No.192

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Saphirのヒカリ-005-

その他ウェブ再録 2013.12.29

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録

 そこに向かって足を踏み出しかけたそのとき、「アードライ、待たせてすまない……どうしたんだ?」「イク…

その他ウェブ再録

Saphirのヒカリ-005-


 そこに向かって足を踏み出しかけたそのとき、
「アードライ、待たせてすまない……どうしたんだ?」
「イクスアイン! どういうことだあれは!」
 買い物を終えて店を出てきたイクスアインに、指をさして示してみせる。なぜハーノインが女性と一緒に茶など飲んでいるのかと、眉をつり上げて。
 イクスアインはアードライが指し示したその方向を確認して、一瞬言葉を失ったようだった。それに気づき、アードライは失敗だったとようやく言葉を止める。
 あんな場面を見たらイクスアインが傷つくのは目に見えている。見ないように進路を変えた方がよかっただろうかと思うが、目的がハーノインである以上どうしても避けては通れない。
「アイツはまた……仕方ないヤツだな」
 しかしアードライの予想を裏切って、イクスアインはため息と一緒に呆れた声を吐き出した。
「ま、また……だと? どういうことなんだイクスアイン。なぜ自分の恋人が他の女性と一緒にいて平気な顔をしている!?」
 イクスアインはまたと言った。ということは、こんな場面に出くわしたのは初めてではないということだ。それならば驚かなかったのも頷けるが、どうしてそんな諦めたような言葉しか出てこないのか。
「アイツの癖みたいなものだ。街へ出て、好みの女性がいたら必ず声をかけてる。一緒にお茶を飲んだり、食事をしたり。映画を観に行ったこともあるそうだ」
 アードライは絶句した。毎回こうなのかと、思わずハーノインを振り向く。作戦中には絶対に見せない、人なつっこい笑顔が、癇に障った。
「なぜ……なぜお前は怒らないんだ!? その日限りかもしれんが、あちらの方がよほど恋人らしく見え―」
 恋人らしく見えるといいかけて、アードライは口をつぐんだ。その光景を眺め口唇を引き結び、こっそり拳を握るイクスアインを見てしまって。
「私にだって、アイツ以外のひとのことを思う時がある。その日限りじゃない分、私の方がアイツを裏切っているのかもしれない」
「カイン大佐を慕う気持ちはあれとは違うだろう! いいのかイクスアイン、ハーノインが、お前以外に笑いかけるんだ。恋人みたいに、優しく笑うあれを見て、お前は不愉快にならないのか!」
 不思議な距離感のある二人だと思っていた。その理由がこんなことであるのなら、なんと腹立たしいことか。こんなにくだらない理由が二人の間に壁を作っているのなら、自分が協力などしてやる必要はない。
 だから、イクスアインには否定してほしかった。せめて仲間には幸福になってほしいと思っている。
「愉快なわけがないだろう!」
 イクスアインが、珍しく声を荒らげて否定する。アードライはホッとした。ハーノインのことを語る時ひどく優しげな顔つきになるイクスアインを知って、そんなに軽い気持ちではないのだと思ったのは間違いではなかったのだと。
「だが、私とハーノインでは、街中で恋人同士のようには振る舞えない。いくらハーノインがそれを望んでも、無理な話だ。だから、気分転換に女性とそうやって過ごすアイツを責められない」
 イクスアインは顔を背け、口唇を噛む。手をつないで歩くことも、キスをすることもできない。だからハーノインにそういう願望があって、女性にそれを求めたとしても責めることができないのだ。
「私を少しでも好きでいてくれるなら、それでいいと思っている」
「嘘をつくな! そんなに拳を震わせておいて、なにがそれでいいんだ、イクスアイン」
「いいんだアードライ、もう帰ろう。ことを荒立てたくない。それに……」
 腕をつかんで揺さぶってくるアードライから視線を背けて、ハーノインと一緒にいる女性の後ろ姿を確認する。それになんだと詰め寄るアードライに、イクスアインは声を押し殺して答えた。
「たぶん、あの女性を気に入っているんだろう。私が知る限りでは三度目だ」
 ハーノインは確かに女性に声をかけるのが趣味といってもいいくらいだが、二度三度と席を共にする女性は本当に少ない。
 三度目ともなれば、もしかしたら待ち合わせでもしたのかもしれない。
「イクスアイン……それでお前は、今までやり過ごしてきたというのか? 本当は嫌なんだろう」
「……嫌だが、そんなこと……言えない……アイツの負担になる!」
 本当は自分だけ見ていてほしい。自分だけに笑いかけてほしい。そんな子供みたいな独占欲、拒まれた時に傷がいっそう深くなりそうで言い出せない。
「だったら私が言ってくる」
 悔しそうに目を伏せたイクスアインの腕を放し、アードライは踵を返す。ハッとしたイクスアインが顔を上げた時にはもう、ハーノインが座っているオープンテラスへ向かってしまっていた。
「な、ま、待てアードライ、ことを荒立てたくないと言ったはずだぞ」
「荒立てなければならないほど放っておいたのはお前自身だろう、イクスアイン!」
「アードライ!」
 イクスアインの制止を振り切って、アードライはズカズカと道路を突っ切る。イクスアインはそれを追い手を伸ばすも、間に合わなかった。
「ハーノイン、どういうことか説明しろ」
 そうして遠慮もなにもなく、ハーノインと女性との間に割り込みテーブルに手をつく。本来フェミニストであるアードライが、女性に対してそうするのは、本当に珍しかった。
「アードライ? え、なに、どうしたんだ?」
 ハーノインは、突然現れて状況の説明を求めるアードライにさすがに驚いて、目を見開く。
「よせアードライ、帰るぞ。すまないハーノ、あとで説明する」
「説明を求めているのは私だ、離せイクスアイン」
 イクスアインは、こんなこと望んでないとアードライを制し、ハーノインと女性に謝罪してもう帰ろうと思っていた。長くいたい場面ではない。しかしアードライも案外頑固なもので、ハーノインの考えていることを聞かなければ気が済まないようだった。


#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録