を緩めて神田の身体を返す。神田は背中にベッドを感じ、ラビを見上げる体勢になった。これでOK?と細められた隻眼が見下ろしてくる。嬉しそうなそれは、神田の好きなもの。
「見くびってんじゃねーぞラビ。好きでもねぇヤツに、こんなこと許さねぇ」
「うん、ごめんユウ」
 口唇が降りてくる。入り込んだ舌に上あごを舐められて肩が揺れた。
「ん、ん、んん」
 限界まで貪って、互いを喰らう。
 頬を包んでいたラビの手は首筋を辿り、鎖骨を撫でて胸に降りる。汗で僅かに湿った肌に滑らせれば、塞いだ喉の奥で神田が喘いだ。
「ユウ、もう……こりこり」
「……っあぁ!」
 胸の上で存在を主張する飾りを、指の腹で押しつぶす。そこが弱いことはもちろん知っていて、執拗に責めた。
 快楽に流されてしまうのがイヤなのか、神田はふるふると首を振る。教え込まれた快楽は、それでも全身を支配するのに。
「ん、あ……ん」
 捻りあげ、ぐりぐりと捏ね回す。片方を口に含んでやれば、一際高い声が上がった。のけぞった神田の重みを受けて、新しくはないベッドが弱音を吐いて軋む。
「ん、あ、ラビ、そこばっか……すんなっ……」
 ちゅ、と吸い上げて、ラビは笑って神田を覗き込んだ。
「他のトコ触ってほしいさ?」
「ひゃっ……」
 胸を離れたラビの手は、反応を示し始めた神田の中心を握りこむ。突然の刺激に、びくりと身体が震えた。
「ユウ、可愛い」
 頬に口づけながら、先端を指先で擦る。脚が跳ね、喉の奥で声がくぐもった。快楽に耐えようと必死でシーツを握り締める神田に、そんなものに縋らないで、とラビはその腕を自分の肩に回させる。
「んっ、んんー……っ」
 ラビの指は筋をなぞり、ふたつの袋を挟んではもみしだく。部屋に響きだす淫猥な音は、当然神田の耳にも入り込む。恥ずかしいのと同じくらい、ラビの与えてくる快楽が嬉しいと感じてしまう自分は、相当溺れているのだろうと悔しくなった。
「ラビ……ラビ」
 首から抱き寄せて、頬をこすりつける。
「どしたんさユウ? 珍しく甘えん坊?」
「俺のこと、好き、か?」
 それはさっき、ラビが神田に訊ねたことと同じ。
 ラビはため息をついて、ユウのバカ、とキスを降らせる。
「んん……あ、ふ」
「この状況で、そんなこと訊くさ?」
 自分と同じ返し方をされ、バツが悪くなって顔を背ける。その顎を取って、再び深く口づけた。強引で荒々しいキスに、神田は思わず身を捩る。快楽の証しを主張し続ける部分がラビの腹でこすられて、身体が震えた。自業自得とは言え、こんな些細な接触にさえ感じてしまう。
「ん、ぁ……んっ」
 キスから逃れようとしても、ラビはそれを許してくれない。追われ、さらに口づけが深くなるだけだ。キスだけじゃもういやだ、と思っても、それを声で伝えることができない。
 口を塞がれ、唾液を流し込まれて、酸欠で意識が朦朧としてくる。
 限界だ、と思ったとき、口唇は解放された。
「ぷはっ……はぁ、はぁ、っは……あっ」
「ごめん意地悪しすぎたさ。でもオレだって、好きな人じゃなきゃこんなことできないよ」
 そう言ってつぷりと、奥の窪みに指を侵入させる。
「バ、バカいきなり二本も入れんなっ……」
「ダイジョブ。さっきのでまだ濡れてるから」
 静止する神田の手には構わずに、そのまま指を押し込めた。先ほどの情事で神田の中に放ったものが、進入を助けてくれる。
「あっ……あ、あぁ」
 無遠慮に入り込んだ指に、内側をかき回される。それでもラビの指が触れてくるのは入り口付近のみで、焦らされて身体の奥が疼きだした。
「ラビ……っ」
「待ってユウ、も少し慣らしてから」
「もういいっ、い……いから、すぐ……っ!」
 焦らすな、とラビを引き寄せる。引き寄せられた方のラビは珍しく舌を打って、神田の脚を割った。
 指を乱暴に引き抜いて、自分を押し当てる。
「せっかくユウに負担かけさせないようにしてんのにっ……ユウのバカ……!」
「ああぁっ!」
