No.28

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また今日も諦められず

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2008.05.16

#両片想い

-Alto- なんでミハエルなんだろう。 授業中にも関わらず、オレは机に頬杖ついて考えた。 そうだな…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

また今日も諦められず



-Alto-


 なんでミハエルなんだろう。
 授業中にも関わらず、オレは机に頬杖ついて考えた。


 そうだなんでミハエルなんだ。
 ミハエルなんか、意地悪いし女好きだし、オレのこと姫とか呼ぶし。
 なんであんなヤツ、好きになっちまってんだよオレ。


 オレだってそれなりに悩んだりもしたんだ。
 別に男に興味あるわけじゃないのに、ミハエルのこと考えるとすげぇドキドキするし、苦しくて泣きそうになって、一応オレも男だから我慢して、ため息ひとつで思考を変える。
 でもミハエルの姿が見えないと不安になるし、視界の隅にでも入ってこようもんなら途端に口の端が上がる。
 最初はただ、ライバルとして見てるんだと思ってた。
 筆記も実技も負けてんのが悔しくて、必死でやってんのにアイツはオレの前を走ってくんだ。だからずっと、ミハエルのこと見ちまうんだと思ってたのに。


 アイツが女と楽しそうに街歩いてんの見たら、ものすげぇショックで目の前が真っ暗になった。


 女の子は口説くのが礼儀。そう言っているのをいつだか聞いた気がする。実際、歯の浮くような口説き文句を使っているのも何度か見たことがある。
 だけど本心からの言葉じゃないことが分かっていたから、それでも平気だったんだろう。
 特定の女がいたことを知ってショックを受けて、次の日のテストはボロボロだった。
 不審がったミハエルに、何があったんだと顔を覗き込まれて、熱くなった身体にようやく自覚した。


 オレはミハエルのことが好きなんだ。


 だけどそんなこと本人に言えるわけもなくて、何でもないようにやり過ごしてきたつもりでいる。
 ミハエルのことを好きなんだと自覚してから、ため息は多くなってしまったけれど。
 彼女と別れてフリーになったと噂で聞けばホッとして、新しい彼女ができたと聞けばまたかと落ち込む。今は何人目なんだろうな。
 アイツはオレを姫と呼ぶけど、オレはれっきとした男だし、アイツの彼女にはなれそうもない。だいたい、好きだからどうしたいってわけでもないんだ。
 ただ、アイツが少しでもオレを見てくれるんなら、それでいいなんて女々しいこと考えて。
 なんだよこれ。あり得なくね?
 男なんか好きになって、こんなこと考えて、授業にすら身が入らない。
 ミハエルのせいだ。
 もういい、あんなヤツやめてやる。好きじゃねぇよ、あんな女たらしっ!
 今日だってきっとデートとか何とかで寄り道しやがるに決まってんだ。
 ミハエル、お前なんかな、


「アールトー姫ー。HRも終わったのに帰んねーの?」


 突然聞こえたミハエルの声に、え、と顔を上げる。
 うそだろそんな時間経ってんのか!?
 気づけば他のヤツらは帰り支度をしていて、オレは半分意識が飛んでいたことに気づく。


「授業中も上の空だったな。何か心配事でもあるのかお姫様」
「べ、別にねぇよ!」
 お前にいつ【本命】ができるかなんてそんな心配、してねぇ、し。
 よく考えたらお前みたいな意地の悪いヤツ、オレが好きになるわけねぇんだし。
 絶対ただの気の迷いだ。
「ふーん?」
 ……あ? 授業中も上の空って……み、見てた? オレのこと見てたのかっ……?
 あ、バカかオレ、たった今、気の迷いだって思ったはずだろ。こんなヤツ好きじゃないんだ。見てようが見ていまいが関係ねぇ。
「まあいいや、買物付き合えよ姫。アイランドに新しいとこできたらしいんだ」
「……え、買物? 今日はデートとかじゃねぇのか?」
「デートは明日」
「ああそうかよ」
 お前なんか。
 お前なんか。


