No.106

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Private Army3-003-

ミハアルウェブ再録 2011.08.13

#ミハアル #両想い #PrivateArmy #ウェブ再録

「あ」「あら」 正面に戻した視線の先に、見慣れた人物。 アルトもミハエルも、思わず声を上げたら、向こ…

ミハアルウェブ再録

Private Army3-003-

「あ」
「あら」
 正面に戻した視線の先に、見慣れた人物。
 アルトもミハエルも、思わず声を上げたら、向こうも気がついて声を上げた。
「アルトくん、ミシェルくん!」
 銀河の妖精ことシェリル・ノームと、超時空シンデレラと謳われるランカ・リー。
 ドラマの撮影中は、毎日のように見ていた顔だ。
「随分と久しぶりのような気がするけど、実際はあんまり経ってないんだよな」
 元気だった? とお決まりの文句を交わし合い、再会を喜ぶ。いまや人気のアイドルとなってしまったふたりには、そうそう簡単に逢う事もできない。
「これから仕事? 相変わらず忙しそうだな」
「テレビの収録よ。再来週だからね、あのドラマ。直前インタビューってところかしら」
「ああ、もう再来週なんだよな……」
 気が重いぜ、とぼやくと、気に障ったらしいシェリルが片眉を上げて、綺麗な人差し指でアルトの鎖骨をつついた。
「何よアルト。この私と共演できたっていうのにその言い種」
 アルトのくせに生意気よ、と作中のままの彼女……いや、現実の彼女がモデルになっているのだから、ここは相変わらず、と言った方がいいだろうか。ずいと迫られてアルトが押され気味になってしまうのも、昔からのことだった。
「そ、そうは言っても恥ずかしいだろう! 俺は舞台しかやったことなかったんだぜ!」
 それなのに、画面の中で演技をしている自分を見なければならないなんて。最初の方なんて、どれだけNGシーンを出したことか。
「アルトはまだいいだろ。俺なんか全然経験なかったのに」
「でもふたりとも、やってるうちにどんどん上手くなっていったよね。お仕事の依頼、いっぱい来たでしょう?」
 断っちゃったのもったいないよ~と無邪気にはしゃぐランカに、勘弁してくれと頭を抱えた。
「悩んでばかりもいられないわよ、ドラマが公開されたら、あなたたちの周りも騒がしくなるでしょうね」
「五夜連続放送だったよね。キミら歌姫たちはともかく、俺らはそんなに注目されないんじゃない?」
 放送期間も短いしとミシェルは続けるが、シェリルは甘いわねとそれを否定する。
「CMがもう結構前から流れてるのは知ってるでしょ。あれだけでももう、製作側に問い合わせが殺到してるのよね」
 主要の出演者が芸能業界の者ではないことから、公開直前まで機密事項扱いとされている。シルエットと数瞬の映像だけで、反響があるなんて思わなかった。
「そんなに? ちょっと甘く見てたかなあ」
「注目されない方がおかしいのよ。セクシーでエロティックなこの私とロリ気味のランカちゃんで、男性陣のハートは鷲づかみなんだし」
「えぇっ、シェリルさんヒドイ! ロリ気味って私のことですかっ?」
「やあね、可愛いって言ってるのよ。この私が言うんだから間違いないわ」
 それならいいです! と嬉しそうに頬を染めたランカを、相変わらず騙されやすいなあと三人揃って眺める。
 だが確かに、ターゲットの層は幅広いだろう。戦闘機好きからして年齢層は幅広く、シェリルとランカのファンで男性陣、謎の美青年たちで女性陣と、注目している人々は多くいた。
「でもそうするとS.M.Sの仕事やりにくくなるかなあ。ギャラに釣られたけど、あんまり深く考えてなかった」
「あ、でも航行増えて護衛の仕事は多くなるかもしれないぞミシェル。そしたらいっぱい飛べる!」
「…………そうだな」
 シェリルやランカのように、ファンに追っかけ回されるかも、という現実的な話より、たくさん空を飛べるかもしれないということの方が重大そうな恋人に、ミハエルは内心頭を抱えたくなりつつも、同意を返す。相変わらずみたいねとため息混じりに呟いたシェリルに、肩を竦めてみせた。
「まあ、プライバシーを侵害するような無粋な真似はするなって、私たちも呼びかけておくわ」
「頼むよ、シェリル」
 さすがに一般人に向けて銃で威嚇できるわけもないし、とミハエルは笑う。
「今日はおやすみ? アルトくん、ミシェルくん」
「ああ、今日は夜勤なんだ。航路偵察だけだけど、トレーニングとかで夕方から出なきゃならなくて」
「じゃあそれまでデートだね」
 今日はドコへ行くの? と訊ねるランカに、アルトの頬が少し染まる。ミハエルとは恋人同士なのだから、ふたりで出かけるとなれば当然デートと称するのが普通だろう。分かってはいるのだが、気恥ずかしい。
「あー……えっと、これから、……どうしよう、ミシェル?」