 指とは比べ物にならない圧迫感が、神田を襲う。一気に奥まで押し込まれて、思わずのけぞった。いくら先ほどの情事で濡れているとは言え、強引な侵入には身体がついていかない。
「ふあっ、あ、あぁ……」
 だがそれを望んだのは神田自身。身体のずっと奥でラビを感じたがったのは、神田だ。痛みさえも幸福で、愛おしい。
「ユウ、ユウ大丈夫さ? ごめんさ、抑え利かなくて……」
 辛そうな神田の髪を撫で、落ち着くまで動かないでいよう、と頬にキスをするラビ。神田の肉の壁に締め付けられて、すぐにでも達してしまいそうだったけれど、もっと神田を感じていたい。
 ゆっくりと、ゆっくりと。
「ラビ……平気、だから」
「ん……ホントに無理そうだったら言ってね」
 腰を上げて、ゆっくりと引く。その僅かな動きにさえ神田は反応して、声を詰まらせた。
 少しだけ引き抜いて、また押し込む。のけぞった神田の喉が美しくて、欲望のレベルが上がった。
「あ、ラビ……ラビっ……」
 悩ましげな声が耳の奥まで入り込む。結合した部分のヌルヌルとした感触と、汗で濡れた肌の感触に、理性が吹き飛ぶ。
「あぁっ!」
 一気に全部引き抜いて、不満そうな顔をした神田の両足を折り曲げた。
「ユウ、ここひくひくしてる。そんなに欲しいさ?」
「やぁっ……あ、バカ……じ、焦らしてんじゃね…っ」
 先端だけを突きつけられて、身体が震える。可愛い、と降りてくる口づけ一つ。
「ん、んっ、んぁっ」
 それと一緒に、入り込んでくるラビの熱い肉塊。腰を引かれ、押し込まれる。それは絶妙なタイミングで、快楽を引き出していった。
 ぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てて、繋がりあうふたりのエクソシスト。
「すげ……イイ……ユウ、すげぇ可愛い」
「あっ、あっ……はあっ」
「っ……また締まった…ッ……も、ユウ、今日エロすぎんじゃね……?」
「や、もう……っ」
 ラビは神田をかき回し、神田はラビを飲み込む。灼熱を思わせる結合部はもうどこからどこまでが自分なのかさえ分からずに、ぎしぎしと啼くベッドの上で、互いの体温を確かめ合う。
「ラビ、あつ……」
「うん、ユウん中、超熱いさ……」
 汗で額に張り付いた髪を払って、そこに口づける。その反動で奥を突付かれて、神田は声を上げた。
「イキてぇ……」
 懇願するように手を伸ばし、ラビを抱き寄せる。
 密着した肌の間で混じる、お互いの汗。
「ん、オレも……限界さ」
「あ、やっ……ん!」
 ぐい、と乱暴に腰を動かす。突然の激しい動きについていけず、神田は眉を寄せた。それでもどうにか腰を揺らし、ラビと動きをあわせる。
 高められていく快感は、もうお互いでしか解放できない。
「あ、あ、あ…ッ、ラビ、ラビ……!」
「ユウ、……っ」
「んん────…ッ」
 神田が快楽を手放して、強い締め付けにラビも耐え切れずに性を放つ。
「く、うっ……!!」
「あっ……」
 奥に放たれて、ラビの熱を感じる。
 速い動悸と、荒い呼吸。互いを強く抱きしめあって、それが落ち着いていくのを待った。
「ラビ……」
 愛しくて、両手の指を髪に梳き入れる。こんなところの温度まで、幸せだなんて思った。見下ろしてくる隻眼は、今自分だけのもの。
「ラビ、知ってるか?」
「ん? 何?」
「終わった後のお前ってさ、すげえ……ガキみてぇな顔してんだぜ」
「えー、なにそれ……んむ」
 不服そうなラビを、不意のキスで黙らせる。
 だって本当なんだ。
 子供みたいに無邪気で、無防備で、嬉しそうな顔をしている。
「そんな顔見せんの、俺だけにしとけよ」
「ユウもね、そんな色っぽい顔、オレ以外のヤツに見せないで」
 快楽に溶けて、無防備で、情欲をかき立てる、そんな顔。
「お前ってほんと俺のこと好きだよな」
「ユウだってオレのこと好き過ぎさ」
「……」
「……」
 二人で笑って、抱きしめあってキスをした。
 足を絡ませ合って、もうすぐ明ける夜に沈んでく。




