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LOVE

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2010.06.27

#両想い #ラブラブ #イベント無配

 終わったあと、ミハエルの胸の上で過ごす時間が、とても好きだった。 ミハエルの手のひらが、髪を優しく…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

LOVE


 終わったあと、ミハエルの胸の上で過ごす時間が、とても好きだった。
 ミハエルの手のひらが、髪を優しく撫でてくれる。指に長い髪が絡むのが好きらしく、ときおり絡ませて遊んでいるのも、ずっと前から知っていた。
「今日は……本当に疲れた」
 アルトはミハエルの胸の上でそう呟く。それを聞いて、ミハエルは笑うのだ。疲れていてもすることはするんだなと。
「俺もまあ、疲れたね。まさか依頼人があの人だとは思わなかったし」
「あの人、絶対わざとだ、分かっててS.M.Sに頼んだんだ」
 アルトはふてくされてう~と唸る。
 今日は表向きの仕事をさせられた。ここに就職している以上ノーとは言えないし、表の運送業自体はさほどキツイ仕事でもない。むしろ命の危険性がないだけ、楽な仕事とも言えるのだ。
 が、今日はそうでもなかった。
 アルトの……早乙女有人の兄弟子である早乙女矢三郎が、荷物の運搬を依頼してきたのだ。客である以上断るわけにもいかないし、そんな権限はアルトにはなくて、ミハエルやルカと勤務に就かざるを得なかった。
 しかしアルトは、家を飛び出してからこっち、やはり家の者には逢いたくなかったし、S.M.Sでの仕事のことも当然話してなどいない。
 知られたらきっと連れ戻される。だから知られてはいけないんだ、とミハエルやルカに協力してもらってまで、バレないよう別人を演じていたというのに!
「俺は結局、兄さんには敵わないんだよなあ」
「まぁまぁ、そう落ち込むなよ。あの人のほうがアルトよりも長く生きてんだし、アルトが航宙科来てからもずと芸に携わってきてたんだし、キャリアの差はどうしようもないって」
 なだめるように、ミハエルはアルトの髪をゆっくりと撫でる。日々の訓練がものを言うのは、歌舞伎でもパイロットでも変わらないんだろ、と続けると、アルトはさらに落ち込んでしまった。
「どこにいても、上がいるんだもんなあ。向こうじゃ兄さんや親父がいるし、ここじゃ……お前がいる」
 いちばんにはなれない、と顔を上げて、責めるようにミハエルをにらみつける。八つ当たりだなと分かってはいるものの、アルトは視線を弱めようとはしなかった。
「いちばんだろ」
「え?」
 ミハエルはその謂れのない責めを気にする風でもなく、笑顔を崩さずに言葉を操る。
「俺の中で、アルトはいつだっていちばんだよ」
 恥ずかしげもなく言ってのける男に、アルトの頬が真っ赤に染まる。ぷいとそっぽを向いても、その仕種をミハエルに笑われて、どうしていても恥ずかしくなってしまう。
「お前はっ、どうしてそういう恥ずかしいことばっか言えるんだっ」
「てっ」
 これまた八つ当たりに、ミハエルの額を弾いてみせる。深刻な痛みはないけれど、ミハエルは痛いなーもーと、ポーズで額をさすってみせた。
「姫が落ち込んでるみたいだから元気づけようと思ったのにさー」
「べっ、別に落ち込んでない! 姫って言うな!」
「あーはいはいそうだね、今日の舞台はオトコノコだったもんな」
 思い出したくないことを話題にされて、アルトはぐっとつまる。別人を、早乙女アルトとは分からないような人格を演じていたのに、矢三郎にはすべてバレていて、結局努力だけが空回った。
「俺は嬉しかったけどなあ」
「何が嬉しいんだ、他人事だと思って!」
「だって、言ったじゃないか。俺はお前のファンなんだぜ。早乙女一座の二大俳優の競演が見られたんだからな」
 しかもタダで、とミハエルはさも重要そうに人差し指を立てる。アルトは呆れ果てて、抗議する気も起きなかった。
「あー……明日起きてあの人がいたらどうしよう」
