No.202

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Ich liebe dich-007-

その他ウェブ再録 2014.02.09

#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い

「エ、エルエルフ、すぐにファントムの回収を! それと医療班と、研究員……!」「落ち着けアードライ、回…

その他ウェブ再録

Ich liebe dich-007-


「エ、エルエルフ、すぐにファントムの回収を! それと医療班と、研究員……!」
「落ち着けアードライ、回収は行っている。だがどれだけあったのかまだ分からん。何百人ものヤツらがそこでルーンを収集されているんだ、行方不明者の情報を集めなければ」
 ルーンを収集されている、という言葉にイクスアインはハッとした。あの時、評議会の老人が言っていたはずだ。まさかこの男じゃないだろうなと。
 青ざめた。少なくとも、あの日入れ替えを行おうとしていたマギウスの望んだ肉体はハーノインのものではなかったはず。ただ、情報量は民間人より多いかもしれない。
 肉体を望まれずとも、ルーンを。
「エ……ルエルフ、ルーンを食われ続けたら、ルーンが底を尽きたら……どうなるんだ?」
 イクスアインは、震える声で訊ねた。エルエルフは少し眉を寄せ、
「心がなくなれば、肉体も死ぬ。俺の友人は、そうやって死んでいった」
 時縞ハルトか、とアードライが呟く。エルエルフは沈黙で肯定を返し、イクスアインはさらに青ざめた。
「―ファ……ントムの回収場所は、どこだ」
 押し殺した声に、不審そうに名を呼ぶアードライ。エルエルフの出した結論が真実のものだとして、可能性はもうひとつある。
「肉体でなくルーンを奪われていたとしたら! ハーノはあれからどれだけ記憶をなくしたことになるんだ!?」
 アードライもエルエルフも、そろってハッとする。
 可能性は三つあった。
 ひとつは本当に死んでいる可能性。
 ひとつは肉体をマギウスに与えるために生かされている可能性。
 そしてひとつは、儀式に使うルーンを提供させられている可能性。
 それは考えていなかったと、エルエルフにしては珍しく手落ちが見られる。
「あれから何日経った……? どれほどの速度で収集されるのかわからないが、そうだとしたら状況は最悪だな」
 アードライが、重苦しい息を吐きながら口にする。なまじ生きているかもしれないと期待させられただけ、落胆は大きくなるだろう。
「エルエルフ特務大尉!」
 沈黙を破った声に、エルエルフが振り返る。そこには、敬礼をした士官がいた。
「仰せのとおりファントムらしき船を回収いたしましたが、確認をお願いできますでしょうか!」
 たった今話していた問題のファントムが、ここに運ばれてきたらしい。世界を惑わせたマギウスに深く関わりのあるものだ、報告をしてきた士官は、少しおびえているように感じられた。
 ファントムが運び込まれたと聞いて、イクスアインの体が瞬時に動く。走り出したそれを止めたのは、アードライだった。
「待てイクスアイン! それにハーノインがいるとは限らないんだ! 私が確認してくる」
「誰が確認しても事実が変わることはない」
 イクスアインを気遣ってアードライが制止するも、イクスアインの体はファントムの方へまっすぐ向いていた。
「たとえいても、記憶を食われているかもしれない! イクスアイン、お前の記憶があるとは言えないんだぞ!」
「記憶がないくらい何だ! 私がハーノを愛していることには変わりがない!!」
「イクスアイン!」
 イクスアインはアードライの制止を振り切って、ファントムの元へ急いだ。
 もしかしたらいないかもしれない。この船じゃないかもしれない。いても、命が消えているかもしれない。命があっても、マギウスに乗っ取られているかもしれない。本人であっても、記憶が大量に失われているかもしれない。
 それでも。
 それでも―逢いたい。
 命がなくても、顔を見たい。別人なら、それを教えてほしい。記憶がなくても、その目に映してほしい。
 愛しているなんて言ってくれなくていいから、どうか、かみさま。
 ファントムまで全力で駆け、そこが騒がしいことに気づく。扉は開け放されているようで、収容されていた被害者が、次々と医療機関へ運ばれているらしい。