 目が覚めたら、きっと覚えてしまった体温が、すぐ傍にあるんだ。


#両想い #R18 #ラブラブ #ラビユウ

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どうかこの夜が、明けるまでは

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2006.11.01

#R18 #両想い #ラビユウ

 だってしょうがねぇじゃねーか。 こうでもしないと、壊れちまいそうだったんだ。「今日限りだ」 そう言…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

どうかこの夜が、明けるまでは


 だってしょうがねぇじゃねーか。
 こうでもしないと、壊れちまいそうだったんだ。




「今日限りだ」
 そう言って、目の前で団服を脱ぎ捨ててやった。驚くかと思ったけど、想像していた反応とは違う。口唇を少し噛んで、眉を寄せて。片目で俺を突き刺してくる。
「どうしたんだ」
 もう、手を伸ばせば触れる距離だろう。なぜお前は動かないんだ?
 なんでそんな顔してるんだよ。
「俺が欲しいんじゃなかったのかよ」
 高く結い上げていた髪を解く。多少長さがうざったいが、これからすることを考えたら、結っているよりはいいだろう。未だ棒立ちのまま動かないでいるヤツを────ラビを、見下して笑ってやった。
 怖気づいたのか、と。
 好きだと言ってきたのはラビの方だ。すれ違うたび物欲しそうに、俺の背中見てたのは、お前の方だろう。泣きそうな顔で口唇震わせて、腹の底から搾り出した声で告げてきたのは、間違いなくお前だ。
「ユウ、でもオレ」
 ブックマンの継承者だし、と無理に笑う。そんな笑顔はらしくない。
 だけど、アイツが誰にも執着できない立場なのは、俺も知っていた。中立の立場を死ぬまで守らなければいけないから、誰か一人に執着することができないんだと、苦笑しながら言っていたのを覚えてる。
 そのせいなのか、誰に対しても一線置いていたような気がする。リナリーにもモヤシにも、現ブックマンにさえ。
「でも、どうしたらいいんさ? ユウを好きなの、止めらんない」
 さっきも聞いた。歯をカタカタと震わせて、全力で我慢して、堪えきれずに呟いた、ラビの心の内。
 痛いくらい強い力で抱きしめられて、突き放す術はなかった。
「こんなの、ダメだって解かってる。ただでさえ止められてんのに、オレも、ユウも男だし」
 触りたい、って耳元で呟かれて、抱きしめ返してやった。
 心臓速くて、体温も高くて、吐く息は熱かった。最近眠っていなかったようだが、もしかしてそのせいなのかと思ったら、もう突き放してやる気は失せていた。
 怒らないのか、と問われて、何がと返す。
「ユウを……そーいう対象で見てたこと」
「別に。お前のそーいう視線には気づいてたし」
 気づかない方がどうかしている。あんなにあからさまな熱視線。
「俺のこと見てどんな想像してたか……なんて訊かなくても解かるぜ。てめぇがさっき言ったように、俺も同じ【男】なんだ」
 劣情を抱え込んですることなんて、たかが知れてる。
「なぁ? お前の中の俺は、どんな風にお前に抱かれてんだ?」
 ラビの団服のジッパーに指をかけたら、ビクリとヤツの身体が震えた。反応が、いちいち面白い。
 憐れだな。抱き合うことを夢見て、感情を押し殺して傍にいるしかできねぇなんてよ。
「抱かせてやるって言ってんだ」
 チリチリと、ヤツの団服のジッパーを引き下げる。ここまでしてやってんのに、なんで動かない。お前が言ってきたんだろ、今さら引き下がるのか。
「……触れていいの?」
「減るもんじゃねぇだろ」
 首筋を指で撫でて、誘ってやる。俺が欲しいんだろう、ねじ伏せるくらいの勢いで来りゃいいのに。
 今だって、そんなに震えるくらいに俺への想いを我慢してんだろ。もう、限界なんじゃねぇのか、ラビ。
「オ、オレが、触ってもいいんさ!?」
「うざってぇな、いいっつってんだろ!」
 らしくないてめェなんざ、見たかねぇんだよ。
 だったら、身体くらいくれてやる。例え一時でも、お前がそんな顔しないで済むなら、こんな身体くらい、いつだってくれてやるさ。
「ユウ、ごめん。……好きさ、大好き」
 ラビの両手が俺の頬に触れる。触れてくる口唇は、それでもまだ震えていた。
 初めて触れた。口唇荒れてるな、胃が弱くなってるのか。
「ユウのバカ、もう、ホント止まらねェさ……!」
 触れるだけの幼いキスの後で、押し殺した声で呟かれる。何か返してやろうと思ったけど、考えているうちに、ドサリと乱暴に押し倒されて、できなかった。
「んぅ……っ!」
 噛みつく様に口づけられて、不覚にも肩が震える。もう何を言っても聞かない、とキスを繰り返されて、さすがに息が上がった。
「はぁっ……」
 ベッドに身体を押し付けられて、身体を纏う衣服を剥ぎ取られていく。いささか乱暴だ、とは思ったけれど、そんなこともう、どうでもいい。
 俺も、こいつも男で。こいつは中立の立場のはずで。俺だっていつまでこの命がもつか解からなくて。
 この行為と、想いを拒絶してやる理由はいくらでもあった。触れてくるこの手を払いのける理由なんて、そこら中にゴロゴロしてる。
 だけど仕方ねぇじゃねーか。
 こうでもしないと、壊れちまいそうだったんだから。




 俺が。




「っあ、ラビ……!」
 ああ、憐れだな。
 こいつのこと好きでしょうがねぇのは俺の方だ。
 お互い、執着していい立場じゃねぇのはよく解かってる。こんな風に触れ合うのが、間違いだなんてこと、誰に言われなくてもよく知ってる。
 今日限りだ。
「ん、んんっ……あ、ぁ」
「ユウ、こっちも……全部、触っていい……?」
 今日で、全部終わりにしてやる。
 身体の上を滑るラビの手を絡め取って、ちゅ、と口づけた。
「遠慮しねぇで、全部触れよ……この夜が明けるまで、俺はお前の恋人でいてやる」
 こいつの願いを叶える振りして、自分の願いを叶えさせる。
 本当に触れたかったのは、俺の方なんだ。
「ユウ、大好き……」
 こいつは俺に好きだと言ってくれたけど、俺はそんなこと、言ってやれない。口にしたらダメだ。
 口にしたら、俺の世界とお前の世界が壊れてしまう。
 だからせめてこの夜が明けるまでは、お前の恋人でいさせてくれ。それでもう、ちゃんと生きていくから。


 今日が最初で、


「……ラビ……」


 今日が最後。


「もっと奥まで……来いよ……」
 抱きしめるために、腕を伸ばす。



 お互い泣きそうな顔をしているだろうことには、気づかない振りをした。

#R18 #両想い #ラビユウ

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Happy,Happy

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2006.06.06

#両想い #ラブラブ #誕生日 #ラビユウ

 来年の誕生日も、共に過ごせたらいいなと頭の上から声が降ってくる。 日付は変わったばかりだというのに…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