 それに、ミハエルを責めてもここの仕事を知られてしまった事実は変わらない。
「俺が守ってあげようか? お姫様」
 連れ戻されるのが心の底から嫌らしいアルトに笑って、提案をしてやる。アルトが、突っぱねやすい言葉で。
「……結構だ。俺は姫じゃねえ」
「守られるのが嫌なら、自分の意思で動くんだな。助けてやることはできるからさ」
 ミハエルだって、守られているだけのお姫様を好きになったわけではない。アルトは少しだけためらって、そしてうんと頷いた。
「言いくるめられるビジョンが見えるけどな。お前は基本的に流されやすいし。そこにつけ込んだ俺も俺だけど」
「い、言っておくがお前とのことは別に流されたわけじゃないからな!」
 ため息とともに牽制してやったら、勢いよくアルトが顔を上げて、自分の意思を主張してくる。ミハエルは目を丸くして、そしてぱちぱちと瞬いた。
「…………そうなの?」
「そうなの! あ……何言わせてんだお前!」
 自分で言ったくせに恥ずかしかったのか、アルトは真っ赤になってミハエルを責める。
「アルトが、俺のこと大好きってのはよぉーく分かった」
「バッ、バカお前、俺は別に」
「言ってよアルト。今日はお前に協力してやったんだからさあ。な、大好きって」
 最初からバレていたのと、バレないように協力してやったのは別だ、とミハエルは嬉しそうに口の端を上げて笑う。
 そういえばずいぶんフォローしてもらったのに、その後のショックのほうが大きくて、礼なんて言ってやってない。
 だからといって、大好き、なんて。
 アルトは視線を泳がせて、目を閉じて、でも勇気が出なくて、うーと唸る。
「なーアルトー」
 甘えた声が聞こえてくる。この男だって、アルトの気持ちはちゃんと分かっているはずだ。素っ裸でベッドの上で戯れられるほどには、ミハエル・ブランという男を大切に想っていることくらい。
「えーと、あの、その」
「うん、なに?」
「俺、お前とこうして過ごしてんのとか、いいなって思うし、たとえ兄さんが俺を連れ戻しに来たって、きっぱり拒否してお前と一緒にいたいって思うし」
 視線をわざと外して、アルトは早口でまくし立てる。ミハエルはそれを、一言一句聞き漏らすまいと耳に意識を集中させた。
「お前が俺のこと、その、好きって言ってくれるのは嬉しいし、だから、その、分かれよ、馬鹿ッ」
 最後はとうとう逆ギレを起こして、肝心の言葉を言えていない。残念だけどまあいっかあとミハエルは笑い、ありがとうなとアルトの髪を撫でる。
 途端になんだかさびしい気持ちになって、やっぱり言ってあげればよかったと、アルトは俯く。
 俯いた先にはミハエルの胸があって、そのすぐ下には心臓があるのだとアルトは目を瞬いた。
「……アルト? なに書いてんの?」
「んー、読めるか?」
「もうちょっとゆっくり」
 指先で、胸になにか文字を書いているらしいと感じたミハエルは顔を上げるが、見るなと額を押し戻される。
 胸を滑るアルトの指先はくすぐったかったけれど、ミハエルは必死にその動きを追った。
「……Michael? 俺?」
 伝わったことに、アルトは嬉しそうに笑って頷く。次、と呟いて、またミハエルの胸へと指を乗せた。違う文章かと思い、ミハエルは再びその文字を必死で解読する。
「えーと? I……? L、…O、V?」
 それからE。そのあとにY。それからO、U。アルトの指がそこで止まる。これで終わりなのかとミハエルは文字をもう一度頭の中に並べて、そして目を瞠る。
 アイラブユー。
 ラブ、すなわち愛。
「読めたか? って、うわっ」
 首をかしげるアルトを思わず抱き寄せて、ぎゅうと強く腕を巻きつける。
 あなたを愛しています。
 ミハエルは、アルトが書いてくれた文字をそのまま耳元で囁いて。嬉しいと続ける。
「ありがとうアルト、本当に嬉しい」
「そ、そうか?」
 抱きしめられたまま、アルトも嬉しそうにへへへと笑う。もう流されることのない意思は、ミハエルが教えてくれたことだ。
 きっと明日も明後日も、家の誰に逢っても大丈夫。
「ミシェル、もう一回したい」
「オーケイ、俺がいなきゃ眠れないようにしてやるよ」
 冗談混じりに囁いたミハエルに、もうなってるとは返さずに、アルトは大事な恋人を抱きしめた。


#両想い #ラブラブ #イベント無配

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6月の6秒

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2010.05.26

#ミハアル #両想い #ラブラブ #イベント無配

 朝目が覚めると、いちばんに肌の色が目に入る。 慣れてしまった、もういつもの光景だ。夜眠る時には必ず…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

6月の6秒

 朝目が覚めると、いちばんに肌の色が目に入る。
 慣れてしまった、もういつもの光景だ。夜眠る時には必ず抱きしめながら眠ってくれる恋人の習慣に、ふと幸福を感じる時がある。
 アルトはそっと腕を動かして、恋人であるミハエルの頬に触れてみた。
 温かい。
 聞こえてくる寝息は今の自分しか知らないもので、たまらなく愛しさがこみ上げてくる。
 身体をつなげるようになってどれだけか経つけれど、この温もりの中で目覚めるようになってどれだけか経つけれど、実はミハエルの寝顔というものをあんまり見たことがなかった。
 今日は珍しいな、どうしたんだろうなと思いつつ、アルトはミハエルの目蓋に触れる。起きてしまわないように細心の注意を払って、眉間に、額に、鼻筋に触れていった。
 これがすべて、自分の大切なひとなのだと思うと、言葉にできないほど幸福だった。
「ミシェル……」
 頬に、目蓋に、額に、鼻筋に、先ほど指を滑らせた箇所に口づけを贈る。この吐息も、溶けて彼の中に飲み込まれてしまえばいいのにと思いながら。
 首筋に見える赤い鬱血は、昨夜自分が残したものだろうかと、少しばかり頬を染めた。
「んー…ひめぇ……?」
「あ、悪い起こしたか」
 そうは言いつつも、アルトは少しも悪いと思っていない。こんな時間まで惰眠を貪っているのが悪いのだ。
「もう起きろよミシェル。朝飯が昼飯になっちまうぞ」
 髪を撫で、微笑む。きっと他人が見ていたら、愛しそうになどという言葉で飾られるのだろう。
「キスしてくれたら目ぇ覚ます」
「甘えんな、もう」
 ときどきこうしてねだってくるのは、なんともかわいらしいお願い事。仕方ないなーと言いながらも、アルトは嬉しそうに身体を傾けて、ミハエルの口唇へと降下していった。
 触れて、それだけで離れていく口唇に、ミハエルは笑って目を開けて、おはようアルトと呟く。
「わっ」
 そのあとに、捕まえたとばかりにアルトを抱き寄せるのだ。
「何すんだよ、危ねえな」
「姫補充」
「わけの分かんないこと言うな。ほら早く放せって」
 抱き寄せてぎゅうと抱きしめて、頬をすり寄せる。朝の日課のようになってしまった抱擁を、今日も変わらずにたしなめてみる。
「やーだ、姫って抱き心地いいんだもん」
「やーだって、お前な……」
 こんなに子供のような男だったろうか?と思うこと何度目か。学校ではこんな素振りを少しも見せないくせに、自分と二人きりでいるときには、ここぞとばかりに甘えてくる。
 自分に対してだけなのだと思うと、充足間に満たされていく。
「今日は映画見に行くって約束だっただろ、早く起きろ」
「んー、そうだっけ」
「忘れてんじゃねぇよミシェル!」
 一昨日から言ってたじゃないかとアルトは憤るも、ミハエルの腕はアルトを抱きしめたままだ。くっくっと笑いながら、嘘だよごめんと耳元でささやくのは、アルトをからかうミハエルの、常套手段。
「ちゃんと覚えてるって、姫。たまにはふたりっきりで街に行きたい、…だっけ? 可愛いなーもう、可愛いよ」
 いつもは他のメンバーもいるからたまには、と言ったアルトの言葉を思い出して、ミハエルは鼻先にキスをしてくる。アルトはそれにボッと頬を染め、らしくないことを言ってしまったと目をそらす。
 みんなでわいわい歩くのももちろん嫌いではないのだけれど、誰にも気を遣わずに行きたいところへ行ってみたい。そう思って、ミハエルに提案してみたのだ。
「だって、恋人同士…なんだから、そういうの、したい、し…」
「ああ、分かってるよ。起きてシャワーして出かけようか。でもあともうちょっと」
 俺だって姫とふたりで出かけたいよとミハエルは言うのに、それでも腕は緩めてくれそうにない。アルトは困った顔をして、
「そんなこと言って、ダラダラしちまうんだろ。今すぐこの腕を外せ」
 今日こそは譲らない、とアルトはミハエルの頬をつねる。イテテテテ、と観念したのか、ミハエルはアルトに告げた。
「じゃあ、あと六秒な」
 ぎゅう、と腕が締まる。時間を区切ったのは一歩前進だと思ったが、アルトは、ミハエルの腕の中で首を傾げた。
「なんでそんな半端な数字なんだ……?」
 好きずきだろうが、普通ならば五秒とか二十秒だとかで区切るだろうに、なんぜそんなにも半端な数なのかと。
「今日は六月だから。六秒」
 そしてそんな六秒なんて、もう過ぎてしまっているだろう。ミハエルの口から出てきた言葉は、何とも安直で分かりやすい答え。
「だから六秒って、バカかお前」
 アルトは思わず噴き出して、そしてはたと気づく。六月で六秒なら、十月ならば十秒、十二月なら十二秒。では、一月だったら……?
「姫、今なにを考えたか当ててあげようか」
「えっ?」
「一月だったら、ミシェルは一秒しか抱きしめてくれないのかなあって。違う? そーんな不安そうな顔しちゃってさ」
 緑の瞳が見下ろしてくる。すべてを見透かすようなそのみどりは、好きなものの内のひとつだけれど、こんな時は憎たらしい。
「そっ、そんなこと考えてねーし!」
「またまたぁ。大丈夫だよーひめー、一月はじゃあ一分にするからさー」
 無理矢理腕の中から抜け出して、アルトはシャツを羽織る。その後を追うようにミハエルも起き上がり、ベッドの上で笑った。
 なんて都合のいい区切り方なんだと思いつつも、頬が緩んでしまうのもまた事実。
 何秒、何分、何時間。
「さ、お出かけしましょうかアルト姫。一日中一緒にいられるんだしな」
「……いつも一緒じゃないか」
「バァカ、今日は二十四時間一緒だろ」
 そうか、とアルトは納得した。一分一秒離れることなく一緒にいられるんだと笑って、振り向いておはようのキスをした。

#ミハアル #両想い #ラブラブ #イベント無配

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2月22日。

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2010.02.22

#劇中劇 #ラブラブ

 小さな重みで沈んだベッドの変化で、目が覚めた。 にゃあん。 二度ほど瞬いて、ああなんだ猫か、ともう…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

2月22日。



 小さな重みで沈んだベッドの変化で、目が覚めた。
 にゃあん。
 二度ほど瞬いて、ああなんだ猫か、ともう一度目を閉じる。にゃあんと抗議のような泣き声が聞こえて、完全に覚醒した。
 身体に巻きつく、男の腕をそっと外して起き上がる。枕元には案の定、ベッドを軽く沈ませた愛猫がいた。拾ってきたときは片手に乗るくらいだったのに、いつの間にこんなに大きくなったんだ?
 にゃあ。
「こら、おこすなよチビ。ミシェル疲れてるんだから」
 シーツの上に散らばるハニーブラウンにじゃれつく愛猫を軽く叱りつけて、ゆっくりと足をベッドの下に下ろす。朝の空気は素足には肌寒い気もしたけれど、スカイライト・ウィンドウからこぼれる陽射しに、今日はいい天気だなとすがすがしい気分になれた。
 昨夜脱ぎ散らかしたシャツを羽織って、タオルと着替えを片手に部屋を出かけて、途中振り返る。
「チビ、チびおいで。ご飯」
 腹減ってんだろう?と問いかけると、通じているのかいないのか、愛猫はてんてんと額を叩いていたミシェルを置き去りにして、トンッとベッドから飛び降りた。身軽なもんだな。


