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2000.01.01

ここは個人の運営する二次創作BL小説サイトです。ご理解の上閲覧願います。また、年齢制限のある作品はそ…

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ここは個人の運営する二次創作BL小説サイトです。ご理解の上閲覧願います。
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昨日更新したSS(君に結ぶリボン)は、フォロワーさんがバニアちゃんのお洋服作ってくれたのでそのお返しだったんですけど、

日々のつぶやき 2025.06.13

ホントにすごいんですよ。手塚と跡部のユニフォーム頼んだので、原稿も落ち着いたしなんか良さげな小物探し…

日々のつぶやき

昨日更新したSS(君に結ぶリボン)は、フォロワーさんがバニアちゃんのお洋服作ってくれたのでそのお返しだったんですけど、
ホントにすごいんですよ。手塚と跡部のユニフォーム頼んだので、原稿も落ち着いたしなんか良さげな小物探したりしたいな。ラケットとか!😆

あ、新刊通販を始めています。OFFLINEのページからどうぞ。
といってもここ見とる人はおらんやろけど。

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君に結ぶリボン

NOVEL,テニプリ,塚跡 2025.06.12

#未来設定 #ラブラブ #リクエスト

 じっ……と彼の顔を見つめてみた。それは意図的なものではなく、手塚にとっては無意識のもの。 跡部の横…

NOVEL,テニプリ,塚跡

君に結ぶリボン


 じっ……と彼の顔を見つめてみた。それは意図的なものではなく、手塚にとっては無意識のもの。
 跡部の横顔が、真剣なものであったり、柔らかな表情であったり、はたまた険しいものになったりと、ころころ変わるのが不思議でしょうがない。目が離せないというのが正直なところだろう。
 跡部は、これでもかというほど一所懸命に、リボンを選んでいた。
 あれがいいか、これがいいか、それともあっちか、こっちか。
 手に取ってみては戻し、また手に取って、他のリボンと並べてみる。その真剣な表情は手塚が好きなもののうちのひとつで、こんなふうに待つ時間さえ惜しくはない。
「うーん……どっちが似合うか……」
 ぼそりと聞こえた呟きに、それは四度目だなと心の中で思う。手塚としてはなにをそんなに迷うのかさっぱり分からないが、跡部にとっては大事なことなのだろう。
「なあ手塚、どっちがいい?」
「……どちらがいいかと言われても、俺が着けるわけではないからな」
 不意に振り向かれて、手塚はひとつ瞬く。すっかり自分の世界に入り込んでいたようなのに、存在は忘れていなかったようだ。しかし、返した通り今跡部が選んでいるのは、何も手塚への贈り物ではない。かといって自分自身のためのものでもない。親しい女性にプレゼントというわけでもなかった。
 では何かと言えば、
「でも、お前がくれたあれに着けるんだから、お前の意見もあった方が」
「ぬいぐるみにリボンを着けてやるという発想がそもそも俺にはない。お前が好きなのを選べばいいと思う」
「……そうかよ」
 そう、跡部が選んでいるのは、ぬいぐるみに着けるリボンだ。
 サテンかグログランか、はたまたベルベットかジョーゼットか……などと悩んでいるようだが、手塚にはさっぱり分からない。手触りの良いものをと思っているらしく、跡部は手に取って一所懸命に選んでいる。
 ぬいぐるみにそこまでせずとも……と思ってしまうのは、今日の今までそういった文化に触れてこなかったからだろう。少し寂しげな表情に変わってしまったのはどうしてだろうと、手塚は言葉を探した。
「跡部は、昔からそうなのか? ぬいぐるみにリボンを着けるというのは」
「……そうだな。小さい頃にもらったテディベアも、名前つけたりして大事に扱っている。俺にはそれが普通だったが……もしかして引いてるか?」
「いや、そういうわけではない。知らない世界だから、物珍しく感じただけだ。不快に思ったのならすまない」
 不安そうな跡部の表情を目にして、手塚はハッとして弁明した。ぬいぐるみは幼児の玩具だなどと言うつもりはない。確かにあのぬいぐるみを選んだ時も少々躊躇ったものだが、あの時は他に手頃なものがなかったのだ。
「イギリスでは子供にテディベアを贈る風習があるからな。だからあのユキヒョウもらった時は本当にびっくりしたんだが」
「お前がいまだに大事にしてくれているのは嬉しい」
「惚れた男からのプレゼント、大事にしないわけがねえだろ」