Happy,Happy




 来年の誕生日も、共に過ごせたらいいなと頭の上から声が降ってくる。
 日付は変わったばかりだというのに気の早いことだ、とユウはその声の方向を見上げた。
「今年こうやって過ごせただけで感謝しておけ」
「や、それはもちろん、幸せなんだけどさ」
 来年もこうやって、いちばんに、いちばん近くでおめでとうと言ってみたい。
 ラビはユウの髪を撫でながら、日常と化した任務を些か恨めしく思った。恋人に逢うのも困難で、共にゆっくり過ごすなんてこと、とても難しくて。でもその任務は、恋しい人と過ごす世界のためにはどうしても必要なもので。
「早く世界が平和になればいいのに」
 そうしたら誕生日は毎年一緒に過ごして、朝から晩まで馬鹿みたいにはしゃいで、いい加減にしろとユウに怒られるんだ、と楽しそうに口にする。
 仕方のないヤツだ、とため息をつきながらも、実は神田の方こそそんな世界も夢見てる。
 戦いの、任務のない世界はどんなに退屈で、どれだけ変化をもたらして、そしてどれほど幸せだろうかと。
「毎年、ユウの誕生日祝って感謝したいんさ」
 触れ合う体温はもう慣れてしまったけれど、戦いのない世界でもこの体温は変わらないだろうかと。
 抱いてくる腕に素直に身を預けてユウは、そっと呟く。
「同じ言葉、返してやる」
 この世に生誕したことを感謝して、祝ってやりたいのはこちらも同じ。
「来年の俺の誕生日の前に、てめェの誕生日だな」
 共に過ごせることを祈ろう。せめて二人ともが、この地に生きていることを。
「んな嬉しいこと言われたら、加減できないんですけどユウちゃん」
 すでに加減をする気などないくせに、と首から引き寄せ誘い、触れる吐息を楽しんだ。
 首筋を這う口唇が、胸を手のひらが、温かくて心地よい。
「ラビ…」
 快楽を絶える合間に名を呼ぶと、嬉しそうに笑う顔が目に入る。名を呼ばれるのはとても幸福だと。
「んっ、……ぁ」
 幸福と情熱を引き連れて、愛しい人に触れる。
 硬く咲く胸の突起を、梵字と一緒になぞり嬲れば、神田の身体は快楽に跳ねた。この身体をこんなに敏感にしてしまったのは確かにラビの所業だが、生まれついての素質なのかそれともそれを超える愛情であるのか、当の神田にさえ解からないだろう。
 後者だと、思いたい。
「っつ……ぁ、ん」
 先ほどまでの行為の余韻が、快楽を引き戻す。ゆっくりと、焦らすような丁寧さは、逆に毒のようにさえ思えてしまう。
「ン……、んぁっ…」
 舌先が胸の突起を掠め、びくりと腰が沈んだ。舌の上で転がされ、喉を突く快楽を、もうどうにも仕様がない。ギシリと啼いたスプリングは、ユウの意識を現実に引き止める。
 口内に含まれて、熱が下腹部に集中していく。
「あ、あっ……やめ…!」
 両方の朱を舌と指で弄られ、ぎゅうとシーツに縋った。
「ん、んん、ぁん…っ!」
 脚の間で震えだしたそれにラビが気がつかないわけはなく、何の前触れもなく握りこまれて戦慄く。
「…っ、馬鹿っ……急にンなとこ触んな…っ」
「だってユウ、ここ触って欲しくてビクビクしてたさ」
 笑い混じりの囁きに、カァッと熱が上がる。手のひらに包み込まれたそれは、確かに愛撫を求めていた様ではあるけれど。
「今日は誕生日だし、ユウの気持ちいいようにしてあげるさ」
 タチの悪い笑顔だ、と独りごちる。
「どうして欲しい? ユウ」
 ラビがそう続けるであろうことも、どれだけか想像できた。
 だけど、いやだからこそ、このまま手中に堕ちてしまうのは気に食わない。
「ラビ……」
「ん、何、ユウ?」
 引き寄せてひとつ、ちいさな口づけ。それだけでも驚いた顔はしてくれたが。



「……────朝まで、離すな」



 案の定、惚けたようなラビの顔。
「…………ユウちゃん…言うようになったさ…」
 噛み付くような口づけに、肩を竦めて笑う。
 そうだせめてこれくらいの報復は。


#両想い #ラブラブ #誕生日 #ラビユウ

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降っても晴れても

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2006.05.03

#R18 #両想い #ラブラブ #ラビユウ

 雨が降ってきた、と最初に空を見上げたのは神田の方だった。「あ、本当さね。どうりで肌寒いと思ったら」…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

