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No.706
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.25
何げない日常だったと思う。 いつものように放課後落ち合って、近くのコートで打ち合って、物足りなさを…
No.706
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.25
何げない日常だったと思う。 いつものように放課後落ち合って、近くのコートで打ち合って、物足りなさを…
何げない日常だったと思う。
いつものように放課後落ち合って、近くのコートで打ち合って、物足りなさを払拭する。
それが、跡部との過ごし方だった。
テニス部を次世代に託して、生徒会も徐々に引き継ぎをしている今、どうしても物足りないと体が嘆く。
そんな自分に応えてくれる男がいると気づいたのは、跡部から連絡が来た時。跡部も物足りなさを感じていたらしく、『時間が空いてればテニスしねえか』と誘ってくれたのが、いちばん始め。
それまで、跡部は対戦校の部長という認識しかなかった。もちろん強いプレイヤーだし、初めて対戦したあの試合は印象に深い。ただそれでも、それ以下でもそれ以上でもなかったんだ。どれだけ薄情だと言われようと。
だが、テニスをするのなら跡部がよかった。
他に相手がいないわけではなかった。進級試験や外部受験の準備があるとはいえ、今まで共にテニスに打ち込んできた仲間だっている。それこそ友人と呼んでいい存在だって。
だけど、このくすぶる熱をさらに燃えたぎらせてくれるのは、跡部景吾しかいなかった。
〝友人〟では駄目だ。〝仲間〟ではなく、気兼ねなく、打ち負かしてやりたいと思う相手。
いっそ小気味良いほどの闘志をぶつけてきてくれる、この男でなければ駄目だと思った。
「スピードが落ちたんじゃないのか、跡部!」
「抜かせ! テメェこそライン取りが甘ぇってんだよ!」
分かりやすく攻撃的なボールを打ってきてくれる。それを打ち返すのが、楽しくてしょうがない。足が軽い。腕が軽い。
公式戦ではないからかもしれないが、次にどんな球が飛んでくるのか、想像するのが楽しい。
まさかそんなラインでくるなんて。一瞬でも反応が遅れたら、横を抜かれる。
神経を研ぎ澄まし、張り詰めているのに、心地良い。それは恐らく、ネットを挟んだ向こうの相手も同じだからだろう。
跡部が、トン、トン、とボールをついてラインを確かめる。なかなか打ってこないことに焦れかけたその時、跡部が顔を上げた。その口許は高く上がっている。
「いいな、この感覚だ。楽しいじゃねーの、手塚ァ!」
ひゅっと上げられたトス。速いスピードでラケットが振られた。
見えなかったわけじゃない。反応できなかった。
楽しい、と高らかに笑う跡部の顔に、視線が釘付けになっていて。
瞬きをすることさえ惜しいと思った。
コートの外灯に光る汗の粒が、揺れる金の髪が、まっすぐに射貫いてくる青の瞳が、あんなに。
あんなに綺麗だったなんて、初めて知った。
ここ最近でようやく、〝友人〟らしく過ごせるようになったと思っていたのに、また物足りなくなる。
その日、俺の中で何かが変わってしまった。
#お題 #片想い