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No.696
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.15
青い炎が、体を包んでいるように見えた。 もちろん実際にはそんなことはないのだが、跡部の目には、手塚…
No.696
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.15
青い炎が、体を包んでいるように見えた。 もちろん実際にはそんなことはないのだが、跡部の目には、手塚…
青い炎が、体を包んでいるように見えた。
もちろん実際にはそんなことはないのだが、跡部の目には、手塚国光が熱い熱いオーラを纏っているように見えたのだ。
戦況はよくなかった。
優勝候補である相手選手のサービス。観客たちも、相手選手の応援の方が圧倒的に多い。
手塚国光も、プロのプレイヤーとしてそれなりの戦績を収め、顔も名前もプレイスタイルも知られてきたけれど、ベテランの選手に比べたらまだまだひよっこだ。
この大会の組み合わせが発表された時、跡部は自分の相手より手塚の相手の方が気にかかった。
難なく勝ち進めますようにとは思わない。あの男は強い相手とぶつかってこそ力を発揮する。眠っていた力を存分に活かすには、強い相手との対戦は願ってもないところだろう。
だが、まさか二回戦で優勝候補と当たるなんて。運が悪い、と思った。手塚のではなく、自分の。
跡部自身は、無事に次の試合に駒を進めた。それはライバルとの試合を望んでいるからだ。
手塚と試合がしたい。プロというこの世界で、球をかわしたい。そう願って、勝ち進んだというのに。
今回も、手塚との再戦は叶わないかもしれない。
中学のあの関東大会から、ずっと願ってきたライバルとの再戦。スケジュールや体の問題、試合の組み合わせの妙などで、いまだにそれは叶っていない。
今回こそと思った。次の三回戦で、ようやく当たるというのに。
「手塚……」
打って、返されて、また打ち返す。回転が弱いのか、手塚ゾーンが効力を発していない。相手の対策も万全だということだ。
だが、手塚とて対策をしていないわけではない。手塚ゾーンが攻略できるということは、跡部がいちばんはじめに立証済みで、それは警告も含めていた。
常に前を見据えている手塚が、そこで立ち止まっているわけがない。
そんな男に、何年も、何年も、焦がれられるはずもないのだから。
「勝てよ、手塚……!」
ぐっと、膝の上で拳を握りしめる。今この試合を観戦している者の中で、跡部ほど手塚の勝ちを願っている者はいないだろう。誰も彼もが、相手選手の勝ちだと思っているに違いない。
あと一ゲームで勝敗が決してしまう。じわりと、握った拳に汗がにじんでくる。
だけど、この状況でも手塚の心は折れていない。それが分かるのが嬉しかった。あの美しい青の炎を消すことなど、誰にもできやしないのだ。
気のせいだろうか。手塚と、一瞬だけ視線が重なったのは。
そんなわけはない。手塚が試合中に気を逸らすことなどあるものか。
そう思うのに、より一層強さを増した炎が、跡部のいる観客席まで熱い風を舞わせた。
髪が、風で揺れる。突き刺すような熱さで、瞳が焼かれてしまう。ビリビリとした痛いまでの闘志が、ここまで届くなんて。
ぞくぞくと、背筋が悪寒に似た快感で震える。
相手選手を蹴り飛ばして、あそこに自分が立っていたいと思わせる。手塚のボールを受け止めたい。返してやりたい。
どうしてあそこに立っているのが自分じゃないんだと、心の底から悔しくて腹立たしかった。
「勝てよ手塚、……勝てよ!」
勝って、またテニスをしよう。
あの頃よりずっと強くなった俺を知れ。
あの頃よりずっと強くなったお前を教えろ。
足を踏ん張る。歯を食いしばる。手塚と一緒にボールを追っているような感覚に陥って、にぎしりめた手のひらに爪が食い込んだ。
一ゲーム、取り返す。もう一ゲーム、勝ち取る。
番狂わせかと、この状況になってわき上がる無責任な観客たちの声も耳に入らない。手塚の熱を感じるだけで精一杯だ。
ずっと、ずっと、この熱を感じていたい。
恋というより、執着というより、ずっと重く深い感情で、手塚国光とつながっていたい。たとえ一方的な想いでも、構わなかった。
テニスというスポーツでつながっていられれば、それで充分だ。
いつでも前を見据え、上を目指すあの強い瞳を、同じだけの強さで見つめ返すのは自分だと、気分が高揚してくる。
ボールを打つインパクト音が心音と重なって、汗が額を滑り落ちていく。
「ゲームセット!」
審判のコールが耳に届く。勝者として名を掲げられたのは、――手塚国光だった。
わき上がるベンチ、観客席。跡部の視線の先で、だらだらと汗を流しながら相手選手と握手を交わす手塚がいた。
「手塚ァ!」
この歓声の中では、自分の声など届かないだろう。そう思ってはいても、どうしても呼ばずにはいられなかった。ベンチに戻ってきた手塚は、コーチたちにねぎらわれながらも、すぐにまっすぐ跡部に視線をくれた。
迷いのないその軌道は、跡部のいる場所が分かっていたようだ。やはり、先ほど視線が一瞬重なったと思ったのは、気のせいではなかったのだろうか。
「――いよいよだな、跡部」
わずかに口許に笑みまでたたえて、手塚がそう口にした。
脳天を撃ち抜かれたような衝撃だ。
まさか手塚の方も、再戦を待ち望んでいてくれたなんて。
膝から崩れ落ちていきそうな歓喜を、どうにか踏ん張ってこらえ、手塚と同じように笑ってみせた。
「ああ、ショータイムの始まりだ!」
#お題 #両片思い #未来設定