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No.695
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.14
すっと目の前に差し出されたものに、目をぱちぱちと瞬く。 綺麗にラッピングされた、赤い薔薇。 跡部景…
No.695
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.14
すっと目の前に差し出されたものに、目をぱちぱちと瞬く。 綺麗にラッピングされた、赤い薔薇。 跡部景…
すっと目の前に差し出されたものに、目をぱちぱちと瞬く。
綺麗にラッピングされた、赤い薔薇。
跡部景吾は、薔薇など見慣れている。見慣れているが、それを差し出してくる相手が相手だった。
「……なんのつもりだ? 手塚」
「お前にと思って」
「いや、そりゃ差し出された時点で分かるが。お前こんなことするガラじゃねえだろ」
差し出してきたのは、手塚国光だ。とても美しい花を渡している状況とは思えない仏頂面なのが、彼らしいと言えばらしいのだが。
「いつももらってばかりなので、俺もお前に何かやりたいと思ったんだが、おかしかっただろうか。らしくないというのは理解している」
心なしか声が沈んだように聞こえて、跡部は慌ててハッと顔を上げた。
「おかしいとは思ってねえよ。ただ、突然だから驚いただけだぜ。……いいのか? もらっても」
「お前にだと言っただろう」
「サンキュ。嬉しいぜ」
そっと手塚から受け取ると、手塚の口から安堵したような吐息が漏れた。突き返されたらどうしようとでも思っていたのだろうか。恋人からの思いがけないプレゼントを、そんなふうに扱うわけもないのに。
「ところで手塚。薔薇三本の意味ちゃんと知ってて贈ってんのか?」
包まれた薔薇は、ブラックパール。しなやかなビロードのような艶が人気のものだ。跡部自身、気に入っている品種のひとつ。
「薔薇の種類はよく分からないから、花屋の人に聞きながら選んだ。色や本数で、意味が違ってくるのだと」
跡部は手塚にもらった薔薇の香りを直接楽しみながら、満足そうに口の端を上げる。手塚の言う通り、花には色や本数で意味合いが違ってくる。そういうものには詳しくないと自覚している手塚が、花屋の店員に訊いてまで選んだというのが嬉しかった。
「そうかい。で、俺はそれを知ってて受け取った。意味は――分かるな?」
そうして、花に口づけながら手塚を見やる。手塚はひとつ瞬いて、こくりと頷いた。
黒真珠の花言葉は、恨みや呪いというものが有名だ。だがその裏で、「滅びることのない永遠の愛」というものがある。そして薔薇三本は、「愛しています」という意味だ。
他の品種より若干重めのプロポーズ、と捉えることもできて、受け取り方次第ではあるが、長く付き合うつもりの相手にはうってつけ。
手塚は理解した上で贈ってくれたようで、跡部はそれを受け取った。つまりは手塚からのプロポーズを受けたも同然だ。
「愛してるぜ手塚。ちゃんと受け止めてやるから、お前も俺のすべてを受け入れな」
「もちろんそのつもりだ、跡部」
二人で満足げに笑って、薔薇の花びら越しにキスをした。
#お題 #両想い