No.188, No.187, No.186, No.185, No.184, No.183, No.1827件]

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Saphirのヒカリ-001-

その他ウェブ再録 2013.12.29

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録

 最近、気づいたひとつのことがある。 それは、目覚めるといつも恋人の指に自身の髪が絡んでいることだ。…

その他ウェブ再録

Saphirのヒカリ-001-

 最近、気づいたひとつのことがある。
 それは、目覚めるといつも恋人の指に自身の髪が絡んでいることだ。腕を枕にして眠っても頭を抱えられているし、背中を向けて眠ってもなぜか彼の指は髪を絡めている。
 別に不快な感覚はない。むしろその指先が触れているから、ひとりの時より深く寝入ることができると自覚していた。
 イクスアインは目蓋を閉じ、恋人の体温をもう一度確認してから目蓋を持ち上げる。まだ眠っている彼を起こさないようにゆっくりと体を起こし、脱ぎ捨ててあったシャツを羽織ってベッドを降りる。
 ん、と少し寒そうに身じろいだ男を見下ろして笑い、ブランケットを肩まで引き上げてやった。
 気怠い体で身支度を整え、彼の触れていた髪を指で梳いて整える。
 そうしてから、すぅすぅと寝息を立てる彼へと手を伸ばした。
「―ハーノイン、ハーノ。起きろ」
 軍人がこんなに無防備に深く寝入っていいものかと思うが、そこは自分がいるから安堵できるのだと少しだけ自惚れておこう。
「ん……? なにイクス、もう戻るのか?」
 揺り起こした相手は眠そうに目をこすりながらもベッドの上で体を起こした。まだ起床時刻ではないことには申し訳ないと思うが、出ていく時には起こせと言うのは彼の方だ。
「ああ、今なら人目にはつかないからな」
「泊まっていけばいいって、いつも言ってんのに」
「馬鹿、こんな狭いとこに泊まるなど、見つかったら言い訳のしようがないだろう!」
 これももう、何度したやり取りだろうか。
 ハーノインとは、幼なじみであり、カルルスタイン機関の同期でもあり、それと同時に恋人でもあった。
 体を重ねながらも絶対に朝をこの部屋で迎えないのは、ひとえに内密の関係だからだ。もう少し広い部屋ならまだしも、ベッドとデスクを置いてしまえばそれまでというくらいの面積では、二人でいるには狭い。さらに言えば、イクスアインの部屋は隣だ。そこまで歩くのが困難という言い訳もできない。
「ま、しょーがないか。俺だって、バレてお前が変な目で見られるのは嫌だからな」
 ハーノインが、ベッドの上から腕を伸ばしてくる。それに招かれて、イクスアインは腰を折って身を寄せた。そうやって口唇が重なるのもいつものこと。
 そんな時にもハーノインの指先は髪をいじっていることに気づいて、思わずおかしくなってしまった。
「なんだよ?」
「いや、別に」
 軽い挨拶程度に済ませ、朝の触れ合いを終える。もう部屋を出なければ、早い者は起き出して廊下を歩いていてもおかしくないのだ。
「イクス、街行くんだったら起こして。俺も一緒に行くから」
「また寝るつもりか。たまにはそのまま起きててみろ」
「やーだ、ねみい」
 ハハハと笑って、ハーノインはまたベッドに横たわってしまう。有事でない時くらい規則正しい生活を心がけろと言ってやりたいが、彼にとってはそれが規則正しいのかもしれない。
 イクスアインはため息を吐き、踵を返す。
「おやすみ、イクス」
「……ああ、おやすみハーノ」
 眠そうな声にそう返して、扉越しに通路の様子を窺ってからドアを開けた。足早に自分の部屋へ向かい、やっと一息つく。
 時刻は〇六〇三。起床までもう少しあるが、ハーノインのように眠ってしまうことはできない。しかし体は休息を求めていて、イクスアインは仕方なくベッドに体を横たえた。こうしているだけでも疲れは取れるだろうと、セットしたアラームを確認して目蓋を伏せる。
 起床まで一時間。疲れた体と、正反対に幸福な気持ちを反芻するこの時間は、決して嫌いなものではなかった。
 ほんの少し―寂しさと不安があることを除いてしまえば。


