No.7

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珈琲色(カフェイ・スー)

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ 2005.02.03

#片想い #切なめ #ラビユウ #コム→神

 コーヒー、飲むかい?と訊ねたボクに、彼はゆっくりと頷いた。 らしくない遅い動作に、思わず苦笑してし…

NOVEL,D.Gray-man,ラビユウ

珈琲色(カフェイ・スー)




 コーヒー、飲むかい?と訊ねたボクに、彼はゆっくりと頷いた。
 らしくない遅い動作に、思わず苦笑してしまう。
 フラスコで温められたカフェイ。カップに注がれる音は、ボクの好きなもののひとつで。
「砂糖もミルクも要らないんだったよね、キミは」
「────…ミルクだけ…入れてくれ。多くて、いいから」
 長い黒髪がパサリと肩から落ちる。低めのテノールが耳をすり抜けて、ボクは一瞬手を止めた。
 ボクの記憶が間違っているはずはない。彼は変わることをひどく嫌う。環境はもちろん、飲食物の味でさえ。
「珍しいね? 神田クン」
 それでも要望どおりに多めにミルクを入れてカップを渡す。ローズグレイへと色を変えたそれは、彼の口唇に良いアクセントとなるだろう。
「なにかあったの?」
「…別に…」
 きっと自覚してないんだろう、キミは。
「おやおや。何もないのにこんな時間にボクのとこ来るの? 襲われても文句言えないよ~?」
 最近やたらと麗しい。
 髪にだって艶があるしふとした表情にグッとくる。
「てめェまで妙なこと抜かすな」
「…まで? もう誰かに襲われた?」
「揚げ足取んな。殺すぞ」
 不機嫌そうに眉を寄せる。その表情さえ愛おしい。
 そんなことは絶対口に出せないけれど。ああボクだってイノチは惜しいからね。


「で、ラビと何があったの」


 訊ねたボクの言葉に反応したのか、彼は飲みかけていたカフェイにむせ返る。わかりやすいな、ホントに彼は。
「なんでここでヤツが出てくる!」
「顔、真っ赤だよ神田クン」
 ほんのり染まった頬を指摘すると、決まり悪そうに口許を押さえ顔を背ける。
 本当に、ウソをつくのが下手だと思い微笑んだ。



「……ァ…イツの泣き顔なんて初めて見た」



 さすがに耳を疑ったよ。ボクだって想像できないもの。
「泣いたの、ラビが?」
 訊かなければよかった。異常さから、状況を読み取れてもよかったと思った。



「もって後半年だとさ」




 カップの持ち手がするりと指をすり抜けた。
 ボクの手から逃げ出したそれは、硬い床に当たって弾ける。逃げ出した自由を堪能するヒマもなく。
「泣いてんだ。アイツ。何度も……俺の名前呼んで…キス、してきた」
 心臓が痛い、と俯く彼を見ていたくなくて、ボクは目を瞑りながら上向いた。



 ああ忘れていたよ。
 キミはあの人のために命を削ってまで生きていたんだ。



 ボクには止められない。止める権利はあるだろうけど言葉が喉に引っかかる。
「ラビが、好きかい?」
 せめて、ボクのために彼に生きる目的を。
「………多分」
「だったらラビのために生きてやりなよ」
 如いてはボクのために。
 自分を哀れむように微笑み彼に視線を移すと、辛そうに顔を歪めて笑ってた。
 泣き出しそうに、笑ってた。
 心が弾かれる。
 華は散る直前、もっとも美しく咲き、自身を誇ると言う。
「コーヒー、美味かった。明日、ラビと任務に出る」
「うん」
 飲み干したカップを手渡してくれる。
 気をつけて、と言うほかない。
 止めるわけにはいかないんだ。それは彼が彼として生きるために必要なことなのだから。
「おやすみ神田クン」
「ああ」
 扉が彼を吸い込みパタンと閉まる。
 部屋が薄暗くてよかったと思う。できるなら涙など見ないですむ方がいい。
「……っ…」
 割れたカップのカケラがかちりと啼いた。
 弾け飛んだボクのココロがかちゃりと鳴った。
「キミを……恨むよ神田クン…」
 きっとキミはボクの珈琲色のココロに気づいてて────


#片想い #切なめ #ラビユウ #コム→神