華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.68
NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20
#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録
タクトくんがおかしい。 そう呟いたワコの声は、同じ球体に入っているスガタにも聞こえたはずだ。 だが…
NOVEL,その他ジャンル
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タクトくんがおかしい。
そう呟いたワコの声は、同じ球体に入っているスガタにも聞こえたはずだ。
だが彼は、同意を返すでもフォローを返すでもなく、ただじっとその光景を見下ろしていた。
ここ、ゼロ時間が発動した空間の中では、まさに時間など関係ない。外界とはいっさいを切り離し、特殊な時の流れを作り出している。
現在はこの中でしかサイバディは活動できず、外界への被害はない。
しかし封印が解かれてしまえば、外の世界でもここと同様の活動ができる。だが、そんなことになったら人類の混乱は想像に易い。
敵のサイバディは僕が全部破壊する。
そう言いきったタクトの潔さが、スガタには眩しかった。
自分の好きなように戦って、ワコを守り、解放する。
それができる、タクトのサイバディ・タウバーン。他のサイバディとは違う種類のものだ。
エムロードとサフィールの二本を、いつもならほれぼれするほど綺麗に捌くのに、今日はどうしたことだろう。
「切っ先に迷いがあるな」
「あのサイバディ、イヤな予感しかしないの、どうしようスガタくんっ…」
「何を考えている、タクト……!!」
スガタは目を細める。特徴的な、大きな瞳らしきものを持つサイバディは、その覚醒と同時にコントロールを失い無作為に攻撃を仕掛けてきている。先ほどは味方であるはずの綺羅星十字団にまで飛び火したほどだ。
あの不可解な動きは、乗り込んでいるドライバーにさえ制御できていない証拠。以前、ページェントのドライバーを抑えこんだスガタのリビドーなどとは全く違う。
「あっ…!」
ワコが息を飲んで声を上げる。タクトの乗るタウバーンが、敵のサイバディ・アインゴットに掴みかかられて倒された。
スガタは衝動を抑えきれず、天に手をかざす。
ワコがスガタを振り向くのと同時に、王の柱が発動される。青白い光の矢が、二体のサイバディをめがけて放たれた。それこそ敵も味方も巻き込みかねない、スガタの横ヤリ。
タクトは、タウの球体の中でハッとする。衝撃で吹き飛ばされたアインゴットを見やり、スガタを降り仰いで俯いた。
―…また…スガタに……っ!
口唇を噛んだその瞬間、声が聞こえる。
タスケテ
「……!?」
頭に直接響くような声だった。ワコの声ではない。戦いを見物している綺羅星の誰かでもない。
タスケテ……!
「まさか……中のドライバー…!?」
外界と切り離されている今、考えられる可能性はその一つのみだった。
「た、助けなきゃ」
タクトは立ち上がり、スターソードを構え直す。敵とはいえ、助けを求めている人を見過ごすわけにはいかない。弱きものを守るのが、ツナシ家の家訓だ。
王からの横ヤリを入れられてもいまだに暴走を続けるアインゴットを、タクトは哀れむように睨みつける。
振りかざしたスターソードは、倒すためでなく助けるためだった。
「豪快、銀河十文字斬り!!」
タウバーンのスターソードが、暴走するアインゴットを斬りつける。動きを止めて崩れていくそれに、スガタもワコもホッと息を吐いた。
そうして、ゼロ時間は終わりを告げる。外界とのリンクが始まって、それぞれ自分のいた場所へ戻っていくのだ。
すっと、モノクロの世界が色づく。タクトの正面にはスガタがいて、スガタの正面にはタクトがいた。
ゼロ時間になる前の状態に戻ったふたりは、まず最初に息を吐いた。
「ごめん、スガタ……」
「なにが」
「僕、今日ちょっと……怖かったんだ」
スガタには見抜かれていただろうなと、タクトは泣きそうになって俯く。得体の知れないサイバディの絡みつくようなオーラが、言いようもないほど恐ろしかったのだ。
「また、スガタに助けられた……っ」
「迷惑か? 言っておくが僕は、お前のためを思ってでなくやることなんて…ひとつもない」
「分かってる、悔しいだけだよ」
王の柱の力を借りないとサイバディのひとつさえ破壊できないのかと、自分の不甲斐なさと劣等感に襲われるだけ。
「スガタ、僕まだ弱い…」
それが悔しい、と俯くタクトを、スガタはそっと抱き寄せる。肩に乗るタクトの頭をゆっくりと撫でて、強張る体を預けさせた。
「そんなこと、知ってる」
「こんなことスガタには言いたくないのに、スガタにしか言いたくない……!」
タクトはあふれそうになる嗚咽をこらえて、ぎゅうっと拳を握る。大事な親友には、大好きな人には、こんなところ見られたくない。だけどその人にしか見せたくない。
「分かってる、タクト。そのままのお前でいいんだ。弱くていい、ワコを裏切りさえしなければ、…たとえば僕を裏切っても」
「はは、何それ」
冗談めかして言い合うけれど、本気を含む声にお互いが気づいている。
「だけど、敵はサイバディの復元技術を手に入れている。今までのようにはいかないぞ」
緊張の解けた体を離したら、スガタの厳しい声が耳に入る。タクトも、眉を寄せてうんと頷いた。
「今日のあのサイバディ……ドライバーの女の子がさ、タスケテって言ってたんだ」
「それが聞こえたのか?」
「うん、だから何がなんでも助けなきゃって、やっと絡みつくオーラから抜け出せたっていうか」
あの子大丈夫かなあと、誰とも分からないドライバーを思う。死ぬようなことはないにしろ、か弱い女の子があんな得体の知れないサイバディに乗って、大丈夫なのだろうか。
「タクト、あんまりワコを心配させるなよ。今日すごくハラハラしてたんだぞ」
「……うん、あとでメールしとく…」
明日また剣の稽古頼むな、と言いかけて、顔にかかる陰に瞬きを忘れた。
「僕も、心配だった」
言うのとほぼ同じ速度で、重なりかける口唇。
だけど、実際には触れ合えなかった。
「ごっ、ごめんスガタ!」
タクトが、反射的にスガタの体を押しやったせいで。タクトはそうしてからハッとして、慌てて弁解した。
「あの、今のはちょっとびっくりして、体が勝手に!」
真っ赤になったあと、タクトは眉を寄せたスガタを目にして青ざめる。
拒むべきじゃなかったのに、時間は戻ってきてくれない。
「ス、スガタ」
「僕も悪かった、驚かせたな」
だけど何でもないようにいつものすました顔で返してくるスガタ。それが逆に不安だった。
「ごめん、怒って……る?」
「別に怒ってない。そんなに気にするなよ」
うん、とタクトは頷くけれど、どこまで信じていいか分からない。
「今日はもう、帰るか?」
「うん、そうする…今日はちょっとキツかったし」
だけどスガタがそう演じるならば、タクトも合わせるほかにない。気まずい空気を打ち破る技術なんて、タクトにはないのだから。
「また…明日な」
「ん、おやすみ」
ひらひらと手を振って、背を向ける。走って寮に向かう途中でも、思うのはやっぱりスガタのことだった。
キスが嫌で拒んだわけではない。あの夜のことを思い出してしまって、心臓が大変なことになるのだ。スガタには気づかれたくない。
自分たちは恋人ごっこで始まって、恋人ごっこで終わらなければいけないのに、こんな気持ち知られたら友人でもいられなくなる。
―苦しい……スガタが全部欲しくて、苦しいよ…!
こんなはずじゃなかった、と口唇を噛んで寮へと一目散に駆けた。
空で星が流れたことにも気がつかないで。
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