No.654

(対象画像がありません)

殴り倒したいくらい好きですよ

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.02.01

#お題 #両片想い

 少し、困っていることがある。 恋人が男前過ぎて、どうしたらいいのか分からない。 いや、向こうも男な…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

殴り倒したいくらい好きですよ


 少し、困っていることがある。
 恋人が男前過ぎて、どうしたらいいのか分からない。
 いや、向こうも男なのだから、男前であることになんら不思議はないのだが。
 綺麗な顔をしていると思う。だがそれは女性的な美しさではなく、人としての美しさだと思っている。とても口には出せないが、本当にそう思うんだ。
 何においても全力で、一生懸命で、前に突き進むあの行動力は称賛に値する。凜とした表情やピンと伸びた背筋は見ていて身持ちが良くて、彼を慕うヤツらが多いのも納得だ。
 彼に――跡部景吾に惹かれている者は多くいるだろう。もちろん恋という意味でなくともだ。
 そんな男に恋を告白して、まさか受け入れられるとは思わない。夢ではないかと疑って、彼の額をはじいてしまったくらいだ。
 なんで俺の方をはじくんだよと怒った跡部の額にキスをしても、怒られることはなかった。驚いてはいたようだがな。
 その後、「どっちがしたいんだ」と訊ねられて、最初は意味が分からなかった。「抱くのか抱かれたいのかだ」と付け足されて、がくりと項垂れたのは、先週のはじめ。
 待て。待ってくれ。そこまでは考えていなかった。いや考えていなかったわけではない。跡部に受け入れられることを考えていなかっただけだ。
 許されるのならば触れてみたいし、抱きたいとも思っていたのは事実だ。今さら隠すつもりはなかった。
 だけどまさか、気持ちを受け入れてもらった直後に、そんなことを訊かれるとは思わないだろう。
 まあ抱かせてくれるというなら、遠慮なくそうさせてもらうが、跡部の方はどうなのだろう。
 抱く側なのか、抱かれる側なのか。そこに跡部自身の意志は存在しているのかどうか。
 まさか、好きだと言われたら誰にでもそうなのではないだろうな? と悩んだ。だってあまりにも展開が早すぎるだろう。都合が良すぎる。俺に。
 だからさっき、お前はどうしたいんだと訊ねたら、彼は少し驚いたような顔をした。訊かれるとは思わなかったのかもしれない。
 まるで俺が自分勝手に決めるとでも思われていたようで心外だ。
「俺はどっちでも構わねえんだよ」
「どっちでもというのはどういうことだ……」
「そのまんまの意味だろ。俺はお前に求められたい。お前がどっちを望むかによって、俺のこの先が決まるんだよ」
 ……待て。何と言ったんだ跡部。求められたい? 俺にか。それは都合良く解釈しても構わないものなのか?
「俺は前からお前に惚れてんだ。抱く覚悟も、抱かれる覚悟もしてんだよ。テメーもさっさと腹をくくりやがれ」
 ま え か ら ?
 耳を疑った。いや疑いたくない。跡部は確かに惚れてると言った。考えもしなかったが、どうも両想いというヤツだったらしい。
「待て、跡部……初耳なんだが」
「アーン? 手塚、お前思った以上に鈍いじゃねーの。俺の気持ちなんざ、周り中みんな気づいてるぜ」
 なんで当事者が気づかねーんだと、きょとんとした顔をされる。気づくわけがないだろう。
「仕方ねーな、聞き逃すんじゃねーぞ手塚ぁ。誰よりも愛してるぜ、お前をな」
 楽しそうに、本当に愉快そうに耳元にそう囁いてくる。
 ああくそ、殴り倒したいくらいお前が好きだ。


お題:リライト様 /殴り倒したいくらい好きですよ
#お題 #両片想い