No.63

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Shooting Star-006-

NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録

「どうした、タクト」 家の前で声をかけられて、タクトは顔を上げた。 くせになってしまっているのか、週…

NOVEL,その他ジャンル

Shooting Star-006-

「どうした、タクト」
 家の前で声をかけられて、タクトは顔を上げた。
 くせになってしまっているのか、週末はスガタの家に行くようになった足が、その道のりをいつの間にかたどっていた。
「さっきからずっと、僕の話を聞いていない」
「えっ、……あ、ごめん、何だった?」
 学校からここまで、何も耳に入らなかったのだ。隣にスガタがいることさえ、認識できていたかどうか。
 大事な話だったらどうしよう、とタクトは焦りながらも、家の中へ招き入れてくれるスガタに続いた。
「いや、別に……明日はどうするのかと思って。恋人同士のデートとやらを楽しむのか、友人として剣の稽古に励むのか」
 つまらなそうな声音は、いつもより冷たい空気をまとっている。
「まあもっとも、今のお前じゃ稽古つけてやる気にもならないけどな」
 ぴりぴりとした空気が、タクトを不安にさせる。今のスガタは、演じている【恋人】だろうか、それとも本当の【親友】だろうか。
「スガタ、僕って君のなに?」
 廊下に声が響く。
 こんなことを訊くべきじゃない。スガタの答えは分かりきっていて、
「恋人だろう?」
 そう言わせているのは自分だと知っていて、胸が痛む。
 悔しくて胃がぐるぐると回る。スガタは悪くない、ただ頼まれた役を演じているに過ぎないのだ。タクトに責める資格はないのに、
「だったらもっとそれらしくしてよ!!」
 吐き出したあとはもう、止まらなかった。
「タクト?」
「そんな当たり前みたいに恋人だっていうなら、ミズノちゃんとのキスシーンに平然とするな馬鹿スガタ!」
 学校で、それと分かる振る舞いはしないというルールはあったはずだ。
 だから、スガタが眉をぴくりとも動かさなかったことを、責めることなんてできないのに。
「イヤならすることないとか、ワコみたいにシーン変えられないかとか、言ってくれてもいいじゃないか!」
「僕にどこまで求めるんだタクト。部長だってあのシーンは削れないって言っていたし、お前は演技でキスなんてぜんぜん平気だろう?」
 振り向いてもくれない背中に、涙がこぼれる。
 本当の恋人同士だったら、きっと何か言ってくれた。演じている状態だったとしても、完璧を求めるならそうしてくれただろう。
「僕とだって、平気でキスしているじゃないか」
「だって、スガタとはっ……!」
 次の言葉は紡ぐことができなかった。
「んっ……」
 振り向いたスガタに腕を引かれ、肩が壁にぶつかる。それでも痛みより前に、彼の口唇を認識した。
 強引に入り込んでくる舌先から逃れたいのに、心だけが全部スガタに向かっていく。隙間なく埋め尽くされた口唇を、受け入れる以外に何ができただろう。
「ん……ふっ」
 スガタの髪が頬を流れていく。指先が喉を撫でて、手のひらが肩を包む。
 まるで恋人同士のキス、だ。
「……ほら、抵抗もせずに」
 スガタは離したあとの口唇を親指でぐいと拭い、目を細める。
 あからさまに軽蔑したような視線に、タクトの心臓がズキンと痛んだ。
「ス、スガタだってこれ、演技だろ? 平気なんだよね、こんなこと!」
「僕は今……お前の恋人だからな」
 役の上ならなんとでもなるさと、背を向けかけるスガタに、タクトは思わず叫ぶ。
「だったら抱いてみせろよ!」
 スガタが、目を見開いて振り返る。ためた涙を、タクトはどうにか我慢した。
「な……にを、言ってる?」
「恋人っていうなら、演技ならどうとでもなるっていうなら、僕を抱くことだってできるんだろ!?」
 完全に勢い、だった。
