No.69

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Shooting Star-012-

NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録

 まだ続けるつもりだと、先日お互い確認した。あの行為は、恋人同士としては過ちでなく自然な流れだったと…

NOVEL,その他ジャンル

Shooting Star-012-



 まだ続けるつもりだと、先日お互い確認した。あの行為は、恋人同士としては過ちでなく自然な流れだったとして、スガタもタクトも、続行の意志を示したが。
「……しんどい」
 誤算が、ひとつ。
 ―やっぱり顔合わせるのは気まずいなあ……。
 タクトは窓際、自分の席で大きなため息をついて目蓋を閉じた。
 昨日、彼のキスを拒んでしまったことが悔やまれる。
 今日はまだ、おはようすらも言えていない、現在三時間目が終わった休み時間。
 ちらりとスガタを見てみれば、なにが楽しいのか壁の方へ顔を向けて頬杖をついている。あれは明らかに、タクトと視線を合わせないためのものだろう。
 ―あっちも同じかあ……。
 目を合わせなければ、こうして眺めていることはできるが、
 ―しまった。
 思い出してしまう。
 あの白い首に縋った、あの日の夜。肩にしがみついてスガタを受け入れた、あの夜の幸福で残酷な時間。
 何度も彼の名を呼んだ、愛のない愛のための行為だ。
 いや、正確には愛はあった。演技での。
 またシンドウ・スガタという男が分からなくなる。今はこのクラスの誰よりもスガタを理解できていると思ったけれど、実はそんなことなかった。
 近づいた分、また分からなくなる。
 ―なんでスガタは、僕のこと抱いてくれたのかな……そりゃ、挑発したのは僕だけど。
 スガタが安い挑発に乗るなんて、今となっては考えつかない。だけどつながった事実は消せないし、後悔していることも知っている。
 ―なにがしんどいって、スガタにあんな顔させてんのが…いちばん辛い気がする。
 あの日の翌朝、スガタはいつにも増して口数が少なかった。ワコがいる時には見せていないはずの鋭い表情だってあった。
 いつでも笑っていてほしいなんて言える立場ではないけれど、せめて眉間のしわくらいなくなればいいのにと思う。
 ―最低だ、僕。
 なのに、あの表情をさせているのが自分なのかと思うと、やっかいな独占欲が歓喜に震えているのも分かる。
 ―スガタのこと好きなのに……僕じゃあんな顔しかさせられないんだ。
 それでもこの恋をやめてしまえるほどの勇気もなくて、スガタを手放すこともできなくて、自分がいやになってくる。
 恋なんてもっと簡単で、楽しいものだと思ってた。
 可愛い女の子と青春の謳歌!なんて夢を見ていたのに、実際はうまくいくはずもない親友に恋をして、挑発して体をつなげて、そのくせ怖くてキスを拒んだ。
 ―スガタに合わせる顔なんて、あるわけない……!
「ツナシ・タクト!」
「えっ、あっ、はい!?」
 タクトはハッと顔を上げた。視線の先には、仁王立ちの教師。クラス中の視線を感じて、タクトはそこでやっと事態を把握した。
 もう授業が始まっていたんだ。
「聞いてなかったわね?」
「え、いや、えっと、その、なんていうか、……すみません、聞いてませんでした」
 ぺこりと頭を下げると、五秒の沈黙ののちにあからさまなため息が聞こえてくる。
 怒られるかなと目をつむる。怒られるだけならまだマシだ、廊下に立たされたりどこだかの掃除を言いつけられたりしないだろうかと考えた。
「先生、彼は今日体調が悪いようなんです。差し支えなければ僕が代わりに朗読しますが」
 くすくすと笑いが漏れる教室に、静かな声。タクトは顔を上げて、その声の主を振り向いた。
「あら、そう? じゃあシンドウくんお願いね。ツナシくん具合が悪いなら保健室行ってきなさいな」
「え、あ、はい……」
 教科書を朗読するために立ち上がるスガタと、保健室へ行くために立ち上がるタクト。
 クラスメイトに平気かと声をかけられて、大丈夫だいじょうぶと、何でもないように返してみせた。
 スガタの綺麗な朗読が聞こえる教室を出て、タクトはぼんやりとしつつも保健室へと向かう。
 思うのは、やっぱりシンドウ・スガタ。
 助け船を出してくれたにもかかわらず、視線はいっさい合わせてくれなかった。
 校内で恋人同士を匂わせることはできないにしても、親友同士の視線の交錯くらいあってもいいのではないだろうか。
 かといって、それがあってもタクトが平常心で受けられるかどうか分からない。スガタはそれを見越していたのだろうか。
 ―こんなの、いつまでも続けてていいはずない……。
 スガタにさよならを言わなければならない日は、きっといつかくる。スガタに好きな人ができて、その人もスガタを好きになってくれる日が必ずくるはずなんだ。そのとき自分は、親友として祝ってやらなければならない。
 それでもまだ恋人として傍にいたい気持ちが、体中でくすぶっている。
 保健室のベッドに横になっても、浮かんでくるのはスガタの顔。腕で目元を押さえても、聞こえてくるのはスガタの声。タクトと呼んでくれるあの、声。
 ―スガタが……好きだ。
 いっそのこともう、告げてしまおうか。きっとあの優しくて厳しい男は眉にしわを寄せて、本気なら受け入れられないと声を絞り出して答えてくるはず。
 それが容易に想像できて、タクトは笑ってしまった。
 こんなに簡単に未来が想像できるのに、どうして恋人役を演じてくれなんて言えたのだろう。
 ―……ああ、そうか。
 それがあの時の精一杯だったんだ。
 流れてくる涙を止められなくて、よけいに悔しくなる。
 好きだと言えなかった、あの時の精一杯。
 演技で、なんて逃げ道を作るしかなかった、叶うはずのない恋。
 ―もう……終わらせなきゃいけないんだ…。
 いつまでもスガタに甘えているわけにもいかない。スガタにあんな顔をさせているわけにもいかない。この不毛な想いを、もういい加減に捨てなければいけない。
 あともう少しだけ、あとひとつだけ、スガタに願いを叶えてもらったら。
 ―もうやめようって、言ってあげられる。
 ズキズキと痛む心臓を、タクトはもう押さえることさえしなかった。


#STARDRIVER-輝きのタクト- #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録