#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録

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Saphirのヒカリ

NOVEL,その他ジャンル,その他ウェブ再録 2013.12.29

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録

(画像省略)【あらすじ】恋人同士ではあるが、お互いにどれだけの想いを持っているのか悩むイクスアイン。…

NOVEL,その他ジャンル,その他ウェブ再録

Saphirのヒカリ
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【あらすじ】
恋人同士ではあるが、お互いにどれだけの想いを持っているのか悩むイクスアイン。休日、街へ出かけたそこで見たものは――。

2013/12/29
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#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録

この世界のどこかで

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜 2013.11.21

18歳以上ですか? yes/no

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜

この世界のどこかで

18歳以上ですか? yes/no

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見え透いた甘い罠

NOVEL,その他ジャンル 2013.11.11

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ポッキーの日

「イクス、ポッキーゲームって知ってる?」着替えを終えて待機室に入るなり、ハーノインは突拍子もないこと…

NOVEL,その他ジャンル

見え透いた甘い罠



「イクス、ポッキーゲームって知ってる?」

着替えを終えて待機室に入るなり、ハーノインは突拍子もないことを口にする。先に着いてドリンクを飲んでいたイクスアインは、またおかしなことを言い出した、とばかりに片眉を上げ、ハーノインを見やった。

「ポッキーゲーム?」
「そうそう、この間アドレス交換したコがさー、なんか友達とのパーティで盛り上がったんだってさ」

隣の椅子に腰をかけるハーノインの言葉を一言一句漏らさず耳に入れ、イクスアインは眉を寄せた。ハーノ、と咎めるために名を呼んだら、イクスアインの思惑とは異なる解釈をして彼は笑う。

「あっれ、イクス、やきもち?」
「そんなわけあるか」

わざわざ身を寄せてのぞき込んでくるハーノインをギロリと睨み返し、一蹴してみせた。

「軍人が、気安く個人情報を他人に教えるものではない。どうせお前のことだ、一度しか逢わない予定の女性なんだろう」

ハーノインの交友関係が広いのは知っている。どれだけ深いのかまでは知りたくもないが、言及してやれる間柄にはいる。自分がいるのになんて言うつもりはないが、軽々しくつきあいを広めるのも問題があるとイクスアインは思うのだ。

「まーたお前は、そうやって俺のことロクデナシみたいに言う。心配しなくても、アドレスはちゃんと使い分けてるって。どうでもいい方でね」
「充分ロクデナシだ、貴様は」

こんな男に引っかかる女性も女性で問題がある、と口には出さずに眼鏡を押し上げる。口に出せないのは、単に批判だからというわけでなく、自身を棚に上げてしまうことになるからである。

「それで……ポッキーゲームがどうしたっていうんだ、ハーノ」
「あーそうそう、やってみない?」
「え?」
「ちょうどクーフィアが食ってたからさぁ~、分捕ってきたんだよね」

そう言ってハーノインは指先で摘んだポッキーとやらをふりふりと振ってみせる。人のものを奪うのもどうかと思うが、とイクスアインは不審そうな目を向けた。

「そんなもの、どうするんだ? 食べるのか?」

菓子の好きなクーフィアが美味しそうに食べているところは幾度か見かけたことがあるが、イクスアインはそれを食べたことがない。まずくはないだろうが、そもそも食べ物を使ってゲームなど不謹慎な気もする。

「そう、イクスと俺が、こう……端っこから食べてくの」
「なに? 二人で一本? おかしくないか」
「おかしくないんだって。怖じ気付いて食べなかったり、途中で折ったら負けらしいよ。なあ、しない?」