降っても晴れても




 雨が降ってきた、と最初に空を見上げたのは神田の方だった。
「あ、本当さね。どうりで肌寒いと思ったら」
 その声にラビもまた空を見上げる。僅かに白い息が、口を逃れて空気に解けた。
 そっちも降ってんのかと返ってきた声に、ラビはうんと頷いて、
「結構雨の粒がデカいさね。大降りになるんじゃないかなこの分だと。そっちはどう?」
 そう、パタパタと飛び回る無線に答えた。
『こちらもだな。やっと任務が終わったと思ったらこれだ』
 耳に懐かしい声が、ラビを安堵させる。何事もないような声音は、無事であることを知らせてくれた。
「任務終わったんか。お疲れ様」
 オレも今終わって帰るところだと、嬉しそうに口にした。
『次の任務は?』
「ん? まだ聞いてない。もしかしたら本部でゆっくりできるかもしれんさ」
 ユウは?と少し強く振り出した雨を踏み、無線の向こうの愛しい恋人に訊ねたら、自分も何も聞いていないと返ってきた。もしかしたら本当に、久しぶりにふたりでゆっくり過ごせるかも知れない。
 前回の任務が終わった時は、入れ違いに神田の方に任務が入ってしまった。
 その前は顔を見て二、三言葉を交わすだけだった。
 だけど今回は、タイミングさえ合えば、顔を見れる。アクマさえ現れなければ、ゆっくり時を過ごせる。
 共に夜を過ごせたらそれは幸せだろうけど、せめてあの身体を抱きしめるくらいはしてみたいと、ラビは口の端をあげた。
「あぁ、なんかもう、任務の疲れなんか吹っ飛んじゃったさ。もうすぐユウの顔見れるんさね」
『……はしゃぎ過ぎじゃねーのかお前。何がそんなに嬉しいんだか』
 向こうから呆れたような声。
 逢いたいと思っているのは自分の方だけなのだろうかと苦笑して、それでも言ってやった。
「そりゃ、嬉しいさ。大好きなユウに逢えるんだもん」
 任務で疲れて帰って来て、それでもいちばん大事な人に逢えるなんて、こんなに嬉しいことはない、と。
『バカ言ってんじゃねぇ! お前が帰還する頃には寝てるからな、起こすなよ』
 きっと無線の向こうの彼は、今頃顔が赤いんだろうなあと考えて、後少しになった階段を上る。
「え? 多分オレの方が早いよ? だって本部もう目の前だもん」
 水路をくぐって階段を上がれば、塔の中に繋がる扉が見えてくる。そうだ、後十数段上ったら。
『あ? オレももうすぐ中に……え?』
「え!? ちょ、ユウ今どこ!?」
 まさかと思った。確かに本部内へと繋がる扉はひとつじゃないし、自分も帰還ルートでいちばん近いこの階段を選んだだけだ。
『今西階段だ。もう中央階段に出る』
「……マジで!? オレ今東階段なんだけど」
『え…』
 ここを上がれば中央階段にさしかかる。思わず足が速まった。
 タタタ、と駆け上った先の踊り場で、足を止め。
「────ユウ」
 自分が上ってきた階段の反対側。そこに、惚けたような顔をした、愛しいひとを見つける。知らず頬が綻んだ。こんな表情は、神田でなければ知らないだろう。
「……チッ、任務で疲れて帰ってきて、いちばん最初に見んのがてめェのツラかよ」
 うんざりだ、とでも言うように息を吐き、神田は眉を寄せた。
「ヒドいさユウ~」
 もっともそんなすげない対応、こっちはとっくに慣れっこで、ヘコませるためなら効果はない。
「おかえりユウ。逢えて嬉しい」
 踊り場でゆっくりとその身を包み、素直な体温を確かめる。
「……」
 こうして抱きしめてしまえば、神田が大人しくなるのは知っていた。
「怪我してないさ?」
「してねぇ。お前は」
 すっぽりと覆われた、腕の中で目を伏せる。本人は認めたくはないのだろうが、安心できる場所だからにに違いない。
「してないよ。なに、心配してくれてるんさ?」
「誰が」
 神田はぐいと腕を突っ張って、ラビの身体を押しやる。ちぇ、と寂しそうな顔をした彼には見向きもせずに、中央階段を上がった。こんな、いつ誰が来るとも解からない場所でのスキンシップは、正直とても有難くない。神田がそう思っているのは、ラビだってもちろん知っていたけれども、それを思い出すよりは、一刻も早く触れてみたかったのだ。
「おい、てめェも報告行くんだろうが。さっさと来いよ」
 そのまま動かなかったラビを、心配してか訝しんでか、神田が少し振り向いて呼んだ。それさえが嬉しくて、そんな自分に苦笑い階段を上る。
 離れていた間の寂しさなんて、その声と降りしきる雨が流してくれるだろう。