 この猫を拾って、もう二年ほどになる。雨の日に拾った小さな子猫は、今の生活には欠かせない癒しになってくれている。勤務で疲れて帰ってきて、出迎えてくれる家族がいるってのは、やっぱいいよな。
 俺はチビにご飯を用意してやって、ひとりバスルームに向かった。
 ミシェルが起きていたら、きっと一緒に入ろうとか言ってくるに違いないんだ。冗談じゃない、昨夜あんなにたくさんしたのに、その上一緒にシャワーなんてして、ただで済むわけがないんだ。
 蛇口をひねると、ザアッと熱い湯が落ちてくる。ミシェルの体温の方が心地いいななんて思ってしまうのは、やっぱり俺がアイツに心底ほれているからなんだと思う。
 恋人――ミハエル・ブランとは、中学のころからの付き合いだ。恋人同士になれたのは出逢ってしばらくしてからだったけど、初めて逢って、三秒で恋に落ちて、どうにか近づきたくて学科を変えてまで傍にいったんだ。
 懐かしいな。あれから色々なことがあった。
 恋人になって、学校中に知れ渡って、卒業後に就職した民間軍事会社でもいつも一緒で、ミシェルのいない生活なんか考えられなくなったこともある。
 クラスメイトだったシェリル・ノームとランカ・リーの、銀河級一大プロジェクトに参加させられたり、おかげで職務が疎かになってしまったり、毎日届けられるファンレターとやらの山にため息をついてみたり。
 そう、とあるドラマに出演してからというもの、俺とミシェルの周りは騒がしくなってしまった。
 それは、驚異的な力を持つ宇宙生物・バジュラの侵攻と、渦巻く陰謀――売り出し中のアイドルたちをメインに、このマクロス・フロンティアを舞台とした大掛かりなドラマ。
 みんな役者じゃなかったから、無茶な注文だとは思ったが、会社のオーナー直々の依頼ともなれば、断ることはできなかったんだよな。報酬は破格だったし、そんなに日常が変わるわけでもないと思っていたのに。
 俺を挟んでの三画関係を交えつつ、戦闘機を用いたバトルシーンと、目玉である歌姫たちのライブシーンは、かなり好評だったらしい。
 その人気を受けて、コミカライズやノベライズ、更にはアニメーションの映画にもなってしまった。
 ドラマや小説は、俺にとっては手痛いストーリーだったけれど、自分が関わったものがこんなに評価されているのは、素直に嬉しいと思う。
 ふるふると首を振って、前髪の水滴を散らす。そろそろミシェルを起こしてやらないと、間に合わなくなってしまうからな。
 そう思って手早く着替えを終えて寝室に戻った。ご飯を食べ終えていたらしい愛猫が、シーツの上、ミシェルの腹の辺りを陣取って座っている。こいつも本当にミシェルのことが好きだよな、と恋敵のようにさえ思った。
「ミシェル、ミシェル起きろって」
 うんともすんとも言わない。こんだけ寝こけるなら、昨夜あんなにするなよってんだ。
 にゃあん、にゃあー。
「叩いてやっていいぞチビ。早く起きてキスをしてって」
 くっくっと笑いながら、やっぱり起きないミシェルに口唇を寄せた。
 目蓋を、ぺろりと舐める。腹が減った時、チビがいつもそうしてミシェルを起こすみたいに。
「ん? んー」
 まだ起きないのか。何度目で起きるかな、と思って覆うように舌を動かす。くすぐったそうに身を捩ったミシェルは、目蓋も開けずに呟いた。
「んー、チビー、もう少し寝かせ…………あれ? チビこっち?」
 腹の辺りの猫の体温に気がついて、ミシェルはようやく目蓋を持ち上げた。じゃあ今の感触はいったいなんだと。
「……ひめっ!?」
「ふふん、ようやくお目覚めかよ」
 ぺろりと舌を出して、口唇を舐める。ミシェルは今目蓋にあった感触がなんなのかを悟って、大きなため息と共に肩を落とした。
「もう、アルト、そういうのは俺が起きてる時にやってくれよな」
「は、知るか。ほら起きろよ。上映時間に間に合わなくなるだろ」
 すっとミシェルの傍から身体を離し、出かける準備を始めようとは思ったけれど、すぐにはできないことを知っている。
「ひーめ、おはよう」
「……ああ、おはようミシェル」
「チビも、おはよ」
 にゃあん。
 こうして、キスをされることが分かっているから。
 たっぷり一分キスをして、それからベッドを降りるのが、ミシェルの日課。
「まだ間に合うよな。映画見たら娘々でご飯食べて、グリフィスパークに行こう」
「絶対混んでると思うぞ」
「いーの。今日この日に姫と行くことに意味があるんだ」
 ちょっと待ってて、とミシェルもバスルームに向かっていった。
 しょうがない男だなとは思うけど、やっぱり一緒に行けることには感謝した。
 2月22日、マクロスF劇場版~イツワリノウタヒメ~、22回目の観賞に、イッテキマス。


#劇中劇 #ラブラブ

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Take your hand

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2009.09.12

#ミハアル #ラブラブ

 久しぶりに、二人で街を歩いた。どこへ行こう、と決めたわけでもないが、秋の匂いがする街並みを、この人…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

