華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.62
NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20
#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録
メールと電話という手段を得てからは、校内での接触が少なくなったように思う。 おはようと、お昼食べよ…
NOVEL,その他ジャンル
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メールと電話という手段を得てからは、校内での接触が少なくなったように思う。
おはようと、お昼食べようと、部活行こうと、バイバイじゃあまた明日。
友人同士の当たり前の日常が、そこにある。
だけど休み時間になると、携帯電話が気になってしまう。
同じ教室で授業を受けているのだから、メールの送受信なんてしていないと分かっているのに、気持ちがそわそわして仕方がなかった。
おはよう。授業中に居眠りするなよ。さっきまで道場で稽古してたよ。お前は? ああ、おやすみ。
メールの受信ボックスが、スガタで埋まっていく。フォルダに分けて保護設定しようかと思うが、全部の保護をしたくて追いつかない。
「スガタ、スガタ。あのさ、この間言ってたCD持って来たんだけど」
「借りてっていいのか? 早めに返すよ」
「あっ、ねえタクトくん、次私にも貸してよ」
「うんいいよ」
いつものように三人で、演劇部の部室に向かう。変わりない、日常だ。
相変わらず綺羅星十字団も戦いを仕掛けてくるし、学生の本分であるここではテストなんかもあるし、まさに青春だ、とタクトは思う。
恋人と言い切れはしないけれど、大事な人も傍にいてくれる。
これ以上を望んだら、きっとバチが当たってしまうだろう。
「ねえワコは南方神起の全部持ってるんだっけ?」
「あっ、うん、貸そうか?」
「セカンドアルバム聴いたことないんだ。今度貸してよ」
うんいいよーなどと快く笑うワコと、ワコは購入特典とか全部持ってるほどだからねと笑うスガタ。いいじゃない、と頬を膨らませる可愛らしい少女と、三人で部室へと入った、途端。
「あっ、タクトくんタクトくん! あのね聞いて!」
最近入部した、二組のヨウ・ミズノが綺麗な青い瞳をきらきらと輝かせて走り寄ってきた。
「ミ、ミズノちゃん今日も元気そ……」
「今度の劇でね、私とタクトくんのちゅーがあるんだよー!」
「―え?」
言われた言葉の意味がすぐには理解できずに、タクトの目が瞬かれる。
「ちょっ……ちゅーって、キスシーンてこと!?」
最初に声を上げたのはワコだった。
「うんっ、そーなのワコちゃん! ほら脚本ー」
ミズノが差し出してきた脚本とやらをひったくり、ワコは中身を確認していく。ピタリと手が止まったその箇所に、書かれてあるのだろうか。
タクトと、ミズノのキスシーン。
息を止めたままのワコを眺め、タクトはようやく事態を把握した。
―本当にあるんだ。
「ね、ねえ部長、これっ……本当にするの?」
「そーだよ。配役も決まってる」
しれっと何でもないように言い放つ、エンドウ・サリナ。ふふーと嬉しそうに笑うミズノ。興味津々で目を輝かせるジャガーとタイガー。
タクトは、ちらりとスガタを見やる。
見なければよかったと、あとになって悔やんだ。
―スガタには、何でもないことなんだ。
それこそ何でもないように、ワコが放り出した脚本をぱらぱらとめくっている。その指先には迷いも何もなく、視線も揺らいでない。
演技とはいえ恋人のキスシーンを聞いても、スガタは何とも思わない。
ズキンズキンと心臓が痛んだ。
泣き出したいのを必死で抑えて、無理に笑ってみせた。
「ミズノちゃんは、いいの? 僕なんかと」
「私はヘーキッ! だってタクトくん好きだもん」
「へ? そ、そう? ありがとう」
どさくさ紛れの告白に、はははと笑うタクト。それを面白くなさそうに眺めるワコの眉間に、しわが寄った。
「ねえ部長、このシーンて変えられないの?」
「無ー理。そこがヤマなんだもん、そこ抜かしたら全部書き直しだよ」
練習もしなきゃならないんだから、あまり時間はないと続けるサリナに、ワコは俯く。
「自分が相手役じゃないからって、ひがまなーい」
「……はぁっ? ちょ、違う違うそういう意味じゃなくて!」
どう誤解したのか、ため息混じりに呟いたサリナにワコは慌てる。顔が真っ赤なのは、きっと条件反射というものだろう。
「モテモテですね、タクトくん」
ジャガーが笑いながら話しかけてくるけれど、どう返していいか分からずに、タクトははははと笑うしかできなかった。
普通の男子高校生であれば、こんなシチュエーションは心躍るだろう。可愛らしい少女たちが、自分に好意を寄せてくれているかもしれないなんて。
だけどタクトには、好きな人がいる。叶いそうもない恋は、現実逃避もできないほどに苦しくて、気分が沈んだ。
明日の休み、一緒に街へ行こう?と打ったメールは、送信されないままタクトの携帯電話に残っていた。
#STARDRIVER-輝きのタクト- #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録