華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.724
塚跡WEB再録 2022.12.18
#R18 #両想い #ウェブ再録
ドアを開けて招き入れた。その瞬間腕を引かれ、今閉めたはずのドアに押しつけられる。「あ、……っ」 す…
塚跡WEB再録
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ドアを開けて招き入れた。その瞬間腕を引かれ、今閉めたはずのドアに押しつけられる。
「あ、……っ」
すぐに重なってきた唇を拒む気はさらさらないが、唐突な接触に跡部はくぐもった声を上げた。
「んん……っ」
熱く、力強い舌が入り込んでくる。追われた舌が出逢って、口の中で暴れ回った。ちゅ、ちゅ、と濡れた音が響く。足の間に膝を割り込ませ体で押さえつけてくる強引さを、本能で押しやろうとしてしまう。だけど舌先で口の中から頬を撫でられて、ぞくぞくと這い上がってきた快感が、その手を緩めさせた。
「んっ……ふぁ……んぅ」
唇が離れてもすぐにくっついて、むさぼるように吸われる。そのたびに心臓が音を立てて、息が続かない。テニスをしている時の呼吸とはわけが違う。このまま呼吸困難で死んでしまうのではないかと思うほど激しく、奪われていく。
がっちりと腰を抱く腕。膝から太腿を撫で上げる左手。ジャージの上からでもその手が熱を持っているのが伝わってきて、嬉しくて仕方がなかった。
「ん、んっ……」
熱い舌先と器用な指先に蕩かされ、膝から力が抜けていくようだ。それでもどうにか踏ん張って耐え、混ぜられた唾液を飲み込んだ。
「手、塚……っ」
唇が離れた隙に名を呼んで、衿を掴んで引き寄せる。
手塚国光が自分に欲情しているという事実が、跡部景吾を興奮させる。それを、この男は分かっているのだろうか。
奪われていた唇を今度はこちらが奪い返して、離れてやるものかと両腕で手塚を抱きしめた。
どうして離れていられるのだろうと思うほど、互いの恋情は深く、強い。
ドイツへ行けと背中を押したのは跡部自身だし、それ以外の選択肢などなかった。だけどこうして逢えてしまうと、触れたくて仕方がなかった自分を思い知らされる。
「……っおい、ば……馬鹿、待て、手塚」
ジャージの上から胸に押し当てられていた手が、ジャッとファスナーを下ろす。すぐに中のウェアをたくし上げてきて、さすがに慌てて手塚の体を押しやった。
「がっつくんじゃねえよ、こんなところでっ」
「お前が言うな。ヘリの中でも散々俺を煽ってくれたな」
ぐっと言葉に詰まる。
各国を巻き込んだ焼肉バトルの最中に、手塚と優雅にヘリデートとしゃれ込んでいたが、こっそり腰を抱いたり指を絡め合わせたりしていたのは跡部だ。そういう欲が少しもなかったかと言えば嘘になるし、あわよくばという気持ちも確かにあった。
だがだからといって部屋に入ってすぐにとは思っていない。まさになだれ込むような状態だ。
「跡部。まさか俺には性欲がないなどと思っているんじゃないだろうな」
「さすがにそこまでは思ってねえよ! 思って……ねえけど、だから、ちょっと、待てって」
手塚の手のひらが、素肌を撫でてくる。危うくこのままここで許しそうになるが、すんでのところで理性をかき集めることに成功した。
「やりてぇのはこっちだって同じなんだよ、ばか、おい……ほんの少しじゃねえかっ……」
手を引き剥がして、ようやくまともに手塚を正面から見る。濡れた唇やわずかに上気した頬はこんな時しか見られなくて、さらに欲情させられた。ストイックな雰囲気を醸し出すドイツ代表の黒いジャージが、逆にエロティックに手塚国光を包み込んでいる。
「なるほど、ベッドで抱かれたいということか」
「だっ……!」
カッと頬が紅潮する。抱かれたいというのは事実だが、手塚に口にされると、恥ずかしいのと同時に腹立たしい。自分が抱く側であることを当然とでも思っていそうだ。いつか寝込みを襲ってやろうかとも思うが、返り討ちに遭うのがせいぜいだろう。
「お前が使っているのはどっちだ」
「そ、……っち、左側の」
そんなことを考えている間に腕を引かれ、引きずられていく。
手塚にしては性急な行動だが、試合の熱が覚めやらないのだろう。それは跡部にも覚えがある。テニスに打ち込んだあとは、ひどく好戦的になって、分かりやすく欲望がレベルを上げる。
だから、手塚が寝室に入るなり押し倒してくるのは理解ができた。できたが、大事なことを思い出す。
「手塚、ちょっと待て、五……いや三分でいい、ステイ、おい待てっつってんだろ」
「待たん、ふざけるな」
「ふざけてね……っぁ……ん」
先ほども散々キスをしたのに、また唇が塞がれる。こんな強引さも、気がかりがなければ受け入れていただろう。舌を絡められ、吸い上げられ、脇腹を撫でられる。手塚の仕草に慣れきった体は簡単に反応を示し、彼を喜ばせたようだった。