Take your hand


 久しぶりに、二人で街を歩いた。どこへ行こう、と決めたわけでもないが、秋の匂いがする街並みを、この人と感じてみたかった。
 やっぱり、いいな。私服姿。
 美星の制服姿も好きだし、SMSの隊服姿だってイイと思う。パイロットスーツは……そうだな、あの肉体つきがいやらしく見えて、あんまり正視できないんだけど。
 そう考える俺がエロいのか。……いや、いーよな恋人同士なんだし。夜には(たまには夜じゃない時間帯にも)そういうことするわけで、イイ肉体してんなーっていっつも思う。
「なあ、どこ行こうか」
「どこにしよう。映画か? 今なにやってんだろ」
「この間プラネタリウム行ったしなー」
「腹ごしらえ、とか」
 行き先を決めていないデート!って楽しいけれど、逆に行き先が決まらなくて困ることもある。SMSの宿舎で朝メシは食ったけど、午前中の訓練でハラはもう減っている。その提案に乗ってみたはいいものの、
「何食べる?」
 と来たもんだ。お互いを優先しすぎてるんだろうなあ。滅多にできないデートだから、あいつの望みは叶えてやりたいなんて思ったりしちまうんだ。
「前回何食べたっけ?」
「そこらへんのファーストフードだろ。今回こそもう少しちゃんとしたものにしようぜ」
「あんまり高くないものにしてくれよ」
 頬を膨らませながら言い合うけれど、本当はこんなやり取りだって嬉しいんだ。新しい惑星に降り立って、街の建設に引っ張り出されて、以前は休む暇もなかった。忙しくて疲れ果ててイライラして、あいつのことを気遣ってやれずにケンカしたことも何度かあった。
 その度に、……キスして、抱きしめ合って、ごめんて言ってまたキスをする。傷つけたかったわけじゃないんだと続けると、決まって分かってる俺も悪かったって返ってくるんだ。
 そんなこと、何度繰り返したのかな。
「なあ、じゃあ天麩羅屋がいいな。お前あそこのインゲン好きだっただろ?」
「……ハシ使わなきゃなんないよね。ああ、インゲンは好きだけどさ。ねえそこのハンバーガ」
「ダメだ! お前あんなものばっか食ってたら太るだろうが! 絶対身体に良くないんだからな」
「太……その分消費してるぜ。まあ、いいけど。ちょっと歩くぞ、あの店まで」
「いいよ、お前と歩きたい。ダメなんて言わないだろうな」
「まさか。じゃ、行こうか」
 一緒に歩きたいってのは、傍にいたいってのもお互いあるんだろう。でも、たぶんそれだけじゃない。
 ほら、見える範囲のヤツらの7割が、あいつを見てる。
 どうだよ羨ましいだろ。
 恋人の欲目ってヤツを抜いても、あいつの風貌は良い意味で目立つ。振り向かずにはいられないんだ。髪も目も、指先まで全部、見惚れるだろ、分かるよ俺もそうだから。
 けどな、こうして振り向いてくヤツらがいるのは優越感もあって嬉しいって言えば嬉しいんだけど、それもだんだん嫌になってくる。だめだぞ、これは俺のなんだから。そんな羨ましそうな目で見たって、触らせてなんてやらないぜ。
 みんなこいつを見てる。気持ちは分かる。分かるんだけど、その分主張したくなってくる。あああ、だから、これは俺のなんだって。
 見せつける様に、手を伸ばして指を絡めてみた。
「……なんだよ?」
「別に。手ぇ繋ぎたくなっただけ」
 ただ、お前は俺のだって主張したくなっただけ。
 やらないからな、誰にも。


「ちょうど良かった、俺もお前と手ぇ繋ぎたかったんだ」


 こいつは、俺の大事な恋人。


#ミハアル #ラブラブ

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オーハッピーデイ

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2009.07.27

#ラブラブ #両想い #誕生日 #ミハアル

 なにがいい?って訊いたのは、確か一週間前だった。 誕生日ってのは、やっぱり恋人としては盛大に祝って…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

オーハッピーデイ




 なにがいい?って訊いたのは、確か一週間前だった。
 誕生日ってのは、やっぱり恋人としては盛大に祝ってやりたいところ。だから、働いてためた給料もあることだし、休みでもぶんどって旅行でも行こうかななんて思っていたけれど。


