No.647

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膝枕をする

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.25

#お題 #両想い

「重くないか?」「いや、別に」 訊ねられて、跡部は小さく首を振りながらそう答えた。乗っかるのは確かに…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

膝枕をする

「重くないか?」
「いや、別に」
 訊ねられて、跡部は小さく首を振りながらそう答えた。乗っかるのは確かに大の男だが、膝に頭を乗せているだけだ。体のそんな一部分を、重いとは思わない。
「位置、このあたりでいいのかよ。というか、硬くねえか……」
「確かに柔らかくはないが」
 だろうなと目を細めるが、手塚の眉間からは皺が消えている。
「だが、心地いい。跡部、少し、このままで……」
「ああ、いいぜ。好きなだけ眠りな」
 言いながら、手塚の髪をそっと撫でる。広いソファの上で、跡部の膝を枕に寝そべる手塚など、この先何度拝めることだろう。
 少し疲れたなと言う恋人に、ベッドを(ベッド本来の目的で)促してみたが、「そこまでじゃない」とわけの分からないことを言った後に、膝を貸してくれとのたまったのだ。
 断る理由もなく、跡部はソファに腰を下ろしてぽんぽんと太腿を叩いて、今に至る。
 いわゆる膝枕というヤツか、と手塚の髪を撫でながら状況を把握する。手塚がこんなふうに甘えてくるのは珍しくて、じわじわと照れくささと嬉しさがこみ上げてきた。
 あ、と気づく。手塚が眼鏡をしたままでいることに。仰向けの体勢とはいえ、それではリラックスができないだろうと、小さく声をかけた。
「手塚、眼鏡。……外すぞ」
「ん……」
 了承のような声が聞こえて、跡部はそっと眼鏡のフレームを掴む。ゆっくりと外して、つるを畳んだ。手を伸ばしてキャスター付きのテーブルを引き寄せ、そこに置く。
 ちょうど携帯端末もそこに置いていて、持ち上げた。突然の着信や受信の音で手塚が起きてしまわないようにと、サイレントマナーのモードに変える。
 すうすうと規則正しい寝息が聞こえる。呼吸に合わせて腹の辺りが上下するのが見える。相当疲れていたのだろうなと、何度も髪を撫でた。穏やかな眠りでありますようにと祈りながら。
 皺のない眉間と下がる目尻を見れば、良質な眠りのようだがと安堵して、口許が緩む。
「……ったく、可愛い寝顔しやがって」
 そういえば、手塚の寝顔はあまり見たことがないなと思い出して、視線を泳がせる。二人きりの部屋なのに、周りに誰もいないことを確認するようにキョロキョロと見回した。
 そして、こくりと唾を飲み、両手で端末を構える。作動させたのは、カメラ機能。手塚の寝顔をフォーカスして、撮影ボタンをタップした。
 二度、三度。
 小さくカシャリカシャリとシャッター音が鳴ってしまったが、手塚が起きる気配はなくて安堵した。
 何だか重要なミッションを終えたかのように、心臓が大きく波打っている。
 写真とはいえ、これでいつでも手塚の寝顔が見られる。
 恋人なのだからおかしな行動ではないだろうと、自分に言い訳をした。
 それに、跡部はちゃんと知っている。
 手塚の端末に、跡部の寝顔を撮った写真が保存されていることを。



お題:リライト様 /膝枕をする
#お題 #両想い