 中学生の頃、まだ片想いだと思っていた手塚だが、多忙な跡部の癒やしになればいいと買い求めた物がある。青い目をしたふわふわのユキヒョウ。十年を経て両想いだと気づいた鈍感二名だが、いまだにそれを大事にしてくれているのはとても嬉しい。
「……待て跡部。今までも着けていたのか? リボン」
 十年も大事に持っていて、コレが初めてのおめかしというわけではないだろう。幼い頃からぬいぐるみと触れ合ってきたのならば尚更だ。手塚がそう訊ねると、さほど間を開けずに跡部は頷いて帰してきた。
「もう暑くなるからな、衣替えってわけでもねえんだけど。今まで赤いリボンだったから、少し涼しげなのがいいかと思って」
 言いながら、手に取って手触りを確かめている。ずっと青っぽい系統の色だけ手に取って見ていた理由が分かって、胸がむずがゆくなった。
 季節に合わせてリボンを替えているのだと気づいて、嬉しい反面その甲斐甲斐しさがぬいぐるみに向けられていると思うと少し面白くない。
「衣替えまでしてやるとは、ずいぶんとご執心だな」
「アーン? てめェにもらったもんなんだからとうぜ……おい待て手塚、なんだ今の」
 返す途中で違和感に気づいた跡部が、くるりと振り向く。それとほぼ同時に、手塚は時分の口許に手を当てた。
 なんだ今の、と言いたいのは手塚の方である。この胸のモヤモヤはいったいなんだろう。分からなくて首を傾げれば、今度は跡部が口許を押さえて項垂れた。
「跡部?」
「こ、こういう時どういう顔したらいいか分かんねーな……」
「なんだ、いったい」
「お前、それ、ヤキモチだろ」
 上目遣いで、躊躇いがちに告げてくる。正直そのアングルは勘弁してほしいのだが、発言の方が気にかかった。
「…………………………そんなわけないだろう」
「考え込むくらいの余地はありそうだが?」
 そう言いながら跡部が笑う。事実、まったく的外れではないような気さえしている手塚は何も言い返せなかった。
「俺がお前より大事にするもんなんてねえんだから、妬くことねえだろ。なんならお前にもリボン選ぶか?」
「いらん、結構だ」
「……なら、お前が俺に着けるリボンを選ぶのは」
 そう言って、跡部は白いリボンをそっと引いて取る。手塚はぱちっとひとつ瞬いて、なるほどと頷くように今度はゆっくり瞬いた。
「リボンを上手く結ぶ自信はないが、お前に似合う色を探すのは楽しいな」
 こういう感覚なのかと、手塚も素材違いの白いリボンを手に取る。大切なものに、特別な装いをさせたいという跡部の気持ちがよく分かった。
 あれがいいか、これがいいか、それともあっち。
 しかしよく考えたらどこに結べばいいのだろう。ユキヒョウのように首にだろうかと想像してみて、そんな倒錯的な趣味はないと首を振る。では髪にだろうかと想像したが、どうやっても上手く結べるわけがない。
 色も素材も悩むが、どこにというのを考えて手塚は意外にも一所懸命選ぶ羽目になってしまう。そんな手塚の横で、跡部も楽しそうにリボンを選んでいる。鼻歌まで歌い出しそうな雰囲気に、ご機嫌だなと胸が温かくなるのを感じた。
 そうして、ふと彼の左手が目に入る。
 ゆっくりと瞬いて、考えて、純白のサテンリボンのスプールを手に取った。細かい刺繍がなされていて、他のと比べると若干値段が高い。まあそんなことはどうでもよくて、彼に似合うかどうかの方が重要だ。
 手塚はスプールごと跡部に向けて、ほんの少し引き出したリボンを合わせてみる。
「……うん」
 これがいいと頷くと、跡部が気がついて振り向いた。
「決めたのか? ふふ、真っ白とは意外だったぜ。一緒に会計するか」
 跡部もユキヒョウに着ける青いリボンが決まったのか、スプールを手にしている。量り売りのため店員に切ってもらう必要があるようだが、会計は別にしたい。
「これは俺がお前に着けるのだから、俺が払う」
「そんな高ぇもんでもねえのに。まあいい、ひとまず切ってもらおうぜ」
 そうして欲しい長さだけを切ってもらい、無事にリボンを購入することができた。店を出てすぐ、跡部が訊ねてくる。
「白って、なんでだ? まあ俺様なら何色でも似合うだろうが」
「いちばんふさわしいと思ったんだ。あとでお前に着けてもいいか?」
「ああ、帰ったらな? ……ていうかどこに着けんだ」
 結んでくれるつもりがあったのかと若干驚いた顔をしながらも、跡部は快諾してくれる。選べと言ったのはお前の方だろうと思いつつ、手塚は告げた。
「左手の薬指」
「…………ひだりてのくすりゆび……」
 ぽかんとした顔で、ゆっくりと手塚の言葉をなぞる。そして〝ひだりてのくすりゆび〟を見つめ、ボッと顔を赤らめた。どうやら意味は正しく理解してくれたようで、言葉が継げなくなっている。
「いいか? 跡部」
「……てめ、そういう、大事なことを、さらっと……!」
 キッと潤みかけた目で睨まれたが、見つめ返したらコクンと頷いてくれた。
 その後仕返しのように宝飾店に引っ張っていかれたのは言うまでもない。


