華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.193
その他ウェブ再録 2013.12.29
#R18 #革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い #ウェブ再録
「説明って言われても、見ての通り彼女にお茶奢ってんだけど」 ハーノインは悪びれもせず、現在の状況を簡…
その他ウェブ再録
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「説明って言われても、見ての通り彼女にお茶奢ってんだけど」
ハーノインは悪びれもせず、現在の状況を簡潔に述べる。そうだ、言われずとも分かるその状況を、ハーノインの口から聞きたくはなかったのに。イクスアインはアードライを止めながらも顔を背け、早く立ち去りたいとさえ願った。
「ねえハーノイン。この子たちよね? 写真の」
そのとき、女性の声がしてふと思考を止める。え? とイクスアインとアードライは、同時に女性へと視線を移した。
「あーそうそう。ごめんな騒がしくて」
「いいよ、大丈夫。ハーノインが自慢するだけあって、綺麗ね」
「だろ」
ハーノインは不敵に笑う。
アードライにもイクスアインにも、同じくらいの疑問符がおそってきた。写真の、とはどういうことだろう。自慢とはいったい? と二人で小首を傾げていると、女性の方がそれに気がついたようだった。
「あれ、ハーノインあなた、言ってなかったの?」
「や、言ったぜ俺。ピアスできたから、受け取りにいくって」
ピアス? とイクスアインとアードライの声が重なる。そういえば確かに、特注したものができたと言っていたのを思い出す。
「彼の注文難しかったのよ。特に、えーと……君の方ね。もっと落ち着いた色がいいだの、艶が足りないだの。わがまま言いたい放題」
まあそれに見合うお金はもらったからいいけど、と女性は続ける。君の方、と指さしたのはイクスアイン。よくよく見てみれば、ハーノインの左耳にひとつ飾りが増えていた。
では、ハーノインのピアスを作った女性なのかとようやく気がついて、何度も逢っていた理由も知れる。誤解していたような事態ではなかったとあって、アードライはホッとしたあとに醜態をさらした自分に羞恥を覚えた。
「す、すまない、あの、誤解していた。みっともないところをお見せして、申し訳ない」
「え? あー、なるほどそういうことね。ハーノインとデートしてると思ったんだ」
素直に謝罪したアードライに、事態を把握した女性は面白そうに笑う。俺はデートでもかまわないけどと口の端を上げるハーノインに、年下は守備範囲外と軽くあしらって、さてと時計を覗き込む。
「じゃあ、私はもう行くわ。またねハーノイン、今後ともご贔屓に」
「ああ、ありがとう。また何かあったら頼むよ」
女性はカタリと席を立ち、ハーノインに別れを告げる。本当にただの商談の延長だったようで、ふたりの間には色っぽい雰囲気など微塵も感じられなかった。
「ハーノイン、本当にすまない……まさかそういう事情だったとは思わなくて」
「あー、いいっていいって。誤解してもしょうがない状況だったし」
アードライは重ねて詫び、頭を抱えた。ハーノインも、この場に割り込まれた理由に気がついて苦笑した。自分の普段の行いも問題だっただろうかと。
「そっちは買い物終わったのか?」
店内で必要以上に目立つのはそれほど好きではない。ハーノインは店を出ようと立ち上がり、立ち尽くしていたイクスアインと視線を同じ高さにした。
「ハーノ……そのピアス……」
増えた飾りは深い深い青。
イクスアインは、ハーノインが今日買い求めたそれをじっと眺めて呟く。答えを求めたわけではなく、気づいた驚嘆を口にしたまでだったが、ハーノインは嬉しそうに耳を撫でた。
「ああ、お前の色な」
喉をこみ上げてくるものがある。
「―ハーノ……!」
イクスアインはそれを抑えようとして、口を右手で覆った。空いた左手を引き、ハーノインはカップを戻しに向かう。そんな二人の背中を眺め、色? と首を傾げたアードライは、やがて気がついて思わず頬を染めた。
「ハーノイン、イクスアイン。私は先に帰るから、その、少しふたりでゆっくりするといい」
店を出て、アードライはふたりに声をかける。これ以上は邪魔になってしまうと、まだ頬を染めたまま。
「え、いいのに別に」
「私が良くない。あとハーノイン、今度聞かせてもらいたい。イクスアインのどこにそんなに惹かれたのかを」
