華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.643
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.21
#お題 #両片想い
先に言ったら負けよの続き そろそろ観念してほしい。 そう思いながらも口には出さずに、意中の相手の隣を…
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン
先に言ったら負けよの続き
お題:リライト様 /視線の絡む瞬間に
favorite いいね ありがとうございます! 2025.01.21 No.643
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そろそろ観念してほしい。
そう思いながらも口には出さずに、意中の相手の隣を歩いた。若干俯きがちなのは、気まずさからだろうか。それとも、あれこれ悩んでいるせいで前を向けないのだろうか。
手塚は、隣を歩く跡部のことが好きだった。
跡部も、隣を歩く手塚のことが好きだった。
ただ、こうして二人で歩いていても、正式に交際をしているわけではない。同じ気持ちを抱えているのは、態度から見ても明らかなのに、どちらも意地のようなもので口にできていない。
〝そっちが先に言え〟
とお互いが思っているせいで、何も進展しないのだ。
とはいえ、一緒に過ごせるのは嬉しい。今日の合同練習の間もずっと傍にいられて、想いはまた募った。
「跡部」
「な、んだよ」
「今日、どうするんだ」
「ど、……う、する? テニス……するか?」
氷帝学園を出てから、あてもなく歩いてしまっている。どこかに寄り道しようと約束はしたものの、どこに寄るのか決めていない。
いつもならテニスコートでラリーを楽しむけれど、それではいつも通りすぎて、また何も変化が起こらないのではないだろうか。
この分かりやすく曖昧な関係に、何かしらの変化が欲しい。
好きな相手を、ちゃんと恋人と呼びたい。
となると、いつも通りでは駄目だ。テニスコート以外に寄り道をしたい。
「少し、喉が渇いている」
「そうだな、水分補給はしたが、今日も暑い。ひとまず、街に行ってみるか?」
手塚の要望を察して、跡部は前方を指さす。街に出れば、ファミレスなりなんなり、中学生のデートでも無理のない店があるだろう。
そこまで思って、〝デート〟という単語に顔が赤らんだ。
二人で出掛ける行為にそういう名前をつけられる関係になりたいのではなかったのか。単語だけで浮かれていてどうするんだと自分を戒めて、跡部は小さく首を振った。
「さっき大石から、割引券をもらったんだが……良ければ」
手塚が、ポケットから小さな紙切れを取り出す。端が少し折れ曲がってしまっているが、それは新規開店のフルーツジュース店らしかった。客寄せのためにクーポンを配っているのだろう。
「一枚で二名様まで……ふぅん? いいんじゃねーの。行ってみるか」
「ああ」
ようやく、ぎこちなさが薄れてきた。今日の合同練習のことを話しながら、件の店へと向かう。
「今日、珍しいメンツでラリーやってたな。乾と桃城、宍戸と向日とは」
「そうだな、いつもと違うプレイができていたのではないだろうか。それぞれ個性的だ」
見ていてうずうずした、とじっと手を見つめる手塚。跡部がそれに笑ったせいで、手塚の心臓はトントンと速いリズムを刻んだ。
やはり、心地がいい。気負うこともなく、そのままの自分でいても受け止めてくれる相手だと思う。
先に惚れたのは自分の方だから、立場が弱くなるなと思っていたが、このままではいたくない。
物は考えようではないだろうか。この状況ならば、先に告げた方がいいかもしれない。関係を発展させたのは自分だと胸を張ってやれる。
もちろん、それで何か脅しをかけるようなことはしないが、ほんの少しの我が儘くらいは聞いてもらえるかもしれない。
言ってしまおうか、お前が好きだと。
歩調を緩めると、相手も同じタイミングで緩める。
あれ、と思った。首を右へ傾げ、戻して、街路樹の傍で立ち止まる。
意を決して振り向いたら、全く同じタイミングでそうした彼と視線が重なった。
あ、これは。
そう思った瞬間、同時に口が開かれた。
「お前が好きだ」
やっぱり声が合わさって、一瞬置いた後に二人で項垂れて顔を覆う。
「な、……んなんだよテメェはぁ〰〰、今まで全ッ然言わなかったくせに」
「お前の方こそ、どうしてこのタイミングなんだ。もう仕方がないから俺が先に言おうと思ったのに」
「俺の台詞だってんだよ!」
無事に最初の一歩を踏み出せたはずなのに、納得がいかない。どうして、同じタイミングなのだろう。先に告げてやって、ほんの少しの我が儘を聞いてもらう計画が水の泡だ。
はあーとまた二人同じタイミングでため息を吐いて、瞬きひとつ。視線が重なって、照れくさそうに逸らされる。
「その、跡部。これで、いいだろうか、お前を恋人と呼んでも」
「あ、ああ、嬉しい……じゃあこれ、デートってことで、いいん、だよな……」
「恋人ならば、そういうことになるだろう」
こくんと二人で頷く。ほんのりと染まる頬は、夕陽のせいではない。
「……手塚、これ、リンゴのヤツ飲んでみてぇ」
「美味そうだな。俺は何にしようか」
「着くまでに決めておけよ」
「ああ、ではゆっくり行こう」
さすがに手を繋ぐことはできないけれど、そろう足並みが嬉しい。
「なあ、好きだぜ手塚」
「俺も、跡部が好きだ」
あんなに頑なに相手に言わせたがった言葉が、すんなりと唇をついて出る。何を意地を張っていたのかと、馬鹿馬鹿しくなってしまった。
「一応、秘密の恋人というところだろうか」
「そうなるだろうな。言いたければ言ってもいいが」
「……いや、ひとまず俺とお前の秘密ということにしておこう」
「フフ、内緒話は嫌いじゃねーぜ」
耳元に唇を寄せ合ってそんなことを囁きあう二人は、知らなかった。
テニス部の親しいメンバーには、とっくにバレていることなんて。
#お題 #両片想い