No.700

(対象画像がありません)

甘い蜜のよう

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.19

#お題 #両想い #未来設定

「ん……」 初めて触れるその唇は、思っていたよりも柔らかくて、しっとりとしていて、甘い蜜のようだった…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

甘い蜜のよう

「ん……」
 初めて触れるその唇は、思っていたよりも柔らかくて、しっとりとしていて、甘い蜜のようだった。
 優勝インタビューは戦績のことよりも、試合会場での熱い抱擁についてのことの方が多かった。それはもう仕方のないことだが、早々に切り上げさせてもらった。
 コーチやマネージャーたちにもろくに説明をしないまま、跡部景吾という恐ろしく多忙な実業家を左腕に抱いて、タクシーに乗り込んでしまった。
 次の新聞を見るのが怖いなと思いながらも、跡部が楽しそうにしているせいか、スキャンダラスな展開を嘆こうとはしなかった。
「スポンサー契約切られたら、ウチに来いよ。専属結ぶくらいの度量はあるんだから」
「それはそれで問題だろう。しかし、もしそうなったら頼むかもしれない」
 泊まっているホテルに跡部を引き込んで、扉を閉めるなり口づけをしても、跡部は怒らなかった。満足そうに口許を緩めて、今度は跡部の方からキスをしてくれる。
 触れて、離れて、押しつけて、ちゅっと音を立ててついばむ。絡む舌を吸い上げて、混ざった唾液を飲み込む。
「跡部……」
「手塚、お前の唇って甘ぇな……」
「それはお前の方だろう」
「ふふ……そうかよ……?」
 鼻先が擦れ合う。ずっと触れていたいと思うけれど、何度かついばみあってゆっくりと体を離した。
「…………驚いた」
「俺は昨夜驚かされた」
「せめて来るなら来ると言ってくれ」
「そんなことしたら、お前浮かれて試合できねえだろうが」
 ぐっと言葉に詰まった。それは確かにそうだ。試合は試合だと割り切っているつもりでも、好きな相手が見に来るかもしれないと思ったら、落ち着かなくなっていつもの力が発揮できない可能性はあった。
「仕事、どうしても俺じゃねえと駄目なヤツ終わらせて、会議のリスケと納期の延長頼んだり、色々あってな。確実に来られるとは言い切れなかったんだ」
「そうなのか……来てくれて嬉しいが、あまり無茶なことをするな」
「お前に言われたくねーなぁ……肩の痛み我慢して無茶な試合してたヤツによ」
「それを言われると何も言えんな……」
 気まずくて顔を背けると、くっくっとおかしそうに肩を震わせる跡部が、背けたはずの顔を指先で振り向かせてくる。
「もっとずっと、言わなきゃなんねえ言葉があんだろ。もう一回……いや、何度でも言えよ手塚。俺を愛してるって」
 そうして、濡れた甘い唇を重ねてきた。
「キスをされたら言えないが」
「ばぁか、伝わんだろ。お前の気持ちは俺に、俺の気持ちはお前に。はちみつみたいな甘さでよ」
「……そうだな」
 唇が、再び重なる。重ねた数だけ、今まで言えなかった想いが伝わっていくと信じて、何度も、何度もキスをした。



お題:リライト様 /甘い蜜のよう
#お題 #両想い #未来設定