No.650, No.649, No.648, No.647, No.646, No.645, No.6447件]

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別に好きなんて言った覚えないけどね

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.28

#お題 #両想い

「二人って、付き合ってるの?」 何かと一緒にいるよねと続けるのは、不二だ。合宿所の食堂で、いきなり何…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

別に好きなんて言った覚えないけどね

「二人って、付き合ってるの?」
 何かと一緒にいるよねと続けるのは、不二だ。合宿所の食堂で、いきなり何を言い出すかと思えば。
 訊ねられた手塚と跡部は、互いに顔を見合わせた。そうして同時に、不二に向き直る。
「まあ世間じゃそういうことになるのかもしれねえな」
「そうだな、恋人といっていい間柄だとは思う」
 頷き、答えてやる。
「え」とそこかしこから驚嘆の声が聞こえてきた。あれだけ騒がしかったのに、聞き耳を立てていた連中が多いのだろう。
「へえ、あっさり認めるんだね。英二、やっぱりボクの勝ちだよ」
「なんだと」
 満足げに振り向く先に、菊丸の姿。勝ちとはどういうことだと、跡部が眉間に皺を寄せる
「え~、俺絶対否定すると思ったのににゃ~。もー、手塚め~。ほい不二、約束の」
「おい菊丸」
 まさか賭けをしていたのではないだろうなと、手塚も眉を顰めた。
 だが、菊丸が不二に手渡したのは「本日のデザート」である焼きプリン。
 賭けてはいたのだろうが、なんとも平和的なものだ。しかもここはビュッフェ形式で、デザートコーナーに目を向ければまだまだ本日のデザートは大量にあった。賭けの代償にしてはかなり、弱い。
「何がしてぇんだテメェらは……」
「最近はそういうのが流行っているのか? この程度なら構わないが、絶対に金銭を絡めるんじゃないぞ」
 困ったヤツらだぜと、跡部は紅茶を口に含む。手塚も、味噌汁の椀を持ち上げた。
「ねえ、君たちって食の好みも合ってないけど、大丈夫なの? そもそもどっちから告白したのかな」
「あ、それ気になる~。俺はね~跡べーからかなって思ってんだけど」
「いや、手塚からってのも有りだと思うよ、英二。割と強引だしね」
 不二も菊丸も、食事のトレーを手塚たちと同じテーブルに置いてしまう。相席を断るつもりはないが、話題は妙な方向に行ってしまってありがたくない。
 男子中学生ともなれば、誰と誰が付き合った、別れた、なんて話は興味津々なのだろう。それは分かるが、自分たちをやり玉に挙げられるとは思っていなかった。
「俺は別に手塚に好きだなんて言った覚えはねえ」
 跡部は腕を組んで椅子の背にもたれ、ふんと鼻を鳴らす。それには、「ええーっ」と菊丸が不満そうな声を上げた。また予想が外れたのが悔しいようだ。隣で、不二が満足げに笑っている。だがしかし、
「それは俺もだな。跡部に好きだとは一度も言っていない」
 それを崩したのは、手塚の言葉だった。うっかり驚きで開眼してしまった不二が、手塚を見て、跡部を見る。どういうことなのかと、次に菊丸と顔を見合わせた。
「えっと……? つまりお互い、告白はしてないってこと?」
「そうなるな」
「なんでそれで成り立つの」
 信じられないというような菊丸の声に、手塚はなんのためらいもなく肯定を返す。跡部もさして気にしたふうもなく、それは事実なのだと不二を驚かせた。
「そんなもん、言わなくても分かるだろ。手塚が俺様にベタ惚れだってのは」
「跡部の方が分かりやすいと思うが。どう見ても俺のことが好き過ぎだろう」
「フッ……まあそれには違いねえがな」
 視線をひとつ、交わす。それでお互いが満足した。
 言葉が必要ないという関係も世界にはたくさんあるだろうが、まさかここでそんなロマンスを繰り広げられるとは思っていなかった。
 不二たちは、自分たちから首を突っ込んだにもかかわらず、がっくりと脱力して、もう何も訊く気にならなかった。
「なんだ、もういいのか?」
「モウイイデス……」
「からかうつもりじゃなかったんだけどね……なんだか返り討ちに遭った気分だよ」
 二人して、ため息を吐く。根性ねえなと笑う跡部と、煽るなとたしなめる手塚と。
「それにしたって手塚、たまには言葉で愛を囁いたっていいんだぜ」
「そっくりそのまま返してやる。お前が望むのならば努力はするが、あまり期待はしないでほしい」
「ん、じゃあ練習するかよ。今夜、二人でな」
「そうだな、慣れないことをするのだから、練習というのは有効だろう」
 そんなことを言い合う間中ずっと、二人は見つめ合ったままだった。これでは確かに言葉など必要ないだろうと、周りは全員顔を背けてやる。
 今夜いったいどんな状況でどんな練習をするのだと、心の中で叫びながらも。