#未来設定 #ラブラブ #リクエスト
フォロワーさんへの捧げ物

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朗読劇の先行、キャストFCの結果出る前にオフィシャル先行あんのエグい……(申込みました😋)

日々のつぶやき

朗読劇の先行、キャストFCの結果出る前にオフィシャル先行あんのエグい……(申込みました😋)

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塚跡オンリーの入稿終わったーーーー!

日々のつぶやき 2025.05.24

#新刊 #原稿進捗

70冊目の塚跡だ~!(画像省略)#新刊 #原稿進捗

日々のつぶやき

塚跡オンリーの入稿終わったーーーー!
70冊目の塚跡だ~!
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#新刊 #原稿進捗

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色付いた桃色の頬

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.10

#お題 #両想い

 手塚と付き合うことになった。 跡部景吾が、脈絡なくそう報告してきたのは、昼食後のティータイムの時だ…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

色付いた桃色の頬

 手塚と付き合うことになった。
 跡部景吾が、脈絡なくそう報告してきたのは、昼食後のティータイムの時だった。
 忍足の傾いたカップから、ポタタと紅茶が逃げていく。
「忍足、カップ」
 それに気づいた滝が、優雅に自分のカップを口許に運びながら指摘してやる。ハッとして、忍足は慌ててカップの傾きを直した。
「なんで驚いてへんの、自分……知ってたん?」
「いや、知らなかったよ、今の今まで。これでも驚いてるんだけど」
「よう言うわぁ……」
 そんな素振り見せもせんと、と忍足は困ったように片眉を上げた。
「そんで? なんでいきなりそないな話になってんねん、跡部」
「俺がアイツに告白したからだぜ」
 訊ねかけた忍足に、跡部はまるでなんでもないように返してきた。簡潔に状況を報告されたが、簡潔過ぎて何が起こったのか分からない。
 跡部が、手塚に告白したのは分かった。手塚がそれを受け入れて、恋人としての交際が始まったらしいことも。
「お前らには俺の気持ち知られてたから、一応報告をと思ってな。相談にも乗ってくれただろ」
 律儀な男だ、と忍足は思う。
 正直、跡部が手塚のことを好きなのは公然の秘密だったのだ。それを知らないのは本人だけで、当然のように暗黙のルールで箝口令がしかれていた。
 誕生日に何か贈りたいと相談された時に、手塚が好きなのだとちゃんと跡部本人から聞いたし、それならと乗っただけだったのだが。
 そういう律儀なところを、滝も気に入っているようで、カチャリとカップをソーサーに置いて呟く。
「報告してくれてありがとう、景吾くん。よかったね。初恋は実らないって言うけど、あれやっぱり噓だ」
「…………ああ、そうみてえだな。俺のが叶ったところをみるに」
「おめでとさん、跡部。玉砕覚悟で告白したんか?」
 跡部は秘めるつもりなのかと思っていたが、予想が外れてしまった。それとも、やはりどこかから情報が漏れてしまったのだろうか。
「言うつもりはなかったんだがな……。アイツが不用意に俺を浮かれさせやがるから」
「ははーん、分かった。お前とテニスをするのは楽しいとでも言われたんでしょ。昨日も手塚としてきたんだよね、テニス」
 跡部が、珍しく言葉に詰まったようだった。どうも図星らしく、ほんのりと頬が染まっている。
 それで嬉しくなって、浮かれて、ついうっかり告白してしまったということか。
 跡部もまだまだやなあと、忍足は肩を竦める。
 景吾くん可愛いなあと、滝はテーブルに頬杖をつく。
「でも、そこで付き合うことになったって、かなり急展開だよね。もしかして、手塚もずっと景吾くんが好きだったんじゃない?」
