No.71

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Shooting Star-014-

NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録

「待っ…、ちょっとスガタくん何ぼんやりしてるの!?」 追いかけようとして、ワコはハッと隣を振り向く。…

NOVEL,その他ジャンル

Shooting Star-014-

「待っ…、ちょっとスガタくん何ぼんやりしてるの!?」
 追いかけようとして、ワコはハッと隣を振り向く。当事者であるはずのスガタが、タクトの消えていった方向から目を逸らしたまま、微動だにしていないことを責めた。
「これ以上僕に何をしろと言うんだ!」
 それを振り払うように、スガタは叫ぶ。ワコの前では珍しく、苛立った様子だった。
「タクトの望むようにしてきたんだ! 僕はこれ以上何をすればいい!?」
「追いかけてよ!」
 そんなスガタにワコも苛立ってしまう。今この状況で、それ以外に何をすることがあるのだろう。
「ねえ、タクトくんはスガタくんじゃないんだよ? 私と違って、スガタくんと逢ってからまだそんなに時間経ってないんだよ? ちゃんと言わなきゃ、分かるわけないじゃない!」
 何をするべきなのか、何をしてほしいのか、言わなければ分からないことがある。言葉にしてもいないのに分かってくれと言うのは、ただのわがままだ。
「ワコ……」
「ほら、さっさと追いかける! あっ、今日チョコパフェ奢ってね!」
 ビシッとタクトの走っていった方向を指さされ、スガタは決まりが悪そうにそちらを見据えた。
 ―そういえば、気づかれていたんだっけ。
 認識していたはずのことを改めて思い返して、苦笑する。足を一歩踏み出して、また一歩、二歩、三歩踏み出して、速度を速めた。
 タクトへ、向かって。
 仕方ないなあとその背を見送るワコは、やっぱりフルーツパフェって言えばよかったかなと思案した。




