2018年に某誌へ投稿、結果はAクラス。改稿し同人誌に。
【表紙イラスト】Q様
【あらすじ】
雨の夜、古賀幸人は行き倒れの男に声をかける。だがその男にいきなりキスをされ、声をかけたことを後悔した。しかし腹が減って動けないという男を見過ごしてはおけずに、結局部屋へと連れ帰る。
シキと名乗ったその男に風呂と食事を与えたはいいものの、黒い靄と強い腕に捕らわれ、無理やり犯されてしまった。体感したことのない快楽と、「極上の快楽と最上級の不幸をくれてやる」というシキの言葉が幸人を混乱させる。
彼は悪魔になるためのテスト期間中であり、自分は悪魔候補生だという。フレアという人の魂の輝きを餌とし、人の不幸をポイントにし、数や質で進級できるのだと、幸人を獲物に選んでしまった。
キスインザダーク-嵐の夜に-【0】
0.雷鳴の中で
嵐のような夜だった。
外では稲妻が絶え間なく光り、轟音が響いている。雨は容赦なく窓を叩き、割れてしまうのではないかと思うほどだ。
割れたらそこから逃げられるだろうかと、幸人ゆきひとは思う。思って間もなく、無理だと拳を握った...
キスインザダーク-嵐の夜に-【1】
1.奇妙な男
うわ、と声を上げて、古賀幸人は肩を竦めた。光る空は予告があっても驚くもので、間もなくどこか遠くの方で轟音が響いたことに気づく。
「すげえ雷……やっぱもうちょっと部室にいた方がよかったかなあ」
数時間前から鳴り出した雷はひ...
キスインザダーク-嵐の夜に-【2】
2.まとわりつく闇
「風呂そっちだから、自分でお湯溜めて。使い方分かるだろ? 風呂入ってる間になんか作っておくけど、アンタ嫌いなもんとか食べたら駄目なもんある? あ、着替え……何か適当に見繕っとくから、早く暖まってこいよ」
男を玄関に...
キスインザダーク-嵐の夜に-【3】
「あ、早かっ……服を着ろ!」
そうやって温かな食事を用意している最中、風呂から上がった男がぺたぺたと歩いてくる。幸人は男の上半身に何も纏われていないことに驚き、思わず声を荒らげた。それどころかパンツのボタンも留められていない。程よくついた筋...
キスインザダーク-嵐の夜に-【4】
「ん、ぐ……っ」
もがく余裕もなく、シキの体が重なってくる。冷たい唇に覆われて、入り込んできた舌にまた中を蹂躙される。今度こそ押しやって追い出してやろうと思うのに、そのたびに強く吸われ、背筋が震えた。
「ん、んっ……」
キスに気を取られてい...
キスインザダーク-嵐の夜-に【5】
3.悪魔候補生の囁き
快晴。
昨夜の嵐が嘘のように、今日は窓の外に青空が広がっている。
「あー……たま、いてぇ……」
幸人はくわえていた体温計を外して数値を確認してみた。朝よりは下がっているか、と息を吐く。水が飲みたいと傍の棚に手を伸...
キスインザダーク-嵐の夜に-【6】
「お、サンキュ。古賀ってコーヒー入れるの上手いよな。この間行ったスクールでも好評だったじゃん」
斉木にマグカップを差し出すと、美味しそうに飲んでくれる。
「そうですかね。あ、今日の活動大丈夫でしたか? 育児体験のお手伝いでしたよね」
「風邪...
キスインザダーク-嵐の夜に-【7】
「あ、悪魔って……本気で、言ってんの、かよっ」
普通の感覚ならば、そんな突拍子もないことを言われても信じられない。
だけど、昨夜戒められたあの黒い靄、たった今目の当たりにしたガラス窓の修復、変わる瞳の色――それらを考えると、悪魔だと言われて...
キスインザダーク-嵐の夜に-【8】
「……最低……」
幸人は項垂れる。
本当に、明日どんな顔で逢えばいいのだろう。劣情だけなのか、恋情もあったのか、果たしてそれは確認するべきことなのか。
(いや、駄目だな。先輩のこと受け入れる気がないなら、確認しちゃいけない)
「……犯されて...
キスインザダーク-嵐の夜に-【9】
「んっ」
だけど促すように舌先で唇を舐められて、ためらいがちに少し開くと、それをこじ開けてシキが入り込んでくる。
ぞくりと背筋が震えている内に、力強く押し入ってきた舌に捕らわれた。
「んぅ……っ」
強く吸われて、じんじんと痺れる舌。強く抱き...