「その可能性は高いわなぁ。普通やったら、同性に告白されてそのままお付き合いなんて、ないで」
 いくら親しい友人を無下にできないと思っても、いきなり交際に発展はしないだろう。いや、親しいからこそ優しさだけでは受け入れられないと、手塚ならば正直に言うはずだ。
「ああ、どうもそうだったらしくてな。こんなことになるとは思ってなかったが」
 桃色に色付く頬と、柔らかく上がった口の端は、とても氷帝テニス部員二百人を束ねる部長とは思えないほど、可愛らしい。
 滝は思わずスマートフォンを取り出し、カメラを跡部に向ける。
「何撮ってんだ萩之介」
「あ、待って景吾くん、そのまま。うん、いい感じに撮れた。忍足、手塚のID知ってる?」
「知っとるわけないやんけ……」
「そうか……なら仕方ないから景吾くんに送ろう。それ手塚にもあげなよ。景吾くんが照れてる顔、すごく可愛いから」
「なっ……」
 絶句する跡部を他所に、滝は操作を終える。跡部の端末が震えて、受信を報せた。バッと端末を持ち上げて確認した跡部は、メッセージに添えられた写真を見てふるふると震えた。
「ふ、ふざけてんのか、こんなもん削除するに決まってんだろうが! あと可愛くもねえ!」
「えぇ……だって俺たちが知ってる景吾くんの照れ顔を、手塚が知らないなんてこと、やだよねえ。恨まれそうだし。恋人でしょ?」
「こっ、こいび……、そ、そういうもんなのか……?」
 即座に削除しかける跡部を、滝はうまく丸め込む。忍足も、それに参戦した。
「逆の立場で考えたらええんとちゃう? 手塚のかっこええ顔とか、俺らだけが知ってて跡部が知らんとか、そんなん嫌やろ……」
「う……ま、まあ……そうだな、そうか……そういうもんなのか……」
 ちょろい、と二人は声には出さずに視線だけで意見を交わす。手塚がかかわると氷帝のキングも形無しだなと肩を竦めた。
「手塚が……見たいって言ったら……見せてみるぜ」
 困ったように、恥ずかしそうに、嬉しそうに小首を傾げる姿は、やっぱり可愛らしかった。


お題:リライト様 /色付いた桃色の頬
#お題 #両想い

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…分かれよ、ばか

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.09

#お題 #両想い

「跡部」 手塚の声が聞こえる。だけど跡部は、それに応えることができないでいた。「跡部、大丈夫か?」 …

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

…分かれよ、ばか

「跡部」
 手塚の声が聞こえる。だけど跡部は、それに応えることができないでいた。
「跡部、大丈夫か?」
 大丈夫じゃない、と応えることもできない。体中がギシギシと痛んで、声を出すことすらままならないのだ。
 まさか、こんなに大変な行為だとは、思ってもみなかった。
 つい先ほど、手塚と初めて肌を合わせた。
 お互いが合意の上の行為だ、特に誰が悪いというわけでもないのだが、こんなに痛いと誰かを責めたくもなる。その相手は主に、手塚だ。
「すまない、無理をさせたとは思うが……」
「体中、いてぇ……がっつきやがって」
「抑えられなかったんだ。まさかあんなに色っぽいとは思っていなかった」
 ぐっと言葉に詰まった。自分はどんな醜態をさらしたのかと思うと恥ずかしくてしょうがないが、手塚がそう言うのならよしとしておこう。
「本当にすまない。体を拭くから、腕を」
「……いい、自分でやる。ちょっとマシになってきた」
 だが、と心配そうな手塚から濡れたタオルを分捕って、怠い体をどうにか起こした。
「今俺の体に触るんじゃねえ……」
 それでも手を貸そうとする手塚を睨みつけて、跡部はそっぽを向く。
 余韻の冷めないこの状況で手塚に触れられたら、おかしなことになってしまう。体の悲鳴も聞かずに、再び体を重ねることになるはずだ。
「……分かれよ、ばか」
 そんな跡部の小さな呟きを、手塚はどう受け止めただろうか。