それはとてもわかりにくい機微だったが、愛情のなせるわざとでも言っておこう。
これは止まりそうもないなと跡部は諦めて、非常に不本意ではあるものの、手塚の唇がキスに満足して離れ首筋に移動したあたりで、ポケットに入れていたスマートフォンを取り出した。
「電話か?」
「テメーが有無も言わさず引っ張ってくるからだろ……だからちょっと待てって言ってんのに……」
手塚はそれに怒る様子は見せない。コトの最中にと普通は怒りそうなものだが、そもそもが手塚のせいだ。跡部はトークアプリを立ち上げてアイコンをタップした。
端末が呼び出し音を鳴らしている最中も、手塚の手のひらは腹を撫で、徐々に上に移動してくる。手塚の唇も、首筋のラインをなぞるのが楽しそうだ。まったくこの男は、と思いつつ、跡部は相手が応答するのを待った。
『跡部? どうしたんだい、主催者が不在じゃ締まらないだろう』
「幸村……、悪い、部屋……少し空けててくれねえか、……ッ」
電話の相手は幸村精市。この部屋の同室者である。寝室は分けられている構造ではあるものの、今帰ってこられたらまずい。他人がいるところで行為に及びたいなどという性癖は、さすがに持ち合わせていないのだから。
『なに、どういうことだい?』
「……駄犬が……入り込み、やがっ……て、な」
首筋を、駄犬の舌が這う。跡部はびくりと肩を揺らし、おかしな声が漏れそうな唇を覆った。
『…………ああ、駄犬、ね。ふふっ、それは大変そうだ』
幸村は手塚とのことを知っている。今ここで何が行われているか、気づいてもいるのだろう。跡部が必死に堪えているにもかかわらず、手塚は何も気にした風もなく愛撫を続けている。いっそ聞かせているのではないかと思うほど、リップ音が生々しい。
――――くそ、この馬鹿……!
押し退けられない自分の浅ましさが、幸村にまで伝わっているかと思うと、いたたまれなかった。
『構わないよ、跡部。俺は今夜は帰らない。何しろさっきから、手塚とのアツい試合のことで質問と称賛責めだ』
俺自身は負けたっていうのに祝杯に引っ張りだこだよと電話の向こうから聞こえてくる。この借りは必ず返そうと心に決めて、ホッと息を吐いた。
「まだドイツを降しただけだ、ほどほどにしとけよ」
『跡部に言われたくないなぁ。ほどほどにね。駄犬によろしく』
プツ、と通話が途切れる。切れてようやく、手塚が体を起こした。なぜ通話中にそうできないのかと、跡部は端末を放って手塚を見上げる。
「いやみか、二人して」
「さあな?」
今日の試合で日本代表はドイツ代表を降した。負けた試合もあるものの、日本が決勝戦に進んだのは事実。奇しくも手塚は幸村を打ち負かしたが、チームとしての勝利は逃してしまった。
「慰めてやろうか、手塚」
「結構だ。慰められるような試合をしたつもりはない」
だろうなと、跡部は笑う。手塚国光はいつでも全力で挑んでいる。次の試合に進めなかった悔しさはあるだろうが、慰めなど必要ない。跡部は手塚の左手を取って、大切そうに手のひらに口づけた。
「かっこよかったぜ、手塚。ぞくぞくした」
日本代表の中学生キャプテンとして日本の勝利は願ったが、手塚が全力で挑んでいる姿に歓喜したのも本当だ。あの時背中を押して送り出したのは間違っていなかったと安堵する気持ちも手伝って、体が震えた。いっそ欲情にも似た思いだった。
「……幸村にゾーンの攻略法を教えたのはお前だろう」
「誰かに破られる前に俺にやられて良かったじゃねーか。ククッ、あれは気持ちよかったな」
「お前の迷いが晴れたのは何よりだが、以前よりしたたかになったな」
「……迷い、お前しか気づいてなかったみてーだがな。醜態さらして悪い、手塚」
「醜態とは思っていないが、他のヤツらと一緒にしてもらっては困る」
言いながら、手塚は自らのジャージを脱ぐ。仕切り直しだととでも言わんばかりの仕草と、まだ見慣れないドイツ代表のウェアに心臓が躍った。
「分かっているんだろうな、跡部。俺はお前の恋人だ」
「ベッドの上で何言ってんだ。恋人以外をこんなふうに見上げる趣味は俺様にはねえんだが」
そもそも本来抱く側の性別である自分が、抱かれる側に甘んじてやっているというのに、今さらだ。もう手塚にしか欲情できないのではないかと思う。考えたこともない。
「来いよ手塚。今夜一晩、お前の熱に溺れてやる」
そう言って両腕を伸ばせば、右の手のひらに柔らかなキスが降ってくる。その手を背中に回すと、先ほどまでの強引さが嘘のように優しくのしかかられた。
「では、お前の熱もすべてもらうぞ、跡部」
同等にと射貫いてくる瞳にぞくぞくと背筋を震わせて、首に腕を回して引き寄せる。
普段からあまり言葉にしない男だが、欲しがる熱は同じなのだと実感した。
#R18 #両想い #ウェブ再録