両端から二人で食べるゲームで、止まったり折ったりしてはいけないということは、つまり。

「……ハーノ……」

イクスアインは呆れ果てて、盛大にため息を吐く。額に手を当て、多少大袈裟に首を横に振った。

「魂胆が見え透いているぞ? 仮にも軍人が」
「おいおい仮にもってなに」

伏せていた目蓋を持ち上げ、イクスアインはゆっくりとハーノインを見やる。ハーノインもそれに気が付き、視線を絡め合わせた。

「私とキスをしたいなら素直にそう言えばいい」
「――はは、バレてた?」

ひとつのものを両端から食べ合うということは、やがては口唇同士が触れ合うわけで、恐らくそれが最終目的のゲームなのだろう。

「さすがにイクスは察しがいいな。泣けてくるよ」
「お前が隠さないだけだろう?」

仕方のない奴だと、肩を落とす。いったいいつから、そんな彼をも愛しいと思うようになってしまったのだろう。長く一緒に居すぎた延長の感情だとしても、触れる熱は本物だ。

「せっかくだし、やる?」
「つきあってやってもいいが、明日は買い物の荷物持ちをしてもらうぞ」

適当な理由をつけて、肩を抱いてくるハーノインに身を預ける。せっかくクーフィアから分捕ーーもらってきたのだ、粗末にするにはもったいない。

「ほい」
「ん」

ハーノインの摘んだポッキーが、イクスアインの口へと運ばれ、イクスアインはそれを素直に受け取った。そのもう一方の端を、ハーノインがくわえる。視線を交わしたその瞬間が合図で、口唇で挟みながらゆっくりとかみ砕いていく。
相手がどこまできているか確認するために、目は開けておかなければならない。なるほど普通にするキスとはまた違った趣だ。
カシュカシュと硬い音が耳に響き、歯が振動を伝える。チョコレートの甘い匂いが口の中いっぱいに充満し、気分まで甘ったるくなった。
もうすぐ口唇同士が出逢う。何度も触れてきた口唇だが、やり方ひとつで心臓の跳ね方が変わるのだと、改めて知った。
互いの間にあったポッキーがなくなり、ついに触れ合う口唇。ハーノインの舌がイクスアインの口唇を舐め、思わず肩が揺れた。

「イクスの口、甘い」
「当然だろ、こんな甘いの食べたら……」

しかしゲームにはならないなと呟くと、ハーノインは笑いながら同意を返す。ほんの少し普段と違ったキスができた、それはそれでよしとしよう。

「これでさ、イクスとつきあってなかったらドキドキだったんだろうけど」

確かに、ゲームの相手に片想いでもしていたら絶好のチャンスだろう。だから思うのだ。ハーノインにポッキーゲームのことを話した女性は、彼に気があるのではないかと。暗に、ハーノインとしたいと言っているのではないのかと。


――――別に嫉妬しているわけではない……ただ少し面白くないだけだ。


「ハーノ」
「ん?」

イクスアインはハーノインの手を取り、指を絡める。ここにつなぎ止めていられるように。

「キスだけでいいのか?」

愉快そうに口の端を上げ、彼をのぞき込む。一瞬で、ハーノインの目つきが変わったような気がした。

「おいイクス、煽ってんじゃねーよ……っ」

ハーノインはイクスアインに絡められた手を自身の方に引き、イクスアインの背を抱く。ぶつかった口唇を吸って、中へと入り込んだ。

「あっ……」

口唇の隙間から、イクスアインの小さな喘ぎが漏れていく。逃げるようにも、挑発するようにもうねる舌先を捕らえ、ハーノインはここぞとばかりに絡みつけた。

「ん、ん……っ」

吸い上げるたびに、イクスアインが反応を返す。ちゅ、ちゅ、と立つ濡れた音が、互いの欲望を煽っていった。体を押しつけた勢いで、ガタリと椅子が鳴る。

「あっ……ハーノ、っ」

イクスアインの体がデスクに乗り上げる。ハーノインの体で押さえつけられて、逃げ場はなくなった。もとより逃げるつもりなどないが、忘れそうになった。ここは自室ではなくトレーニングの待機室なのだと。