お題:リライト様 /「……分かれよ、ばか」
#お題 #両想い

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小さな意思表示

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.08

#お題 #両想い

 手塚からのキスにも、少し慣れてきた。触れるだけのものが深いキスに進展したのは、先々週のことだ。 手…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

小さな意思表示

 手塚からのキスにも、少し慣れてきた。触れるだけのものが深いキスに進展したのは、先々週のことだ。
 手塚からのアクションは、『跡部』と名前を呼ぶことから始まる。それは意図してなのか、無意識なのかは分からないが、少なくとも跡部は嬉しく思っていた。
「跡部、キスをしてもいいか?」
 ただ、脈絡がないのはいつも通りで、あまり心の準備というものができない。
「ん、いいぜ。ほら」
 それでも跡部は、なんでもないように目を閉じて、唇を突き出してやるのだ。本当は心臓をバクバクと鳴らしているいるというのに。
 唇が触れてくる。優しく押しつけられるだけだったそれは、徐々に意思を持って跡部の唇を食(は)み始め、促すように舌先で舐めてくる。
 うっすらと開いた唇をこじ開けるように、舌が入り込んでくる。びくりと肩が揺れて、あやすように撫でられるのも、何度目だろうか。
 子ども扱いされているようで腹が立つ反面、気にかけてくれているのだと思うと、嬉しくてしょうがない。
「んっ……」
 絡んだ舌を吸い上げられて、びくびくと腰が揺れて、疼く。解放されたかと思った舌はすぐにまた捕らわれて、きつく絡め直された。
 正直、手塚がこんなふうに求めてくるとは想像していなかった。こういうことには鈍く、奥手だと思っていたのに、騙されたような気にさえなる。
「ん、ん……」
 それを本人に言ったこともあるが、手塚自身「俺も驚いている」と言っていたくらいだ、想定外なのだろう。
 リードするつもりがリードされっぱなしで、落ち着かない。
 だけど、これに不満があるわけではなかった。
 恋人なのだし、肉体的な触れ合いをしたがるのは当然のことだ。ネットで知識だけは頭に入れたし、手塚が先に進みたいと望むのなら、受け入れる心の準備はできている。
 体の準備はできていないが、それはこれから二人でやっていけばいいだろう。何も、初めてで最後までする必要はない。……手塚さえ問題なければ。
 跡部は、キスを受けながらゆっくりと目蓋を持ち上げる。そうしたら、ばちりと手塚の視線と出逢ってしまって驚く。
 まさかとは思うが、今までずっとそうやって見られていたのだろうか。
 恥ずかしくて目を閉じたいのに、鳶色の瞳に捕らえられてそれも叶わない。
 ドキン、ドキン、と胸が鳴る。
 唇がほんの少し離れた隙に、「てづか」と名を呼んで、わずかに震える指先で、学ランのボタンに触れてみる。
 それをひとつ、外してみた。
 腰をぎゅっと強く抱き直されたのは、伝わったとみていいのだろうか?
 キスがもっと深くなって、訊くことはできなかった。



お題:リライト様 /小さな意思表示
#お題 #両想い

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本当はうれしいけど

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.07

#お題 #両想い

 じっと見つめてくるものがあった。 視線というものには慣れていたけれど、相手が相手だとどうにも落ち着…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

