No.58

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Shooting Star-001-

NOVEL,その他ジャンル 2011.03.20

#STARDRIVER #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録

「やっぱり、意外だよ」 タクトはいつものように、スガタとふたりでシンドウ家に向かいながら感嘆とともに…

NOVEL,その他ジャンル

Shooting Star-001-


「やっぱり、意外だよ」
 タクトはいつものように、スガタとふたりでシンドウ家に向かいながら感嘆とともに呟いた。隣を歩くスガタから、ふっと笑いが漏れる。
「この間からずっとそれだなタクト」
 ここ最近は、スガタの家に行って剣の稽古をつけてもらうのが日課になっていた。
「だってさあ、スガタが芝居とか、あんまり想像つかないだろ」
 南十字学園の演劇部に所属しているとなれば、主な活動は芝居であって、スガタが何かを演じるのはしごく当然の位置づけだ。
 それでも普段のクールな彼を見ていれば、まさか芝居なんて、と思わないでもない。
 だがそのギャップは、学園の生徒のみならず島の住民にも受けはいいようだった。
「スガタの一人芝居、見たかったな。映像とか残ってないの?」
 からかう意味でなく、タクトは口にする。中等部の時に彼は、一人芝居をしたのだとワコが言っていた。
 ファンクラブまでできたと聞いたが、それほどまでにスゴイものだったのか、純粋に興味はある。
「そんなの、残ってないよ。残念だろうけど」
「ちぇ。なあ、でもさあ、与えられた役が得意って、何でもできんの?」
 彼は自慢するようにも自嘲するようにも言っていた。
 しかしそれをこなしてしまうあたりは、やはりシンドウ・スガタなのだろう。タクトにはとてもできない。
「まあ、それなりにね。さすがにまだ老人だとかはやったことがないけれど」
 想像して、笑う。ちょっと見てみたい気もするなあと、タクトは星の輝く夜空を見上げた。
 ―あ。
 流れ星。
 願う暇はなかったけれど、確かにその瞳の端を流れていった。
 タクトはちらりと、隣のスガタを見やる。
 願えば、叶うだろうか。
「なあスガタ、あの、それってさ……頼めば演じてくれるのか?」
 好奇心の固まりだな、とスガタは肩を竦めてみせる。
「いいけど、たとえば何を?」
 笑いながら返したスガタに、タクトの視線が泳ぐ。訊ねておいてだんまりはないだろうと、スガタはタクトを呼んだ。
「たっ、たとえばさ」
 タクトは立ち止まり、制服のシャツをぎゅっと握りしめる。星明かりでは、顔が赤いなんてこと、振り向いたスガタには見えないだろう。
 心臓がドクドクと波打つ。
「たとえば僕の」
 ゴクリと、生唾を飲んだ。しわを作るシャツの溝が、もっと深くなった。
「こ、恋人役……とか」
 小さく、小さく呟いた。
 聞こえなかったのか、長い沈黙が続く。
 そろそろその沈黙が痛くて、タクトは視線を上げた。
「ご、ごめん冗談」
「いいよ、タクト」
 本気にするなよと続けたかった口唇が、止まる。
 振り返ったままじっと見据えてくるスガタの視線と、静かな声。夏の風に乗って届いたそれは、タクトの耳を疑わせる。
「……え…?」
「聞こえただろ、演じてやるって言ったんだ」
 スガタの答えは素っ気ない。どういう意味か分かっていてそうするのか、ただゲームのように思っているのか。
「スガタ、意味分かってんの?」
「なにが?」
「恋人役を演じるってことは、その、つまり」
「頼んでおいて今さら怖じ気づくのか? 僕は別にどっちでもいいけど、決めるのはお前だぞタクト」
 この幕を開けるのか開けないのか、スガタは責めるようにも視線を投げつけてくる。
 タクトはその視線を真正面から受け止めて、少しだけ、俯いた。
「なんで……そんなん受けてくれんの?」
「……興味本位。お前だってそうだろ、恋人役なんて」
 ズキ、と心臓が痛んだ。
「そうだな、興味、あるよ。スガタが僕にどう接するのかとかね」
 顔を上げる。挑発するように口の端を上げてやったら、スガタも同じように口の端を上げてきた。
「期限は?」
「飽きるまで。あとは、他人にバレたらそこで終了か?」
「分かった、それでいいよ」
 手が震えているなんてこと、知られていないはずだ。
 喉が痛いなんて、気づかれていないはずだ。
 泣き出しそうだなんて、悟られてはいないはずだ。
「き、今日は帰るよスガタ」
「送っていかないぞ」
「いいよ、また明日な!」
 ああ、と素っ気なく返すスガタに背を向けて、タクトは寮へ向かって走り出した。
 ―どうしよう。
 靴の底に踏みつけられて音を立てる小さな砂利が、速いリズムを刻んだ。
 ―どうしよう、どうしよう…本当にっ……スガタと…!
 タクトは口唇をかみしめて、あふれそうになる嗚咽を我慢して、必死で前だけを見つめた。
 振り返れない。
 スガタを、振り向くことができない。
 この世界中でたった一人、大好きなあの人を。
 つまずいて足を取られ、タクトは草むらに転がった。両腕を広げてまっすぐ前を見てみれば、変わらない満天の星が目に飛び込んでくる。
「スガタ……」
 幕を開けてしまったのはタクト自身だ。
 他にどうすることもできなくて、スガタの演技に逃げて、偽りを手に入れた。
「好きだよスガタ……」
 嘘でもいいから傍にいたい。たとえ偽りの関係でも、今スガタを恋人と呼べるのは自分だけだ。それでいい。
 それでいいと思うのに、溢れてくるこの涙はなんだろう。
「ちくしょう……」
 風が吹いていく。もうすぐ夏の、季節だ。


#STARDRIVERー輝きのタクトー #スタドラ #シンドウ・スガタ #ツナシ・タクト #スガタク #ウェブ再録