No.197

(対象画像がありません)

Ich liebe dich-002-

その他ウェブ再録 2014.02.09

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い

 イクスアインはゆっくりと息を吐きながら、椅子の背にもたれた。 アードライは多少理解してやれると言っ…

その他ウェブ再録

Ich liebe dich-002-

 イクスアインはゆっくりと息を吐きながら、椅子の背にもたれた。
 アードライは多少理解してやれると言ってくれたが、誤解はしているようだ。彼はきっと、イクスアインがハーノインの裏切りに対して怒っていると思っているのだろう。
 だが実際は、自分自身に対しての怒りだった。
 イクスアインはくしゃりと髪をかき上げて俯く。
 ハーノインがここ最近おかしな行動を取っていたのは知っていた。だけどこんなことになるなんて思っていなくて、訊ねもしなかったのだ。触れてくる熱は何も変わらなかったから。
「ハーノ……」
 最後に交わした言葉は、まだ覚えている。気をつけろよと言ってくれた恋人に、子供かよと呆れて返した。それが、ハーノインを見た最後だったなんて。
 ―くそっ、どうして……なぜ私は……!
 後悔ばかりが募る。
 もっとよく見ていればよかった。そうすれば、自分の知らないところで勝手にいなくなったりしなかったかもしれない。
「ハーノ、なんでお前……」
 なんで何も言ってくれなかったんだ? と心の中で問い続ける。
 恋人同士だからと言ってなんでも打ち明けなければならないわけではないが、こんなに重大で重要なことを話してくれなかった。信頼に足りなかったらしい自分が腹立たしくてしょうがない。
 何を思ってハーノインがあそこにいたのか、最期に何を思ったのか、想像さえできない自分の不甲斐なさが腹立たしい。
 ハーノインを好きだと言いながらただ傍にいることしかしてこなかった自分を、どうして許せるのだろうか。不審に思いながらも訊こうとしなかった自分は、彼を責める資格などないのだ。
 ハーノインが使っていた端末から、カイン・ドレッセルの近辺を調べていたという資料が見つかった。それはドルシア軍にとっての反対勢力である証拠となり、遺体は秘密裏に処分されたのだという。
 裏切り者には死を―そんなことは分かっていたし、カルルスタイン機関での訓練中、犯した罪を忘れたわけでもない。
 それでもせめて、もう一度逢いたかった。
 泣いても嘆いても叶うことなどないと小さな頃に経験している。事実を受け止めないといけないのだ。あの時手を引いてくれたハーノインは、もういないのだから。
 いつだって、隣で大丈夫だと笑ってくれたあの陽の光の色の髪をした男はもう、どこにもいない。
 誰とも分からない相手に殺されたのだ。
 訊いてみたい。どんな風にハーノインを撃ったのか。何か話したのか。最期はどんな顔だったのか。
「ハーノ……」
 お前の最期を知ることでしか想いを示せない自分をどうか許してほしいと、イクスアインは恋人の愛称を呟く。
 誰がお前を殺したんだと、傍にいないハーノインに訊ねるも、当然声が返ってくることはない。そもそも、あのカルルスタイン機関を無事に出たハーノインが、そうそう簡単に殺されるとは思わないのに。
 イクスアインはギリと歯を食いしばる。ハーノインの、軍人としての技術は目を瞠るものがあった。エルエルフのようにとまではいかないが、並の訓練を積んだ者の相手にはならない。
 生まれながらの、家系的な軍人ではなかったが、持ち前のセンスとそれを補う努力を、イクスアインは知っている。ずっと一緒だったイクスアインにしか分からないかもしれない。普段の行動がああだから、まじめに任務をこなしていないのではと思われがちだが、実際は違う。軽薄そうな態度をとりながらも、与えられた任務をおろそかにしたことはない。あの態度さえが、相手を騙す手口なのかもしれないと、傍で見てきて感じていた。
 何度か訓練で剣や銃での手合わせをしたが、恋心を抜いてもあれだけやりづらい相手はいなかった。本気でやりあったら、どちらが勝っていたか分からない。
 そんなハーノインを、誰が殺せるというのか。
 イクスアインはデスクに肘をつき、両手で髪をかき混ぜた。そんな相手が思い浮かばなくて焦りばかりが募る。
 気を許した相手ならもしかしたらと思うが、反旗を翻したエルエルフならまだしも……いや、彼はクーフィアの攻撃に応戦していたはずだ。その二人には不可能ということになる。アードライも、怪我を負って救援を受けていたはずで、彼にも不可能だ。
 イクスアインは、あの洋館でそんなことが起きているとも知らずに、眠っていた。
 そう、眠っていたのだ、こともあろうに。
 カインの護衛として付き、待機を命じられたところまでは覚えている。きみの働きには感謝しているなどと畏れ多い言葉をもらったことも覚えている。
 命じられるままに待機し、出された紅茶も任務中なのだからと飲まずにおいて、ただカインの帰還を待った。
 気がついたのは、火山の爆音でだった。失態をなじり、カインの身に何か起きていないかと探したその先で、血の海を見たのだ。
 だから、あそこでなにがあったのか分からない。ハーノインがすぐ傍で殺されたというのに、自分はなぜ眠ってなどいられたのか。
「ハーノ……」
 押しつぶされそうな自責の念。今日もまた、眠れないのだろうとイクスアインは口唇を噛んだ。


#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い