華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.530
永遠のブルー,塚跡WEB再録 2022.04.10
#塚跡 #片想い #未来設定 #ウェブ再録 #シリーズ物 #永遠のブルー
キィとドアを開けて入ってきた青年に気がついて、不二周助は軽く手を挙げて招いた。「越前、こっち。思っ…
永遠のブルー,塚跡WEB再録
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キィとドアを開けて入ってきた青年に気がついて、不二周助は軽く手を挙げて招いた。
「越前、こっち。思ったより早かったね」
「ちーッス、不二先輩。忍足さんと滝さんも、お疲れッス」
バーカウンターで越前リョーマは不二の隣に腰をかけ、忍足と滝にも軽く会釈をする。普段着の不二たちとパーティー帰りの越前では少しアンバランスな雰囲気があるが、そんなことを気にしている場合ではなかった。
バーテンダーにカルアミルクを頼み、三人とグラスを合わせる。大会の成績を祝い、今回の労をねぎらってくれた。
「ほぼ確っすね。あの二人、パーティー終わるや否や揃って部屋に向かったみたいッス」
越前の報告に、不二たちは一様に「あ~……」と声を上げる。
今大会の祝勝会には当然上位者の越前も参加していた。優勝以外じゃ意味がないねと言いつつも越前が参加したのは、ある人物たちの動向を見守るためだった。言わずもがな、手塚と跡部の二人である。
「もー……なんやねんあの二人……ホンマに長いこと両想いやったっちゅーことかいな」
「そうみたいだね。手塚は間違いなく告白するつもりだったから、忍足たちの言うことが本当なら、今頃はお互いの気持ちを伝え合っているんじゃないかな」
忍足は嘆くように両手で顔を覆い、滝はやれやれといったふうに小さく首を振る。
「まさか手塚が景吾くんを好きだったなんてね。優勝キメた後に手を掲げてたでしょう? あれ、やっぱり景吾くんに向けてだったんだ……」
「俺は跡部さんが手塚部長を好きだったってことの方が驚いたんスよね。テニスに関しては執着してるなって思ってたけど」
「いやいや、跡部のは分かりやすいやろ。そっち方面にはニブそうな宍戸まで気づいてたんやで? 知られたないなら気ぃつけろ言うたのになぁ」
「ボクらは普段の跡部を知らないからね。手塚の方が分かりやすかったよ。だいたい、怪我の一因になった相手と連日テニスしにいくってとこで、もうおかしいじゃない」
不二の言葉に、三人ともが「それな」と指をさす。呆れて物が言えないと、それぞれのカクテルを飲み干す。
気づいても良かったはずなのに、間にテニスがあったことでややこしくなってしまったのか。それでも、間にテニスがなければ惹かれ合ってもいなかっただろうと思うと、世の中上手くいかないものだ。
「こっちはこっちで気ぃ揉んどったんやけどなぁ。U―17の合宿でも大変やったのに」
「お互いに、言っちゃいけない気持ちだと思っていただろうしね」
「親しくなりたいけれど、なったらなったで余計に好きな気持ちが大きくなる。ふふっ、青春だなあ」
「手塚部長、そういう状態でドイツ行っちゃいましたしね。急すぎじゃないッスか?」
「あれなぁ……。跡部が健気すぎて泣けたっちゅーねん」
せっかく同じチームでテニスができていたのに、プロになるという手塚を送り出し、中学生選抜の長を引き継いだ跡部。
惚れた男の成功を祈って自分の恋心を押し込めるキングに、何をしてやればいいか分からなかったことを思い出し、忍足はわざとらしく泣き真似をした。
「健気ってのは、分かる気がするッスけど。いつだったかのインタビューでずっと片想いしてるって聞いて、頭を抱えたんスよね、俺。余計なことしたかもって」
「ボクもその雑誌読んだよ。一途なんだなって思ったけど、手塚にしてみれば、キツかっただろうね」
不二の言葉に、越前は頷く。
恋人や婚約者がいないのならば、踏み込んでみるのも手ではないかと思った援護射撃が、裏目に出てしまった形だ。
手塚はその日、ウィンブルドンで優勝カップを手にすると宣言してきた。あの時にもう、決めていたのだろう。
「だから今日の試合終わってから滝たちに話を聞いた時は、本当に安心したんだ。もちろん、何やってんだろうあの二人って思いの方が大きかったけどね」
「俺、正直今夜はパーティーどころじゃなかったッスよ……本気でびっくりした」
「せやろなあ。まあ、文句は明日言ったろか。散々心配させよってからに」
「今頃はイチャイチャしてるのかな。手塚もやるねー。まあ、今夜は素直に二人のことを祝おうか」
賛成、と四人は新しくカクテルをオーダーする。あの二人に似合いのモッキンバードが四つ、重なり合ってカチンと音を立てた。
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