華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.50
その他ウェブ再録 2010.12.29
#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク
三人で登校する時はいつの間にか位置が決まってしまっている。ワコを挟んで左右にスガタとタクト。両手に…
その他ウェブ再録
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三人で登校する時はいつの間にか位置が決まってしまっている。ワコを挟んで左右にスガタとタクト。両手に花状態のワコは、他の女生徒からそれは羨ましがられていることだろう。
「タクトくん今日はなんか元気ないね。何かあった?」
「えっ? え、……そうかな」
ひょいとのぞき込んでくるワコに、タクトはなんと答えればいいのかわからない。
気分が沈んでいるのは自覚していたが、そうなる理由がわからなかった。
「具合が悪いのなら、無理に学校いくことないぞ」
「……平気だよ」
体調が悪いわけではない、とワコを通り越してスガタを睨む。確かに体中が痛むけれど、動けないほどだとは思えない。
その痛みを与えた張本人は、知らんぷりで前だけ見据えていた。
そこにいたから抱いたなんて、いけしゃあしゃあと言ってのけた、王のドライバー。
「あまりワコを心配させるなよ」
「スガタくんが言える立場かなあ?」
私まだ怒ってるんだけど、と歩道の真ん中で詰め寄られて、スガタは珍しく視線を逸らして肩をすくめた。
気分が沈んでいる理由は分からない。
スガタを責めない理由も分からない。
だけど、自分のいちばんの望みは、分かっているつもりだった。
「スガタ、今日放課後…空いてる?」
「特に予定は入れてないが…稽古のことか?」
「話があるんだ。稽古の後でいいから、時間空けといてくれよ」
分かった、と返ってくる。それ以上は一言も交わさないで、学校へと向かっていった。
放課後、演劇部・夜間飛行の活動は、活動であって活動でないようなものだった。
まだ企画段階であって、どんな話なのか、どんな演出なのか、どんな配役なのか、それさえ決まっていない。
ただ、スガタとタクトの魅力を全面に引き出したもの、ということだけだ。
きゅ―う。
「あっ、副部長!」
演劇部の大事な一員が、お散歩から帰ってきた。一人、珍入者を連れて。
―あれ、あの子。
可愛らしいピンクの髪が見える。タクトは目をしばたかせた。
「おお、お~っ」
「イイねえ、あなたオーラ出てるぅ」
副部長につられて体ごと視線が動く少女は、どうやら可愛い狐が珍しくて仕方ないらしい。
まあ、疑問は多々あるだろう。なぜこんなところに。なぜ部員…しかも副部長なのか。学校の許可はあるのか。エトセトラ。
「名前は?」
部長であるサリナが、少女に訊ねる。
「一年二組のミズノちゃん」
すかさず、タクトが声を投げかける。部員の視線が、タクトへと集まった。
「やあ」
「タクトくんだあああああ!」
少女は素早いモーションでタクトの隣に陣取った。腕の中の副部長は、苦しそうにもがいている。
「あれ、すでに仲良し?」
「今朝ちょっとトイレで一緒に。ねーっ」
不思議少女と名高いミズノと、青春バカ美少年が急接近などとは、校内でセンセーションを起こすに違いない。
「トイレで一緒に?」
「トイレで一緒にぃ?」
「大胆だな」
「トイレで何したの?
「ちがっ、そういう意味じゃ!」
あからさまに軽蔑する女子の視線、驚きを隠せないようなスガタの視線、キラキラオーラ満載のミズノの視線。
タクトは居場所がなくなって、助けを求めるようにスガタを見やる。
ジャガーやタイガーと日常的に接している彼なら、きっとこういう時の対処も慣れているだろうと。
だけど、一瞬重なった視線は鋭く、ビクリと肩をすくめた。
―な……に、今の。なんか怒ってねぇ…?
すぐに逸らされてしまった視線は、それ以降重なることがなくて、それがタクトには落ち着かない。
すぐ隣ではワコと楽しく話しているのに、その声が自分に向けられることがない。
許嫁同士だからという、そんなレベルの話ではない。
明らかに【タクト】をシャットアウトしているように感じられた。
ドクンと、心臓が鳴る。
喉を通っていく唾液が、いつになく熱く、痛いように思う。
スガタとワコの声が頭の中に響いて、ぐらぐらと視界が揺れる。喉を押さえても、熱さも痛みも変わらない。こめかみを、汗が通った。
「タクトくん? タクトくん大丈夫? どうかしたの?」
「え、あ、いや大丈夫だよミズノちゃん、なんでも」
「お熱かなあ?」
なんでもない、と言いかけたタクトは、グイと引き寄せられて固まった。
すぐ目の前に、少女の鼻先。ぶつかる額。ガッチリと抱かれた頭。
「たっ、タクトくん…!」
ガタリと、椅子が鳴った。
ワコは思わず体を引く。二人の正面にでもいれば、違うと分かるだろうが、タクト側から見てしまうとそれは、情熱的なキスのように映った。
スガタは目を瞠り椅子をぎゅっと握る。ざわりと走った不快感の正体には、薄々感づいていながら、それと認めたくはなかった。
「熱はないみたいだね」
「えっ、あ、う、うん」
不意に離れていく少女の体。ミズノはえへへと笑い、またちょこんとタクトの隣に座り直した。何もなかったように。
―女の子って、やっぱりいいにおいがするんだなあ。
思って、ふるふると首を振った。
「ミズノちゃん、演劇部入る? あのね、俺も入ってんだけどさ」
「入るー!」
一も二もなく、ミズノは答える。それはきっと、恋する乙女のドライブ。
分かりやすいなあと、感づくものがひとり、ふたり、さんにん。
タクトに急接近してきた女の子に、内心面白くないものがひとり。
なんでもないように振る舞うものが、ひとり。
「部員、増えてよかったな」
スガタはそう呟いて微笑む。きっとスガタに好意を持っている女生徒が見たら、昇天してしまうだろう。
「スガタくん、何か機嫌悪い?」
「どうして? ワコ。僕はいつも通りだよ」
「スガタくんは時々平気で嘘をつくからなあ」
そうだったかな、と笑う。巫女などやっていると、人の真実まで見えてしまうのか。
それとも、スガタのことだから分かるのか。
タクトは、そんな二人を眺めて複雑な気分になった。
「タクト」
「えっ、あ、なに?」
見透かされたわけでもないだろうに、タイミング良くというか悪くというか、スガタに呼ばれてタクトは慌てる。
「稽古つけてやるって言ったろ。これ以上遅くなると、帰れなくなるぞ」
「あっ、ああそうだった! ……て、どんだけシゴかれんの僕…」
がっくりとうなだれるタクトに、
「僕がいいと言うまでだ」
スガタは笑って追い打ちをかけた。
彼の笑顔は怖い。内に何を潜めているか分からないのだ。
あの笑顔を前にして、自分の考えていることをを素直に言えるだろうかと、タクトは項垂れた。
「じゃあ今日は解散しとく? えぇと…ミズノちゃんだっけ。明日も来れる?」
来ますー! と嬉しそうにミズノは両手を高く挙げる。少しでもタクトの近くにいたいのだ、とありありと分かるオーラが、放たれていた。
タクト本人が、それに気づいているかは別として。
スガタはそんなミズノを一瞥して、目をそらした。
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