「ハーノ、待てっ……」

ハーノインの口唇が首筋に移動し、素早くシャツの裾から入り込んだ手のひらが素肌を撫でる。胸の突起に指先が到達するかと思ったその瞬間、セットしていたアラームが室内に鳴り響いた。

「あ……」

二人でハッと体を起こし、音の原因であるアラームを止める。トレーニングの交代時間、タイムリミット。
イクスアインは乱れる呼吸でトレーニングウェアを直し、眼鏡の位置を直す。ハーノインは、気を削がれて面白くなさそうにガシガシと頭を掻いた。

「イクス」
「ト、トレーニングにいかなければ。ハーノ、お前もだろう」
「おいイクス、どうすんだよこれッ」
「どうにもできるか!」

下半身を指さして引き留めるハーノインの手を払って、イクスアインは赤い顔を背ける。たかが一個人の小さな感情で、こんなところで情事にふけるところだったなんて、イクスアインにとっては失態以外のなにものでもない。
トレーニングを終えた隊員たちが外の通路を歩いている音がする。いつまでも行かなかったら、不審がられるかもしれない。

「お前なあ、あんだけ煽っといてそれはないんじゃない?」

ハーノインの言い分も分かる。分かるが、どうしろと言うのだ。イクスアインは気まずそうにそれでもハーノインを振り向き、

「う、埋め合わせはする。ハーノ……今夜私の部屋へ」

誘うための文句を吐いた。しかしハーノインの方はそれでも納得しないようで、不満そうな表情を浮かべている。

「埋め合わせってんなら、お前が俺んとこくるのがスジってもんじゃね?」
「バッ、バカ、わざわざ抱かれになど行けるか!」

待機室のドアに触れ、これ以上の問答はしないと振り切る。

「いやいや、すること一緒じゃん? 意味わかんね」
「一緒ならかまわないだろう、だから、お前が私を抱きに来いと言ってるんだ!」

思わず叫んだイクスアインに、ハーノインはぽかんと口を開ける。ここまで心も体も許しているのに、なぜ最後の最後に素直でいられないのかと、笑った。

「イクスー、そういうの、屁理屈って言うんだぜ」
「そうか、埋め合わせはいらんと見た」
「えっ、あ、うそうそ、行くって。待ってろよ、イクス」

待機室を出かけるイクスアインに、ハーノインはキザにウインクなんかしてみせる。それを受け、イクスアインは照れくさそうに口元を緩めた。

「ああ、待っている」

それだけ言ってイクスアインは待機室の向こう側へ消え、シュンとドアが閉まる。

「しっかし……どーすんだよこれ……」

自分も行かなければならないのだが、いまだにおさまりのついていない下半身を見下ろし、ハーノインは小さく、それでも嬉しそうに呟いた。


#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ポッキーの日

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ほんのイタズラ

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜 2013.11.11

#両想い #執×監 #ポッキーの日

「なんで俺が狡噛とペアなんだ!?」宜野座は引いた紙切れを握りしめ、ふるふると体を震わせた。「仕方ない…

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜

ほんのイタズラ


「なんで俺が狡噛とペアなんだ!?」

宜野座は引いた紙切れを握りしめ、ふるふると体を震わせた。

「仕方ないだろギノ、くじで決まったんだから。諦めろ」

ペアの相手である狡噛は、まるでなんでもないことのように振る舞っている。そうそう、と後ろで縢や唐之杜が同意していた。そもそもなぜこんなことをするハメになったのか、最初のきっかけはもう分からない。

「いやあ、俺審判で良かったなあ。若いモンの感覚にはついていけん」
「私こういうの初めてで。楽しそう~」
「俺は心臓が爆発しそうなんですけど……」
「アタシたちはいつもと変わらないわね、弥生」
「志恩、仕事中よ」

人数の関係で、一人はゲームの審判になる。それに運良くあたった征陸は胸をなで下ろし、ペアになった縢と常守、唐之杜と六合塚はそわそわしながらもすでに準備を整えていた。

「観念しろギノ。たかがポッキーゲームだぞ?」

狡噛に至っては、ペアと判明した瞬間から面白そうな顔を持続させている。それがまた宜野座の癇に障った。

「なんで貴様はそう順応性が高いんだ! できるかそんなバカバカしいこと!」

誰が言い出したのか(おそらく縢あたりだろうが)、今日十一月十一日はポッキーの日だとかで、それを使ったゲームをやることになってしまった。普段なら乗りもしない宜野座だが、コミュニケーションは必要ですよという常守の駄目押しと、運がよければ見ているだけの審判になれるかもしれないという逃げ道が、宜野座にくじ引かせたわけだが。

「面白いこと言うなギノ。どだいゲームなんてものはバカバカしいものだ」

自分の運が良くないことを忘れていた。狡噛は、縢が持ってきたポッキーを指先で摘みこれ見よがしに振ってみせる。そうして、宜野座以外には誰にも聞こえないような小声で囁いてきた。

「なにが問題だ? 嫌なら負けりゃいいだけだし、キスなんかいつもしてるだろうが」
「もっ、問題がありすぎるッ」

カッと頬を染める。
狡噛慎也とは、キスも、キスよりすごいこともする仲、いわゆる恋人同士という間柄だ。だから別にうっかり口唇が触れ合ってしまっても、それこそ日常のできごとなのだが、だからこそ困るのだ。
いつもの調子でうっかり自然にキスなんかしたら、周りの連中にバレてしまう。もし口唇が触れたらどういう反応をすれば、そういう仲だと気づかれないのか、宜野座には分からないのだ。
かといってわざと負けるのも悔しい。
ポッキーをくわえた状態とはいえ狡噛の顔が近づいてきて、思わずいつもみたいに目を閉じてしまいそうな自分が悔しくてたまらない。

「ひ、人前で……その、うっかり……したら、どうするんだ……」

宜野座は恥ずかしそうに目を逸らす。人前で、狡噛と二人きりでいる時のような無防備な雰囲気は見せられない。コントロールできない自分が未熟なのだと分かっているが、こればかりはどうしようもないのだ。

「――分かった、人前じゃなきゃいいんだな?」
「は? おい待てなんでそうなる」

狡噛はそれでもポッキーゲームを取りやめる気はないらしく、宜野座の腕をぐいと引く。

「とっつぁん、俺たちはちょっと別のとこでしてくる。ギノがどうしてもって言うんでな」
「別のとこ? そりゃあ……審判ができんだろう」
「コウちゃんそれアリ~?」
「アリだよ。勝敗は自己申告する」

狡噛は宜野座の腕を引いたまま、納得いかない風な顔をした縢や常守を通り過ぎる。あまりイジメるなよと肩を竦める、何も知らない征陸を通り過ぎ、意味深な唐之杜や六合塚の視線をやり過ごして掲示部屋を出た。

「おい狡噛っ、俺はまだやるとは――」
「譲歩してやってんだ、たまにはハメはずせって」

そんなことを言い合いながら喫煙スペースの方へ歩んでいく二人を見送り、刑事課のメンツはそれでも当初の予定通りポッキーゲームを楽しむのだった。




「おい狡噛、待て、どこまで」

どこまで行くんだと、腕を引かれながら宜野座は狡噛の背中に投げかける。正直、内緒の恋人とはいえ対外的には上司と部下だ。部下に手を引かれている様などあまり晒したいものではない。

「ここならいいだろ、ギノ」

狡噛は足を止め、喫煙スペースの観葉植物の陰に二人で隠れる。ここなら人も来ないし、通路からは死角になっている。見咎められることはないだろう。

「ほら」

狡噛はポッキーを摘んでつきだしてきた。どうあっても二人だけでゲームをするつもりのようだ。誰も見ていないのだから、やったことにしてごまかしたっていいだろうに。

「狡噛……お前本当にするつもりなのか?」
「せっかくの機会だ、やったっていいだろう」
「お前の考えていることが分からん……」

宜野座は頭を抱える。こうと言い出したら実行するまで止めないんだからなと、息を吐いた。
「そうか? 至極分かりやすいと思うが。お前とペア組みたいからくじに細工したんだ、このまませずに終われん」
「はぁっ?」

