華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.584
情熱のブルー,塚跡WEB再録 2023.03.19
#塚跡 #片想い #ウェブ再録 #シリーズ物 #情熱のブルー
学校に今後の学業の相談をし、留学の手続きを早めてもらった。家族は本当にもう行ってしまうのかと慌てて…
情熱のブルー,塚跡WEB再録
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学校に今後の学業の相談をし、留学の手続きを早めてもらった。家族は本当にもう行ってしまうのかと慌てていたが、元々卒業したら渡独の予定だったのだ、少しばかり早まっただけである。許可と準備がすめばすぐにでも、と心は逸った。
そんな時、荷物が届いた。
「………………跡部?」
それは合宿所にいるはずの跡部からで、開けてみると、スマートフォンの端末。どうやら海外で使えるものらしいが、頼んだ覚えはない。今の時間帯なら自由時間だろうかと、すぐに現在使っているスマートフォンで跡部に連絡を入れた。
『ああ、届いたかよ。思ったより早かったな』
「届いたかじゃない。どういうことだ」
『アーン? ねえと困るだろうが。俺様からの餞別だぜ。ありがたく受け取っておきな』
使い方や契約のことなどをつらつらと並べられ、強引なのはどちらだと言ってやりたい。だが、餞別だというなら受け取っておこう。心遣いが嬉しくないわけもない。
『もう準備は済んだのか?』
「ああ、だいたいは」
『この際ついでだ、チケット取ってやるよ。いつがいい?』
「跡部」
『テメェには、とっととプロになってもらわねえと、こっちの士気が落ちるからな。断んなよ、手塚』
そんなことで落ちる士気とやらもいかがなものか。
だがこんな時、跡部景吾が財閥の御曹司だというのを実感する。ノブレスオブリージュにしたって世話好きにも程があるというものだ。
『これくらいさせろ。ライバルの華々しい旅立ちなんだ』
「………………断れなくさせておいて、どの口が言うんだ」
『ククッ、お前、本当にいらなかったらバッサリ断るくせによ』
ぐっと言葉に詰まった。
時間の余裕的に、跡部の申し出は本当にありがたい。厚意に甘えてしまうのは情けないが、今後何かで返せていけたらいい。
「では、ありがたく受け取ることにする。こっちのスマートフォン、お前は番号など分かっているのか?」
『ああ。俺のは登録してあるから、何か力になれることがあれば連絡しろ。必ずだ』
最初に連絡先を交換した時、やり方が分からないと悩んだことを覚えていたのだろうか。今回も困ることを見越して、すでに登録してくれたらしい。それは正直ありがたかったし、跡部だけがこの端末の情報を知っているというのが、くすぐったかった。もちろん家族には伝えるけれども、特別感が嬉しい。
「何から何まで世話になるな」
『ふふ、構いやしねよ。テメェの世話を焼くのは案外楽しいぜ』
「俺はあまり落ち着かないが。だが跡部、この借りはいつか返させてもらうぞ。だから――……いや、なんでもない。野暮なことは言わないでおこう」
だから、追ってこい――そう言おうと思ったが、言わずとも跡部景吾はプロになる道を進むだろう。そしてまた、同じ世界で相見える。
言わないでいたことで、逆に伝わってしまったのか、向こう側からふっと笑う音が返ってきた。
『ああ、楽しみにしてる。手塚、見送りは行かねえぜ』
「合宿中なんだ、当然だろう。サボるな」
『誰がサボるってんだよ。可愛くねえなテメェはよ』
「結構だ。……では、また――いつか」
『気をつけて行けよ』
ああと頷いて、手塚は通話を切った。
いつか、プロとして跡部と試合がしたい。必ず実現してみせる。楽しみだなと口の端は上がるけれど、吐いたため息は寂しい気持ちも隠すことはできなかった。
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