本当はうれしいけど

 じっと見つめてくるものがあった。
 視線というものには慣れていたけれど、相手が相手だとどうにも落ち着かない。
 跡部はパタンと本を閉じて、短くため息をついた。
「なんだ、手塚。俺様の顔に何かついてるか?」
 視線の主は、手塚国光。
 どこでどうなってこうなったか分からないが、〝恋人〟の視線、である。
 声をかけられて初めて気がついたように、手塚はハッとして顔を上げる。
「すまない、不愉快だっただろうか」
 気まずそうに背けられる顔は、ほんのりと赤いように見える。
 まあ、跡部としても、恋人からの熱視線が嬉しくないわけはない。ふっと口許を緩め、背けた手塚の顔を指先でこちらに向けさせた。
「お前の視線が嬉しくねえわけねえだろ? アーン?」
 そのまま唇へとキスを贈り、小さなスキンシップ。
 まだこの距離感と感触には慣れないが、恋人としてはおかしくないはずだ。
「で? なんでそんなに見つめてたんだ。穴が開くぜ」
「開くわけないだろう。もったいない」
「わけ分かんねえこと言うな。もったいないってなんだよ」
「言葉のままだが」
 その言葉の意味が分からないから訊いているのに、と跡部は指先で額を押さえる。恋人ではありながら、時々手塚のことが分からない。
 いや、訂正しよう。
 手塚のことはいつも分からなくて、時々理解できる、程度だ。
 どうして、こんな分かりにくい男と恋人関係になってしまったんだ? と首を傾げる。
 好意があるのは前提なのだが、キスまでするような仲になるとは思っていなかった。その先はまだ経験していないが、いずれは肌の感触を知ることにもなるのだろう。
 だが、こんなふうに意思の疎通ができないような状態のままで、この関係は成り立つのか。
 恋人関係にしても、友人関係にしても、互いの尊重なくして良好なものは築けない。意思を確認するのは大切なことだ。
 どんな気持ちでこうするのか、どんな感情でそうするのか、それは知っておきたい。
 跡部は深呼吸をして、じっと手塚の瞳を見つめ返してみた。
「もったいないってのは、俺の顔に穴とか開いたりすんのがってことか? まあ実際そんなことは起きねえんだが。傷とかついたりするのも?」
「そうだな。跡部は綺麗な顔をしているとずっと思っていたから、傷などついてほしくない」
 至極真面目な顔で頷かれて、面食らう。まさかそんなふうに思われていたなんて。しかも〝ずっと〟とは、いったいいつからなのか。
「褒められるのは気分がいいが、いつからそういうふうに見てたんだ、俺のこと」
「……関東大会の試合後、……いや、試合中かもしれないな。不謹慎かもしれないが。気づいたのは終わった後だったから、その辺は少し曖昧だ」
「なっ……」
 そんな時からなのか。
 気づかなかった自分が悔しい。いや、視線は感じていたかもしれないが、テニスをしているからだと思っていた。あの手塚国光からそういう秋波を送られていたのに、好きだと言われるまで一切気づかなかったなんて。
 そうだ、恋人関係になったのは手塚が好きだと言ってきたからだ。
 だが好きだと言うだけで、何も望んでこない。見かねて、『付き合うか?』と助け船を出してやったのが始まりだった。
 もっとも、すぐにそんな言葉が出てくるあたり、跡部も手塚が好きだったのだろうと思うけれど。
「跡部を、こんなに近くで見られることになるとは思っていなかったから、無意識にお前を見つめてしまっていたんだと思う。キスができるのも……嬉しい」
 先ほど跡部の唇が触れた場所を、そっと指先でなぞる。きゅんと胸が締めつけられた。本当に好かれているのだなと思うと、こちらの方こそ愛しさがこみ上げてくる。
「もっと近くで見るか? ん?」
 だけど今イチ素直になりきれずに、からかうように手塚の顔を下から覗き込んでみる。本当は嬉しいのに、そう言ってやれないのが情けない。
「近すぎると思うが」
「我が儘言うな」
「我が儘を言っているわけでなく、お前の身が危険だと言っている」
「は? ……っ」
 そっと肩を押しやられ、一秒あとにその意味を把握した。ボッと頬が真っ赤に染まる。からかったつもりが、返り討ちに遭った気分だった。
「お、まえ、そういう欲、あんのか」
「ないと思うのか?」
 ぐっと言葉に詰まる。
 さすがに、ないとは思っていなかったが、ここまで積極的だとも思っていなかった。
 たとえ受け身であろうとも、どうせリードするのは自分の方だろうと思っていただけに、手塚からのアクションには心の準備ができていない。
「そう警戒しなくても、お前の気持ちを無視してコトを進めるつもりはない。嫌なら嫌と言ってくれ」
 身を強張らせた跡部に気づいてか、肩からそっと手を離して手のひらを向けてくる。合意もなく手を出すつもりはないという意思表示なのだろう。
「い、嫌ではねえよ、別に。ちょっとびっくりしただけだぜ。悪い、まだ……そういうことを具体的には考えてなくてな」
「そうか。関係を急ぐつもりはないが、徐々にその……そういうこともできたらと思っている」
 ソファの上にあった手をすっと持ち上げられ、きゅっと握りしめられる。ドキンドキンと胸が鳴って、手塚の顔をまともに見られなくなった。
「好きだ、跡部」
 指先に口づけられて、顔の熱がさらに上がる。らしくないことをするじゃないかと、ゆでだこのようになりそうだった。
「ふ、フン、俺様がその気になるように、せいぜい頑張って口説いてみせな」
「ああ、そうさせてもらう。跡部、少しだけ……抱きしめさせてもらってもいいだろうか」
 それ以上は何もしないからと付け加えられて、跡部は右へ左へと視線を泳がせてから、こくりと頷いてみた。
 手塚の腕が伸びてくる。抱き寄せられて、わずかに体が強張ったけれど、手塚は構わずにそのまま腕の中に収めてしまった。
 ぎゅ、と強く抱きしめられる。
 制服越しの体温にドキドキして、心音が酷くうるさい。これでは気づかれてしまうのではないだろうか。
 本当は嬉しいのに、少しも素直に伝えられていないことを。
 いつもはリードするばかりで、リードされるということがなかったせいなのだろう。手塚が積極的であることは嬉しい。もう少し素直になれる心の準備が整ったら、嬉しいと言ってみようか。
 それとも、キスで応えてやった方がいいのだろうか?
 今はまだ、そっと背中に腕を回して抱き返すしか、できそうにないけれど。