健気だろうと壁にもたれる狡噛に、宜野座は驚愕の声を上げる。くじに細工とはいったいどういうことか。いや聞きたくはないが、つまり今こうなっているのは狡噛がしくんだことというわけか。

「貴様、勝負にイカサマとは……そこまで堕ちたか」
「だったらお前、ほかの奴とが良かったのか? 俺なりに助け船を出したつもりなんだがな」
「う……」

言葉に詰まる。確かに、他のメンバーと当たる可能性だってあったのだ。唐之杜あたりは面白がりそうだが、その他は誰と当たっても気まずい。というか、できるわけがない。

「そ、それは……助かったが……」
「だったら、ほら。チョコついてる方やるから」
「子供扱いか!」

突き出されたポッキーは、摘む方でなくチョコが端まで付いている方だ。駄々をこねる子供をなだめているような風情にカッとなって、宜野座は思わず狡噛の手からポッキーを取り上げる。
どうにもやり場がなくなってしまって、ためらってためらってためらったあげく、

「……ほら、さっさとくわえろ」

チョコが端まで付いた方を狡噛に向けて突き出した。狡噛は一瞬面食らったように目を見開き、ほんの少し視線を泳がせる。
「おい、なんだいったい」
「いや……ギノがエロいなと思って。くわえろとか、どんだけ挑発するんだ」
「なっ……、き、貴様っ……」

そんなつもりで言ったのではない。狡噛の頭の中はいったいどうなっているんだ? と顔を真っ赤にしながら手を引っ込めかけたが、それより早くつかまれる。

「怒るな、誉めてんだから」
「し、知るか! あ……」

つかんだ宜野座の手から、狡噛がポッキーを奪っていく。綺麗にそろった歯で挟まれたそれのもう一方の端は、宜野座に挟まれるのを待っていた。

「ん」

促すように、狡噛が顎を突き出す。本当にこんなことしたいのか、と宜野座はいまだに不思議な気持ちでいっぱいだ。狡噛の考えていることは本当に分からない。長くつきあいを続けていてもだ。

「ん?」

早く、と狡噛が器用にポッキーを上下させる。手首は掴まれたままで、逃げ出すこともできやしない。宜野座は覚悟を決めて、小さく息を吐いた。

「目……閉じててくれないか……恥ずかしい」

目を閉じたらゲームの意味がないような気もするがと思いつつ、やはりこの体勢この距離で目を開けたままというのは恥ずかしいのだ。
狡噛は途中で開けてやるつもりでいながらも肩を竦め、素直に従って両の目蓋を閉じた。
宜野座はそんな狡噛の眼前で手を振り本当に閉じていることを確認し、ポッキーを口唇で挟もうとした。が。
ほんの少し。


ほんの少しのイタズラ心が働いてしまった。
掴まれていない方の手で、狡噛の口に挟まれたポッキーを引き抜く。


「ん、……ん!?」


そうして、口唇にキスをした。
宜野座にしてはたっぷり五秒口唇を押しつけて、離す。


「はは、まぬけ面だな、狡噛」
「ギノ……お前な……」

予想していなかった展開に、狡噛の反応が遅れる。それを面白そうに眺め、ゲームのルールがどうであれ、なんだか勝った気分で優越感に浸った。

「なんだ、キスをしたいんじゃなかったのか?」
「まあそうなんだが、できれば」

このまま負けてなるものかと、狡噛は宜野座の腰をグイと抱き寄せ、耳元で囁く。

「もっと深いので頼む」

答えも聞かずに口を塞いで、さんざんに舐めしゃぶる。絡んだ互いの指先から、ポッキーが抜け落ちていった。


#両想い #執×監 #ポッキーの日

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Rainy Day

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜 2013.10.27

#学生狡宜 #両想い #ラブラブ #イベント無配

雨の音で意識が浮上する。ふっと目を開けると、すぐに視線を感じた。瞬いてその視線の主を確認すると、見慣…

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜

Rainy Day


雨の音で意識が浮上する。ふっと目を開けると、すぐに視線を感じた。瞬いてその視線の主を確認すると、見慣れすぎた男の顔が見える。

「……なに見てるんだ」
「ギノの顔」

狡噛は何でもないように返してくる。楽しそうな笑いさえ浮かべる男に、宜野座は少し汗で湿った髪をかきあげた。
「なにが楽しい、そんなもの」
「楽しいぞ? ギノは俺とこうしてる時だけ眉間のしわがなくなるんだ」

