華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.72
NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20
#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録
「っはあ、……は、ぁ…はぁ…っ」 タクトは両肘を壁について足を踏ん張り、どうにか体を支えて荒い息を整…
NOVEL,その他ジャンル
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「っはあ、……は、ぁ…はぁ…っ」
タクトは両肘を壁について足を踏ん張り、どうにか体を支えて荒い息を整える。濡れた口唇を拭う余裕なんて、当然なかった。
「スガタ、ど……して…っ」
「ここまでしてもまだ気がつかないのか…?」
責めたタクトに、同じく責めるようにスガタは返してくる。
「僕は本当にお前が好きなんだ! 演技でなんて……言えるわけがない……!!」
ざわりと、肌があわだった。
タクトは瞬きと息を止めて、壁に拳を叩きつけるスガタを眺める。
「お前を抱いたのも、僕にとっては現実だった! 後悔したさ、お前が僕から目を逸らす回数が増えて! 頼むからもう…っ、僕に能力以上のものを求めるな、タクト!」
演じる力などないに等しかった。
惚れた親友を相手に恋人役を演じて、平常心でいられるほどスガタは役者ではない。その道を目指しているわけでもないのに、完璧な恋人役なんて演じられるはずがなかったのだ。
「う、そ…っ……」
すとん、とタクトはその場に座り込む。崩れた、と言った方が正しいだろうか。それを抱き止める余裕はさすがにスガタにもなくて、手を差し伸べるタイミングを逃した。
「タクト…?」
「スガタ、が…、僕のこと…好きって……本当に?」
放心したようなタクトを、さすがに心配そうにスガタが覗き込む。疑っているのか、タクトの口から出てきた言葉にスガタは眉を寄せた。
「嘘じゃない。お前相手に、演技したことなんか一度もないよ、タクト」
少し目を伏せて、後ろめたそうに再度告げるスガタ。
タクトは、腰を折って半身をへたりと床に伏せる。そのまま肩を震わせたタクトを、スガタは不審そうに呼んだ。
「おい、タクト」
「……イッツァミラク―ル。なにこれ信じらんない」
笑っているのかと眉を寄せたその瞬間、涙をにじませたタクトの瞳が振り仰いでくる。
「僕たち、両想いだったんだね」
「…………―え?」
不謹慎にも高鳴った胸に息を止めて、ついで飛び出てきたタクトの言葉に、スガタは瞬きを止めた。
「両、想…い……って? 僕とタクトがか?」
「そうだよ! 僕はスガタが好きなの!」
ガバッと起き上がって、片膝をついたスガタのネクタイをぐいと引っ張る。
「スガタが……好きなんだよ…」
初めて、タクトからの口づけ。包むようについばんで、離れて、また重ねた。
「…本当に……そうなのか…?」
「ねえここまで言ってるんだから信じてくんない?」
スガタはタクトの触れた口唇を覆い、瞬きひとつせずにタクトを見つめた。
肩を竦め、最後の一押し。スガタの頬が赤く染まっていくのが面白くて、タクトはずいと詰め寄った。
「大好きだよ」
視線がすぐ傍で重なり合う。離すのがもったいなくて、やがて引き合っていく口唇に、全部の想いを乗せた。
何度も触れては離れ、触れては離れる口唇と、重なり合う視線。
なんだそうだったんだ、と急に受け入れてしまえる幸福ではなかったが、こつんとぶつかる額が気恥ずかしくて嬉しくて、ふたりで笑った。
「気づいてもよさそうなのに」
「僕の台詞だ。演技であんなこと、できるものか」
お互いがお互いのせいにして、やっと通じ合った想いを再度、音に乗せる。
とっくに始まってしまった午後の授業は、今から出席しても意味がないように思えた。
「僕は戻るよ。お前は保健室に行ってるといい」
それでもスガタは立ち上がって、手を差し出してきた。友人としての仕種ではなく恋人としてのそれに、タクトは少し頬を染めて手のひらを預ける。
「病名は、恋の病かな?」
あながち間違ってはいないけれどと笑って、タクトも立ち上がって、スガタと目線を同じにした。
「今日は、一緒に帰れる?」
「……ワコにチョコレートパフェ奢ってからなら」
バツが悪そうに逸らされたスガタの視線にきょとんと首を傾げ、そして噴き出す。ワコには気づかれていたからなと続けたスガタに、やっぱり彼女には敵わないよねえとタクトも返した。
「怒られたよ。本当にタクトを好きなのに、演技なんかして何やってるんだってね」
「ワコはスガタのいちばん近くにいるからなあ、分かっちゃうんだよ。灼けるな」
「これからはお前が、ワコとは違う意味でいちばん近くにいればいいじゃないか」
いけしゃあしゃあと言ってのけるスガタに、かぁっと頬が染まる。
ワコはスガタの大事な人。
タクトはスガタの大切な恋人。
これからそうなるのかと思うと、幸せで幸せで、口が緩んだ。
「もう、フリじゃなくていいんだよね」
「お互いの気持ちがはっきりした以上、そうだろうな。僕はもう、遠慮も容赦もしないぞ」
確認するように視線をよこしてきたスガタに、タクトはややあってうんと頷く。こっちこそ遠慮も容赦もできないよと付け加え、挑戦的な笑顔を向けてやった。
「じゃあ、あとでね」
「ああ、あとで。カバン持ってってやるよ」
タクトは保健室に向かって階段を降り、スガタは教室に向かって階段を上がる。ずいぶん元気な病人だなと、肩を揺らした。
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