No.61

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Shooting Star-004-

NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録

「スガタっ……待った……!」「待たないし、加減もしない。お前が言い出したことだろう」「くっ……」 タ…

NOVEL,その他ジャンル

Shooting Star-004-



「スガタっ……待った……!」
「待たないし、加減もしない。お前が言い出したことだろう」
「くっ……」
 タクトの眉が寄る。スガタの責めは容赦なくて、息が上がった。
「あ……っ!」
 ガッと音がしたかと思うと次の瞬間に木刀は宙を舞って、やがてガランガランと大仰な音を立てて床に転がった。
「注意力が散漫だ、タクト」
 鋭い視線が射抜いてくる。タクトはぐっとつまり、両手をあげてホールドアップ。スガタはこんな時、本当に容赦がない。
「剣術、誰に習った? まさか自己流ってわけでもないだろ」
 少し休憩するか、とスガタは木刀を下ろし、肩の力を抜く。いつ見ても格好いいなあと、タクトは袴姿の彼を眺めて思う。
「僕は家族に。どこの流派とか、分かんないけどね……じいちゃんは、ものすごく強かったよ」
 遠く離れた家族を脳裏に浮かべる。結局一度も勝てなかったなあと思い出して、ふふふと笑った。
「でも、強くならなきゃいけないもんな。敵だってこのままでいるはずがないんだ」
 綺羅星のサイバディは、すべて破壊すると決めた。ワコのために、スガタのために、ひいては自分のために。
「ヤツらがなんのためにサイバディを動かしてるのか……僕には分からない。でもお金のためだとは、どうしても思えないんだよね」
 スガタはどう?と見上げられて、スガタは少し困った顔をした。それが分かれば、やっかいなことになりかねないからだ。
「お前が知る必要はないよ。もしヤツらの理由に共感したら、お前はそのあとのことを考えているのか?」
「……考えて、ないけど」
「ほら。僕たちにとって奴らが敵なのと同時に、ヤツらには僕らが敵なんだ」
 いっそ、すべてのスタードライバーが金や世界征服のために動いてくれていたらどんなに楽だろうか。スガタはそっと目を伏せる。
 ひとり、スタードライバーを知っている。以前剣を合わせたことのある、シナダ・ベニオ。
 先日タクトと戦ったページェントのドライバーは、彼女でしかあり得ない。あの太刀筋は彼女にしか繰り出せないだろう。
 彼女が、金や世界征服……つまりは私利私欲のために動いているとは思えないのだ。いや、思いたくないのだ。
 だからこそタクトには、彼女たちの動く理由を知ってほしくないと思う。
 それは、スガタの勝手な思いだったとしても。
「タクト、休憩は終わりだ。構えろ」
「厳しいなあ」
「文句を言うなら、一度でも僕から一本取ってからにしてくれ」
 ちぇ、とタクトは舌を打って、構える。
 剣を持つ者の習性なのか、持って生まれたものなのか、構えた瞬間に空気が張りつめる。
 タクトはスガタの視線を浴びながら、その視線を逃さないように捉えた。
 ―僕には、僕の理由がある……譲れないよ。
 ひとりひとり、それぞれの理由がある。
 演技でも偽りでもない、本当の願いだ。
 タクトは、木刀を振りかぶった。