お題:リライト様 /別に好きなんて言った覚えないけどね
#お題 #両想い

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……もし、今、……すぐ会いたいって言ったら

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.27

#お題 #両想い

 同じ都内に住んでいるとはいえ、恋人とは学校が違う。同じ中学に通っていれば平日には毎日逢うことができ…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

……もし、今、……すぐ会いたいって言ったら


 同じ都内に住んでいるとはいえ、恋人とは学校が違う。同じ中学に通っていれば平日には毎日逢うことができるのに、寂しい。もっとも、違う学校に通っているからこそ好敵手として対峙し、全力でぶつかり合って互いを高めあっていけるというのもあるのだが。
「その日は俺が空いてねえな。校内の企画が大詰めなんだ」
『そうか、残念だ……』
 電話の向こうで、わずかに沈んだ声が聞こえる。その声にまた切なくなって、胸が締め付けられた。恋人である手塚は、あまり感情を表に出さない。顔にさえ出なくて、周りの連中はそろって「手塚は分かりづらい」と言っている。跡部も最初はそうだったが、最近は分かるようになってきた。嬉しいらしい時の瞬きの仕方、楽しそうな時の指先の行方、安堵した時の吐息の動向。眉間のしわの深さは不満度の表れで、声の浮き沈みもそのまま浮かれ具合と沈み具合だ。
 しばらく逢えないのを本当に残念に思っているようで、胸をかきむしりたいほどの愛しさに駆られる。
 好きだと言ったのは跡部が先だが、間を置かずに「俺もだ」と返してきた手塚とは、どうやら同じタイミングで恋に落ちたらしい。
 どちらがどれだけ気持ちが大きいかなんて野暮なことを言うつもりはさらさらない。自分の方が大きいと思っても、こうして同じにされてしまう。
「手塚、お前氷帝に転入しろ。そうすりゃ逢うのもたやすいぜ」
『そんなことできるわけがないだろう、この時期に。それを言うならお前が青学に来い』
 時期がおかしくなければしていたのかと突っ込みたくなる。しかし跡部の方も3年生のこんな時期に転校などできやしない。
「じゃあ、家を出たら向こうで一緒に暮らすかよ? 行くんだろ、ドイツ」
 手塚が息を呑んだらしいのが伝わってくる。互いにあまり話題に出さないようにしているが、手塚は中学を卒業したらドイツに行く。テニスをしにだ。もちろん遊びで行くわけではない。プロになるためだ。
 それは実に喜ばしいことで、無二のライバルとしては背中を押してやりたい。恋人としては……寂しいが、笑って送り出してやりたい。
 しかし、送り出してそのままでいるわけにはいかなかった。手塚がプロになるのを静かに応援しているような男ではない。
『一緒に、というのは……』
「お互いプロになってからの方が楽かもな。互いの拠点に家買って、シーズン中にはそこで過ごすってのもアリだぜ」
『…………そうか、……楽しみだ』
 お互いがプロになってからという言葉を、手塚は理解してくれたようだ。静かで抑揚がないように思える声音にも、安堵が混じっている。深く頷くような速度は嬉しさを纏っていて、跡部の方こそ安堵した。
 テニスというスポーツで出逢って恋をした自分たちの間に、それは死ぬまで在り続ける。ずっと先に現役を引退したとしても、白髪の老人になった後にも、手塚国光と跡部景吾の間には、黄色いボールが飛ぶのだ。
『ベッドは一つで構わないだろうか』
「ケンカした時どーすんだよ」
『ベッドに入るまでに仲直りすれば問題ない』
 あまりに当然のことのように言われて、跡部は思わず噴き出した。ケンカをしなければいいと言うのではなく、ケンカをしても仲直りする期限を設けるとは。
