華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.412
NOVEL,A3!,千至 2018.11.18
#両想い #ラブラブ #千至
「うわ、マジ辛そう」「そんなことないだろ」 いや絶対に無理、と至は首を振る。 見るからに辛そうな色の…
NOVEL,A3!,千至
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「うわ、マジ辛そう」
「そんなことないだろ」
いや絶対に無理、と至は首を振る。
見るからに辛そうな色のカレールーを前にしては、誰だってそうすると思うのだ。もっとも、そうせずに犠牲になった団員もいるのだが。
千景が辛い物好きだということは知っているし、ランチを共にした際に激辛の物をそれでも不満そうに食べるのを何度も見たことがある。彼いわく、辛さが足りないそうだ。
「大丈夫だって。俺を信じて」
「先輩を信じるくらいなら悪魔を信じた方がマシですよ」
だいたい、今まで散々からかい目的でたくさんの嘘をついてきた男が何を言っているのか。至は大袈裟にため息をつき、肩を落としてみせる。
「茅ヶ崎、俺に対する扱いが大分ひどくなってきたな」
「それも愛情です」
「愛してるならちょっと食べてみてよ」
「愛情とは言いましたが愛してるとは言ってませんよ????」
確実に愛してはいるのだが、そんなつもりで愛情と言ったわけではない。そもそも、愛があれば何でもできるわけがないのに。
「頑張って作ったのにな……」
しょんぼりと肩を落とし、珍しく眉を下げた千景に、至はぐっと言葉に詰まる。頑張って作っただろうことは分かる。ジャンケンにわざと負けたとはいえ、あのメンツでは本当に大変そうだ。
至とて、恋人(+α)の手料理は食べたい。
「……じゃあ、一口だけ。いや一口っていうか一舐め?」
しょんぼりとした千景は可愛らしくて、もっと見ていたい気持ちもあるけれど、それもちょっと忍びない。
至は千景からスプーンを受け取って、辛そうなカレールーをほんの少し掬う。口許に近づけるだけで、辛そうな匂いが鼻をつく。いい匂いなのは確かなのだが、これは「辛そう」なレベルを越えている。
それでも意を決して、舌を出しペロリと舐めてみた。
「……ッ」
一舐めでギブアップ。これはご飯と一緒でも頬張れるものではない。
「どう?」
「先輩はこれで人を殺せると思います。っていうかこれ食べれるのあなたくらいでしょ」
「茅ヶ崎、涙目になってる」
「誰のせいですか!」
やっぱり、愛があってもできることとできないことがある。
「こんなの他のヤツらに食べさせたら怒りますよ。咲也とか椋とか、無理して食べそうだし。絶対に駄目」
「……そうか、じゃあ辛さはどうにかしてみるよ。何か具のリクエストある?」
不評にはがっかりしているものの、大事な家族が無理をして食べるのは嫌らしく、受け止めてくれる。至はホッとして、遠慮なくリクエスト。
「“ち”がつくもの。好きなんですよねー」
「ち? 俺かな」
「バカなんですか!?」
「だって“ち”がついてお前の好きなものだろ」
確かに千景にも“ち”がついていて、至が大好きなものだけれども。今はそういう話をしている状況ではなかったはずだ。
「チーズですよ、チーズ!」
「チーズ?」
「結構定番だと思うんですけど。マイルドになるし」
「なるほど。ちょっと取り入れてみるよ」
「頑張って、みんなが食べられる辛さにしてくださいね。あ"ーほんと辛かった……死ぬわ……」
まだ舌の上に残っているような気さえする。効果はないだろうが、ヒリヒリとした舌の熱を冷まそうと、口から出してパタパタと手で扇げば。
「んんッ!?」
その舌を舐めて押し込んでくるものがあった。
「ん、んん……」
もう慣れてしまった、千景の舌の感触。舌に残っていた辛さを紛らわしてくれているのかと思うが、うっかり別の熱があがってきそうである。
「……ちかげさん……」
寮でなければ、このままなだれ込んでもいいのだが、彼にはまだ大事な仕事が残っている。やんわりと千景の体を押しやって、名残惜しげに唇を離した。
「"ち”がつくもので口直しかな」
「……直りました」
「そう、なら良かった。じゃあ、みんなの好みも聞いてくるよ。夕飯楽しみにしてて」
「あ、千景さん」
「ん?」
美味しいカレーとの戦いに向かう千景を呼び止めて、至はもうひとつ、リクエストをする。
「今のじゃ足りないんで、デザート、いつものホテルでくださいね」
“ち”のつく至の好きなもの、あんなキスでは全然足りない。
千景には想定範囲だったようで、笑いながらOKと返してくれる。
さて美味しいはずの夕飯まで、ゲームをして待っていようかと、至はソファの上に座り直した。
#両想い #ラブラブ #千至