「べつにいいよ、そんなもん」


 当の恋人様はこんな調子だ。
 まったく、早乙女アルトの辞書に、記念日だとかイベントだとかいう言葉はあるんだろうか?
 つきあい始めて最初の誕生日なんだぞ? もうちょっとこう、甘えてくれてもいいんじゃないだろうかと、空とベッドの撃墜王と謳われた俺、ミハエル・ブランは思うわけだ。
 早乙女アルトとは、かれこれ1年半のつきあいだ。初めて会話らしい会話をしたのは、麗しいジュリエットのドレスを着て航宙科に怒鳴り込んできたとき。
 すげえお姫様だ。
 そう思ったあの日から、俺はアルトから目が離せなくなって、恋してるんだって気づいて、あからさまにアピールしてたのに気づいてもらえなくて、ヤケに近い気持ちで告白したら、すっっっっげえ驚いた顔してなんで早く言わねえんだって怒られたんだよな。
 ああ、懐かしい。
 って言ってもまだ半年もつきあってないけどさ。
 あの時は本当にびっくりしたよなあ。俺のこと見てたんなら俺の気持ちくらい気づけって胸ぐら掴まれて、なんだか告白の甘い雰囲気なんか全然なくって、傍から見たら殴り合いの喧嘩寸前だっただろう。
「なあアルト、おれお前のこと祝ってやりたいんだけど。だって、生まれる前に消えてく命だってあんのに、俺たちは生まれてきて、この広い銀河の中で出逢えたんだぜ? そういうのって嬉しいとか思わないのか?」
「……ミシェルって思ってたよりロマンチストなんだな。運命とかそういうの信じるタイプか?」
 別に、そこまでロマンチストじゃねえけどな。
 でも恋人の誕生日を祝いたいって思うのは普通だ。生まれてきてくれたこと、出逢ってくれたこと、好きになってくれたこと、全てに感謝していたいんだよ。
 だって奇跡に近いぞ、こんな、こんな恋が叶うなんて思ってなかったし。
「俺はたまたまここに、早乙女家に生まれてきて、たまたま空に興味を持って、たまたま近くにお前がいて、好きになっちゃって悩んでたら、たまたまお前も俺のこと好きでいてくれたってだけだろ」
「たまたま多すぎだろ。誕生日ってのはひとつの節目だ、アルト。今年祝って、来年も祝って、再来年も、ずっと祝ってあげたいよ。アルトはもしかして、俺の誕生日も祝ってくれないのか?」
「そ、それは、祝って……やりたいけど……なんか、ちょっと怖い、な」
「何が? あ、昨夜やり過ぎたのまだ怒ってんのか? あれは謝っただろアルトー」
 言った途端、そういうハナシじゃねえって怒鳴られる。……怒ってる顔も可愛いんだけどな、こいつはそういうの知らないんだろうな。
 困るよなー全く、自覚のない美人てさ。他のヤツに取られないように、俺が日々どれだけ努力してると思ってんだ。
「あの、さ、えーと……俺、誕生日って祝ってもらった覚えがないんだよ」
「…………は? え、なに? そうなの!?」
 アルトが隣でこくんと頷く。びっくりした。驚いた。まさかこのトシまで生きてきて、誕生日を祝ってもらった記憶がないなんて。
「家がほら、ああだからさ。プレゼントとか、ごちそうとか、浮ついたものはなかったような気がするんだ。特に母さまが亡くなってからはな」
 俺は、もしかしたら恵まれてたのかも知れない。もうとっくの昔に死んだ両親も、誕生日には休みを取ってくれたり、それが無理でも何かしらのボイスメッセージとプレゼントが贈られてきたもんだ。姉貴だって下手なりに料理作ってくれたし、俺は誕生日ってものが嬉しかったけど。
 このお姫様は、知らないのか。
「だから、何がほしいって訊かれても、分からねーんだよ。怖いってのはそういう意味だ。悪いなミシェル」「ほしいもの、何もないか? 物じゃなくてもいいんだぜ、ほらどっか行きたいとかやってみたいとか、何でも」
 だったら尚更、俺が祝ってやりたい。おめでとうとありがとうと、愛してるをたくさん言って、来年も祝ってほしいって思わせてやりたい。
「俺は祝いたい。だからアルトの願いを叶えてやりたいんだよ。な? あ、そーだケーキとか買ってくるか。なあ今から出かけようぜ」
「……な、なあ、なんでもいいのか? ほしい物見つけた……っていうか、物じゃないんだけどさ」
「お、なんだ? できれば俺の給料で買える範囲のものにしてくれよな」
 陽射しは少し強いけど、姫と出かけるならどんな天気だっていい。さあお姫様、ほしい物買いに行こう。
「お前の全部、よこせ」
 喜び勇んで立ち上がった腕を、お姫様が掴んで止める。言われた言葉の意味を一瞬把握できなくて、目を見開いた。


「お前の手のひらも、視線も、声も、キスも、気持ちも、全部だ」


 アルトは立ち上がって、手のひらを合わせて繋いでくる。少し下の目線から見上げてきて、ばっちり瞳に映す。
「アルト……」
「俺を呼ぶ声も、……キスも。な?」
 ちょん、と触れるだけのキスをしてくる。気持ちも全部、って言ってたことを思い出して、俺は笑った。
「愛してるよアルト、愛してる。誕生日おめでとう」
 耳元でそう囁いてやると、くすぐったそうに身をすくめて、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
「これがアルトのほしい物?」
「ああ、来年もそれで頼む」
 でかけようぜと部屋を出る姫ぎみに、苦笑してから返す。
「無理だって、姫」
「……なんで」
「だってこれ、いつもと一緒。いつだって俺は姫のもんだよ」
「じゃあどうしよう、他にほしい物って、思いつかないんだが……どうしたらいい?」
 そんなに真剣に悩まないといけないくらい、俺だけがほしかったのか、アルト。あーもうー可愛いー。
 まあ、そういうことなら教えてやらないとな、好きな人の誕生日がどれだけ大事なのかを。ああ久しぶりだな、この感覚。世間知らずなお姫様に、街での遊び方を教えてやってたときみたいだ。
「じゃあとにかく、街に出よう。食べたいもの食べて、やりたいことやって、楽しもうぜ。アルトの生まれた今日この日を、神様に感謝して」
「ミシェルは、俺が生まれてきて嬉しいのか」
「そりゃもちろん。姫を愛してるからな」
 へへ、とアルトが嬉しそうに笑う。そうだよ、そういう顔が見たいんだよ。
 いつもいつでも大好きだけど、今日は特別。
「なあお前だったら何をほしがる?」
「アルト姫」
 そう言ってキスをしたら、呆れたようなため息を吐かれた。
「いつもと同じだろ。人のこと言えねーじゃねーか」
「仕方ないだろ、じゃあ考えとく。ほら行くぞー」
「あ、待てミシェル、ちゃんと手ぇ繋げっ」
「はいはい、お手をどうぞお姫様」
「姫って言うな!」
 さあ今日はどこへ行こう。ケーキ屋とアイス屋と、姫のお気の向くままに。
「アルト」
「んー?」
 立ち止まって、出かける前の少し長い口づけ。
 手のひらも、視線も、声も、キスも、気持ちも、全部あげるよ。まあいつものことなんだけど、今日はいつもの倍くらい、俺をアルトにあげようか。
「帰ってきたら、続きしような」
「……ばぁか」
 ハッピーバースデー、親愛なる俺のお姫様。
 生まれて出逢って恋してくれて、ホントにどうもありがとう。