 一応の報告は済ませた。あとは文書にして提出すればいいだけだ。任務に出されるようになってもう何年経つだろうか。さすがにそんなものは慣れてしまって、日常化してしまった。
「書記官でもいればいいのに。倒したアクマの数なんて、もういちいち覚えてねーよ」
 廊下を歩きながらそう口にしたのは、言わずもがな神田の方で。
 彼はラビと違って記録することを得意としない。文書を書くのは苦手だと、口にしたのをいつだか聞いた。
「手伝おうか?」
「……結構だ。また何か変なコト要求されたんじゃ、たまったもんじゃねぇ」
 そんな彼にラビがこう提案すると、決まって返ってくる答えはこれだ。親切心ではあるのだけれども、いつだったか実際、見返りとして【変なコト】を要求してしまった事実がある以上、何も言えはしない。
「今回はちゃんと親切心なのになー。そういうこと言われると、余計に変なことしたくなるさ?」
「あぁ!?」
 くすりと笑って、怒ったような神田の腕をぐいと引っ張る。
 非常食の木箱が雑多に収容された狭い路地に引き込んで、虚勢を張る背中を押し付けた。
「おいっ」
 こんな狭いところでは密着せざるを得なくて、自然相手の体温と匂いがまざまざと感じられて、神田は内心焦る。久しぶりに逢ったのは事実だし、この男がスキンシップ過多なのも事実。
「ユウ」
「やめろ馬鹿ッ」
 近づく口唇は必死で押しのけられて、それでも触れたがったそれが距離を縮めてく。
「……キスだけ」
 鼻先が触れる。雨に濡れたせいかほんの少しいつもより冷たくて、思いのほか敏感になっていた。
 口唇には触れないように、ラビの口唇は神田の頬を滑る。しようと思えばすぐにでも奪えるはずなのに、ラビは神田の答えを待っている。自分が求めているように、相手にも求めて欲しいと、
「仕方……ねェな」
 キスだけだぞ、とお許しが出たのはそれから数秒後。許されてしまえば後はもう、一気に奪ってしまうのが、ラビのやり方。
「んぅっ……」
 細い腰を抱いて、濡れた舌を神田の口へと押し込める。油断していたのか待っていたのか、難なく入り込めたそこを思い切り舐って、食らう。
「ん、ん、ラビ、ッ……う」
 しがみつく指がビクリと跳ねた。神田が、自身が思うよりもっと遥かに、キスをすることが好きなのは知っている。絡め返してくる舌は、力強くて扇情的。まるで、仕掛けたはずのこちらの方こそ食われているような、妙な快感に流される。
「も、やめ……っ」
 人が来る、と自制心を楯にするが、腕はしっかりとしがみついていた。
「いやさ。ユウ可愛い」
「何を馬鹿なっ……ぁ」
 ラビの手は神田の身体を這い回る。ラインを確かめるような手のひらの軌道は、動悸を速めるには充分過ぎるくらいだった。
「やめね……ェかっ、ここをどこだと…ッ」
 自分の身体で壁に押し付けて、背を這い腹を這い、器用な指は団服の中へと入り込む。ラビ、と抗議で名を呼ぶ口唇を、キスで塞いだ。
「んん、んっ、う」
 思う存分味わって離せば、くたりと項垂れる愛しい恋人。自分もまた呼吸を弾ませ彼の頬を撫でると、ギラリと睨み上げられた。
 ああ綺麗だなぁと口の端を上げる。相当溺れているなんてこと、誰の目から見ても明らかで。
「キスだけだって……言っただろうが…!」
 むしろ気づいてくれないのは当人だけだ。そんな風に見上げてこられても、心臓が跳ねるだけ。それでもこれ以上怒らせたら、破局の危機…とまでは行かなくとも、しばらく口をきいてくれないかも知れない。
 ここは大人しくしておこう、と神田を抱きしめたまま、
「ダメ? どうしても?」
「ダメに決まってんだろ、離せ!」
 それでもわざと抱く腕を強めた。神田が力を込めても、振りほどけないくらいには。
「ユウがキスしてくれたら止めるさ」
「バッ……」
「してくれなきゃずっとこのまんまさ? ユウ」
 我ながら卑怯な条件を出したものだと思ったけれど、たまには向こうからの愛情を確認してみたい。自分だけの一方通行でないとは知っているけども、離れていた後はたまらなく不安になるものだ。
「~~~~、め、目ぇ閉じてろ!」
 キスをしてくれるくらいには、愛されているらしい。それとも、この状況から早く逃れたいだけだろうか。そんなこと思って苦笑して、見つからない答えにそっと目蓋を閉じる。
「……」
 目を閉じていても、神田が戸惑っているのは感じ取れた。ややあって、頬に添えられる細い指先。愛撫するように蠢き、やがて。


 ……ちゅっ…。


 頬に触れて、離れていく柔らかな口唇。
 虚をつかれて思わず目を瞠る。そこには、頬を上気させた神田の姿。視線が絡まって、彼は慌ててそれを逸らした。
「く、口唇に、なんて言ってねぇだろッ」
 まさかそうくるとは思わずに、こちらの方こそ照れくさい。
「馬鹿ユウ。今のめっちゃド真ん中」
「ハ!? ちょ、待て、おい」
 そんな可愛いことを、こんなふしだらな思いの時にしないでください、と幾分身勝手な感情を、指先に乗せてバックルを外す。
「ラビ!」
「ごめん一回だけ。声出すのヤなら、塞いでてあげるから」
 少し雨の匂いがする髪に鼻先をこすりつけて、くつろげた団服の中に指を滑り込ませた。恋する男の性急な仕種についていけず、神田の身体が戦慄く。
「ん! ……ん、や…っ」
 入り込んできた指に嬲られて息が詰まる。耳元で聞こえる荒い息遣いが、余裕の無さを伝え、懇願のようで抵抗さえ忘れた。
「う、あ…ッ……」
「ユウ」
 雨足が強まる外の世界。温度が下がる外の世界と裏腹に、熱を上げていくふたつの身体。
 逢えなかった時間を、流していってくれたらいい。
 それができなければ、降りしきる雨になりたい。
 空を舞って、身体に吸い付いて、この人を包みそうやって消えていくのも悪くないだろう。
「ユウ……」
「ん、ふっ、……ぅ、あ」
 侵食した自分を全部洗い流して、この人が幸せになれるように、祈りながら消えていくのも、悪くはないだろう。
「ユウ、もっと脚開いて……ん、そう…」
「ぁ、ラビ……ラビ、あぁッ」
 ラビを飲み込んで、背をしならせる神田。脚を抱え広げ、根元まで埋めるラビの欲望。吐き出す息が艶めいて、弱気を覆っていく。
「ユウん中……すげぇイイ……すぐ…イッちまいそうさ…ッ」
 ぐいと押し進めた腰が、神田の性感帯を刺激したようで、淫らな嬌声が上がった。それでも快楽に耐え、しがみついて彼が放った言葉は、


