華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.534
永遠のブルー,塚跡WEB再録 2022.04.10
#塚跡 #片想い #未来設定 #ウェブ再録 #シリーズ物 #永遠のブルー
ざわついていた観客席が、選手の入場でより一層熱気に包まれる。見慣れてしまったコートの緑に、手塚は観…
永遠のブルー,塚跡WEB再録
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ざわついていた観客席が、選手の入場でより一層熱気に包まれる。見慣れてしまったコートの緑に、手塚は観客席の出入り口近くの手すりにもたれながら目を細めた。
今日も良い天気で良かったと思う。太陽さえあの男の勝利を祝福しているようだと、まだ試合が始まる前から確信めいた予感で口の端を上げた。
「立ち見まで出るなんて、すごいね。人気、うなぎ登りじゃない?」
「ああ。パフォーマンスが派手だからな。見ていて気持ちがいいんだろう」
隣から声をかけられて振り向くも、手塚はすぐにコートへと視線を戻す。「確かにね」と笑いながら頷く不二も、同じく立ち見らしかった。
「君なら指定席のチケット取れただろうに」
「いや、アイツのテニスを見ていると自然に体が動いてしまってな。隣の観客に迷惑になる」
彼の試合の観戦チケットは確かに人気で取りにくいが、不二の言うように協会からの招待チケットは容易に手に入る。
だが、観戦中に自分もテニスがしたくなる。彼の打つ球を受けたくなる。事実、今もラケットを握りたくて仕方がない。
「次の全豪では、当たるだろうか……」
「楽しそうだね、手塚」
「――ああ、楽しいな」
間もなく、試合が開始される。ガットの張り具合を確かめながら彼がコートに向かって歩むのが見えた。
「ケイゴ・アトベ、ジャパン」
コールされた名前は、愛しい人のもの。
圧倒的に女性ファンの多い跡部が、声援に応えるように左手を掲げてみせる。観客たちからの跡部コールに、手塚はどこか懐かしさを感じて口許を緩めた。
跡部は会場を見渡すように顔を動かし、ある一点で止まる。まっすぐに向かってきた視線を受け止めて、手塚は応えて頷いた。
掲げられた跡部の左手が口許に降りて、唇を当てた薬指を手塚に向かって再び掲げられる。
思いも寄らない投げキッスに、女性たちから悲鳴のような歓声が上がったが、それはただ一人へと向かったものだ。手塚は投げられたキスを左手で受け取り、同じように薬指に口づけた。
「……不二、なぜ今避けたんだ?」
体を不自然に手塚とは逆方向へ傾けた友人に訊ねてみる。
「いや、だって間違っても当たりたくないからね」
君たち本当に隠す気あるのかなとでも言いたげな瞳が向かってきたが、手塚は気にせずに腕を組んでコート上の恋人をじっと見つめた。
「無用な心配だな。跡部のあれは俺にしか飛んでこないし、あれを受け止められるのも俺だけだ」
「……そういう男だよね、手塚って。跡部くらいしか、君の相手は務まらないだろうね」
それはそうだろうと、何の疑問も持たずに手塚は頷く。
彼を――跡部景吾を好きになって、もう十年。この想いを受け止められるのは、同じく十年想ってくれている彼だけだ。
試合が開始される。相手のサーブをリターンエースで返して高く拳を上げる恋人が、眩しくて、愛しくてしょうがない。
「相手選手、気圧されちゃってるね。もう勝負は見えているけど、跡部はまた持久戦で楽しむのかな」
「あの瞳で射貫かれては、仕方ないだろう」
「手塚って本当に跡部の目が好きだよね」
そうだなと頷く。
最初に惹かれたのは、きっとあの瞳だろうと思うのだ。
「あれは、俺にとって何よりも強くて美しい、永遠のブルーだ」
あの日見た青が、今もこの目に焼き付いている――。
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