 その発想には至らず、改めて相手が自分とは違う思考を持った人間なのだと実感させられる。そして、よく理解してくれていると嬉しくもなる。
 手塚とケンカはしたくないが、それこそ別々の人間だ。意見が合わないことだって多々あるだろう。
 その際不満を持たずにいられるかと訊かれたら、悩む。いくら惚れた相手だからといって、すべてを肯定するわけではないのだ。
 それでもいいと手塚は言ってくれている。自分もそうなのだからと。別々の魂だからこそ惹かれるし、別々の体だから触れ合うことだってできる。
 そういった考えを持つ手塚を、本当に好ましく思う。
「なあ手塚」
『なんだ』
「好きだぜ、……っていうより、愛している。俺が生涯をかけるに値するのは、この世界でお前しかいねえ」
 この歳で、愛しているなんてそんな大それた言葉を吐くことになるとは、思わなかった。言わせたのは、手塚だ。本当に憎たらしくて、愛おしい。
『……お前はどうしてそう……予告なしにたまらないことを言うんだ』
「しかたねえだろ、言いたくなったんだから」
『こらえ性がないな』
「うるせえな、悪いのかよ」
 言った傍からケンカに発展してしまいそうだ。今はまだ、一緒に眠るためのベッドはないというのに。この電話を終える前までには、仲直りとやらをしなければならない。
『いや、嬉しい。それに、言いたくなったから言ったというのならば、俺も堪えずに言いたいことがある』
 ひどく真面目くさった声が聞こえてくる。きっと電話の向こうでは、ひどく真面目くさった顔をしているのだろう。
 見たかったなという気持ちを今度は抑えて、「なんだよ」と促してみた。
『……もし、今、……すぐに逢いたいって言ったら、どうする』
 慎重に言葉を選んでいるようなゆっくりとしたスピードで、手塚は「言いたいこと」を告げてくる。すぐ、とその言葉をなぞって、跡部は部屋の時計を振り向いた。時刻はまもなく0時を指す。公共機関は終わりに向かっていて、今からではとてもじゃないが間に合わない。
 だが、逢いたいと言ってくれたのだ。しばらくまともに逢えないことが分かっている今、手塚が逢いたいと望んでくれた。跡部は開いていた文書ファイルを保存して閉じ、チェアから腰を上げる。
「そっち行く。待ってろ」
『来てくれるのか』
「俺だってお前に逢いてえんだよ」
 こんなことなら、もっと早く素直になっておけばよかったと思う。端末をスピーカーに切り替え、跡部はローブを脱ぎ捨てる。使用人にこれから出掛ける旨を伝え、車を用意してもらった。
「プロになったら、忙しさは今の比じゃねえかもな、手塚。いい予行演習だ」
「車を出させられるそちらの使用人にしてみたら、迷惑なことこの上ないだろうな』
「今度丁寧にねぎらってやるぜ。俺は今、お前のわがまま聞くのが最重要事項だからな」
『わがままか。そうだな、せいぜい甘やかしてくれ、跡部』
 着替えて、髪を梳かし、部屋を出る。通話は保ったまま、跡部は車のリアシートに体を預けた。跡部のわがままを嬉しそうに受け入れる執事に見送られるままに、運転手に行き先を告げるのだった。



お題:リライト様 /「……もし、今、……すぐ会いたいって言ったら」
#お題 #両想い

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電話なんかじゃ足りない

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.26

#お題 #両想い

「今、何してんだ?」『ドイツ語の勉強を』 電話の向こうから真面目くさった声が聞こえてきて、跡部はぱち…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

