No.50

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少年の秘密-002-

その他ウェブ再録 2010.12.29

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク

 三人で登校する時はいつの間にか位置が決まってしまっている。ワコを挟んで左右にスガタとタクト。両手に…

その他ウェブ再録

少年の秘密-002-

 三人で登校する時はいつの間にか位置が決まってしまっている。ワコを挟んで左右にスガタとタクト。両手に花状態のワコは、他の女生徒からそれは羨ましがられていることだろう。
「タクトくん今日はなんか元気ないね。何かあった?」
「えっ? え、……そうかな」
 ひょいとのぞき込んでくるワコに、タクトはなんと答えればいいのかわからない。
 気分が沈んでいるのは自覚していたが、そうなる理由がわからなかった。
「具合が悪いのなら、無理に学校いくことないぞ」
「……平気だよ」
 体調が悪いわけではない、とワコを通り越してスガタを睨む。確かに体中が痛むけれど、動けないほどだとは思えない。
 その痛みを与えた張本人は、知らんぷりで前だけ見据えていた。
 そこにいたから抱いたなんて、いけしゃあしゃあと言ってのけた、王のドライバー。
「あまりワコを心配させるなよ」
「スガタくんが言える立場かなあ?」
 私まだ怒ってるんだけど、と歩道の真ん中で詰め寄られて、スガタは珍しく視線を逸らして肩をすくめた。
 気分が沈んでいる理由は分からない。
 スガタを責めない理由も分からない。
 だけど、自分のいちばんの望みは、分かっているつもりだった。
「スガタ、今日放課後…空いてる?」
「特に予定は入れてないが…稽古のことか?」
「話があるんだ。稽古の後でいいから、時間空けといてくれよ」
 分かった、と返ってくる。それ以上は一言も交わさないで、学校へと向かっていった。



 放課後、演劇部・夜間飛行の活動は、活動であって活動でないようなものだった。
 まだ企画段階であって、どんな話なのか、どんな演出なのか、どんな配役なのか、それさえ決まっていない。
 ただ、スガタとタクトの魅力を全面に引き出したもの、ということだけだ。
 きゅ―う。
「あっ、副部長!」
 演劇部の大事な一員が、お散歩から帰ってきた。一人、珍入者を連れて。
 ―あれ、あの子。
 可愛らしいピンクの髪が見える。タクトは目をしばたかせた。
「おお、お~っ」
「イイねえ、あなたオーラ出てるぅ」
 副部長につられて体ごと視線が動く少女は、どうやら可愛い狐が珍しくて仕方ないらしい。
 まあ、疑問は多々あるだろう。なぜこんなところに。なぜ部員…しかも副部長なのか。学校の許可はあるのか。エトセトラ。
「名前は?」
 部長であるサリナが、少女に訊ねる。
「一年二組のミズノちゃん」
 すかさず、タクトが声を投げかける。部員の視線が、タクトへと集まった。
「やあ」
「タクトくんだあああああ!」
 少女は素早いモーションでタクトの隣に陣取った。腕の中の副部長は、苦しそうにもがいている。
「あれ、すでに仲良し?」
「今朝ちょっとトイレで一緒に。ねーっ」
 不思議少女と名高いミズノと、青春バカ美少年が急接近などとは、校内でセンセーションを起こすに違いない。
「トイレで一緒に?」
「トイレで一緒にぃ?」
「大胆だな」
「トイレで何したの?
「ちがっ、そういう意味じゃ!」
 あからさまに軽蔑する女子の視線、驚きを隠せないようなスガタの視線、キラキラオーラ満載のミズノの視線。
 タクトは居場所がなくなって、助けを求めるようにスガタを見やる。
 ジャガーやタイガーと日常的に接している彼なら、きっとこういう時の対処も慣れているだろうと。
 だけど、一瞬重なった視線は鋭く、ビクリと肩をすくめた。
 ―な……に、今の。なんか怒ってねぇ…?
 すぐに逸らされてしまった視線は、それ以降重なることがなくて、それがタクトには落ち着かない。
 すぐ隣ではワコと楽しく話しているのに、その声が自分に向けられることがない。
 許嫁同士だからという、そんなレベルの話ではない。
 明らかに【タクト】をシャットアウトしているように感じられた。
 ドクンと、心臓が鳴る。
 喉を通っていく唾液が、いつになく熱く、痛いように思う。
 スガタとワコの声が頭の中に響いて、ぐらぐらと視界が揺れる。喉を押さえても、熱さも痛みも変わらない。こめかみを、汗が通った。
「タクトくん? タクトくん大丈夫? どうかしたの?」
「え、あ、いや大丈夫だよミズノちゃん、なんでも」
「お熱かなあ?」
 なんでもない、と言いかけたタクトは、グイと引き寄せられて固まった。
 すぐ目の前に、少女の鼻先。ぶつかる額。ガッチリと抱かれた頭。
「たっ、タクトくん…!」
 ガタリと、椅子が鳴った。
 ワコは思わず体を引く。二人の正面にでもいれば、違うと分かるだろうが、タクト側から見てしまうとそれは、情熱的なキスのように映った。
 スガタは目を瞠り椅子をぎゅっと握る。ざわりと走った不快感の正体には、薄々感づいていながら、それと認めたくはなかった。
「熱はないみたいだね」
「えっ、あ、う、うん」
 不意に離れていく少女の体。ミズノはえへへと笑い、またちょこんとタクトの隣に座り直した。何もなかったように。
 ―女の子って、やっぱりいいにおいがするんだなあ。
 思って、ふるふると首を振った。
「ミズノちゃん、演劇部入る? あのね、俺も入ってんだけどさ」
「入るー!」
 一も二もなく、ミズノは答える。それはきっと、恋する乙女のドライブ。
 分かりやすいなあと、感づくものがひとり、ふたり、さんにん。
 タクトに急接近してきた女の子に、内心面白くないものがひとり。
 なんでもないように振る舞うものが、ひとり。
「部員、増えてよかったな」
 スガタはそう呟いて微笑む。きっとスガタに好意を持っている女生徒が見たら、昇天してしまうだろう。
「スガタくん、何か機嫌悪い?」
「どうして? ワコ。僕はいつも通りだよ」
「スガタくんは時々平気で嘘をつくからなあ」
 そうだったかな、と笑う。巫女などやっていると、人の真実まで見えてしまうのか。
 それとも、スガタのことだから分かるのか。
 タクトは、そんな二人を眺めて複雑な気分になった。
「タクト」
「えっ、あ、なに?」
 見透かされたわけでもないだろうに、タイミング良くというか悪くというか、スガタに呼ばれてタクトは慌てる。
「稽古つけてやるって言ったろ。これ以上遅くなると、帰れなくなるぞ」
「あっ、ああそうだった! ……て、どんだけシゴかれんの僕…」
 がっくりとうなだれるタクトに、
「僕がいいと言うまでだ」
 スガタは笑って追い打ちをかけた。
 彼の笑顔は怖い。内に何を潜めているか分からないのだ。
 あの笑顔を前にして、自分の考えていることをを素直に言えるだろうかと、タクトは項垂れた。
「じゃあ今日は解散しとく? えぇと…ミズノちゃんだっけ。明日も来れる?」
 来ますー! と嬉しそうにミズノは両手を高く挙げる。少しでもタクトの近くにいたいのだ、とありありと分かるオーラが、放たれていた。
 タクト本人が、それに気づいているかは別として。
 スガタはそんなミズノを一瞥して、目をそらした。


#STARDRIVERー輝きのタクトー #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク