華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
表示中のカテゴリに限定して検索
No.515
永遠のブルー,塚跡WEB再録 2022.04.10
#塚跡 #片想い #ウェブ再録 #シリーズ物 #永遠のブルー
「越前がいない?」 待ちに待った決勝戦。参加選手はもちろん、応援団や観戦者も一様に浮き足立っている。…
永遠のブルー,塚跡WEB再録
favorite いいね ありがとうございます! 2022.04.10 No.515
ありがとうございます!
次のページ >> / / << 前のページ
初期表示に戻る
「越前がいない?」
待ちに待った決勝戦。参加選手はもちろん、応援団や観戦者も一様に浮き足立っている。
そんな中で、信じられない言葉が舞い込んできた。なんとシングルス1で出場予定の越前リョーマがまだ来ていないというのだ。
いったい何だってそんなことに? と聞き耳を立てていたら、どうにもトラブルで軽井沢から帰ってきていないらしい。
あの生意気なルーキーが、避暑地でバカンスでもあるまいなと思うが、ともかく今重要なことは、越前がいないということだ。
あの男がいなければ、青学の優勝は難しくなってくる。対戦校である立海も、不戦勝など望んではいないだろう。
「事情は把握した。ついて来い、桃城」
「あ、跡部さん!?」
「国内で良かったな。連れ戻すぞ」
青学の連中が目を剥くのが見える。返答を聞く前に跡部は携帯端末を取り出し、ヘリの用意をさせた。
「いいのかい、跡部」
「正直ボクたちじゃ、どうしようもないからね……跡部、お願いするよ」
「あァ、一つ貸しにしといてやる」
「おっと……こりゃ大変」
探しに行くと息巻いていた桃城を引き連れて踵を返す直前、手塚と視線がかち合う。
頼む、と無言で頷く手塚に跡部も無言で頷き返して、途中で忍足を呼びつけた。
「行くぜてめぇら」
「お、忍足さん、これ、突っ込むべきっすかね……ヘリって」
「跡部相手にそんなん無駄やで桃城……ところでなんで俺も行かなあかんねん……」
「ナビゲーターが必要だろうが」
「強引やなあ」
渋々ながらもヘリに乗り込む忍足を振り向いて、跡部は口を開く。
「向こうで何かあった時、俺以外に冷静な判断を下せるヤツが必要だろうが。テメェを評価してやってんだ」
「……さよか。しかしまぁ、健気なもんやで……」
素直に喜びたくないのか、忍足は窓からアリーナを振り向く。意趣返しのつもりなのだろうが、
「アーン? 聞こえねえな」
離陸に供えてヘッドセットを装着する跡部に、それは通用しなかった。
通信機を介して受けた報告に、跡部は愕然とした。
「あの馬鹿が……!」
歯を食いしばり、握りしめた拳を当てる。
「跡部、どないしたん」
そんな跡部の様子に気がついて、忍足が声をかけてくる。息を吸い込んで、じっと前を見据えた。
「桃城、手塚が反撃を始めたようだぜ」
「え!? ホントっすか、さすが手塚部長!」
「ホンマか跡部? 相手はあの真田やろ」
対戦相手は王者立海大のナンバー2だ。当然ながら一筋縄ではいかない。反撃を開始したということは、あまり芳しくない戦況ということだ。だからこそ、手塚は。
「だが……再び自らの腕を犠牲にして、な」
「え……はぁ!? どういうことっすか……!」
「落ち着きや桃城。なんや跡部、手塚ゾーンやったら、アイツかて加減くらい分かっとるやろ」
「そうじゃねえ。あれ以上に無茶な回転かけてボールをはじき出すんだよ……肘への負担はハンパじゃねえ。手塚もそう言ってやがった。使うなって言ったのに、あの野郎……!」
組んだ手をグッと握りしめる。真田はそれほどに強敵だということだ。それは理解ができる。理解はできるが、許容はできない。
周りを信じろと言ったのは数日前だ、忘れたとは言わせない。腕を犠牲にしてまで勝たなくても、誰も責めやしないだろう。
こんなことなら向こうに残っていれば良かった。残って何ができるわけでもないが、せめてベンチに戻ってきたあの男を殴ってやりたい。
「跡部。跡部、止めや……手、傷ついてまうで」
「んな小せえ傷がなんだってんだ! アイツは……っ」
「お前が背負うことやないで! 分かっとるんか、お前が背負うべき責任は越前こつちの方やろ!」
忍足の手のひらで拳を包まれて、ぐっと言葉に詰まる。
「俺らが……跡部が必ず越前を連れて戻るって信じて戦っとるんとちゃうんか。もしかしたら、時間稼ぎしとるんかもしれん。手塚が心配なんは分かるけど、こっちも信じてやらんとなぁ」
跡部はゆっくりと息を吐いて、シートにもたれる。信じろと言った自分の方こそが、手塚を信じ切れていなかったなんて。
あの日本気で怒った跡部の気持ちは伝わっているだろうし、覚えていてくれていると思いたい。テニスのことだけしか考えていなくても構わない。
ただ覚えていてほしい。心の底から案じる人間がいるのだということを。
「……悪い、取り乱しちまった」
「俺を引っ張ってきたお前の判断は正しかったっちゅうことや。冷静な判断ができるヤツがおらんとなぁ?」
「素直に礼を言いづれぇヤツだなてめーはよ」
こんな事態になるとは思わなかったが、忍足には手塚への気持ちが知られているということも気が楽だった。自分が取り乱してしまう理由を明確に理解し、的確に抑えてくれる。
「跡部さんと手塚部長って、一見合わなそうなのに、仲良いんすね。テニス馬鹿同士、気が合うってヤツっすか」
「……てめーらにだけは言われたかねーぜ。なぁ忍足」
「ホンマやで」
揃いも揃ってテニス馬鹿だらけじゃねーかと睨みを利かせてみるけれど、「そっすね!」と少しも厭みが通じない。その素直さが武器でもあるのだろうかと、落ち着きを取り戻した跡部は一つ瞬く。
――――手塚、死ぬんじゃねーぞ、頼むから。
必ず越前を連れて戻る。だから、この先テニスができなくなるようなことにだけはしないでほしい。
どうか、神様――。
#塚跡 #片想い #ウェブ再録 #シリーズ物 #永遠のブルー