2021年某誌に投稿。「もう一歩」をいただく。
【あらすじ】日下部環は〝推し〟である社長・藤堂崇臣の傍で仕事をしながら、彼をモデルにしたＴＬ小説をネットにＵＰする推し活をしていた。それが本人にバレてクビになるかと思いきや、面白がる崇臣に「書くのなら学べ」と抱かれてしまった。
強引で傲慢な〝推し〟に振り回される日々だが、崇臣への感情が恋に変わってしまって……。
推しの第一秘書になりまして。
推しの第一秘書になりまして。
推しの第一秘書になりまして。 
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【1】
日下部くさかべ環たまきは、カフェテーブルで広げたパソコンのキーを軽快に叩く。頭に浮かんだ言葉をそのまま打ち込んでいくことが多かったけれど、たまに頭に浮かぶより早く指先が動くこともあった。
――〝隆文の器用な指先が、美咲の色づいた突起をつま...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【2】
社長室に呼ばれたのは、崇臣が経営会議から戻ってきて少し経った頃。何を言い渡されるだろうかと重い足取りで向かい、それでも崇臣の望む通りにするしかないと覚悟を決めてドアをノックした。
「失礼します」
「ああ」
社長室に足を踏み入れると、す...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【3】
そもそもお抱えの運転手がいるというのがおかしいのだと、環は深い青色のマセラティに乗り込みながら思う。電車通勤ばかりで外出への同行もなかった環には、車のシートがどうにも落ち着かない。
「お疲れ様でございます、崇臣さま。このままご自宅...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【4】
広いベッドの上に寝かされて、環の心臓は今にも口から飛び出しそうな勢いで激しく鼓動している。だけど崇臣によって塞がれた唇からはどうしても出ていきようがなく、まだ体の中に留まってくれていた。
「ん、んんっ……」
ちゅ、ちゅ、と音を立...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【5】
何が起こっているのか分からない。環は体を強張らせながら心の中でそう呟いた。
「お色はどうなさいますか？ こちらのグレーか、チャコール……それとも藤堂様と揃いにいたしましょうか」
「揃いか。それもいいな。これとこの紺でひとまず一着ずつ頼む...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【6】
会議室のドアが開いたのに気がついて、環は腰をかけていた長椅子からさっと立ち上がった。もちろん崇臣を迎えるためだ。
「本日は誠にありがとうございました。まさか社長御自らいらしてくださるとは思わず」
「取り扱う物は一度自分の目で確か...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【7】
ショールームに移っての取材も無事に終えて車に戻ると、崇臣はふうーとあからさまに機嫌の悪そうなため息をついた。
休日の過ごし方という流れで話した、好きなブランドのティーカップで紅茶を楽しむという答えに、興味を示してもらえなかった...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【8】
二度目の絶頂を向かえて、環はシーツの上に突っ伏しながら荒い息を繰り返す。何も考えられないほどに頭の中がまっ白だった。
「まだバテるな。来い」
「あッ……ッひ、だめです、いやっ……」
突っ伏した体を抱き起こされて、そのまま崇臣の...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【9】
広くはない部屋の掃除を終えて、お気に入りのクッションの上に腰を下ろす。久しぶりにゆっくりとした休日だ。
昨夜アップした新作を自分で読み返して、ため息を吐いた。ブックマークや評価はいつもより多くて嬉しい。それを目当てに書いているわけ...
推しの第一秘書になりまして。 推しの第一秘書になりまして。【10】
「やけに機嫌がいいな、環」
車の中で長い足を組んで、崇臣が視線をよこしてくる。環はハッとして振り向いた。
「す、すみません」
「鼻歌でも歌いかねない様子だったぞ。何か良いことでもあったのか？」
「あったというか、これからあるとい...