ツンと人差し指で眉間をつつかれて、宜野座は頬を染めた。いつもどれだけ皺が寄っているのかと思うと恥ずかしくて仕方がない。
さらに、狡噛と同じベッドで時を過ごしている時だけそれがないなんて言われて、どれだけ狡噛に甘えているのか思い知らされていたたまれない。

「わ」

気恥ずかしくて視線を泳がせたら、引き戻すように眉間に口唇が落とされた。そこから体温が沁み渡ってくるようで、宜野座は目蓋を閉じたまま狡噛の口唇を感じた。

「こうやってここにキスできるのも俺だけだと思うと、やっぱり嬉しいな。おはようギノ」
「ああ……おはよう狡噛。雨、やまなかったな」

残念そうに呟くと、そうだなと同意が返ってくる。昨日ふたりで作って飾ったてるてる坊主は、効力がなかったらしい。まあそもそも、あんなもので雨が去っていくならそれははじめからの天気なのだ。

「今日、どうしようかデート。晴れてたらダイムの散歩行ってそのまま公園でぶらぶらしようかと思ってたけど」

雨じゃなあ、という残念そうな言葉とは裏腹に、狡噛は幸福そうに宜野座の体を抱き寄せる。俺は抱き枕じゃないとため息を吐きながら、傍にあれば抱き寄せたくなる気持ちは分かるのだ。

「じゃあダイムの散歩行って、家でゆっくりテレビでも見てるか?」

たまにはそんな怠惰な一日があってもいいのではないかと提案してみたが、狡噛はうーんと考えこみ、あまり気乗りしないようだった。

「あ、そうだ。行きたいところあったんだ」
「行きたいところ? どこだ」

至近距離で狡噛を見上げて、訊ねてみる。すると狡噛は、本屋、と答えた。

「本屋?」
「ああ、確かもう新刊出てるはずなんだよ、好きな作家の」
「紙で出版してるのか、珍しいな。しかしなにも雨の日に行かなくても」

狡噛が電子より紙の本を好むのは知っている。だがだからこそ、こんな雨の日に買いに行っては、せっかくの本が濡れてしまわないだろうか?

「濡れないように工夫するのもおもしろいもんだぞ」
「変わったヤツだとは思っているが、本当にお前は変わっている。そうまでして欲しいものだということは分かったが、近場なのか? あまり歩き回るのは、少し……」