お題:リライト様 /本当はうれしいけど
#お題 #両想い

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あ、メールが来た

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.06

#お題 #片想い

 最近、気になる人物がいる。 机で読書をしながら、ちらりとスマホに目をやった。 今日はまだ何も連絡が…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

あ、メールが来た

 最近、気になる人物がいる。
 机で読書をしながら、ちらりとスマホに目をやった。
 今日はまだ何も連絡がないな……なんて残念に思ってしまうくらいには、相手のことが気になっている。
 そもそも今読んでいる本も、彼に勧められた本だ。一度読み終わったのに、また最初から読んでしまうのは、感想を聞かれたときちゃんと答えたいからだ。
 どうしてそんなふうに思うのだろう。
 手塚国光にとって、跡部景吾は一目置く他校のテニスプレイヤー。
 それだけのはずだった。
 実力主義の氷帝学園で、一年の頃から部長を務めているということで、強さは理解していたが、それを実感したのは三年になった夏の関東大会。それまでは一戦も試合をしたことがなかった相手だ。
 戦略としてはセオリーなものだと思いつつ、相手の弱点ばかりを狙うというのは、あまり好きになれなかった。
 にもかかわらず、現在跡部に対して好感を持っているのはどういうことだろう。
 いやどういうことも何も、あの日の試合が認識を改めさせるきっかけだったというしかないのだが。
 持久戦を得意としているとは聞いていたから、一試合保つだけの体力はあるだろうと思っていた。それでも今まで実力の半分も出していないのだろうことも。
 だけど自分との一戦、あれだけは驕りも意地も捨てて、ただがむしゃらに向かってきてくれた。自分と同じほどの熱量で返される球を打つのがとても楽しかったのだと、終わった後に感じた。
 ある時、向こうからテニスに誘われ、一も二もなく頷いた。あの日の試合を再現できるとは思わなかったが、彼とのテニスを楽しみにしている自分にはちゃんと気がついていた。
 世間話を交えて話してみると、案外に共通していることがあるのだと知った。
 釣りをすること、読書を好んでいること。部を率いていた長としての苦労話や、もっとできただろう挑戦、これから何をしてやれるかという話は、とても有意義だった。
 それから、急速に距離が近づいた。
 跡部といるのは心地がいい。
 何も気負わず、ただありのままの自分でいられるような気がした。目標などない、ただ高みを目指しているだけだと言っても、笑うことなく「奇遇だな、俺もだ」なんて返してくるのは、跡部くらいだろう。
 だから、そんな彼と一緒の時間が増えるのは嬉しかった。放課後にテニスをするのも、休日に読書を楽しむのも、少し遠出して釣りをするのも、本当に楽しい。
 顔には一切出ないかもしれないが、そう思っているのは本当だ。
 ここ最近は、彼から連絡が来るのを心待ちにしてしまっている。
 自分からすればいいものをと思うが、なんとなく気恥ずかしい。向こうもそれを気にしている様子はなく、いつも、いつも、跡部からのアクションになってしまうのだ。
 なぜ、こんなにも待ち遠しいのだろうか。
 今までは読書をする時、他の何かが気に掛かるといったことはなかった。だけど今は、跡部からの連絡がないかとスマホを常に目の届くところに置いてしまう。もちろんマナーモードにしているから、他人に迷惑をかけることはないのだが、どうにもむずかゆい。
「手塚、これ。借りてたDVD――あ、すまない、邪魔したかな」