#ラブラブ #両想い #誕生日 #ミハアル

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有効期限

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2009.04.01

#両片想い #お題 #ミハアル

「もうそろそろいいんじゃないかって思うんだけどさ」 放課後の教室でそう切り出したのは、アルトの方だっ…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

有効期限


「もうそろそろいいんじゃないかって思うんだけどさ」
 放課後の教室でそう切り出したのは、アルトの方だった。だがそう言いながらも視線は窓の外。独り言なのか話しかけているのかはっきりしてもらいたいねと、ミハエルは苦笑した。
「なにが?」
 だけど自席のパソコンでマニューバの調整をしながら、ミハエルもアルトに視線を移しはしない。隣の席ではありながらも、時おりこうした距離が遊ぶ。
「なにがって……あ、やっぱり雨、降ってきた」
「そうだな。ちゃんと傘持ってきたか? アルト姫」
 今日はフライトできないな、と拗ねたようなアルトの声に、保護者のような言葉を返す。それは、若干アルトの癇に障ったようだった。
「姫って呼ぶな」
「俺を追い越せたらな」
 いつも言ってるだろうと、調整したマニューバを保存して画面を閉じる。それを見越してか、アルトはようやく、青くない空から視線を外して身体ごと振り返った。
「そうやってお前は、すぐはぐらかすんだよな」
「機嫌が悪いねアルト姫。何がそんなに気に入らないんだ?」
 言ってみろよ、と挑発したけれど、実のところミハエルだって、彼が何を言いたいのかくらい分かっている。
 分かっていても、あえて言わせたい言葉があるのだ。
「ムカつく。すげえムカつくお前っ」
 絶対分かってるんだろうっ、とアルトは机を叩いてみるが、ミハエルは涼しい顔で笑っている。自分が折れるしかないのか、と思うが、悔しさが先立った。
「お前が一言言えば、それで済むじゃねえか」
 この男はいつも前を歩いていて、上の段にいて、笑っている。自他共に認める女好きのはずなのに、誰よりも優しくて、強い。皆が惹かれるのも分かる気はするのだが。
「それを言うなら、姫が言ったって変わらないと思うけどね」
 ミハエルは腕を組みながら、息を吐く。すぐ傍で眉を寄せるお姫様は、たったわずかな時間で次席にまで上ってきてしまった。流されやすいようでいて、……いや、流されやすいのだが、意志は誰よりも強い。
「なんで俺から言わなきゃなんねーんだよ」
「俺から言わなきゃならない理由は何かな」
 しばし、沈黙が流れる。
 アルトにも、ミハエルにも、そうして苛立ちが芽生え始めてきた頃。
「……友情に、有効期限てあんのかな」
 不意に呟いたアルトを、ミハエルの視線が追う。
「……あったとしても、もう切れてると思うぜ」
 そう返したミハエルを、アルトの視線が追う。
 必然的に重なった視線は、一呼吸置いて意図的に逸らされた。
 はああぁぁあ――と大きなため息が教室を支配して、二人ともが頭を抱える。
 本当はもっと上手く行くはずだった。きっとこんな教室なんかじゃなくて、きゅんとくるような言葉だって用意して、そして照れくさそうに笑う相手を拝めるはずだったのに。
「お前が、早く言わねえから」
「お前が早く言えばいいんだ」
 いったいどこで道を間違ったのだろうか。
 もっとときめくシチュエーションの時だってあったのに、タイミングを逃してここまで来てしまった。
「――――付き合おっか、俺たち」
「――――うん、そうだな」
 こんな風に始まるはずではなかったのに、と少しだけ泣きたくなったが、いつの間にか重なった手にときめいて、指を絡めてしまう。
「失敗したなあ……」
「情けないなあ……」
「でも、好きだ」
「ああ、好きだ」
 ちらりと横目で見やると、意図せず視線がぶつかって驚いた。そうして、お互いの照れくさそうな笑い顔を拝む。
「じゃあ、恋人の有効期限はナシってことで、ヒトツ」
「これからも、よろしく?」
 手のひらを合わせて、強く握り合う。
 今まではお互い友人同士。たった今から恋人同士。
 窓の外で聞こえる、静かな雨の音がやけに心地よく感じられ、ゆっくりと静かにキスをした。