腰が、と小さく呟く。ダイムの散歩で慣れた道を歩くのと、知らない道を歩くのでは負担が違うのだ。腰が痛い理由に気づいた狡噛が、

「はは、すまんすまん。近くだよ、何だったらおぶっていってやろうか?」

少しも悪く思っていないような口調で告げてくる。

「結構だ、バカ!」
「怒るなって、冗談だよ。お前の好きなパン屋で何か買ってやるから」

機嫌を損ねてしまってはせっかくの休日が無駄になる、と狡噛は腕の中から這い出した宜野座に提案してやった。宜野座は一瞬動きを止めて、

「一日限定五十個のメロンパンなら、許してやってもいい」

めいっぱい、わがままを言ってみせる。狡噛は笑って起きあがり、そうと決まれば善は急げと二人は雨の休日を楽しむことにしたのだった。


#学生狡宜 #両想い #ラブラブ #イベント無配

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境界線の見える窓際で

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜 2013.10.27

#学生狡宜 #両想い #イベント無配

よかった、と宜野座は玄関を開けて家の中に入り、リビングを突っ切って大きな窓に手をかけた。「雨降る前で…

NOVEL,PSYCHO-PASS,狡宜

境界線の見える窓際で


よかった、と宜野座は玄関を開けて家の中に入り、リビングを突っ切って大きな窓に手をかけた。

「雨降る前で良かったな」

ガラリと勢いよく窓を開けた宜野座の背中にかかる声がある。少しだけ振り向いて、一応客である彼にすまないと詫びた。

「今日、天気予報見ていくの忘れてしまってな。俺としたことが洗濯物を出したままだなんて」

ベランダに干したタオルや衣服は、雨の前の冷たい風にはたはたと揺らめいている。うっかり片付けずに家を出てしまったのは、宜野座にしては珍しいことだった。

「ギノ、コーヒーでいいよな」
「あぁすまないな狡噛。あ、っと、できれば、ミ」
「ミルクたっぷりと砂糖を少し?」

宜野座の声に被せて、狡噛は笑う。お前の好みはもう把握してるよと言わんばかりのしたり顔が、なんだか悔しかった。
客であるはずの狡噛は、勝手知ったる風にキッチンへと向かっていく。そのはずだ、こうして家に招くのは初めてではない。それどころか、頻繁にここで過ごしている。好みも把握されてしまうくらい、互いを想いながら。
上機嫌な狡噛の鼻歌を聴きながら、宜野座はベランダに出る。さすがに肌寒くて、ふるりと身を震わせた。雨が降り出す前にとシャツやタオルを取り込み、ふと視線を遠くの空へ向ける。

「あ、」

取り込もうとしていたシャツに手をかけたまま、動きを止めてしまった。

「ギノ、どうした? コーヒー入ったぞ」

洗濯物を取り込むだけにしては遅いと案じたらしい狡噛が、ベランダに出てくる。宜野座はハッと我に返り、慌てて残りの洗濯物を抱え込んだ。

「あそこ、雨の境みたいでな。ちょっと珍しいものを見た気がしたんだ」
「ん? ああ……本当だ、あそこだけ煙ってるな」

宜野座の指さした方向に狡噛も視線をやる。すると彼の言うとおり、上空に雨雲を冠して空気を暗く揺らしている箇所が見えた。
普段はそんな空を見ることはない。雨に降られてしまってから睨み上げるか、降り出す前に家に入って空とはさよならかだ。あの様子から察するにそこは土砂降りに近いだろう。こうして遠くから見る分には他人事のようにしていられるが、あれがもうすぐここへも到達するのかと思うと、本当に降り出す前に帰ってこられて良かったと感じた。

「お前が思い出してくれたおかげかな。一緒でよかった」

宜野座は雨の境を眺めたまま息を吐く。何気なく呟いた言葉だったのだが、狡噛はそれを嬉しそうに揶揄う。

「いつだって一緒だろう。朝も、昼も、……夜も」
「うわ、こらやめろ馬鹿」

狡噛の手が宜野座の腰を抱き寄せて、頬に口唇が触れた。二人きりでいる時のこんなスキンシップにはもう慣れた(ように装いたい)宜野座だが、ベランダでは人目が気になる。抱え込んだ洗濯物のおかげでほんの少し距離は取れたが、それだってわずかなものだ。

「おいやめろと言うのに」
「寒いかと思って」

狡噛はそのわずかな距離を埋めたがって抱く腕の力を強くする。確かに雨の前の空気は冷たいが、洗濯物を早く取り込んで中に入って熱いコーヒーを飲めば済むことだ。
それをしないのは、もう少しだけ雨の境界線を眺めていたいから。滅多に見ない光景を、もう少しこのまま、ふたりで。

「明日は……晴れるだろうか」
「どうだろう。てるてる坊主でも作っておくか? 久々のデートだしな」

そんなものが効くだろうか? と宜野座は首を傾げながら、迫る雨の境界線を狡噛の腕の中で眺めた。頬をすり寄せてくる狡噛を諫めた目を閉じて、窓際で静かなキスをする。
どうか晴れますようにと、指先を絡めて。



#学生狡宜 #両想い #イベント無配