 ポタポタと、顎を涙が伝う。彼らの前で泣かなかっただけ、自分を誉めてやりたい。
 タクトは階段の踊り場で壁に手をつき、溢れ出てきそうな嗚咽を必死でこらえた。
 スガタの、真実を告げる声が頭に響く。
 ワコの、スガタを責める声が耳について離れない。
 何をしているのか分かっているのか、と。
 しきたりとはいえ、ワコという許嫁がありながら、男と恋人ごっこをしているなんて、誉められたものではない。ワコの責めは正当なものだ。
 他人に知られたら終わりというルールはあった。普通に過ごしていれば誰かに知られる要素はないはずで、スガタが自ら暴露したということは、つまり。
 ―スガタは、選んだんだ。
 続けるのか、もうやめにするのか。
 スガタに選んでくれと言ったのはタクト自身だ。責める資格はない。だけど、こんな形で終わりになるとは思っていなかった。
 ―スガタはワコが大事で、ワコはスガタが大切でっ……分かって…分かってたのに!
 入り込める隙間なんてどこにもないって分かってたのに、そんなことで諦めることなんてできなかった。
「……っう……」
 この涙が流れ終わったら、さよならを言いにいこう。
 せめてさよならは自分から切り出さなきゃと、タクトは何度も何度も涙をこらえて、その度にこらえきれなかった涙が、顎を伝い落ちていった。
「タクト」
 ビク、と肩が震える。心の準備も何もできていないのに、なんでこんな時にと初めてスガタを恨んでみた。
 タン、と段を降りる音が聞こえるけれど、顔を上げることができない。
「タクト」
 顔を上げようとしないタクトを、スガタがもう一度呼ぶ。それでも返事もしないタクトに、ため息をついた。
「お前が望むなら、最後まで演じてやりたかったんだが」
「もういいよ分かってるから!」
 最後まで演じきれないなら、終わりの言葉も聞きたくない。タクトはスガタの言葉を遮って、ふいとそっぽを向いて乱暴に涙を拭う。
「いいよ、分かってる……」
 スガタにこれ以上甘えることはできない。
 叶うはずのなかった夢を叶えてもらった。それでもう充分だ。
「わがまま言って、ごめんなスガタ。スガタの気持ちは分かってたはずなのに、甘えちゃって」
 ワコまでも傷つけてしまった、とタクトは俯く。それには、スガタの目が見開かれていった。
「僕の……気持ちだって?」
「言わせるのか? ワコのこと好きなら、ちゃんと言ってあげなよ」
 彼女だって可哀想だろ、と震える声で付け加える。ワコならいいと思った。ワコ以外では嫌だと、身勝手にも逃げ道を作る。
 ワコとなら、自分も友人でいられる。本当にそう思った。
「タクト、悪いがそれは見当違いだ」
 スガタは手すりを強く握り、極力静かに、そう返す。ようやく振り向くタクトを、憎らしげに睨んだ。
「ワコのことは大事に思ってるし、たぶんワコも僕をそう思ってくれている。だけど恋愛じゃないんだ」
「だ、だけど」
「お前がそんな風に思っていたなんて、知らなかったな」
 くしゃりと、髪をかき混ぜる。そんなスガタの仕種に、とても悪いことを言ってしまったような気分になって、タクトは思わずごめんと呟いた。
「僕はスガタを傷つけてばかりいるね」
 そんな顔スガタらしくないのに、と無理に笑ってみせる。
 スガタの傍にいたいと思った。だけど、そんな顔をさせながら役を強要できるほどワガママにもなりきれなくて、中途半端に恋をした。
「タクト……?」
「僕のワガママにつきあってくれて、ありがとうなスガタ。でももう…………終わりにしよう」
 タクトと向かい合ったスガタに、涙をこらえて声を絞り出す。うまく笑えていただろうか。不自然じゃなかっただろうか。
 自分で始めたことの幕引きは、やっぱり自分でしなければならない。
「最後にさ、ひとつだけ頼みがあるんだ」
「……聞けることなら」
「大丈夫だいじょうぶ、スガタなら簡単だよ」
 ハハハとわざと明るく笑ってみせて、最後の願いを口にする。
「演技でいいから、あ……愛してるって…言ってくれないかな」
 小さく呟かれた最後の願いに、スガタは目を瞠った。瞬きをすることさえできなくて、沈黙が訪れる。
「…スガタ……?」
 スガタは口唇を開いて、何かを言いかけてそれでも口唇を閉ざした。俯いていくスガタを、タクトは怪訝そうに呼ぶ。
 スガタの指が青の髪に絡む。何かを決めあぐねているときの彼の癖なのだろうかと、タクトは今さら思う。
「……なんで…」
「え、だ、だって……スガタ一度も……言ってくれなかったし…」
 責めるような低い声に、タクトは体を強張らせる。何か悪いことを言ったのだろうか。だけど恋人同士なら、愛してるとか好きだとか、そんな言葉を言ってみてもおかしくない関係だ。
 それにもかかわらず、スガタと恋人同士だった間、ついぞ一度も、その類の言葉が出てくることはなかったのだ。今にしてみれば不自然なほどに。
「だから、一度くらい聞けたらなって…思ったんだけど…。スガタが、どんな声で、どんな顔で言うのかって……」
 スガタは髪の絡んだ手で額を押さえながら、ぎゅっと目蓋を閉じている。
 演技でさえ言ってくれないのかと、タクトは口唇を噛んだ。
「……言えるわけ……ないだろう…」
「ス、ガ…タ、」
 やがて絞り出された声は、心臓に突き刺さりそうなほどの、スガタの苛立ちが伝わってくる。タクトは目を見開いて、スガタの名を呼んだ。
「言えるわけないだろう! お前にっ……演技でなんか!!」
「スガタっ!?」
 一気に溢れ出す、スガタの憤り。掴まれた腕に痛みを覚える前に、タクトは引き寄せられて息を止めた。
 なんの前触れもなく重なってくるスガタの口唇に、何度も目を瞬く。
 ―スガ……タ?
 突然のことに、呼吸もうまくできない。壁に押しつけられてしまっては逃げ出すこともできないし、そもそもスガタのキスから逃げるなんてこと、タクトの頭には初めっから置かれていない。
「ん…んっ……」
 はあ、と離れた口唇の隙間から息を吐き出して、吸い込んだ直後にまた重ねられる。
 乱暴でつたない、こんなキスはスガタらしくないと考えた。恋人ごっこはやめようと言ったはずなのに、今になってこんなキス、心臓が痛くなるだけだ。
「スガタ、苦し…っ……ん」
 そう訴えた傍から角度を変えては口づけられて、タクトは体からどんどん力が抜けていくのを感じる。
 だけどスガタにしがみつくのもはばかられて、結局支えきれなくなったスガタが、タクトを解放することになった。


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