リライト様、恋になる前に十題

#両片想い #お題 #ミハアル

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かみなりとお姫様

NOVEL,マクロスF,ミハアル 2009.04.01

#ミハアル #ラブラブ

 シュン、とドアを開いて、部屋の中に入る。今日も一日無事に勤務が終わった、とホッとする瞬間だった。「…

NOVEL,マクロスF,ミハアル

かみなりとお姫様



 シュン、とドアを開いて、部屋の中に入る。今日も一日無事に勤務が終わった、とホッとする瞬間だった。
「あー疲れたあ。明日休みならいいのになー」
 はあ、とため息を吐きながら、ミハエルはジャケットの前をくつろげる。聞こえてくる激しい雨の音に、まだ降っているのかと意識を向けた。
 気象庁で全てが管理されているこのフロンティアの気候。常春であれとは言わないが、こんなに機嫌の悪そうな雨を降らせなくてもいいじゃないかと思ってしまうのは、恐らくミハエルだけじゃないはずだ。
「うわーまだカミナリまで鳴ってる。いくら地球の自然を取り入れたいからって、ここまでしなくてもいいと思わないか?」
 肩を竦め、同室の恋人・アルトを振り向く。
「そっ、そうだな」
 上ずった声を不審に思って、首を傾げた。普段なら彼は、季節が感じられていいじゃないかとでも返してくるのに、なぜ今日に限って同意なのだろう。EX-ギアでフライトができないから、雨があまり好きでないことは知っているが、それでもこんな風に、天候の否定をしたことはなかったはず。
 そうしてミハエルは、アルトの肩がびくっと震えるのを見てしまった。
「あ、そっか。アルト、もしかしてお前、カミナリ怖いのか?」
 肩が震えたのは、大きなカミナリの音とほぼ同時。理由を紐づけるのは、さして難しいことではなかった。
「バッ、怖いんじゃねえよ! に、苦手っていうか好きじゃねえだけだっ!」
 苦手なのと好きじゃないのはどう違うのだろうと思うが、きっと聞いたところで明瞭な答えは返ってこないだろう。
「うわっ!」
 ふうんと頷きかけたところで、ゴォンと大きな音。それに驚いて、アルトは身をかがめてしまった。らしい、とも、意外、とも思える新発見に、ミハエルは嬉しくなってしまう。
 また、アルトを知ることができた、と。
「ふうんそっかあ。アルトはカミナリが怖い、と。ちゃんと覚えておくよ」
「だ、だから怖いわけじゃねえって言ってんだろうがっ、……っ!」
 立て続けに聞こえるカミナリの音に、アルトは首を引っ込めて耐える。その姿を可愛らしく思い、ミハエルはもっと鳴れ、と心に祈った。
「抱きしめててあげようか、アルト姫? ちょっとは安心しない?」
「するか馬鹿!」
「即答かよ。……じゃあさ、耳塞いじゃえばいいだろ? 聞こえないように、ね、あの時みたいに、…さ」
 そっと耳元に落とす、からかいを含んだ声音。
 あの時、の意味を瞬時に理解して、アルトの頬が真っ赤に染まった。誰がするかとこぶしを振り上げて、だけどミハエルには難なくかわされてしまう。
「だって音聞くの嫌なんだろう? あの時だってお前、いやらしい音聞きたくないからって耳塞ぐじゃないか」
 いくら俺が頑張ってもカミナリの音は止められないよと肩を竦めるミハエルを、憎らしげに睨みつけてみた。それでもやっぱり効果はなくて、
「まあ、してる最中に、耳塞いでる余裕なんかなくなっちゃうみたいだけどね」
 反論できない。事実なだけにアルトは反論できないが、なんでこんな意地の悪い男を好きになったんだ!と、八つ当たりで手近なものを投げつける。
「わっ」
「馬鹿ミシェル! 」
「なにすんだよ姫ー。せっかく買ってあげたヒュドラの特大ぬいぐるみ、粗末にしないでくれるかな」
「知るか! お前が勝手に買ったんだろ!」
 律儀にベッドに置いててくれるくせにねえ、と抱き枕仕様のヒュドラを撫でる。時々これをちゃんと抱きしめて眠っていることくらい、お見通し。ポンポンと軽くはたいて、アルトのベッドへ戻してやった。
「ハイハイごめんね。たまにはさー、こうほら、ミシェルーって抱きついてくる姫が見たかったんだけどなー」
「ぜっ、絶対しな……うわっ!!」
 しない、と言いかけたところへ、特大のカミナリ。思わず耳を塞いで身をかがめる。さすがの轟音に、ミハエルも首を竦めた。
「これいつまで続くのかなあ。ちゃんと眠れるといいんだが。大丈夫かアルト?」
「あ……」
 無意識に肩を抱いてくれるミハエルの両手に嬉しくなってしまう。
「もう、……嫌だミシェル」
 きゅ、と彼のジャケットを握って、トンと額を預けた。
「え、なにが」
「カミナリ」
「え、あ、うん?」
「…………しろよ」
 その言葉の意味は理解したがにわかには信じられなくて、ミハエルは踏み込めないでいる。それを感知したのか、アルトはバッと顔を上げて口唇を奪った。
「カミナリ気にしてる余裕、なくさせろって言ってんだ!」
 真っ赤になって叫ぶお姫様を、何よりも愛しいと思ってミハエルは抱きしめる。
 キスをして、背中をさすってやって、ゆっくりとベッドに倒れ込む。カミナリはまだ鳴っていたけど、そんなもの気にしていられなくさせてやろうと、深く口づけた。
 口唇を離したら、無邪気な顔をしたヒュドラのぬいぐるみに気がついて苦笑する。邪魔をしないでくれよなと笑って、そっとベッドの下に追いやった。



#ミハアル #ラブラブ