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No.707
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.26
恋をしていると気がついて、悩んだのは恐らく三日ほどだった。 どこが好きなのか――全部だ。 思い違い…
No.707
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.26
恋をしていると気がついて、悩んだのは恐らく三日ほどだった。 どこが好きなのか――全部だ。 思い違い…
恋をしていると気がついて、悩んだのは恐らく三日ほどだった。
どこが好きなのか――全部だ。
思い違いではないのか――考えたが違わない。
具体的にどうなりたいのか――恋人に。
考えれば考えるほど、恋の相手が彼であるのが自然なことでしかなかった。
テニスを通して、魂の熱さを知った。がむしゃらさを知った。誠実さを知って、球を打つ楽しさを思い出した。
全力で応えて、ぶつかってきてくれる跡部を、好きにならないわけがない。
もっと近くに行きたい。もっと親しくなりたい。跡部の中で、もっと大きな存在になりたい。
今日こそ言おうと思う。恋をしていると。恋人関係になりたいと。
友人でなく、好敵手でなく、いや、そのどちらもを保ったままで、恋人になりたいと。
だってそうだろう。跡部との間にはテニスがある。そこには恋愛感情でなく、好敵手としての好意しかない。
跡部の球を全力で打ち返したいという思う気持ちと、跡部の体を全力で抱きしめたいと思う気持ちは、まるで別のものなのだから。
友人でもありたいし、好敵手でもありたいし、恋人でもありたい。
自分がこんなに欲張りな人間だったなんて、知らなかったな。
「……――塚、手塚!」
跡部が俺を呼ぶ声でハッとした。しまった、物思いにふけりすぎたか。
「聞いてなかったなテメェ……」
「すまない。なんだ、跡部」
「明日は用事があって来られねえっつってんだよ」
だから今日はたっぷりとな、なんて言って跡部はジャージを脱ぎ捨てる。止めろ、目に毒だし、耳に毒だ。
だが、そうか……明日は逢えないのか。
となると、やはり今日言っておいた方がいいだろう。テニスを始めて〝好敵手〟になってしまう前に。
「跡部、少し話がある」
「んだよ? せっかくの楽しい気分に水差すたあどういう了見だ」
「お前に恋をしている」
黄色いボールが、驚いたらしい跡部の手から逃げていく。トトンと音を立てて地面に落ち、コロコロと転がってくる。それを拾い上げて、跡部へと差し出す。けれども、呆然としたように佇む跡部がそれを受け取ってくれることはなかった。
「なん、……だって?」
「聞こえなかったふりをするのは卑怯だと思わないか、跡部」
「お前がふざけたこと言うからだろ!」
「ふざけてなどいない。本気で言っている。お前が好きだと」
跡部の頬が赤く染まる。待ってくれ、お前でも恥ずかしがったりするのか。テニスをする前にと思って言ってしまったが、この後こんな跡部とテニスをする自信なんてないぞ。失敗した。
だが、また違う一面が見られて嬉しい気持ちもある。
あの日の頂上決戦をしただけのままの関係では、絶対に知ることのできなかった一面だ。
跡部景吾を表す形容詞に、〝可愛い〟が書き加えられたことは、……今言うべきではないんだろうな。
「……俺は男なんだが」
「知っているが」
「……………………お前、別にそっちしか駄目なわけじゃねえんだよな?」
そっち、というのは、同性しか好きになれないのではないかと言っているのだろう。あまり深く考えたことはないが、俺は跡部景吾という人間が好きなだけで、同性が好きなわけではない。
頷いて、再度好きだと告げた。
「お前との関係に、恋人というものを付け加えたい。友人でも、好敵手でも、それだけでは物足りないんだ」
「欲張り過ぎんだろ。この俺が相手してやってんのに、物足りないって」
「それは自覚している。だが、お前が相手だからこそだとも思う。跡部なら、そのすべてに応えられる技量があるだろう」
一対一だからといって、関係性が一つに限定されるなんてルールはない。二つでも、三つでもいいはずだ。
跡部ならたとえ十個でもこなしてしまうのではないだろうか。
「そりゃ、ある。あるが、そんなもっともらしいこと言って丸め込もうとすんじゃねえ」
「丸め込みたいのではなく、好きになってほしいんだが」
跡部はがくりと項垂れて、大きなため息を吐いて、右を向き、左を向き、空を仰いで、うめくように声を上げた。
「ああくそ、俺が手塚の頼みを断れるわけねえじゃねーの」
ふる、ふる、とゆっくり首を振り、呆れたように、諦めたように息を吐き、まっすぐに見つめてきてくれた。
「いいぜ手塚、なってやるよ。恋人関係とやらに。その代わり、俺をちゃんと惚れさせてみせな」
ニッと口の端を上げる跡部に、ぱちぱちと目を瞬く。これはチャンスをくれたということだろう。
俺の頼みを断れないというのがどういう感情からくるのかは分からないが、少なくとも好意はもってくれているようだ。
可能性は、ゼロではない。
この先ちゃんとした恋人になれるまで、跡部を口説けばいいんだろう。どうやればいいのかは分からないが、きっとなんとかなる。
「分かった、油断せずに行こう」
やはり、跡部との勝負は楽しいな。負けるわけにはいかない。
必ず口説き落としてやろうと決めて、俺は跡部に再度ボールを差し出した。
「さあ跡部、テニスをするぞ」
「お前、この状況でテニスかよ……」
呆れつつも、跡部はボールを受け取ってくれる。言っただろう跡部、俺はお前と友人で好敵手で恋人でありたいのだと。
「ほら、構えな手塚、ちゃんと受け止めろよ」
俺のサービスからにするべきだった。受け止めるのは俺じゃない。まあ、打ち返せば問題ないな。
ちゃんと受け止めてもらえるんだろうな、跡部。この気持ち、全部を。
#お題 #片想い #両片想い