その唇で蕩かして

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発行物詳細

2022/12/18 全国GSにて

【装丁】文庫44P/300円/R18
【通販】BOOTHおよびフロマージュブックス様にて予定
【あらすじ】(えっちなとこはくるっぷの方に載せてます https://crepu.net/post/624117
焼き肉バトルのヘリデート後、泊まっているホテルの部屋になだれ込んで濃密なキスを交わす二人。昂ぶった体を、お互いの恋情が見逃すはずもなかった――。
※途中、跡部が手塚に乗っかっている描写がありますが、最初から最後まで塚跡です。


 ドアを開けて招き入れた。その瞬間腕を引かれ、今閉めたはずのドアに押しつけられる。
「あ、……っ」
 すぐに重なってきた唇を拒む気はさらさらないが、唐突な接触に跡部はくぐもった声を上げた。
「んん……っ」
 熱く、力強い舌が入り込んでくる。追われた舌が出逢って、口の中で暴れ回った。ちゅ、ちゅ、と濡れた音が響く。足の間に膝を割り込ませ体で押さえつけてくる強引さを、本能で押しやろうとしてしまう。だけど舌先で口の中から頬を撫でられて、ぞくぞくと這い上がってきた快感が、その手を緩めさせた。
「んっ……ふぁ……んぅ」
 唇が離れてもすぐにくっついて、むさぼるように吸われる。そのたびに心臓が音を立てて、息が続かない。テニスをしている時の呼吸とはわけが違う。このまま呼吸困難で死んでしまうのではないかと思うほど激しく、奪われていく。
 がっちりと腰を抱く腕。膝から太腿を撫で上げる左手。ジャージの上からでもその手が熱を持っているのが伝わってきて、嬉しくて仕方がなかった。
「ん、んっ……」
 熱い舌先と器用な指先に蕩かされ、膝から力が抜けていくようだ。それでもどうにか踏ん張って耐え、混ぜられた唾液を飲み込んだ。
「手、塚……っ」
 唇が離れた隙に名を呼んで、衿を掴んで引き寄せる。
 手塚国光が自分に欲情しているという事実が、跡部景吾を興奮させる。それを、この男は分かっているのだろうか。
 奪われていた唇を今度はこちらが奪い返して、離れてやるものかと両腕で手塚を抱きしめた。
 どうして離れていられるのだろうと思うほど、互いの恋情は深く、強い。
 ドイツへ行けと背中を押したのは跡部自身だし、それ以外の選択肢などなかった。だけどこうして逢えてしまうと、触れたくて仕方がなかった自分を思い知らされる。
「……っおい、ば……馬鹿、待て、手塚」
 ジャージの上から胸に押し当てられていた手が、ジャッとファスナーを下ろす。すぐに中のウェアをたくし上げてきて、さすがに慌てて手塚の体を押しやった。
「がっつくんじゃねえよ、こんなところでっ」
「お前が言うな。ヘリの中でも散々俺を煽ってくれたな」
 ぐっと言葉に詰まる。
 各国を巻き込んだ焼肉バトルの最中に、手塚と優雅にヘリデートとしゃれ込んでいたが、こっそり腰を抱いたり指を絡め合わせたりしていたのは跡部だ。そういう欲が少しもなかったかと言えば嘘になるし、あわよくばという気持ちも確かにあった。
 だがだからといって部屋に入ってすぐにとは思っていない。まさになだれ込むような状態だ。
「跡部。まさか俺には性欲がないなどと思っているんじゃないだろうな」
「さすがにそこまでは思ってねえよ! 思って……ねえけど、だから、ちょっと、待てって」
 手塚の手のひらが、素肌を撫でてくる。危うくこのままここで許しそうになるが、すんでのところで理性をかき集めることに成功した。
「やりてぇのはこっちだって同じなんだよ、ばか、おい……ほんの少しじゃねえかっ……」
 手を引き剥がして、ようやくまともに手塚を正面から見る。濡れた唇やわずかに上気した頬はこんな時しか見られなくて、さらに欲情させられた。ストイックな雰囲気を醸し出すドイツ代表の黒いジャージが、逆にエロティックに手塚国光を包み込んでいる。

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