No.125

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Private Army10-002-

ミハアルウェブ再録 2011.08.13

#ミハアル #両想い #PrivateArmy #ウェブ再録

「あの頃は忙しくて、ふたりで一緒に買い物とかも、難しかったよな」「そもそもスケジュール合わなかったも…

ミハアルウェブ再録

Private Army10-002-

「あの頃は忙しくて、ふたりで一緒に買い物とかも、難しかったよな」
「そもそもスケジュール合わなかったもんな」
 本当につい先日のように思うのだ。芸能になど縁のない世界にいる自分たちが、まさか映画になるほどのシリーズに出演して、毎日が怒濤のように過ぎていったことが。
「映画公開したのが……半年くらい前? けっこうロングランだったよな」
「もうちょっと前じゃなかったか?」
「あ、この日だ。二月二六日」
 携帯を取り出して、スケジュールの確認をするのはミハエル。それを隣から覗き込むのはアルト。
「こら、覗くな」
「……ふふん? 見られちゃマズイものでもあるのかよ?」
「ああ、事務の女の子とデートの約束」
 イタズラっぽく視線を上げるアルトに、ミハエルも同じように返してみせる。
「ばーか、見え透いた嘘つくな」
 ピッと額を弾いて、アルトは目を細める。そんな予定が入っていないことはアルトがいちばんよく知っているのだ。
 そもそも、こんなに大切そうに指を絡めておいて、他の女とデートの約束なんて、あまりにも見え透いている。
「だってアルトは怒るかなーと思って」
「なにが?」
「俺、今この子に夢中なんだよねー」
 鼻の下を伸ばしたミハエルには、さすがに眉を寄せた。
 夢中になるものがあるのが悪いことだとは思わないけれど、芸能人だかモデルだかにご執心なのだろうかと。
「ほら、可愛いだろ」
「え?」
 ミハエルがそうして突きつけてくる待ち受け画面には、確かに美女が映っていた。
 早乙女アルトが扮した、銀河の誰より綺麗な女。作中で天才女形と称された、早乙女有人。
 アルトの頬が、瞬時に染まる。
「バッ、バカなんでそんなん待ち受けにしてんだ!」
「おっと。ダーメ、変更なんてさせないからな」
 ミハエルの携帯電話を取り上げようとするも、避けられて腕はスカッと空を切る。
「いつ撮ったんだよっ」
「撮影中。ホント綺麗だったもんなあ」
 クスクスと笑いながらも、ミハエルにからかっている様子はない。心の底からの言葉なのだと、長いつきあいで分かる。
「け、」
「消せなんて言わないよな、アルト。あの女形姿は観たヤツみんなの物になっちまうけど、この中にあるアルトは全部俺だけのものなんだから」
 うっとりと眺めた後でホロを終了させ、携帯電話をポケットにしまう。
 そんな風に言われて消せと迫れるほど、彼からの想いを嬉しく思っていないわけではない。アルトはバツが悪そうにそっぽを向いた。
「あんまり、他人に見せんなよな」
「リョーカイ、言われなくても独り占め用だって」
 ね、と絡めた指を強く握り込まれて眉が下がる。仕方ないなあと思った。結局は許容してしまう恋人の独占欲を、こんなに嬉しいと思ってしまう自分は、本当に仕方のない男だと。
「なあ帰ったらディスク開けようぜ」
「え、あれ、まだ観てないのか?」
 ミハエルは不思議そうに首を傾げる。確か昨日届いたと言っていなかっただろうか。
「だって……観る時はお前とふたりでって……思ってたから」
 何気ない一言だったように思う。だけどそれでもミハエルは心を撃ち抜かれて、口許を緩めた。
「そうだな、ふたりで観ようアルト。楽しみだ。公開時も盛り上がったけど、これでまたブームくるかな」
 たぶんな、とアルトが続ける。
 出演した映画のディスクが、もうすぐ公式発売される。テレビドラマ、コミカライズにノベライズと、軍への志願者続出と、美星学園への入学者増大、カラオケブームを巻き起こした、超銀河ラブストーリー。
 役者でもないのに出演したドラマが予想以上にヒットしてしまった結果だが、まさか映画にまでなるなんて思わなかった。
「本当につい最近のことみたいに感じるのに……結構時間経ってんだな」
「でも過密スケジュールがないあたりはやっぱり、終わったんだなって思うけど」
 ハハハと笑い合う。慣れない演技をするよりは、多少命の危険があっても空を飛んでいる方が性に合っていた。
「いい経験させてもらったと思うよ、実際。あんなことでもなきゃ、縁のない世界だもんな」
「そうだな……俺たちはただのパイロットで、戦闘機で空飛んで、ときどき何を守ってんのか分からなくなるけど」
 でも、とアルトは続ける。見上げた作り物の空には、満天の星が輝いていた。
「やっぱり、すごいなって思ったよ。あんなの作り出せる人たちを、俺らは守ってるんだなって、実感できた」
 な、と振り向いてくるアルトを、ミハエルは眩しそうに眺める。綺麗ごとだけではやっていけない世界だけれど、信じるだけならいいだろう。大義名分でもなんでも、トリガーを引く理由を。
「ずっと一緒に……守っていこうな」
「あ、お前も守るからな、ミシェル」
 肩を抱き寄せれば、まるでなんでもないことのように言ってのける恋人。本当にこの人には敵わないと思い、俺もアルトを守るよとキスをして、家路をたどった。


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