「オ…レをこんなんに……しといてッ……ひとりで…いくなよ、…ッかやろ……!」


「────」
 ラビの目を、瞠らせた。
 まいった。心の闇に気づかれている。
 神田は普段こんな風に快楽を乞うことなんてない。その彼がしがみついて、行くなと言ってくれた。愛してもらっていると感じるには、それで充分だ。
「……一緒で、いい…?」
 腰を止めて訊ねたラビに、神田はこくりと頷いて、
「ラビ、……キスを」
 誓いを乞う。ラビはゆっくりと口づけて、ふたりで吐息を分け合った。
「んっ、ん、んぁ、う」
 ねじ込んだ雄と、口内を舐る舌で、高みへと誘う。締め付けられて、痛みと快楽に眉を寄せた。
「ん、んん──ッ、ンッ」
「っつ……!」
 やがて訪れる絶頂に、ふたりで酔いしれる。
 土砂降りの雨の音を、快楽で遠のきそうな意識の中聴いた。
「ユウ、……ありがと、愛してるさ」
 抱きしめるこの腕を振り払われないうちは、この体温であなたを包もう。
 雨の日も、雪の日も。
 暖かい日も、寒い日も。
 春も、秋も。夏も、冬も。
 朝も夜も、ずっとずっと。
 降っても晴れても、この腕で────。


#R18 #両想い #ラブラブ #ラビユウ

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初恋

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2006.04.23

#両片想い #ラビユウ

 別れた時は、お互いまだ子供だった。 今だって大人と言えるほど生きてはいなかったけれど、身体だってま…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

初恋




 別れた時は、お互いまだ子供だった。
 今だって大人と言えるほど生きてはいなかったけれど、身体だってまだ出来上がっていなかったし、エクソシストとしての技術や考え方だって、今よりずっと幼かった。
 そうだ、恋心に気づかないくらいに。



 幼なじみと言えるであろうアイツがブックマンと修行に出てから、多分もう五年か六年か経ってしまっているはずだ。あの頃はオレもまだ髪がここまで長くなかったし、六幻だって上手く扱えなかった。
 アイツが…ラビが修行に出てから、一年目は帰ってくるのを楽しみに待っていた気がする。二年目は、帰ってくるのかと不安でしょうがなかった。三年目には諦め始めて、四年目で一切を諦めた。
 俺とアイツの道が重なることはないのだと言い聞かせて、日々の任務に身を投じる。
 生きているのかどうかも怪しかったが、ブックマンがラビ以外の新しい後継者を迎えたとも聞かない。ラビはまだあの老人のもとにいるのだろう。
 生きているのならもうそれでいい。
 俺だって日々駆り出される任務で実際に忙しかったし、五年も六年も前に別れた親友のことなんか、考えてるヒマもない。
 そうだ、時折ふと思い出すくらいで。


「ユウ!」


 突然呼ばれた名前に顔を上げる。
 この教団に、俺を名前で呼ぶやつはもういないはずなんだ。それに、この声に聞き覚えは……いや、ないと言い切れない。どことなく聞き覚えがある…誰……
「────」
 顔を上げたそこに。
 任務で疲れて帰ってきて、目がおかしいのかと思った。そんなに大した任務じゃなかったけど、そうでも思わないと、この光景は納得できない。


「ユウ久しぶり! 元気だったさ!?」



 見覚えがある。
 見覚えがあるあの赤毛。


「ラ……ビ?」


 階段で立ち止まった俺の方に、いそいそと駆けてくる、アレは。
 夢かとも思ったけど、現実だった。
 すぐそこに、あの日別れた親友。
 アイツ、生きて。


 嘘だろ。
 嘘だろなんで今さら。


 心臓が跳ねる。カァッと体温が上がる。
 手を伸ばせばすぐ届く、そんな位置にいたけれど、顔なんか見ていられない。目なんか、とてもじゃねぇが合わせらんねぇ。
 信じらんねぇ。何だコレ。


