華家
-HANAYA-
好きなものを好きな時に
No.421
NOVEL,A3!,千至 2019.03.26
#両想い #ラブラブ #千至
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。 背中の両サイドに四つずつ、赤いライン。指先が、そのラインをゆっく…
NOVEL,A3!,千至
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ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。
背中の両サイドに四つずつ、赤いライン。指先が、そのラインをゆっくりとなぞる。申し訳なさそうに戸惑う指先がくすぐったい。ひりつく痛みを和らげるようでも、広げていくようでもあるその指先が、どうしようもなく愛しい。
「先輩……ごめんなさい、傷」
こてん、と恋人の額が背中にぶつかってくる。彼のふわふわした髪は汗で少し濡れていて、先がつんつんと傷に当たる。そんな痛がゆささえ気持ちがいいなんてマゾっぽいことを考えて、俺は振り向いて口の端を上げた。
「別に構わないけどね」
「いや、でも痛そう。ほんとすみません、俺、あの、気持ちよくて、夢中で……」
うん、何を言ってるか自覚してないんだろうな、茅ヶ崎は。夢中になるほど気持ちよくて、俺の背中にしがみついてきてくれたこと、嬉しいだけなんだけど。
「茅ヶ崎をそこまで夢中にさせられた証しってことかな。すごくよさそうだったな」
「バッ……そういうこと言ってんじゃないですよ!」
「じゃあどういうこと?」
う、と顔を真っ赤にして体を離す茅ヶ崎が、可愛くて仕方がない。こいつにつけられる傷なんて、傷のうちにも入らないのに、俺を気遣ってくれる茅ヶ崎が、本当に愛しい。
茅ヶ崎の爪痕は、俺にしてみたら幸せの証しなんだ。
髪を撫でて、抱き込むように頬に口づける。俺のそんな余裕が気に入らないのか、茅ヶ崎は口を尖らせて眉を寄せるんだ。余裕じゃなくて愛情だって、早く気づいてくれないか?
そうして茅ヶ崎は、何を思ったのか背中の傷跡に再度指を滑らせ、身を寄せて口づけてきた。濡れた舌の感触を覚えて、いったん収まった火がまたついてしまう。
「こら、茅ヶ崎」
責任を取れるのかと諫めたつもりだったが、茅ヶ崎の舌はついた爪の痕を癒やすように舐め上げる。くすぐったさと、痛みと、熱と、それを全部覆い尽くすほどの愛しさが広がっていった。
「つけた俺が言うのもあれですけど、早く治りますように。先輩の背中につくのは俺のキスマークだけでいいんですよ」
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ。背中の両サイドについた傷ぜんぶに、祈りをこめて口づけてくれた恋人を、これからどうやって幸せにしてやろう。
抱きしめる他に方法が思いつかなくて、俺は情けなさに天井を仰いだ。
#両想い #ラブラブ #千至