No.201

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Ich liebe dich-006-

その他ウェブ再録 2014.02.09

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い

 多くの死者が出た。軍人だけでなく、民間人にまでその被害は及び、改革に犠牲は付き物だと言ってもやはり…

その他ウェブ再録

Ich liebe dich-006-


 多くの死者が出た。軍人だけでなく、民間人にまでその被害は及び、改革に犠牲は付き物だと言ってもやはりやりきれない思いが残る。
「そうか、クーフィアが……」
 イクスアインは合流したアードライからクーフィアのことを聞き、残念そうに呟く。もっとしっかり話し合っていれば回避できたかもしれないと項垂れて口唇を引き結ぶアードライに、今度何か手向けてやろうと背を押した。
「壱号機のパイロット……時縞ハルトも……亡くなったそうだ」
 アードライは、ちらりとエルエルフを見やる。友人を失った彼は落ち込んでいるかと思ったが、むしろ精力的に戦線の後処理をしている。下士官に指示を出し、民間人の避難を最優先させているようだ。
 エルエルフが、こちらに気づいて寄ってきた。
「イクスアイン、生きていたか」
 第一声がこれとは、やはり死ぬ気でカインに向かっていったのは悟られていたようだ。イクスアインは苦笑で返した。
「……生きろと、言われた」
 あの時まで聞かなかったのは、何かハーノインの魔法でもかかっていたに違いない。あの状況でノイズさえ混じらずに、ハーノインは生きろと言った。
「仇も討てず私だけがのうのうと生きるなど、非難されても仕方ないが、せめてアイツの最期の願いくらい、聞いてやらないと」
「イクスアイン、軍人にとって大事なことは、生きて還ることでもあるんだ、そう自分を責めるんじゃない」
 アードライが、肩に手を置いてフォローしてくれる。それは彼の持論だが、ハーノインもそうだろうかと、無理に笑ってみせた。
「これからまた多くの真実が世界を覆っていく。お前たちにも手伝ってもらわないといけない」
 エルエルフが、望んだ世界を作るためにと視線をよこしてくる。独りでは決して成し遂げられないものだ。
「エルエルフ、何か新たに分かったのか?」
 もともと腐敗したドルシアを革命しようとしていたエルエルフは、一も二もなく頷き訊ねる。エルエルフは、可能性の話だがと瞬きでアードライに返した。
「イクスアイン、お前の肉体は百一人評議会のヤツらに捧げられようとしていた。あの時香か何かで眠らされたのだろうが……それはルーンの喪失とハーノインの攻撃で阻止された」
 ハーノインはまさかそんなことが行なわれているなんて思わなかっただろうが、と続けるエルエルフに、二人は眉を寄せる。百一人評議会が隠し続けてきた事実は、世界を震撼させた。
「ヤツらはルーンを欲していたはずだ。大量のルーンと、入れ物である若い肉体。予測される戦いのためには、軍事に長けた者の方が良い」
 みるみるうちにイクスアインの瞳が見開かれていく。アードライの目も、驚愕に瞠られる。
「なぜカルルスタイン機関が存在したと思う? そこで育成した、軍を動かす優秀な軍人を乗っ取れば、より早く支配できるからだ」
「なんだと!? では私たちはマギウスに差し出すために訓練されたというのか!?」
「現にひとり、優秀な軍人が乗っ取られているだろう」
 まさか、とイクスアインの鼻筋を汗が落ちる。
「カイン大佐……」
 エルエルフは視線だけで肯定した。
「カインの調書を見た。ある時点からほんの少し、言動が変わったらしい。おそらくその時だったんだろう」
 イクスアインは思い出す。ハーノインが、真逆のことを言うなんて、と嘆いていたことを。それに対してカインは、この男はそんなことを言ったのかと笑っていた。
「カイン大佐が……マギウスの……評議会の犠牲になっていたと……言うのか……」
 では、慕っていたはずの相手は偽物だったのかと、イクスアインの顔がゆがんでいく。
 ハーノインは違和感に気づいていたのだろうに、近くにいた自分は気づきもせずに、ずっとカイン・ドレッセルの理想を裏切ってきたのか。
「カイン様と……ハーノに、どう、謝ったら……!!」
 爪の痕がつくほど拳を握りしめ、悔やむ。自分だけがなにも知らずに、甘えてきた。
「もう、間に合わない……っ」
 いなくなってしまった人たちに、どう謝ればいいのか分からない。やはりハーノインの願いなど聞き入れずに、向こう側へ逝っていればよかった。そうすれば、逢えたはずだ。
「なにを言ってる。カインはともかく、ハーノインは間に合うだろう。直接謝れ」
 え? と顔を上げる。
 エルエルフはなんと言ったのだろうか? 間に合う? 直接? いないのに、どうやってだ?
「ハーノイン、死んでないぞ」
 心臓を一突きにされたような衝撃が走った。

 死んでいない―つまり、生きている?

「な……にを言ってる、エルエルフ……ハーノは、カイン大佐、いや、マギウスのひとりに」
 ガンガンと頭が揺れる。視界が揺れる。心臓が壊れる。
 ハーノインは生きている。
 エルエルフの口にしたその音を、一つ一つ反芻して、イクスアインは混乱した。いや、アードライも同じ気持ちだったようで、エルエルフに詰め寄る。
「どういうことだエルエルフ! ハーノインが生きているだと!? あの状況で……どうやったら生きていられる!!」
 変に期待を持たせるようなことを言って、これ以上イクスアインを混乱させたくない。マギウスだったとはいえ尊敬していた上官と、誰よりも大切な恋人を失ったイクスアインに、酷な期待をさせるなと。
「イクスアイン、アードライも、ハーノインの遺体は見たのか?」
 詰め寄るアードライの気迫さえ押し戻すほどの強さで、エルエルフは訊ね返してきた。
「いや、私は……見ていない……」
 そういえば、ハーノインのピアスを手渡してくれたクリムヒルトも、遺体は見ていないと言っていた。
「アードライもか?」
「あ、ああ、私も見ていないが……いやしかし、遺体を確認していないからって、あの状況で、しかも相手はカイン大佐だぞ、あの人が獲物を逃すはずが―」
 アードライは、言いかけて口をつぐむ。カインが逃すはずがない―つまりやはりハーノインは生きていないのではないか。最後まで言えずに口を押さえた。
「言っただろう、マギウスは若い軍人の肉体を欲していた。カルルスタインを出たハーノインは、ヤツらが望む条件には達していたはずだ」
「ま、まさか……エルエルフ、それは」
 アードライの声が震える。イクスアインの顎が震える。
「誰も見ていないハーノインの肉体、ヤツらの望む条件、何隻ものファントム―導き出される結論は」
 イクスアインの顔が、泣きそうに歪んだ。肌が総毛立って、声すら出てこなかった。


#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い