電話なんかじゃ足りない


「今、何してんだ?」
『ドイツ語の勉強を』
 電話の向こうから真面目くさった声が聞こえてきて、跡部はぱちぱちと目を瞬いた。
「ドイツ語ったって、お前マスターしただろ? この俺様が教えてやったんだぜ」
 手塚は今、ドイツにいる。プロになるために、単身渡独したのだ。中学生の身で、専属のコーチやトレーナーがついているわけでもないのに、その覚悟と度胸は大したものである。
 合宿前に、ドイツ語を勉強していると聞いた時はもしやと思ったが、やっぱりプロチームから声がかかっていたのだ。それを一言も言わなかったのは気に食わないが、もう今さらだ。
『そうなんだが、どうしてもスラングというものがな。あと、速いとまだ聞き取りづらくて。お前のドイツ語は分かりやすかったからな』
「あぁ……なるほどね。悪い、そこまで頭が回らなかったぜ。渡独するって知ってたら、もっと本格的に教えてやったのによ」
 それでも多少のいやみを言ってもいい程度の立場ではある。なにしろ、手塚とは恋人同士なのだ。
 どこでどう間違ってこうなってしまったのか分からないが、分からないというのはそれが自然だからだろう。手塚とは、こうなるのが必然だったに違いない。
 電話の向こうで、気まずそうに言葉を詰まらせる気配が伝わってきて、跡部は肩を震わせた。
「冗談だ、ばーか」
『いや、言わなかった俺が全面的に悪い。お前が怒るのも無理はないと思う』
「分かってんだったら、ちったぁマメに連絡してこいよ。……忙しいのか? どんなことやってんだ」
 正直、怒ってはいない。
 手塚が中学性選抜を率いたかったのは分かるし、傲慢なほど責任感の強い男だ、途中で放り出すことはできなかったのだろう。
 ドイツに行くにしても、合宿やW杯が終わってからと考えていたに違いない。一応学校だってあるのだし、普通は卒業してから留学なりなんなりするだろう。その時までに言えばいいと思っていた手塚を、頭ごなしに責めるつもりはなかった。
 何しろ、ドイツへ行けと背中を押したのは跡部自身だ。
『基礎体力や体幹の強化だな。特にゾーンを使う時には大切だ』
「ああ、そりゃまた随分と地味なことしてんな。だが、いちばん大事なとこだ。目ぇかけてくれてる人がいんのか」
『そうだな、ありがたいことだ。俺は生意気にもその人に宣戦布告したというのに。敵視するのではなく、俺を育てようとしてくれているのはあると思う。もちろん、それだけではないんだろうが』
 宣戦布告という言葉に、その時の光景が目に浮かぶようだと口許が緩む。
 日本では上位のプレイヤーである手塚国光も、国が変われば子ども扱いも同然だ。上には上がいるという環境は、常に上を目指す手塚にとって良い環境だろう。
 体格の違いや言葉の壁も乗り越えて高みへと向かっていく彼が、本当に眩しい。目の前にいなくても、容易に想像できてしまう。
「テニス、楽しいかよ、手塚ぁ」
『――ああ、とても』
 満足そうな声に、跡部こそが満足だ。手塚は日本で留まっている男ではない。世界へ羽ばたいて、世界を震撼させて、世界から賛辞をもらうべき男だ。
 誇らしく、憎たらしい。そして、愛おしい。
『それでも、苦しくないわけではない。自分の体が思い通りに動かなくて、悔しくなる時もある』
「手塚、肩は? 肘、平気なのかよ」
 わずかに沈んだ声に、さっと血の気が引いた。怪我というものは、後に引くものがある。特に手塚は、関東大会、全国大会と、かなり無茶な戦いをしてきた。
 その一因にもなっている跡部にしてみれば、手塚の体が思うように動かないというのは、自身が動けないよりもずっとずっとつらいことだ。慌てて訊ねてみれば、「大丈夫だ」と返ってくる。