「ユウ、髪が伸びたね」


 笑った顔に、一気に競りあがる感情。
 その感情に気づいて、もうその場にいられなくなった。口許を押さえてそいつに背を向けて、振り向かないまま走り出す。
「ユウ!?」
 俺を呼び止める声は聞こえたけれど、止まってなんかやれるか。頼むから追ってくんな。顔を見たら、黙ってなんかいられない。
 塔を飛び出して、広がる森を逃げ場にした。逃げたって何にもならねぇことはわかってるけど、あれ以上アイツの……ラビの傍になんかいられなかったんだ。
 心臓が波打ってんのがわかる。走ってるせいとかじゃなくて、大体そんなもんで不整脈起こすような鍛え方してねぇし。
 追ってくる気配がなくなって、俺はやっと立ち止まり、傍らの大樹にもたれた。
 たったこれだけの距離を走っただけで息が上がっている。心臓がドクドクと鳴っている。
 目を開けていても閉じていても、浮かぶのはさっきみたアイツの姿。
「……」
 背が高くなっていた。
 肩幅がひろくなっていた。
 筋肉だってあの頃よりずっとついてて。
 声が……低くなっていて。
 だけどあの笑った顔だけは変わっていない。あの時のままだ。
「ユウ!」
「!!」
 ため息をついた途端名を呼ばれ、驚いて振り返る。気配を殺すのも上手くなったのか。
 離れようとして、腕をつかまれできず。それでもせめてもの抵抗にと顔を逸らす。
 あの頃はこんなに背が高くなかった。
「なんで逃げるんさ! オレなんか悪いことした!?」
 あの頃はこんなに低い声じゃなかった。
「関係ねぇだろ、離せよ」
「いやさ。理由聞くまで離さねぇ」
 あの頃は、こんなに力強くなかった。
「もしかして怒ってるんさ? 一度も連絡しなかったから…」
「違う、違うから……頼む、離せ」
 勘のいいお前なら、わかるんじゃねぇのか。俺、絶対に今顔赤いだろ。
「理由を言ってよユウ、オレに悪いとこあんなら直すし、謝るさ。ねぇ、こっち向いてよユウ。六年ぶりなのに」
 心臓だって、こんなに。信じらんねぇちくしょう。顔なんか……見れるわけねぇ…っ!
「い、いいから離せっ! てめェは何も悪かねぇし、か、関係ねぇだろ!」
「関係なくない! 友達じゃねーんさ!?」
 バカヤロウ。信じらんねーどうすりゃいいんだこれ以上。
「り、理由聞いて困るのはてめぇの方なんだよ!」
 自分がいちばん信じらんねぇ。なんでだよ。なんでよりによって。
「別に困んねーさ! あ、でも【嫌い】とかだとちょっと困るさ」
「バカ、逆だ!」
 勢いで振り返って、口を出た言葉に、しまったと思った。
 言うつもりじゃなかった。どう考えてもおかしいだろ。
「え、逆って……ユウ?」
 まだわかんねーのかよこの鈍感…っ!
「お前が好きだっつってんだ!」
 投げやりな言い方だ、と自分でも思う。
 まぁ仕方ねぇけどな。言うつもりはなかったし、男同士でこんなこと……拒絶されるに決まってる。
「……だから、困るっつっただろ」
 惚けたようなヤツの顔にひとつため息をついて、緩んだ腕を振り払った。
 それで我に返ったのか、背を向けようとした俺を全力で引き止めてくる。
「ユウ今のマジ!?」
 両腕を掴まれて、グイと引き寄せられる。ちょ、待て近い近い近い…!
「ねぇ、今のマジ!?」
「な、何度も言わせんな! は、離れろてめ…っ」
「じゃあオレ、ユウのこと好きって言っていいんさ!?」


 …………は?


 今何つった、コイツ。
 す……好きとか…何とか……言ったか、今?
「ユウに好きって言っていい……!?」
 何。なんでコイツ、こんな泣きそうな顔……し…て────
「────!?」
「ユウ、好き」
 今、今、今…っ、くち、くくくくくくちびる……っ!
 口唇、当たった……!?
「ラビ、おま……ッ何考えて…!」
 今、キス、した? キスしたのか?
「……ユウの言ってくれた【好き】は、違うんさ? オレはユウのこと好きだから、キスしたいって思った」
 ちが、違わねぇけど、ちょっと待て……っ!
「抱きしめたいしキスしたいし、その先だってしたいんさ。離れてた間、ずっとユウに触りたいって」
 その先!?
「ま、待て、ててて、展開が速ぇ!!」
 思わずラビの口唇を両手で塞いだ。
 なんで、と手のひらの向こうからくぐもった声。
「お、俺はついさっき自覚したばっかなんだ! こんな、さ、触ってるだけで死ぬほど恥ずかしいんだよ!」
 まさか、ラビも俺を、なんて思ってもいなかったし、いやそれどころか自分の感情を自覚して抑えるだけで精一杯だったんだ。
「あ、そーなんか。じゃあ慣れるまでオレに触って」
「!」
 ラビが、口を塞いでいた俺の手を取って握り締める。そのまま指先に口づけられて、心臓が止まるかと思った。
「ユウ……逢いたかった」
「……っ」
「ずっと好きだったんさ。さっきユウに好きだって言われた時、もう死んでもいーやって思っちゃった」
 笑う顔が眩しい。感情が違うだけで、こんなにも印象が違うなんて、知らなかった。
 コイツに逢うまで、こんな感情知らなかった。
「ラビ……」
「ユウ、そんな可愛い声で呼ばないで。またキスしちゃいそうさ」
 こんなふうに、嬉しいと思う感情なんて知らなかった。
「……キ、キスだけなら…」
 こんなに触れたいと思う恋があるなんて、きっとずっと知らずに過ごしてた。
 口唇が震える。
 それを包んでくれる温かな感触が、ラビの口唇だと解かる。
「ユウ、ちょっと口唇開けて…」
「え、あっ…?」
 抱きしめてくる腕が力強く、吐息を感じる距離に心臓が高鳴った。
 口唇を舐められる。ビクリと震えている間に侵入されて、もう何かを考えている余裕なんてあるはずもない。
「ん! ん、んッ……う」
 解かるのは、こんなこと初めて経験する俺を気遣う余裕もなさそうに口づけるラビと、何がなんだかわからずに、ラビにしがみつくしかない俺がそこにいるということ。
「ん……ラビ…」
「ユウ、もっと…キス……」
 答える暇なんかない。口唇が食われてゆく。
 離れてた間の分、隙間を埋めるように。
 気づかなかった想いの分、溢れるくらいに。
 今離れたら、もうずっと逢えないとでも言うように。
「……ラビ……離すな…」
「…うん……」
 何度も、何度も口づけを交わした────。


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