「最近、泊まっていかないんだなタクト」
「だって……届け、出してないし」
 玄関先で、厭味でなく振ってきたスガタの言葉に、タクトは苦笑した。事前に届けを出せば外泊だって可能だ。
 だけどタクトは、あえてそれを出していない。
「シナダ寮長に、何か言われた?」
「別に、そういうんじゃないって。……僕が泊まっていかないと、寂しい?」
 家の中の灯りの逆光で、スガタの表情はよく見えない。イジワルするつもりで言ってみたけど、
「ここは、そうだなって返しておいたほうがいいのかな?」
 逆に訊き返されて苦笑した。恋人なら、そう言ってしまった方がいいのだろう。
 だけど自分たちは、本当の恋人同士ではない。
「じゃあ僕は、毎日最後に聞く声はきみのがいい、とでも言っておくよ。おやすみ、スガタ」
 本心でそう思うのに、本心にしてはいけない。この気持ちは、心の奥底にしまっておかなければならないんだ。
 だって本当は親友でしかないのだから。
「可愛いこと言うなタクトは。明日から、電話してあげるよ」
 苦笑混じりに呟かれた言葉に驚いて、振り向く。
「……スガタは、きっと女の子とつきあってもうまくいくんだろうな」
 男であるタクトでさえ、そんなことを言われたら嬉しいのだ。女の子だったらきっと、一瞬で昇天してしまう。
「どういう意味だ?」
「言葉の通り、そのまんま。僕なんかにさえそうやって言えるんだからさ、女の子の扱いは上手いだろ」
「僕には今そういうつもりはない。タクト、お前が誰かとつきあいたいのか?」
 スガタの瞳が鋭くなる。負けてしまわないようにと、タクトも睨み返そうとしたが、結局できずに逸らした。
「なるほどね、そういうことか。タクトがどうして、僕に恋人役を頼んできたか分かったよ」
 大仰なため息が聞こえる。気づかれたのかと思わずスガタを振り向いて、弁解しようとしたが。
「つきあいたい誰かとの予行演習ってとこか。それならそうと、言ってくれれば良かったのに。すまないが、僕はお前の思ってるほど女の子の扱いに慣れちゃいないよ」
「……スガタ!? ちが……っ違うよ! 僕はそういうつもりで頼んだんじゃ……!」
 タクトは言葉を飲み込む。
 じゃあどうしてと訊かれたときに、きっとなにも言えない。いっそこのまま誤解されていた方がいいのか。
「友人として……演技とはいえ恋人として接してきて、少しはお前を理解したつもりだったが、また分からなくなった」
「僕だって分からないよ! なんで恋人役なんか受けたのスガタ!」
「お前が言い出したんだろう!」
「ス、スガタ……っ」
 怒鳴る声のあとに、スガタは顔ごと視線を逸らす。ざあっと血の気が引いていく音を聞いたような、気がした。
「違うんだ……ごめんこんなこと言いたかったわけじゃなくてっ……」
 ぎゅっと制服のズボンを握る。泣いてしまいそうで、でも俯いてしまったらこの先ずっとスガタを見られなくなりそうで、必死で我慢した。
「スガタが……あんまり上手く切り替えしてくるから……怖くて寂しくなったんだ。ごめん……僕の知らないスガタがまだいるんだって思ったら……もっと早く」
 逢いたかった、と言いたかった声は、喉の奥に吸い込まれていく。体に巻き付く温もりに、タクトは目を瞠った。
 スガタの腕の温もりが、信じられなくて。
「え、あ、わっ…あ、あの、スガタ?」
 抱きしめられていることを認識したタクトが、慌てて上げた声に、スガタの体がビクリと強張る。
 そそくさと離れていったスガタの温もりを、タクトは少し残念に思った。
「お前は、少し自分の言動に気をつけるんだな」
 そのまま何もなかったみたいに背中を向けてしまうスガタを、タクトは言葉だけで引き留める。
「ごめんまだ怒ってる?」
 視線だけが、振り向いてくれる。それだけで、まだ嫌われてはいないと認識できた。
「怒ってない、呆れてるんだ。おやすみタクト」
 スガタ、と呼び終わる前にもう、扉は閉まっていた。
 怒っていないと彼は言ったけれど、どこまでが本当か分からない。あれも演技なのか、そうでないのか。
 抱きしめてくれた温もりはまだ覚えていられるのに、心だけがとても遠い。
「スガタ……」
 タクトは玄関の段を降り、いちばん下に座り込む。冷たくて硬い感触は、心臓を痛ませた。
「言わなきゃ良かった」
 いっそ好きだと言ってしまえば良かった。
 演じてなんて頼んだせいで、よけいにつらい。こんなスガタを知らないままだったら、片想いだけで満足していられたかもしれない。
 欲求が頭をもたげる。
 スガタに言ってしまいたい。スガタに好きになってもらいたい。本当の恋人同士になりたい。
 できるわけない、と抱えた膝に顔を埋める。
 スガタの傍にいる手段が、他になかったわけでもないだろう。どうしてよりによって、恋人役を演じてくれなんて言ってしまったんだろう。
 どうして、スガタは受けてしまったんだろう。
「…八つ当たりだよ、これじゃ……」
 タクトは携帯電話を取り出して、スガタのナンバーをダイヤルしようとして、やめた。
 耳元で声なんて聞いてしまったらまた、抑えきれなくなる。
【さっきはごめん、おやすみ。】
 たったそれだけ、メールで送信した。
「わっ」
 すぐに着信音が響いて、危うく取り落とすところだった。
【分かってる、また明日な。】
 それだけの、スガタからの初めてのメール。
 ―うわ……うわぁ……!
 タクトの頬が真っ赤に染まる。目をぎゅっとつむって幸せを噛みしめ、軽い足取りで寮へと帰っていった。


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