 それをどこまで信用していいものかどうか分からないが、跡部は手塚にちゃんと「心配している」と伝えている。その気持ちを踏みにじるようなことはしないはずだと信じている。
『跡部。俺はそういう時、お前を思い浮かべている。すぐに追いかけるとお前が言ってくれたからな。同じプロの世界で逢った時、お前に呆れられないようにと……』
 跡部は目を見開いた。
 確かに彼を送り出す際、「俺もすぐに追いかける」と言ってやった。
 手塚がプロとして生きていくのなら、無二のライバルとして後れをとるわけにはいかない。
 プロの世界――ネットを挟んで邂逅することもあるかもしれない。いや、必ずしてみせると、決意のようなものだった。
 手塚はそれを、跡部が考えているよりもずっと心強く思ってくれたらしい。
『お前が追うにふさわしいプレイヤーでなくてはならない。それは重圧でなく、幸福だ』
「……手塚、お前……そっちに行って少しばかり饒舌になったんじゃねーのか……最高の口説き文句じゃねーの」
『そうかもしれないな。言葉で伝えることの難しさを知って、伝えられるものならば伝えなければと思うようにはなったかもしれない』
 電話では、表情が見えない。
 ビデオ通話にすれば良かったと思うが、顔なんか見たら逢いたくなってしまう。
 もしかしたら寂しそうにしているところを見られてしまうかもしれない。
 それは、駄目だ。
 手塚は向こうで精一杯頑張っているのだから、こんなことで煩わせたくない。
『そっちの合宿は、今何を? 入れ替え(シャッフルマッチ)戦はどうなっているんだ』
「ん、まあ、ぼちぼちな。一軍の連中が海外遠征から帰ってきて、さらにすげえコトになってやがるぜ。お前がまだこっちにいたら、どうなってただろうな。あ、あと入江さんにはバレた、俺たちのこと」
『……………………大丈夫か?』
 入れ替え戦で対戦した入江は、あの後すぐ「手塚くんの出立が決まったら外出申請するといい、彼氏の見送りくらい行ってあげてもバチは当たらないよ」などと言ってきた。
 いろんな意味で油断のならない男だと思っている。特に言いふらしたりするつもりはないようだが、時折絡んでくるのをあしらうのが少しばかり面倒だ。
「なんでバレたかってな、俺たちの纏う空気、だとよ。分かるか馬鹿」
『……そういう意味では、不二あたりにも気づかれてそうだな。俺は別に構わないが……お前は嫌か?』
「別に嫌じゃねえよ。いずれは家族にも話さなきゃならねえしな。そういう時、真実味を持たせるという意味では、噂レベルでも馬鹿にできねえんだぜ」
 同性と付き合っているということを、跡部は家族に隠すつもりはない。時期を見て、話さなければならない。跡部の後継を産む女性との婚姻は結べないことを。
『跡部』
「悪いな手塚、腹括ってくれ。俺はお前を手放すつもりはさらさらねえんだ」
『それは俺の台詞だ。だがたぶん、俺は大事なことを言っていないな。分かってくれていると思った』
「アーン?」
『俺ほどお前を愛している人間はいない。ご家族には、二人で逢いに行くぞ』
 絶句した。
 確かに、手塚から愛を囁かれたことなどない。それでも、流れる空気で伝わってきていて、跡部はそれで充分だったのだ。
 すでに決定事項であるかのように、当然のこととして口にしてくる手塚に、腰が砕けそうだった。
「合宿中じゃなきゃ、今すぐ逢いに飛んでってるぜ。耳元で聞けたのは嬉しいが」
『電話なんかじゃ足りないな。では次に逢えた時には直接言わせてもらおう』
「……楽しみだ」
 なんとか踏ん張って、マイク部分に唇を寄せる。
「愛してるぜ手塚。またな」
『ああ、また』
 ちゅ、と小さくリップ音をたてて通話を打ち切る。
 踏ん張りきれなくて壁を伝いずるずると崩れ落ちた。火照る顔をたてた膝に埋めて、「あっつ……」と呟く。吐く息は、いつもよりずっとずっと熱かった。


