No.41

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6月の6秒

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2010.05.26

#ミハアル #両想い #ラブラブ #イベント無配

 朝目が覚めると、いちばんに肌の色が目に入る。 慣れてしまった、もういつもの光景だ。夜眠る時には必ず…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

6月の6秒

 朝目が覚めると、いちばんに肌の色が目に入る。
 慣れてしまった、もういつもの光景だ。夜眠る時には必ず抱きしめながら眠ってくれる恋人の習慣に、ふと幸福を感じる時がある。
 アルトはそっと腕を動かして、恋人であるミハエルの頬に触れてみた。
 温かい。
 聞こえてくる寝息は今の自分しか知らないもので、たまらなく愛しさがこみ上げてくる。
 身体をつなげるようになってどれだけか経つけれど、この温もりの中で目覚めるようになってどれだけか経つけれど、実はミハエルの寝顔というものをあんまり見たことがなかった。
 今日は珍しいな、どうしたんだろうなと思いつつ、アルトはミハエルの目蓋に触れる。起きてしまわないように細心の注意を払って、眉間に、額に、鼻筋に触れていった。
 これがすべて、自分の大切なひとなのだと思うと、言葉にできないほど幸福だった。
「ミシェル……」
 頬に、目蓋に、額に、鼻筋に、先ほど指を滑らせた箇所に口づけを贈る。この吐息も、溶けて彼の中に飲み込まれてしまえばいいのにと思いながら。
 首筋に見える赤い鬱血は、昨夜自分が残したものだろうかと、少しばかり頬を染めた。
「んー…ひめぇ……?」
「あ、悪い起こしたか」
 そうは言いつつも、アルトは少しも悪いと思っていない。こんな時間まで惰眠を貪っているのが悪いのだ。
「もう起きろよミシェル。朝飯が昼飯になっちまうぞ」
 髪を撫で、微笑む。きっと他人が見ていたら、愛しそうになどという言葉で飾られるのだろう。
「キスしてくれたら目ぇ覚ます」
「甘えんな、もう」
 ときどきこうしてねだってくるのは、なんともかわいらしいお願い事。仕方ないなーと言いながらも、アルトは嬉しそうに身体を傾けて、ミハエルの口唇へと降下していった。
 触れて、それだけで離れていく口唇に、ミハエルは笑って目を開けて、おはようアルトと呟く。
「わっ」
 そのあとに、捕まえたとばかりにアルトを抱き寄せるのだ。
「何すんだよ、危ねえな」
「姫補充」
「わけの分かんないこと言うな。ほら早く放せって」
 抱き寄せてぎゅうと抱きしめて、頬をすり寄せる。朝の日課のようになってしまった抱擁を、今日も変わらずにたしなめてみる。
「やーだ、姫って抱き心地いいんだもん」
「やーだって、お前な……」
 こんなに子供のような男だったろうか?と思うこと何度目か。学校ではこんな素振りを少しも見せないくせに、自分と二人きりでいるときには、ここぞとばかりに甘えてくる。
 自分に対してだけなのだと思うと、充足間に満たされていく。
「今日は映画見に行くって約束だっただろ、早く起きろ」
「んー、そうだっけ」
「忘れてんじゃねぇよミシェル!」
 一昨日から言ってたじゃないかとアルトは憤るも、ミハエルの腕はアルトを抱きしめたままだ。くっくっと笑いながら、嘘だよごめんと耳元でささやくのは、アルトをからかうミハエルの、常套手段。
「ちゃんと覚えてるって、姫。たまにはふたりっきりで街に行きたい、…だっけ? 可愛いなーもう、可愛いよ」
 いつもは他のメンバーもいるからたまには、と言ったアルトの言葉を思い出して、ミハエルは鼻先にキスをしてくる。アルトはそれにボッと頬を染め、らしくないことを言ってしまったと目をそらす。
 みんなでわいわい歩くのももちろん嫌いではないのだけれど、誰にも気を遣わずに行きたいところへ行ってみたい。そう思って、ミハエルに提案してみたのだ。
「だって、恋人同士…なんだから、そういうの、したい、し…」
「ああ、分かってるよ。起きてシャワーして出かけようか。でもあともうちょっと」
 俺だって姫とふたりで出かけたいよとミハエルは言うのに、それでも腕は緩めてくれそうにない。アルトは困った顔をして、
「そんなこと言って、ダラダラしちまうんだろ。今すぐこの腕を外せ」
 今日こそは譲らない、とアルトはミハエルの頬をつねる。イテテテテ、と観念したのか、ミハエルはアルトに告げた。
「じゃあ、あと六秒な」
 ぎゅう、と腕が締まる。時間を区切ったのは一歩前進だと思ったが、アルトは、ミハエルの腕の中で首を傾げた。
「なんでそんな半端な数字なんだ……?」
 好きずきだろうが、普通ならば五秒とか二十秒だとかで区切るだろうに、なんぜそんなにも半端な数なのかと。
「今日は六月だから。六秒」
 そしてそんな六秒なんて、もう過ぎてしまっているだろう。ミハエルの口から出てきた言葉は、何とも安直で分かりやすい答え。
「だから六秒って、バカかお前」
 アルトは思わず噴き出して、そしてはたと気づく。六月で六秒なら、十月ならば十秒、十二月なら十二秒。では、一月だったら……?
「姫、今なにを考えたか当ててあげようか」
「えっ?」
「一月だったら、ミシェルは一秒しか抱きしめてくれないのかなあって。違う? そーんな不安そうな顔しちゃってさ」
 緑の瞳が見下ろしてくる。すべてを見透かすようなそのみどりは、好きなものの内のひとつだけれど、こんな時は憎たらしい。
「そっ、そんなこと考えてねーし!」
「またまたぁ。大丈夫だよーひめー、一月はじゃあ一分にするからさー」
 無理矢理腕の中から抜け出して、アルトはシャツを羽織る。その後を追うようにミハエルも起き上がり、ベッドの上で笑った。
 なんて都合のいい区切り方なんだと思いつつも、頬が緩んでしまうのもまた事実。
 何秒、何分、何時間。
「さ、お出かけしましょうかアルト姫。一日中一緒にいられるんだしな」
「……いつも一緒じゃないか」
「バァカ、今日は二十四時間一緒だろ」
 そうか、とアルトは納得した。一分一秒離れることなく一緒にいられるんだと笑って、振り向いておはようのキスをした。

#ミハアル #両想い #ラブラブ #イベント無配