No.722

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色付いた桃色の頬

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.10

#お題 #両想い

 手塚と付き合うことになった。 跡部景吾が、脈絡なくそう報告してきたのは、昼食後のティータイムの時だ…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

色付いた桃色の頬

 手塚と付き合うことになった。
 跡部景吾が、脈絡なくそう報告してきたのは、昼食後のティータイムの時だった。
 忍足の傾いたカップから、ポタタと紅茶が逃げていく。
「忍足、カップ」
 それに気づいた滝が、優雅に自分のカップを口許に運びながら指摘してやる。ハッとして、忍足は慌ててカップの傾きを直した。
「なんで驚いてへんの、自分……知ってたん?」
「いや、知らなかったよ、今の今まで。これでも驚いてるんだけど」
「よう言うわぁ……」
 そんな素振り見せもせんと、と忍足は困ったように片眉を上げた。
「そんで? なんでいきなりそないな話になってんねん、跡部」
「俺がアイツに告白したからだぜ」
 訊ねかけた忍足に、跡部はまるでなんでもないように返してきた。簡潔に状況を報告されたが、簡潔過ぎて何が起こったのか分からない。
 跡部が、手塚に告白したのは分かった。手塚がそれを受け入れて、恋人としての交際が始まったらしいことも。
「お前らには俺の気持ち知られてたから、一応報告をと思ってな。相談にも乗ってくれただろ」
 律儀な男だ、と忍足は思う。
 正直、跡部が手塚のことを好きなのは公然の秘密だったのだ。それを知らないのは本人だけで、当然のように暗黙のルールで箝口令がしかれていた。
 誕生日に何か贈りたいと相談された時に、手塚が好きなのだとちゃんと跡部本人から聞いたし、それならと乗っただけだったのだが。
 そういう律儀なところを、滝も気に入っているようで、カチャリとカップをソーサーに置いて呟く。
「報告してくれてありがとう、景吾くん。よかったね。初恋は実らないって言うけど、あれやっぱり噓だ」
「…………ああ、そうみてえだな。俺のが叶ったところをみるに」
「おめでとさん、跡部。玉砕覚悟で告白したんか?」
 跡部は秘めるつもりなのかと思っていたが、予想が外れてしまった。それとも、やはりどこかから情報が漏れてしまったのだろうか。
「言うつもりはなかったんだがな……。アイツが不用意に俺を浮かれさせやがるから」
「ははーん、分かった。お前とテニスをするのは楽しいとでも言われたんでしょ。昨日も手塚としてきたんだよね、テニス」
 跡部が、珍しく言葉に詰まったようだった。どうも図星らしく、ほんのりと頬が染まっている。
 それで嬉しくなって、浮かれて、ついうっかり告白してしまったということか。
 跡部もまだまだやなあと、忍足は肩を竦める。
 景吾くん可愛いなあと、滝はテーブルに頬杖をつく。
「でも、そこで付き合うことになったって、かなり急展開だよね。もしかして、手塚もずっと景吾くんが好きだったんじゃない?」
「その可能性は高いわなぁ。普通やったら、同性に告白されてそのままお付き合いなんて、ないで」
 いくら親しい友人を無下にできないと思っても、いきなり交際に発展はしないだろう。いや、親しいからこそ優しさだけでは受け入れられないと、手塚ならば正直に言うはずだ。
「ああ、どうもそうだったらしくてな。こんなことになるとは思ってなかったが」
 桃色に色付く頬と、柔らかく上がった口の端は、とても氷帝テニス部員二百人を束ねる部長とは思えないほど、可愛らしい。
 滝は思わずスマートフォンを取り出し、カメラを跡部に向ける。
「何撮ってんだ萩之介」
「あ、待って景吾くん、そのまま。うん、いい感じに撮れた。忍足、手塚のID知ってる?」
「知っとるわけないやんけ……」
「そうか……なら仕方ないから景吾くんに送ろう。それ手塚にもあげなよ。景吾くんが照れてる顔、すごく可愛いから」
「なっ……」
 絶句する跡部を他所に、滝は操作を終える。跡部の端末が震えて、受信を報せた。バッと端末を持ち上げて確認した跡部は、メッセージに添えられた写真を見てふるふると震えた。
「ふ、ふざけてんのか、こんなもん削除するに決まってんだろうが! あと可愛くもねえ!」
「えぇ……だって俺たちが知ってる景吾くんの照れ顔を、手塚が知らないなんてこと、やだよねえ。恨まれそうだし。恋人でしょ?」
「こっ、こいび……、そ、そういうもんなのか……?」
 即座に削除しかける跡部を、滝はうまく丸め込む。忍足も、それに参戦した。
「逆の立場で考えたらええんとちゃう? 手塚のかっこええ顔とか、俺らだけが知ってて跡部が知らんとか、そんなん嫌やろ……」
「う……ま、まあ……そうだな、そうか……そういうもんなのか……」
 ちょろい、と二人は声には出さずに視線だけで意見を交わす。手塚がかかわると氷帝のキングも形無しだなと肩を竦めた。
「手塚が……見たいって言ったら……見せてみるぜ」
 困ったように、恥ずかしそうに、嬉しそうに小首を傾げる姿は、やっぱり可愛らしかった。


お題:リライト様 /色付いた桃色の頬
#お題 #両想い