「廊下であんなことしといて、なんでバレないと思っているのかな、跡部くんたちは」
「バレてないと思ってるのは、本人たちだけですからね……」
 その陰で、入江と不二がやれやれと腕を組んで呆れていたのを、跡部は知るよしもなかった。


お題:リライト様 /「電話なんかじゃ足りない」
#お題 #両想い

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膝枕をする

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.25

#お題 #両想い

「重くないか?」「いや、別に」 訊ねられて、跡部は小さく首を振りながらそう答えた。乗っかるのは確かに…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

膝枕をする

「重くないか?」
「いや、別に」
 訊ねられて、跡部は小さく首を振りながらそう答えた。乗っかるのは確かに大の男だが、膝に頭を乗せているだけだ。体のそんな一部分を、重いとは思わない。
「位置、このあたりでいいのかよ。というか、硬くねえか……」
「確かに柔らかくはないが」
 だろうなと目を細めるが、手塚の眉間からは皺が消えている。
「だが、心地いい。跡部、少し、このままで……」
「ああ、いいぜ。好きなだけ眠りな」
 言いながら、手塚の髪をそっと撫でる。広いソファの上で、跡部の膝を枕に寝そべる手塚など、この先何度拝めることだろう。
 少し疲れたなと言う恋人に、ベッドを(ベッド本来の目的で)促してみたが、「そこまでじゃない」とわけの分からないことを言った後に、膝を貸してくれとのたまったのだ。
 断る理由もなく、跡部はソファに腰を下ろしてぽんぽんと太腿を叩いて、今に至る。
 いわゆる膝枕というヤツか、と手塚の髪を撫でながら状況を把握する。手塚がこんなふうに甘えてくるのは珍しくて、じわじわと照れくささと嬉しさがこみ上げてきた。
 あ、と気づく。手塚が眼鏡をしたままでいることに。仰向けの体勢とはいえ、それではリラックスができないだろうと、小さく声をかけた。
「手塚、眼鏡。……外すぞ」
「ん……」
 了承のような声が聞こえて、跡部はそっと眼鏡のフレームを掴む。ゆっくりと外して、つるを畳んだ。手を伸ばしてキャスター付きのテーブルを引き寄せ、そこに置く。
 ちょうど携帯端末もそこに置いていて、持ち上げた。突然の着信や受信の音で手塚が起きてしまわないようにと、サイレントマナーのモードに変える。
 すうすうと規則正しい寝息が聞こえる。呼吸に合わせて腹の辺りが上下するのが見える。相当疲れていたのだろうなと、何度も髪を撫でた。穏やかな眠りでありますようにと祈りながら。
 皺のない眉間と下がる目尻を見れば、良質な眠りのようだがと安堵して、口許が緩む。
「……ったく、可愛い寝顔しやがって」
 そういえば、手塚の寝顔はあまり見たことがないなと思い出して、視線を泳がせる。二人きりの部屋なのに、周りに誰もいないことを確認するようにキョロキョロと見回した。
 そして、こくりと唾を飲み、両手で端末を構える。作動させたのは、カメラ機能。手塚の寝顔をフォーカスして、撮影ボタンをタップした。
 二度、三度。
 小さくカシャリカシャリとシャッター音が鳴ってしまったが、手塚が起きる気配はなくて安堵した。
 何だか重要なミッションを終えたかのように、心臓が大きく波打っている。
 写真とはいえ、これでいつでも手塚の寝顔が見られる。
 恋人なのだからおかしな行動ではないだろうと、自分に言い訳をした。
 それに、跡部はちゃんと知っている。
 手塚の端末に、跡部の寝顔を撮った写真が保存されていることを。



お題:リライト様 /膝枕をする
#お題 #両想い

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スーパーで買い物

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.24

#お題 #両想い #未来設定

 一緒に暮らし始めて、とにかく困ったのは金銭感覚の違いだった。 庶民と財閥の御曹司ではそうなるのも仕…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