 決めていなかったな、とミハエルを振り向く。思っていたより早く部屋が見つかってしまったし、時間も空いている。
「うーん、出勤まで家具でも見に行こうか? 明後日までに最低限のもの揃えるとなると、結構急ぎ?」
「ああ、そうだよな。なんにも揃ってないんだし」
「家具?」
 ランカとシェリルの声が重なる。このふたりは確か、職場の用意した宿舎に入っているはずではなかったか? 何故、家具を見に行く必要があるのだろう。
「ああ、俺たち一緒に暮らすことになったんだ」
 不思議そうな声を上げた歌姫たちに、まるでなんでもないことのように、アルトは返す。ちゃんと意味分かって言ってるのかなあと、ミハエルは隣で肩を竦めた。
「一緒に!?」
「暮らす!?」
 ええええ!? と驚いた後に、畳みかけるような質問の嵐だ。
 どうして急に、何かあったのか、どこに住むの、エトセトラ。
「すぐそこなんだ、今度遊びに来てよ」
「へえ……いいなあ」
「そうねえ、一人暮らしもいいけど、好きな人とふたりでってのは、憧れよねえ」
 いつか来るだろう未来を思い描いて、歌姫たちは頬を染める。
「ねえどっちから誘ったの? どう言って?」
「え、どうって……」
 ふたりで、目を見合わせる。
 あれは、確か。いつものようにお互いの腕の中で目覚めて、シャツを羽織って、昨夜つけたキスマークに口づけて……伸びをして、さあ朝食に行こうと思ったところで、ミハエルが口にしたのだ。
 いつもこんな風に起きるのなら、いっそ一緒に住んでしまおうかと。そうすれば他の隊員たちの目を気にすることもなく、せめてもう少し広いベッドで目覚めることもできるだろう。
 アルトはそれに、目を丸くしながらも答えた。許可取れるのだろうかと。もしそうすることができたらきっと楽しいのだろうと微笑んだら、うん、とミハエルが頷いて、ぎゅうっと手を握ってきた。
 ふたりで手をつないで廊下を走って、上官であるオズマ・リーの部屋に飛び込んだ。
 それが、今日の始まり。
「まあ、そんな感じだ」
「へえ、じゃあそれがあんたたちのプロポーズの言葉ってわけね」
 ちょっとロマンが足りないけれど、と言ったシェリルに、アルトが目を瞠った。彼女は今なんと言っただろうか?
 ――――プロポーズ……プロポーズ!?
「な、なななななななな何言ってんだシェリルお前っ、プ、プロポーズとかなんとかっ、そんな」
「でも、アルトくんとミシェルくん、お互い好き合ってるんだし、そういうことでしょう?」
「ランカまでなに言ってんだ!」
 大事なのは気持ちだよ~とにこやかに微笑むランカ。そんなつもりで一緒に住む部屋を探したわけではないのに。
「あのなあ、お前ら、俺たちは」
「ああ、そうだな。プロポーズだ」
 そんなつもりじゃ、と言いかけたところへ、遮るようなミハエルの声。思わず、え? と振り向いてしまった。
「ダメねえミシェル。もう少しムードのあるプロポーズしなさいよ」
「ハハ、そうだね。じゃあ、次に生まれてまたアルトに逢ったら、今度はもっときゅんとくるようなシチュエーションで考えておくよ」
 優しく微笑むミハエルに、歌姫たちの頬が染まる。つまりそれは、生まれ変わってもアルト以外にプロポーズをするつもりはないということか。
「あ、相変わらずラブラブなんだね、ふたりとも」
「からかう気にもならないわ」
 昔から変わらないなあと、ため息交じりの歌姫ふたり。
「あ、シェリルさん、そろそろ行かないと時間が」
「そうね、遅れるわけにはいかないわ」
 このままではあてられてしまうと時計を覗き込んで、実際もう移動しないといけない時刻に慌てた。
「じゃあ、またね、アルト、ミシェル。ちゃんとドラマ見なさいよ」
「落ち着いたら遊びに行かせてね!」
「ああ、逢えて嬉しかったよふたりとも。頑張れよ」
 手を振るふたりに別れを告げて、シェリルとランカは足早に駆ける。
「はぁ、アルトくんやっぱり素敵。逢えて良かった」
「ランカちゃんたら、目をキラキラさせてたものね。可愛い」
「やだシェリルさんたらっ」
 恥ずかしいなあと、体や髪をぷるぷる震わせるランカを、可愛らしいなあと思う。シェリルにとってランカは、友人でありライバルだった。
「ねえランカちゃん、私ね。アルトのことちょっと好きだったのよ」
「はい、シェリルさん。知ってました」
 だってライバルだったから、と続ける。歌も、恋もライバルだった。
「だけどアルトくんは、ミシェルくんしか見てなかったから。だけど今でも大事なひとですよ」
「そう、なのよね」
 それが余計に悔しいのよ、とシェリルはため息を吐いた。
「アルトなんかよりいい男、見つけてやるんだから」
 頬を染めて、口を尖らせて、それでも颯爽と歩いていくシェリルを、可愛いなあと思ってランカは微笑んだ。


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