華家
-HANAYA-
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No.690
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.03.09
#お題 #両想い #未来設定
夜を共に過ごした翌朝は、コーヒーの香りで目が覚める。 数年前に気まぐれで買ったカフェのマシンは、ま…
NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン
お題:リライト様 /熱いコーヒーを一杯
favorite いいね ありがとうございます! 2025.03.09 No.690
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夜を共に過ごした翌朝は、コーヒーの香りで目が覚める。
数年前に気まぐれで買ったカフェのマシンは、まだ健在らしい。
「跡部、起きているか?」
開け放たれたままのドアから、手塚が姿を見せる。跡部は広いベッドに寝転んだまま、パタパタとシーツをはたいて応えてみせた。手塚が歩み寄ってくるスリッパの音が聞こえてくる。
「コーヒー、砂糖とミルクを入れてきた。起きられるようなら飲むといい」
「サンキュ、手塚。これで朝メシも持ってきてくれりゃあ、最高な一日のはじまりなんだがな」
サイドテーブルに、コトリとカップが置かれる。跡部はそれを寝転んだまま眺め、見慣れてしまった揃いのマグカップに口許を緩めた。
「行儀が悪い」
「今さらだろうが。それに、動けねえのは誰のせいだと思ってんだ。アーン?」
「一因は俺だが、お前にも責任はある」
ある程度予測のできた答えに、跡部はくっくっと喉を震わせて笑う。
昨夜はひどく濃密な時間を過ごした。一度や二度では足りなくて、抱き寄せて、煽って、煽られて、誘い誘われ指を絡めた。それはお互いの希望であって、二人の責任だ。
跡部はゆっくりと体を起こし、大きな枕を積んで体を支える。
体が楽な体勢を整えた頃、テーブルに置かれたカップを手塚がわざわざ手渡してくれた。
「とはいえ、お前の負担が大きいのは理解している。今日はあまり無理をしないでくれ」
「ああ、ありがとよ」
跡部は渡されたカップを両手で持ち、手のひらを通してじんわりと伝わってくる心地良い温度に、ゆったりと酔いしれる。
「フ……いいな、こういうの」
「なんだ?」
手塚はベッドの縁に腰をかけて、揃いのカップでブラックコーヒーを楽しんでいる。
「抱かれた翌朝、恋人に煎れてもらった熱いコーヒーを、二人で飲むっていうのがだよ。一日のはじまりなのに、どうかすると締めくくりみてえに思える」
「夜明けのコーヒーと言うしな。互いを労って想いを実感し合うという時間なのかもしれない」
手塚が、空いた手で髪を撫でてくれる。なるほど、と跡部は小さく頷いた。
想いを実感するのは、なにも肌を合わせている時ばかりではない。
むしろ終わった後の方が、ゆっくりじっくりじんわり感じられるだろう。
そういう発想はなかったなと思うと、自分とは違う思考を持っている他人というのはとても興味深い。それが恋人であれば尚更だ。
「な、昨夜はどうだった? 気持ち良かったか?」
となると、ことの最中恋人はどんなことを思っているのか気になってくる。
僅かに手塚の眉が寄ったところをみると、良くなかったのだろうかと一瞬不安になった。
「そういうことを明け透けに言うものではないと思うが」
「なんだよ、二人だけの時なら良いだろうが。セックス時の不満やマンネリは、早めに解消しといた方がいい」
跡部だって、何も赤の他人がいるところでこんな話をしようとは思っていない。むしろもったいなくて聞かせられるかとさえ思っている。
「俺はお前に抱かれてる時、すごく気持ちがいい。頭ん中真っ白になるくらいにな。けど、だからこそお前が気持ちよさそうにしてるところはあんまり見たことがねえんだよ。どう思ってんのか、知りたいだろ」
手塚が、ぐっと言葉に詰まったように見えた。視線が泳いでいるのは、どういう感情からなのだろうと、跡部は小首を傾げた。
「すまない、そこには考えが及ばなかった。確かに俺はお前が気持ちよさそうにしているところを見て気分がいいが、お前はそうではないのだな」
呆れと諦めと、僅かの羞恥を混じらせて、手塚が眼鏡を押し上げる。
「俺も、お前を抱いている時は気持ちがいい。俺の愛撫に、過ぎるほど素直に反応を返してくれるのは可愛いと思うし、中の熱さはこちらの方がとろかされそうになる」
ゆっくりと、手塚自身が確かめるような速度の声に、ぞくぞくと体が震える。反応が可愛いと言われて恥ずかしいけれど、悪くはない気分だ。手塚の熱こそとろけそうになるのに、彼の方もそう感じてくれているのなら、これほど嬉しいことはない。
「お前が俺を呼ぶ声も、潤んだ瞳で見つめてくるのも、とても嬉しく思っている」
「……そうか、それならいい」
満足だ、と頷く。あまり饒舌ではない手塚がここまで言ってくれたのだから、それは愛情以外の何者でもない。想いを実感し合う時間というのを改めて認識して、甘いコーヒーを口に含む。
「ありがとな、手塚。愛してるぜ」
自然と口許が緩んでいく。指先で手塚を招くと、コーヒーの香りを纏った優しい唇が重なってくる。
「跡部、今日はまだ朝食を用意していない。……ブランチになっても構わないだろうか」
唇のすぐ傍で誘われて、断る選択肢は出てこない。想いを実感し合った後は、熱を確かめ合う時間になってしまった。
「ああ、いいぜ。こいよ手塚、気持ちいいことしようじゃねーの」
熱いマグカップをテーブルに置いて、お互い同時に手を伸ばす。深くて熱いキスは、甘いコーヒーの味がした。
#お題 #両想い #未来設定