 演技ということを強調するスガタが憎らしくて、そんな風にしか触れられない自分が憎らしくて、悲しくて悔しかった。
 もっと別の方法があったかもしれない。
 もっと違う出逢い方があったかもしれない。
「できないっていうなら、僕だけ責めるなよ!」
 こんな方法でしか、スガタをつなぎ止めていられない自分が、愚かしくて浅ましくて、だけど他にどうしようもなかった。
「タクト、お前自分が何を言っているのか、理解しているのか?」
 バカらしい、と止めてくれるのはスガタしかいない。
 言葉ででも、打ち付けてでも止めてほしかった。
 だけど、
「抱かないの? それとも、抱けないの?」
 スガタに触れたいのも、本当だった。
 安い挑発に乗るような男ではないと思っている。今だって、責めるような鋭い瞳が目の前にあるだけだ。それさえも心地良いと思ってしまうあたり、本当におぼれているのだと思うけれど。
「スガタっ?」
 手首を取られて、強く引かれる。体が引っ張られて、歩きだした彼の後をついていくしかなかった。
「スガタ」
「来いよタクト。抱いてやる」
 苛立つスガタの声に、ビクリと肩を震わせて、ついで頬を赤らめた。そんな台詞が似合う男も、そうそういないだろうなと。
 スガタの部屋が近づいてきて、タクトは今さらながらにハッとする。
 本当に、するのか。
 言い出したのは確かにタクトの方だが、そうなった後のことはまるで考えていなかった。
「わっ」
 部屋についたと思ったら乱暴にベッドに放られて、思わず声が上がる。軋んだベッドのスプリングに、顔の熱が上がった。
「スガタ、ちょ、ちょっと待って」
「今さら待ったはなしだ、タクト」
 お前が言い出したことだろう、と付け加えられてぐっと言葉に詰まる。それは確かにそうなのだが、どうすればいいのか分からない。
 スガタに任せていればいいのか、自分からも何かした方がいいのか。
「ねえ、僕たち今、恋人同士なんだよね」
「そうだな」
 言いながらしゅっとネクタイを引き抜くスガタを、タクトはもっと見たいと思ったか、それとも恐れたか。
 ベッドの上に片腕で状態を支え、できるだけ挑発するような口調で、告げてやった。
「恋人同士の初めてくらい、優しくしてくれよ」
 そう言って、自分もネクタイの結び目に指をかけてみせる。
 自分でほどこうとしたタクトの手を止めて、スガタはゆっくりと引き抜いていく。布がこすれる音が耳に響いて、トクトクと心臓が鳴った。
 指が震えていたのには気づかれなかっただろうか。視線はちゃんと、挑発的になっていただろうか。
「タクト、目。閉じろ」
「……うん」
 タイを抜いて、用はないと興味をなくされたそれは、ベッドのどこかに放られる。だけど、スガタの口唇が眼前に迫るタクトには、そんなこと気にしていられなかった。
 そうして触れる口唇は、今までのどのキスよりも優しくて…激しかった。
「んっ……、スガ……」
 顎を掴まれて、ぐいと奥まで入り込んでくるスガタの舌。口唇が離れた隙にせめて名を呼ぼうとするのに、そんな暇もない。
 いつの間にか背中に感じるシーツの感触も、熱いキスに意識を持っていかれて、あやふやなものに変わる。
「んん……っふぁ」
 舌の表と裏を合わせるような濃密なキスが、タクトの思考を邪魔していく。
 本当はもっと、スガタのことを考えていたいのに。
 本当はもっと、スガタに触れていたいのに。
 呼吸さえ奪っていきそうなキスが、それを阻む。舐られ、吸い上げられ、押しつけられて意識が朦朧としてくる。
 酸欠のためか、それ以上の快楽からか、鼻から抜けていくタクトの喘ぎはくぐもる。
 スガタの手が両頬を包み、被さるように落とされる口づけに、タクトの胸は跳ね上がるばかり。
「はぁっ……あ」
 口の端からこぼれた唾液を舌先で舐めとって、スガタの口唇はようやく移動していく。喉を舐め上げられて、タクトは思わず声を立てた。


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