No.524

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永遠のブルー-028-

永遠のブルー,塚跡WEB再録 2022.04.10

#塚跡 #片想い #未来設定 #ウェブ再録 #シリーズ物 #永遠のブルー

 あの時のインタビュー記事が載った雑誌が発売されて以来、女性誌の取材が増えた。それだけでなく、経済誌…

永遠のブルー,塚跡WEB再録

永遠のブルー-028-


 あの時のインタビュー記事が載った雑誌が発売されて以来、女性誌の取材が増えた。それだけでなく、経済誌とファッション誌もだ。
【跡部様の一途な片想い】とファン界隈を騒がせた雑誌は、紙・電子書籍ともに過去最高の販売数を叩き出したらしく、それに伴って跡部のオフィシャルサイトがサーバーダウンし、販売していたグッズは数分と保たずに完売した。
 それを商機と捉えた各界が、こぞってオファーを出したのだ。
 跡部グループが展開する事業の株価は上昇し、思わぬ相乗効果に跡部自身驚いたくらいだ。
『俺のとこにもいくつかね、依頼が来たよ。氷帝メンバーのところにいってるんじゃないかな』
「悪いな萩之介。そっちにまで波及するとは思わなかったぜ」
『景吾くんは少し自分の影響力ってものを自覚するといい。まあ、こっちは楽しんでるからいいけど。多分忍足もね。だってあの対談、よりによってお相手本人がいるんだもの』
 笑っちゃったよと言う滝に、跡部は肩を竦める。あの場に滝や忍足がいなくて良かったと心から思う。いたら絶対に背中から撃たれていたに違いない。
『ほぼ十年、長いな……よくまあ飽きもせず好きでいられるね』
「だからこじらせてるって言ってんだろ。あんな強烈なヤツに出逢っちまったら、他のどんなヤツでも物足りねえ。テニスも、恋もな」
『そりゃまあ、手塚じゃねえ……。そういえば、後半戦からものすごい勢いで各大会制覇していってるねえ、彼。何かあったの?』
 その言葉に、跡部はややあってから「さあな」と返した。本当に分からないのだ。
 一年の前半を締めくくるとされるウィンブルドンが終わってから、手塚は各地で行われている大会で次々と好成績を収めている。
 もちろん飛び入りで参加できるものではないのだから、元々予定は組んであったのだろうが、それにしても破竹の勢いだ。
 祝いの電話をしても「ああ、ありがとう」と言うだけだし――まあこれは元からだが、以前はそれでもオフに逢うことだってできていたのに、「練習がある」と切られる。
「越前に上を行かれたことがよほど悔しかったかねえ……。アイツも負けず嫌いだからな」
『そんなところも好きなんでしょ、景吾くん。可愛いな』
「……俺様を可愛いなんていうのはテメーと忍足くらいだぜ」
『で、君は次の大会欠場するって? 怪我……じゃないよね』
 滝は本来の電話の目的であっただろうことを問いかけてくる。
 そう、跡部はエントリーしていた次のトーナメント戦の欠場を決めていた。トレーナーやコーチ陣にも何度も相談して決めたことで、すでに主催側にも伝えてある。
「次のウィンブルドンにすべてを懸けたい。手塚と試合してえんだ。今のままじゃ、アイツの覚悟の前じゃ、負ける」
 あのインタビューを受けた日、手塚は越前と――跡部に宣戦布告してきた。「次は俺が優勝カップをもらう」と。
 手塚でなければ何の冗談だと言ってもやれるが、あの男が嘘やこんな冗談を言ったことはない。本気で優勝を狙いに行っているのは、ここ最近の目覚ましい活躍からも分かる。前回だって優勝を狙ってはいただろうに、わざわざそう宣言してくる手塚の覚悟のほどが、伝わってきた。
 だから、あれから休日を合わせてまで彼とオフを共にすることはなくなった。邪魔はできない。
 それ以上に、自分自身の鍛錬もしなければならない。
 試合の結果だけを確認して、『おめでとう』とメッセージを入れるのみ。それに『ありがとう』と『次も勝つ』以外の言葉が返ってきたことはない。
『全米や全豪じゃないんだね。ウィンブルドンにこだわりでもあるのかな』
「さあな。体の仕上がりをベストに持ってこられる時なんだろ。アイツと本気で優勝争いするのは楽しみだ」
『俺たち氷帝メンバーは、もちろん景吾くんを応援させてもらうよ。久しぶりに同窓会でも開こうかな』
 大きなテレビの前で氷帝コールでもしておく、と滝は笑う。
「ありがとよ、萩之介。どこにいたってお前らのコールは聞こえてるぜ」
『さすが、キングは言うことが違う。じゃあ、またね。元気そうで安心したよ』
「ああ。もし雑誌の方がうるさければ対処するから、遠慮なく言ってくれ」
『うん、みんなにも伝えておくよ』
 通話を打ち切って、跡部は息を吐く。トークアプリの履歴を開いて、手塚からのメッセージを眺めた。
 遡って、十月四日。
『誕生日おめでとう』という短いメッセージ。
 大会で忙しい時期だったはずなのに、忘れずにいてくれたことが嬉しかった。この短い一言が、どれだけ自分を力づけてきたことか。
 端末をぐっと握りしめて、額を当てる。
「手塚……」
 目を閉じれば今もまだ、目蓋の裏に鮮やかによみがえるものがあった。
 頂上決戦と言われた、あの夏の暑い日。
 手塚と試合がしたい。
 まだこんなにも彼との再戦を望んでいたのかと、改めて思い知らされた。
 プロの世界に入って、その厳しさも知って、以前のようながむしゃらさは年月とともに薄れていったと思っていたけれど、ただ眠っていただけだった。
 目覚めるきっかけがまたあの男だというのは、悔しくもあり、幸福でもあった。
 自分はまだ、こんなにも手塚国光という男に恋い焦がれている。
「上り詰めるぜ、手塚ァ……!」
 恋も、テニスも、まだ目指す高みがある。血湧き肉躍るこの感覚が、跡部景吾を作り上げていく。ぞくぞくするほど楽しいなと、跡部は顔を上げて笑った。


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