No.715

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勘違いするな、遊びだよ

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン 2025.04.03

#お題 #両片想い

 ぐっと押しつけられた唇が離れていく。 桃色のそれをじっと眺め、彼の名前を呼ぼうと唇を開いた。「勘違…

NOVEL,テニプリ,塚跡,塚跡お題100本マラソン

勘違いするな、遊びだよ

 ぐっと押しつけられた唇が離れていく。
 桃色のそれをじっと眺め、彼の名前を呼ぼうと唇を開いた。
「勘違いするな、遊びだぜ」
 跡部は眉間にぐっと皺を寄せて、言った後で唇を噛む。せっかく綺麗な唇なのに、傷が付いてしまわないだろうかとぼんやり思った。
「……遊び、なのか」
「す、少し考えりゃ分かるだろうが。この俺が、テメェなんかに、……本気に……なるわけがねえ……!」
 苦虫を噛みつぶしたような顔を背け、声を押し殺す。それが心からの本音ならば、堂々と正面を向いて、いつものようにしたたかに通る声で言えばいいものを。
 そう思って、腕を伸ばす。びくりと強張った腕を通り越し、背中に触れて、一気に抱き寄せた。
「本気になってもらうには、俺はどうしたらいいだろうか、跡部」
「…………え?」
 吐息と一緒に、驚いたような声が聞こえる。跡部らしくない弱々しいその音が耳に残って、胸がざわついた、
「お前にそんな顔をさせずに、本気のキスをしてもらうには、後は何をしたらいい。教えてくれ」
「な……にを、言っ、て、え、だって、お前、俺のこと」
 途切れ途切れの声は、跡部の困惑をまざまざと伝えてきて、手塚はそこでようやく大事なことに気がついた。
「そうか、まずは好きだと言わなければならないな。キスは先を越されたから、告白くらいは俺が先にさせてもらうぞ」
 そういえばまだ好きだと言っていない。好きだと聞けてもないけれど、先ほどのつたないキスがすべてを物語っている。
「好きだ、跡部。遊びではなく、本気でお前に恋をしている」
 抱いていた腕の力を緩めて、正面からじっと顔を見つめる。困惑したような表情は泣き出す寸前にも見えて、心臓がおかしな音を立てた。
 ごまかすように、跡部の体をぎゅっと抱きしめて、再度耳元で囁く、〝好きだ〟の三文字。
 震えていた跡部の手が、手塚の服をぎゅっと握りしめる。肩口に顔を埋められて、当たる髪の毛がくすぐったい。
「本気に……なって、いいのかよ」
「ああ。俺が本気なのだから、お前もそうでなければつまらないだろう」
「言っとくが、一生放さねーぞ? その覚悟はあんだろうな」
「それはこちらの台詞だが」
 観念したようにすっと体の力を抜き、跡部が長く息を吐く。そうして、腕を背中に回してぐっと抱きしめてくれた。
「跡部、キスをしないか。今度こそ――本気のキスだ」
「そうだな。大人しく目を閉じてな、手塚」
 お互い同時に目蓋を落とし、初めて恋人同士のキスをした。


お題:リライト様 /「勘違いするな、遊びだよ」
#お題 #両片想い