No.51

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少年の秘密-003-

その他ウェブ再録 2010.12.29

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク

「ありがたいねえ。シンドウ流古武術の師範代に、わざわざ稽古付けてもらえるなんて」 タクトはそう言って…

その他ウェブ再録

少年の秘密-003-


「ありがたいねえ。シンドウ流古武術の師範代に、わざわざ稽古付けてもらえるなんて」
 タクトはそう言って、木刀を二本構える。
 袴を着こなすあたり、やはりそれなりに心得があるようだと、スガタも正の構えでタクトを見据えた。
「気をつけろ、僕のは少し長いぞ」
「では、……遠慮なく」
 道場に、ピンと張り詰めた空気が流れる。
 視線が外せない。
 もとより武人たるもの対峙する相手から視線など逸らせないが、スガタはこの時、改めて自覚したものがある。
 ―僕は間違っていない。
 ガッと木刀が鳴る。本当になんの遠慮もなく二刀を振るうタクトに、歓喜で背筋がわなないた。
 ―間違いない、タクト……!
 武者震いに限りなく近い何かだ。いや、これは、そのものと言ってしまっても良いだろう。
 こんな高揚感は今まで感じたことがない。
 古武術とは言ってもこの島の住民ではもう、手合わせする者さえいない。
 メイド兼監視役のあの二人とは、たまに刀を交わすが、どちらとも本気にはなれなかった。
 見物と称してスガタを監視している二人のメイド。彼女たちはスガタが「第一」ではあるが、それよりももっと大切な「ゼロ」の使命がある。
 責めたい気持ちが、ないわけではない。
 だがそれも、今はどうでも良いことのように感じられる。
 いつものつきまとうような視線さえ、感じられない。
 代わりにと言ってはなんだが、タクトの突き刺さる視線が心地良い。
 遠慮のない、攻撃的な瞳。何に対してもまっすぐな、少年の瞳だ。
 ―だが、まだだ……足りん!
 タクトの木刀をなぎ払い、のど元への一突き。ワコたちの息を飲む音が、聞こえてきた。
「お、見事……、けど、二度目はねえぜ!」
 寸止めで突いた木刀の先端。
 揺るがない切っ先に、タクトは瞬きをできずにいたが、ひるんだりしてはいけないという教えか、はたまた本能か、それでもスガタを睨みつけた。
「次は払えるってか? だが、戦いに二度目はない」
「おいおい、これは稽古だろう?」
 稽古にしては、目が真剣だったなと、スガタは言いかけて止める。
 いや、止めさせられた。
 空気の流れが止まる。時間が止まる。
 実際どうなっているかは分からないが、それはモノクロからの始まりだった。
「ゼロ時間っ……!」
 ワコが立ち上がる。隣のジャガーとタイガーは、その瞬間に時を止めたままだ。
 誰かがサイバディを発動させている。
 三人は、息を潜めた。




 ここ、ゼロ時間の空間に来られるのは、選ばれた者のみだ。シルシを持つ者、仮面で空間にシンクロして入り込む者。
「そろそろ来る頃だと思ってたぜ」
 タクトは、陰を振り仰ぐ。敵のサイバディはすべて破壊すると決めた。
 迷うことはもう、ない。
「アプリボワゼェエッ!!」
 タクトのシルシが青白く光る。そうしてタウバーンに乗り込めば、あとは敵を倒すだけだ。
 現在、唯一第三フェースの発動が可能なサイバディ・タウバーン。
 この島に来て、タクトは出逢ったのだ。
 少女と、少年と、そしてサイバディ。
 聞かされていた運命と同じ。だけど、こんなにも心が震える者だとは思っていなかった。
 与えられた運命だ。
 だが、タクト自身が選んで、決めたものだ。
 ワコとスガタを振り仰いで、
 ―間違ってねーよな、じいちゃん!
 少年は二本の剣を引き抜いた。



「確かに、二度目はなかったな」
 敵のサイバディを破壊したタクトを見下ろして、スガタは呟く。
 そうして通常時間に戻ってきた三人は、ほうっと息を吐いた。これから戦いはもっと激化していくだろう。今はこれで済んでも、敵のフェーズが上がってしまったら、その先は分からない。
 ―もっと……強くならなきゃ。これが俺の運命なら、そこで生き抜いてやる。あのふたりを……死なせたくない。
 タクトはワコとスガタを見やり、改めて思う。
 敵のサイバディが全部なくなってしまえば、きっとワコはこの島を出ていける。
 スガタだって、シルシに縛られることなく生きていける。
 ―そうだろ、じいちゃん。
「タクトくん、どんどん強くなっていくよね。敵だって、いろんなもの使ってくるのに」
「それでもまだ、僕には敵わないけどね。ワコ、もう遅いよ。送っていく」
 ワコは不思議そうに、でも嬉しそうにタクトの勝利を喜ぶ。スガタは相変わらず手厳しいが、認めてくれてはいるようだ。
 着替えてくるよと背を向けるスガタを、タクトも追いかける。
「僕もいくよ。ワコを送って、そのまま帰る」
「えっ、いいよいいよ、私一人で大丈夫だし」
「駄目だよワコ。夜道を女の子一人じゃ歩かせられない」
 特にきみはね、とスガタは付け加えて、ジャガーとタイガーにワコを頼むよと笑ってみせた。
「なあスガタ、敵も……見境なくなってきてないか?」
「焦りもするだろう。タウバーンどころか、王である僕のザメクも敵に回しているんだからな」
 私服に着替えながら、タクトは俯いた。
 スガタのサイバディは、現存している中で最強と言われている。王のシルシを受け継いだ者の名として、彼はスガタと名付けられた。
 もし、シルシを受け継いでいなかったら、彼は何という名前だったのだろう、と想像して、スガタ以外に思いつかないなとタクトはひとり、笑う。
「なんだ? タクト」
「いや、スガタはスガタだなあって思って。お前で、よかったなって」
 本当にそう思うよとタクトはスガタを振り向く。
 スガタもワコもタクトも、逃れられない運命を背負って生まれてきたと言うのなら、それは受け入れてやろうとタクトは思う。
 だけどいつか出逢うはずだっただろう仲間が、この二人でよかったと、心から思うのだ。
「逢えて、よかったよ」
「僕はお前ほど割り切れていない。時々お前がうらやましいよ、タクト」
 着替えを終えて、スガタはワコの元へと向かう。タクトは慌ててそれを追って、玄関先でぶーたれながら待っていたワコに笑った。
「そんな顔するなよワコ、僕たちはきみのこと守りたいんだから」
 仕方ないなあとなだめながら、ワコの家へ三人で向かう。そんなに遠い距離ではない、一人でだって帰れるのにといまだにワコは気にしているらしい。
 敵だって、一日に何度も攻撃はしかけてこないだろう。だがそれでも、油断は禁物なのだ。
「ワコ、自覚をしてくれ。狙われているんだってことを。きみは一人で戦うことはできないだろう」
「スガタ! 言い方ってもんがあるだろ!」
「それでもワコを守るのは僕の意志だ」
 分かってるな?とスガタはワコを見やる。ワコはひとつ瞬きをして、分かってるよと小さく頷いた。



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