スーパーで買い物

 一緒に暮らし始めて、とにかく困ったのは金銭感覚の違いだった。
 庶民と財閥の御曹司ではそうなるのも仕方がないが、どこでどう折り合いをつけていけばいいのか、最初は本当に手探り状態で、言い合いも何度だってしてきた。
 食費にいくらかけられるかというのは、家庭を持つ上で重要かつ重大なファクターだ。特に、体を資本とするスポーツ選手ならば尚更そこは妥協ができない。
 しかし、高い食材であればいいのかといえばそうでもなく、新鮮さと調理のしやすさも大切だと、恋人に何度も説いた。
 きちんと話せば理解してくれると分かってから、口下手なりに言葉を選んだつもりだ。
 どうして駄目なのか、どちらがより良いのか、どうやって使うか。
 元々頭もいいし順応性の高い恋人は、一度理解すると吸収するのは早く、最近では「ポイントカードを使う」というのも覚えたらしい。
「手塚、鶏にするか? それとも魚の方がいいか」
 カゴを乗せたカートをカラコロと押しながら、跡部が振り向いてくる。そういえば今日は鍋にするのだったか。メインの肉は何にするか、決めていなかったな。
「そうだな……今日は時間もあるし、つみれを作ってみるか? ネギや生姜を入れて」
「つみれ? 家で作れるもんなのか?」
「簡単だぞ。鰯のつみれにしよう。開きが安い」
 コーナーで足を止めて鰯を指すと、跡部は瞬時に新鮮なものを選び抜いてカゴに入れる。
「生姜はまだ冷蔵庫にあったな。あ、ネギがねえ。一昨日使いきっちまった」
 跡部が、冷蔵庫の中身まで把握しているというのは正直ありがたいな。俺はそっちの方はあんまり得意じゃないんだ。
 ネギと、白菜と、にんじんと、椎茸をカゴに入れる。「手塚ぁ、シメにうどん食べようぜ」
「うどんか。いいな」
 いそいそと、うどんのコーナーへ足を向ける跡部。だいぶ染まってきたなと口の端が上がってしまう。そもそも、跡部が低価格のスーパーで食材を買い込むこと自体が、以前からしてみたら考えられないことだが。
 必要な食材をカゴに入れて、セルフのレジへと向かう。
 時間が時間だからか、少し列ができていたが、さほど待ちはしないだろう。
「あ、忘れてた」
「なんだ?」
「すぐ戻る。並んでろ」
 買い忘れがあったようで、跡部が俺に財布を預けて列を抜けていく。
 他人に財布を預ける跡部というのがいまだに慣れないが、信頼の証しだと思うとそれは嬉しい。
 順番が回ってきてレジにカゴを下ろしたあたりで、跡部が戻ってきた。その手に、小さいくせに値段が高いアイスクリームを二つ手にして。
「おい、跡部」
「たまにはいいだろ。ほら、抹茶のがあったんだぜ」
 何もその高いアイスでなくとも、と言い掛けたが、わざわざ俺の好きそうなものまで持ってこられては、どうしようもない。
「しょうがないな。今回だけだぞ」
「ああ、楽しみだぜ」
 跡部はそう言って、エコバッグを広げている。そういう姿が可愛いと思ってしまうあたり、俺は生涯コイツに勝てることなどないのだろうとため息を吐いた。



お題:リライト様 /スーパーで買い物
#お題 #両想い #未来設定

何度もいわせるなバカ!

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

何度もいわせるなバカ!

18歳以上ですか? yes/no

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あー……愛されてるって感じ

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.01.22

#お題 #両想い #未来設定

 広いバスタブにもかかわらず、跡部はくっついて入りたがる。ついさっきまで、ベッドの中で散々くっついて…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