イクスアインには一日待ってやると告げ、謎の答えを求めた。忘れてなかったのかとイクスアインは視線だけで応じる。そこへ、助け船のような追い打ちのようなハーノインの言葉が降ってきた。
「どこって、ぜんぶに決まってんじゃん。挙げてったら三日三晩はかかるね」
なんの臆面もなく言ってのけるハーノインに、アードライは呆れた。呆れつつも、幸福そうで嬉しかった。
「具体的に言ってやれ。イクスアインにな。イクスアイン、お前もちゃんと言うんだぞ」
羞恥に負けそうなイクスアインに釘を刺し、アードライは踵を返す。軽い足取りは、ふたりの想いに触れたからだろう。帰ったらイクスアインのくれた茶葉でティータイムだと、空を見上げた。
「……なあ、イクス、もしかして妬いてくれてたり、……しないよなー」
顔を俯けたイクスアインを振り向いて、ハーノインは可能性を口にする。アードライの乱入はイクスアインとのことを知っているせいだろうが、当人はどう思っていたのか気になるところである。
が、反応は薄い。妬かれるほど好かれている自信は、ハーノインには今のところなかった。
「妬いた、と言っていいのか分からない……」
仕方ないかーと歩き出したところへ、イクスアインの小さな声。聞き逃すわけもなく、ハーノインは振り返った。
「え?」
「お前と恋人同士みたいに過ごせる女性たちに、嫉妬はする。不愉快だった。だけど」
イクスアインは俯けていた顔をようやく上げる。泣きそうになるのを我慢して、笑うことなんてできなかったけれど。
「だけど、お前の耳を飾るのが俺の色だと知って、そんなもの吹き飛んでいったよ」
「イクス……」
もしかして思っているより好かれているのだろうかと続けるイクスアインに、ハーノインも同じことを思う。
自分の方が想いが大きいと思いこんできたけれど、お互い様だったようだ。この想いが負担にならないようにしてきたが、それが逆に不安になっていたなんて思いもしなかった。
「イクス」
ちょっとこっち、と手を引かれる。前方にかかる力で、イクスアインは歩かされた。
「ハーノ、なにを―」
「キスしたい、イクス。今」
引っ張り込まれた狭い路地で、互いを正面に体を寄せ合う。イクスアインは視線を左右に走らせて正面のハーノインへと戻し、目蓋を伏せた。
「ん……」
こんなところで口唇を合わせるのは初めてだ。普段は互いの部屋か、絶対絶対誰にも見られない密室。屋外でなんて、誰に見咎められるか分からない。
分からないのに衝動は治まらなくて、ついばむようにキスをした。
「んっ……ハーノ……ッ」
「イクス、……イクス」
キスの合間に名前を呼び合えば、抱きしめる腕の力がさらに強くなる。それは想いの分の強さとなって、ふたり同じ力で愛しいひとを抱きしめた。
「ハーノ、好きだ……お前が思っているよりずっと、私は……お前が好きなんだ」
「ん、嬉しい、俺も……お前のこと好き……大好き」
離した口唇の傍で囁き合って、もう一度重ねる。こんなに簡単なことだったのに、どうして今まで口にしていなかったのだろう?
「俺が女の子たちとお茶すんのはさ、情報収集でもあるんだよね。女の子っておしゃべりだからさ、俺らの気づかないとこまで気づいてたりすんの」
こつりと額がぶつかる。
「だけど、お前が嫌ならやめるよ?」
多分に趣味も含まれているのだろうが、ハーノインの言うことは理解できた。イクスアインは少しだけ視線を泳がせて、答えた。
「お前が本当に想っているのが私なら、構わない」
もう本当の想いの強さを知った。嫉妬はするだろうが、ハーノインの中に必ず自分がいることを考えれば、些細なことのように想った。
「ハーノ、私は……カイン大佐を尊敬している。私たちは
あの方に助けられた。報いたい気持ちは強い」
「……分かってる。そのために訓練耐えたの、知ってるから」
「もし大佐かお前かを選べと言われたら、大佐を選ぶかもしれない」
イクスアインは、アードライに訊ねられた問いに答えを出す。その時になってみないと分かりはしないが、可能性はゼロではない。
「……そっか…」
ハーノインの顔が、寂しそうに翳ったのを見てしまう。それは当然だろうと思った。
「だけど、ハーノイン。この先お前以上に愛しく想う相手など現れないと断言できる」
ためらいも臆面もなく言い放ったイクスアインに、ハーノインは目を見開いた。
「お前が愛しい……ハーノ」
飾る必要のない、素直な気持ちだ。どうか届けばいいと、イクスアインは指先でハーノインの頬に触れる。ハーノインはその手をぎゅっと握りしめ、
「バカ、そういうのは……俺に先に言わせろよッ……」
悔しそうに幸福そうに、口づけた。
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