 大石に声をかけられて、ハッとして顔を上げた。手塚は本にしおりを挟んでぱたりと閉じた。そういえばこのしおりも跡部にもらったものだなと思い出して、胸の辺りが温かくなった。
「いや、構わない。放課後でも良かったんだが」
 大石に貸していた、古い全英の試合を収めたDVDを受け取り、そういえばしばらく観ていないなと気がつく。帰ったら久しぶりに観てみようかとカバンにしまった。
「いや、でも手塚、最近ずっと用事があるみたいだったから、早めにと思って。……あれ、違ったかい?」
「……ああ、まあ、そうなんだが」
 大石の言うように、最近はずっと跡部と逢っている。毎日とは言わないが、三日と空かない。だからこそ、今日はどうするんだろうと連絡を待ってしまうのだ。下手に予定を入れられない。
 入る予定らしきものもないし、先に決めたものを優先するべきなのだから、気にせずいればいいのに、それでも待ってしまう。
「今日は特に何も予定は――」
 ない、と言い掛けたその時、スマートフォンがメッセージの受信を報せてヴーと震えた。手塚は慌てて端末を持ち上げ、画面を確認する。
 送信者は、跡部景吾。
『今日、どうする? 逢えるか?』
 簡潔ではあるものの、だからこそ至極単純に、嬉しい。彼の予定の中に、自分と過ごす時間が組み込まれていることが。
 口許が緩む。
 たったこれだけのメッセージが、こんなにも胸をそわそわさせるなんて、自分は本当に、いったいどうしてしまったのだろう。
 早く放課後にならないか。そんなことを思って、返信を打ち込む。
「……手塚、そんなに嬉しそうに笑うこともあるんだな。ちょっとびっくりした。あ、もしかしてそれ、好きな人からとかかい?」
「――え?」
 大石の存在が、すっぽり頭から抜け落ちてしまっていたことに、声をかけられてから気づく。
 そしてそれ以上に、その言葉が衝撃的だった。
「それとも、恋人かな」
「え、あ、いや、違……そんな、ものでは」
 思わず、メッセージが送られてきた画面を振り向き直す。跡部とのトーク履歴に、胸が鳴った。
 好きな人、恋人――……恋?
 すうっと、何かが駆け上ってきたような感覚を味わう。そんなわけはないのに、それがとてもしっくりきてしまった。
「あ」
 動揺して、送信の飛行機マークを押してしまった。
『逢いたい』
 とだけ入力していた、そのメッセージを。
 ガタリと腰を上げて、慌てて削除しようとしたものの、一瞬で既読の印がついてしまってがっくりと項垂れた。
 どう思われるだろう。跡部の反応が怖いけれど、訂正する気はもうなかった。
「ああ、なるほど……そういうことか……」
 手塚は椅子に腰を掛け直し、長く息を吐いた。
「て、手塚? どうしたんだい、何か悪いこと聞いたのかな、俺」
「いや、大石のおかげで気づくことができた。感謝する」
 項垂れたことで、何か良くないことでも起こったのかと心配した大石に、ふるふると首を振って返した。
 ここ数日の、そわそわした気分。跡部が勧めてくれた本を大事に読み返してしまう行動。ずっとずっと跡部のことを考えてしまう理由。
 たった一通のメッセージと、大石の問いかけ。
 それだけで、世界が変わってしまった。
「どうやら俺は、コイツのことが好きらしい」
 画面を撫でると、ちょうど返信が入ってくる。『そっち、行く』と、またも短いものだったが、いつもと違って時間と場所を指定するものではなかった。『逢いたい』と送ったメッセージを、どういうふうに受け取ったのかは分からないが、不快ではなさそうでホッとした。
 少なくとも、逢える。望んだ通りにだ。
 さてこの恋は、告げるべきか、秘めるべきか。
 それは、顔を見てから決めようと思う。


お題:リライト様 /あ、メールが来た
#お題 #片想い

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