華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.67
NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20
#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録
「もー、スガタくんってば最近つきあい悪いんだからなぁー」 街のショッピングモールで、ワコはそう言って…
NOVEL,その他ジャンル
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「もー、スガタくんってば最近つきあい悪いんだからなぁー」
街のショッピングモールで、ワコはそう言ってぷぅと頬を膨らませた。
「前はよく一緒に来てたんだ?」
「そう、服見立ててくれたりしたんだけど。最近は用事があるって、つきあってくれないし」
いっそそこらの恋人よりも恋人らしい。本当につきあっていないのかと、タクトは訊ねてみたくもなるが、ふるふると首を振った。
演技で自分とつきあっている間、ワコとスガタがそんな素振りを見せたことは一度もないし、メールだってやりとりしている風には見えなかった。
目に見えて、大事にしているのが分かるのに。
「はは、勉強とか」
「スガタくんが?」
「…………ない、よね」
授業を聞いているだけで充分だ、なんて言っている彼が、休日にまで自主的な勉強をするとは思えない。
「一緒にくればよかったのにね」
「そうだね、こんなに美味しいフランクフルト逃すなんて、スガタもバカだなぁー」
フードコートにあったカリッカリのフランクフルトにかじりつき、タクトは久しぶりに緊張のないデートというものを楽しんだ。
「今日ね、フードコートにさ、フランクフルト売ってるとこがあってね」
『ワコが三本くらい食べたんだろう?』
「すげえ、なんで分かんの?」
携帯電話越しに聞こえるスガタの声に、タクトは目を閉じて聞き入る。
最初こそ緊張したものの、電話をするという恋人同士としてのごく普通のやりとりは、タクトにとっていまや重要なものとなっていた。
『ワコの食欲は、普通の倍くらいだからね』
花より団子だよねと、悪意でなく同意を返す。
機械を通したスガタの声の、なんと心地よいことか。特に用があってかけるわけではないのに、話したいことはあとからあとから降ってわいてくる。
『タクト、ワコが好きなら、僕に遠慮することないんだぞ』
そして時たま出てくる、この話題。どうやらスガタは、タクトがワコを好きだと思っているらしく、折に触れては持ちかけてくるのだ。
「……ねえスガタ、僕は今きみの恋人なんだよ。それ分かってて、そういうこと言うかなあ、意地悪」
楽しい?と責めてみると、向こうからは笑い声が返ってくる。タクトにしてみれば笑い事じゃないだろうが、スガタにはおかしかった。以前ワコにも同じようなことを言われたからだ。
『ごめんもう言わないよ』
「それ言うのこれで三回目だよ。スガタのもう言わないは信用できない」
『……どうすれば機嫌直る? 僕もこういうことは慣れてないって言っただろ』
「べっ、別にそんなに本気で怒ってるわけじゃ……ないから…!」
どうすれば、なんて訊かれてもタクトだって困ってしまう。そんなつもりで言ったわけじゃない。そう返してから、しまったと思った。
―言ってもらえばよかったな。好きって……演技でいいから。
そうすれば機嫌なんて一発でよくなってしまうだろう。そのあとどんなに悔やむことになっても。
「あっ、あのさスガタ!」
『うん?』
芝居なんだからいいじゃないか、と何度も何度も自分に言い訳をして、タクトは椅子の上に正座した。
「あの、さ…………す、……」
『……す?』
言ってくれと願えばきっと彼は言ってくれるはずだ。恋人として。
「す…………」
たとえばタクト自身が言ってしまっても、きっと同じように好きだと返してくれるだろう。それが恋人同士のやりとりであるのだから。
「―っ…す」
好き、と言おうとしたその瞬間、ポーンと寮内放送が鳴って心が折れる。
「…………ごめん何でもない、もう消灯時間だ」
『…ああ、もうそんな時間か…。また長いこと話し込んだもんだな』
「明日も早いの? ごめんこんな時間まで」
時計を見れば二十三時。
素直に消灯して眠りにつく生徒がどれだけいるのだろうとは思うが、一応の規則である。スガタの声を聞いたあとなら、安眠できるだろう。
『いつもと変わらないよ。今日はつきあってやれなかったからな、こっちこそすまない』
「また明日、メールとかしてもいい?」
『ああ。おやすみタクト』
「……おやすみ、スガタ」
ゆっくりと、名残惜しく思いながらも通話を打ち切る。
タクトはデスクに突っ伏して、逸る心臓をどうにか押さえ込んだ。
普通に話せた、と息を吐く。
あんなことのあったあとに、いつもと変わらない素振りができるなんて自分も相当神経が図太いなと、思わないでもない。
「好きって……言えばよかった……」
はあーと大きなため息をついて、それでも今日もいちばん最後にスガタの声が聞けたと、口元が緩んでしまう。
この幸福な気持ちのままで眠ってしまおうと、昨夜はベッドの上で絡んだ指をぎゅうっと握りしめて、寝転んだ。
―好きって……言うのかと思った。
通話の切れた携帯電話を見下ろして、スガタはひとつ瞬きをする。だけどそう思っておいて、ふるふると首を振った。
タクトがそれを言う必要性がどこにもない。
興味本位の延長にあるゲームで、そこまで徹底して恋人を演じる必要なんかない。
ムードを盛り上げる為ならまだしも、電話でなんて。ましてそんな言葉を言ったって自分たちには何の関係もないのだ。
雰囲気に流されただけだとしても、そんな流れはなかったはず。
―そろそろ潮時なのかな。
いつまでもこんな遊びを続けていられるはずもない。過ちを犯したあとというのが何とも示しがつかないが、
「続けるつもりがあるなら謝るな、……か。よく言ったものだな」
スガタは苦笑して、定位置のクレードルに据えた。
愛しているとか好きだとか、そんなもの自分たちには必要ないと思いつつ、昨夜タクトを抱いたベッドで、今夜はひとり、眠った。
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