「何か悩んでるんだったら、他のヤツより先にオレに言えよアルト。いちばん最初にだ」


 ……ちくしょう、大好きだこのやろう。




-Michael-



 なんでアルトなんだろう。
 本人が隣を歩いてるっていうのに、オレは大きくため息を吐いた。



 そうだよなんでアルトなんだ。
 アルトなんか、こんな見てくれしてても男だし言葉遣いも乱暴だし、テストん時なんかめちゃくちゃ敵意むき出しで突っかかってくるし。
 なんでこんなヤツ、好きになっちゃったんだろうな。


 オレだって悩んだんだ。悩んだなんてもんじゃない。
 オレは女の子の方がいいし、ゴージャスなお姉さんなんか、たまんないんだよホント。今までもそうだったから周りも当然そういう見方と付き合い方をしてくるし、このオレが男を好きになったなんて、いまだに信じられねー。
 でもアルトは……クラスのヤツが諦めちまった【首席】を本気で狙ってくるし、競う相手ができたのは嬉しかった。
 芸能科からの転科が来るって聞いて、どんなヤツかと思ってたら噂に違わぬ美人で言葉を失くした。
 それでも顔に似合わず激情家で、からかうと面白かったんだ。
 それを楽しんでいるだけだと思っていたのに。


 難しいコークスクリューを初めて成功させたあの日、嬉しそうに駆け寄ってきたこいつを見た時、心臓が鳴った。



 それから、どんな女の子といてもつまらなくて、デート中だって上の空。
 歯の浮くようなセリフがクセで出てしまうけれど、目の前にいるのがアルトだったらなんて考えて、何度か苦笑いをしたこともある。
 女の子は口説くのが礼儀だなんて言ってるけど、真実の言葉を向けた女の子なんていただろうか?
 デートしているところをアルトに見られて、でもアルトは声さえもかけてくれず、次の日のテストはいつもより点数が落ちた。
 落ちた点数よりアルトに見られたことの方がショックで、その時やっと認められたんだ。


 オレはアルトが好きなんだ。


 だけど女好きで通っているオレが、男を好きになっただなんて言えやしない。
 この世間知らずのお姫様を好きなんだと自覚した途端、ため息が増えてしまったけれど。
 オレが女の子と付き合っても別れても、気にもしてくれないし。オレがこんなに構ってんのに気づいてもくれないし。オレの小さな努力無視しやがって。
 オレはこいつのこと姫って呼ぶけど、別に女の子じゃなくてもいいって思う。でも付き合いたいのかって言われたら、……どうだろう、そうなのかな?
 こうしてときどき街に買物来るくらいできるし、同性じゃ堂々と恋人デートできるわけでもないし。
 ただ、こいつが少しだけでもオレを気にかけてくれるんなら、それでいいなんて思う。
 ……ハ、どうよ。このオレがこんな純情な恋してるなんて。
 アルトのせいだ。
 もうやめたい。やめてやる。こんな鈍感なヤツ好きになったって仕方ないじゃないか。
 今日だって、デートなんじゃないかなんて無神経に聞いてきやがって。今日も明日も明後日も、そんな予定入ってねーよ!
 アルト、お前なんかな、


「ミハエル、お前こっちの方が似合う」


 耳に入ったアルトの声にハッと顔を上げる。
 ああそうだネックレス選んでたんだっけ。特に入用でもないんだが、立ち寄った店に並べてあったから、何の気なしに見てたんだ。


「どうしたんだよ、上の空だな。てめぇの方こそ悩んでんじゃねーのか」
「別にないぜ悩みなんて。強いて言えば、明日何を着て行こうかってとこかな」
 どうしたらお前がオレの気持ちに気づいてくれるのかなんてそんな、思ってねぇ、し。
 あ、バカかオレ。もうやめるってついさっき決めたばっかじゃねぇか。
「ふーん、別にいいけど。だからお前はゴールドよりシルバーの方が似合うって言ってんだろ、こっちにしろよ」
 ……姫? もしかして真剣に選んでくれてたのか?
 いやいやでもな、今さらそんな可愛いとこ見せても無駄だよ。もうやめるんだ。
「こういうのって、普通彼女とかと……選んだりするんじゃねーの?」
「人それぞれだろ。姫はそういうことしないのか?」
「女と? そういうのめんどくさい」
「へぇそう」
 お前なんか。
 お前なんか。



「お前といる方が、楽だからな」



 ……ああもう、大好きだよこのやろう。

続編「また今日も言い出せず-Alto-
#両片想い