あー……愛されてるって感じ


 広いバスタブにもかかわらず、跡部はくっついて入りたがる。ついさっきまで、ベッドの中で散々くっついていたのにだ。
 もちろんそれが嫌なわけではない。むしろ跡部に甘えられているようで、気分がいい。
 どうにも跡部は、俺を構うというか、甘やかすのが好きらしく、いろいろと面倒を見られてしまっているんだ。
 食事のことだったり、テニス関係のことだったり、スケジュールの組み方だったり。それは様々、本当に多岐にわたる。
 俺はコイツがいないと生きていけないのではないかと、たまに真剣に考える。いろいろな意味でだ。
 幸か不幸か、俺たちは割と早い段階で、パートナーとして最高の相手を見つけてしまった。
 テニスに惹かれ、人となりに惹かれ、恋人同士になれて、肌の味も感触も知った。
 それなりに長い付き合いになったが、決して飽きることのないこの関係に、俺は感謝している。
 だから、跡部が望むのなら好きにさせてやりたい。
 一緒に風呂に入りたいという跡部を可愛くも思うし、我が儘にもならないお願い事を、断る気にはならない。
 ボディタオルで体を洗ってやるのも、最近は慣れてきた。柔らかな泡で包み、優しく撫でる。
 おかしな気分にもなりそうだが、そういう時は大抵気づかれて、何ゲーム目かに突入してしまうのだが。
 足の指を洗う時は跡部がひどくくすぐったそうにするのが可愛くて、つい執拗に撫でてしまう。
 髪を洗う時はことさら優しく。
 俺は自分で思うよりも跡部の髪が好きらしく、傷まないようにと常に思っている。
 特に汗をかくことが多いから、手入れは入念にやってほしい。この美しい金糸がシーツに踊る様は、本当にぞくぞくするんだ。そんなことを知っているのは俺だけで充分だが。
 シャンプーを流すとき、目を閉じてろと言うと、跡部は素直に上向いて目を閉じる。
 それはキスを待っている時の仕種とまるで同じで、俺はついキスをしてしまったことが、何度もある。跡部は、流すんじゃないのかと怒るが、可愛いんだからしょうがないだろう。
 それはトリートメントの際も同じだった。
 そうして跡部の身を清めてバスタブへと促し、次は自分の体を洗う。
 満足げに湯に浸かる跡部を眺めながら、というのは案外に楽しくて、俺もこんな時間は好きだ。
 跡部を洗ったものと同じボディソープ、シャンプー、トリートメント。当然跡部と俺は同じ香りに包まれることになって、独占欲も満たされる。
 もっとも、自分の中に独占したいなどという感情があったのを知ったのは、跡部と付き合うようになってからだったが。
 跡部景吾を実際に独占できるとは思っていないし、跡部の方も、俺を物理的に独占したいなどとは思っていないだろう。
 だけどふとした時に、この男は俺のものなのだと感じることがある。独占欲と、優越感が混じった思いがあることを告げた時、気を悪くするかと思ったが、少しもそんなことはなかった。
 それで誰かを傷つけるようなことがなければ構わないと、ひどく寛容な心で受け入れられた。不思議に思ったら、俺も同じだからと返されてまた驚いたのを覚えている。
 独り占めしたい時は素直に俺だけに言えと、愉快なことも言われた。
「てーづかぁ、早く来いよ。お前を独り占めさせろ」
 バスタブの方から、跡部が呼ぶ声がする。
 跡部はこうやって、俺だけに独り占めしたいと言ってくる。同じ気持ちだったのだと安堵もして、「少し待て」と答えてやる。
 泡を流して、手のひらで申し訳程度に髪の水分を絞る。
 跡部に手招かれ、俺も湯船に体を沈めた。温かな湯が、身も心も癒やしてくれる。
 そして何より、くっつきたがる恋人の存在が、身も心も満たしていくのだ。
「ん。やっぱ好(い)い男だな」
 髪を上げた額に、跡部の唇が押し当てられる。跡部はとても楽しそうで、俺も悪い気はしない。お返しを跡部の頬に贈って、湯船の中で彼の体を抱きしめた。
「今日は薔薇浮かべなくていいのか」
「ああ、このままでいい。お前あれあんまり好きじゃねえだろ」
「まあそうだが、楽しそうなお前を見ているのは好きだ。跡部の好きなようにしたらいい」
 肩を撫でれば、跡部が寄りかかってきてキスをねだられる。ちゅっと形のいい唇にキスをして、さらに強く抱きしめた。
「甘やかすなよ」
「俺がいつも言う台詞だな」
「ハハ。でも、今日はこのままでいい。こうやってお前だけ感じていたい」
「可愛いことを言うんじゃない」
 すり……と鼻先をすり寄せられて、困る。散々堪能したはずの跡部を、また抱きたくなるだろう。さすがに跡部の体が保たない。無茶はさせられないと、ため息ひとつで情欲の火を消した。
「俺は構わねーが、そうやって気を遣ってくれるのもいいな。あー……愛されてるって感じがするぜ……」
 嬉しそうにそう言葉にされて、やっぱり手を出すわけにもいかなくなった。
 ひとまず、この大好きな髪にキスをするだけにしておこう。


お題:リライト様 /「あー……、愛されてるって感じ」
#お題 #両想い #未来設定