No.511

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永遠のブルー-015-

永遠のブルー,塚跡WEB再録 2022.04.10

#塚跡 #片想い #ウェブ再録 #シリーズ物 #永遠のブルー

 一回戦、二回戦、と順当に勝ち進んだ。さすがに全国クラスのプレイヤーが揃っていたが、氷帝の敵ではない…

永遠のブルー,塚跡WEB再録

永遠のブルー-015-

 一回戦、二回戦、と順当に勝ち進んだ。さすがに全国クラスのプレイヤーが揃っていたが、氷帝の敵ではない。優勝を狙っているのだ、当然のことではあるのだが。
 三回戦は明日行われる。三回戦――準々決勝、氷帝学園は、青春学園と当たる。つまり、手塚の率いるチームとだ。
「よう、手塚。無事に勝ったみてえじゃねーの」
「跡部か。そちらも同じようだな」
 青学は組み合わせの結果、一回戦は対戦相手がいなかった。充分な力を保ったままの二回戦、負けるはずがなかったのだけれども。
 コートから上がってきた青学のメンバーに、激励とも挑発とも取れる言葉を投げかけてやる。後ろにいる氷帝メンバーの視線が、自分を通り越して青学の連中に向かっているのがひしひしと伝わってきた。
 次はいよいよ、対決だ。関東大会の再現かと言われているのは知っているが、同じ轍を踏む気はさらさらない。勝って次の試合に臨むのだ。
「手加減はしねぇぜ」
「こちらの台詞だ」
 睨み合う視線が、空中で絡まる。この会話と視線のやりとりだけ見ていれば、とても昨日まで自校の練習以外で打ち合っていた仲だとは思えない。
「それはそうと、大石の手首そんなに酷いのか? なんなら医者紹介するが」
「いや、それには及ばない。気遣いだけもらっておこう」
「そうかい。大石、早く完治することを祈ってやるぜ」
「あ、ああ、うん、ありがとう……?」
 手塚の傍で、大石が手首を押さえるのが見える。なぜ跡部に見舞いを言われるのか分からないといったふうに首を傾げるのが愉快だった。それ以上は手塚とも言葉を交わさずに、踵を返す。
「やっぱ怪我してんのか、大石のヤツ」
「手首って言ってましたね、跡部さん。大石さんのムーンボレー、受けてみたかったんですが」
「大石が欠場ってことは、また菊丸は他のヤツと組むのか?」
 ミーティングのために学園へ戻る道中、話題はやはり明日の対戦相手である青学メンバーの、とりわけ怪我での欠場となっている大石のことだった。今朝からその噂は駆け巡っていたが、手塚や本人が認めているなら本当なのだろうと。
「ま、何にしろシングルス1は跡部と手塚で決まりだろ」
「まーた何時間もかかるのかよ。すぐに決めろって言いたいところだが、相手が手塚じゃなあ……」
 メンバーたちは口々にそう言っているが、跡部は眉を寄せる。手塚と当たれば確かに決着までに何時間もかかりそうだが、どうもそうはなりそうにない。
「悩んでるんか、跡部」
「あ? ああ……恐らくだが、アイツは俺様とは当たらねえぜ」
「どうしてそう思うの?」
「越前リョーマがいる」
 オーダーを組む際は、たいていが部長をシングルス1に据える。
 それが慣例になっている学校がほとんどではあるが、何も規則として決まっているわけではない。相手校のオーダーを予測し、勝てるプレイヤーをぶつけるというのは、立派な戦略でもある。
 そこで、あのくせ者揃いの青学が素直に手塚をシングルス1に据えるかどうか。可能性は、限りなくゼロに近い。
 関東大会で越前リョーマに敗北した日吉は、苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
 見ていた限りでは、実力をすべて出したようには見えなかった。未知の部分が多い。そんな愉快なプレイヤーを、シングルス3や2に据えるわけもないとなると、当然最後のシングルス1。
 氷帝が実力主義だということを知っている以上、跡部がシングルス1であることを疑いもせずに当ててくるだろう。
 ――――受けて立ってやろうじゃねーの。
 こちらとしても、手塚が相手でない方がやりやすい。気づいたばかりの恋情を押し込めるには、まだ頭が整理しきれていない。
 よりにもよって初めての恋というのが厄介だった。なにがしかの経験でも積んでいれば別だったかもしれないが、何が正解なのかも分からないのだ。
 いや、ただ一つ、誰にも知られてはいけないということだけは正確に理解している。
 弱点を探るのを得意としている跡部景吾が、弱点を探られてはいけないのだ。
 大事な試合を前に、こんな馬鹿げた感情について悩んでいるなんて、笑い話にもならない。
 ――――誰にも悟らせねえ。これは俺の……俺だけの戦いだ。
 生涯続く、長い長い戦いだ。そして跡部の辞書に、敗北の二文字はない。
「ホンマに、厄介な相手やで」
「俺もそう思うよ、忍足」
「青学はくせ者揃いだよなあ~」
「少しも気が抜けないですよね」
 向日や鳳がそう続けたのを受けて、忍足と滝が苦笑しながら肩を竦めたことに、跡部は気がついていなかった。


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