 そこに、ひときわ目立つ光を見た。

「おいまだ動くのは無茶だ、じっとしていろ!」
「じっとなんかしてらんないって姐さん、ね、今どうなって―」
 クリムヒルトの声を遮るように、聞き覚えのある声が耳に入ってくる。イクスアインは、思わずそこに立ち尽くした。
 その光が、人混みの中でこちらを振り向いて、そして、

「―イクス!」

 聞き慣れた愛称を呼んでくる。
「ハー……ノ……!」
 その光―ハーノインは、イクスアインを呼ぶと同時に駆けてくる。クリムヒルトの制止さえ振り切って、人混みをかき分けて、腕を伸ばしてきた。
「イクス……!!」
 ハーノインの両手の指が、イクスアインの髪を絡ませる。その温かさは確かに人間のもので、お互いを認識して顔を歪ませた。
「イクス……お前だ……、良かった、無事だった……!!」
「ハーノ、生き、生きて……いた、生きて……!!」
「かみさま……っ、イクス……あぁ、ほんとに……!」
 声が、手が震えて、うまく心が伝わらない。だけど、確かに自分の愛したひとだと分かる。
 ハーノインはイクスアインが左耳につけたピアスを見た瞬間に、イクスアインはハーノインが服の上からペンダントトップに触れた瞬間に。
 ふたりの特別は、どんな言葉よりも確かな証拠だった。
 まっすぐに目を見つめ、その中に自分しか映っていないことをぼんやりと認識する。
 ―私の……ヒカリだ……。
 本当はたくさんのことを話したい。だけど無事で生きていてくれた、今はそれを実感することだけで精一杯だ。
「ハー、ノ、ひとつ……頼みがある……」
 イクスアインは震えてうまく出せない声で、ようやくそれだけ口にする。
「なに、イクス」
 ハーノインはイクスアインの両頬を包み、まっすぐに覗き込む。潤み出した瞳に、彼の頼みはすぐに分かったけれど。
「もう……泣いても、いい、だろうか……」
 無理して我慢した涙が、眉を寄せさせる。ハーノインは微笑んで答えた。
「いいよ。俺お前の泣き顔すっげぇ好きだし」
 言い終わるか終わらないかのうちに、イクスアインの両腕がハーノインを抱きしめる。
「ハーノイン、ハーノ、ハーノ……っ!」
 縋りついて繰り返し名を呼ぶイクスアインを、ああこれじゃあ泣き顔が見られないなあと思いつつも、ハーノインも同じ強さで抱きしめる。
「イクス……」
 あふれて流れていくイクスアインの涙が、ハーノインの肩を濡らしていく。お互い強く強く抱きしめることでしか想いを表す余裕がなかったけれど、イクスアインもハーノインも、それで充分だった。
 鼓動が聞こえる、ただそれだけで。
「本当に仲がいいなあの二人は。ファントムに踏み込んで彼を見つけた時には驚いたが、意識を取り戻した開口一番がイクスアインの安否確認だったのにはさらに驚いた」
 イクスアインを追ってファントムの元までやってきていたアードライとエルエルフに、クリムヒルトが呟く。三人の瞳には、互いを大事そうに抱きしめあうイクスアインとハーノインの姿が映っていた。
「ああ……あなたは知らないのか」
「え? なにをだエルエルフ」
 クリムヒルトがエルエルフを振り向く傍ら、アードライが困った様子で呟く。
「なあエルエルフ、あれはそろそろ止めてやるべきだろうか。気持ちは分かるが、周りを見ていないように思うんだが」
「構わないんじゃないか、今さらすぎる」
「お前たち、いったい何を―」
 困惑するクリムヒルトの視界で、再会を果たしたふたりの口唇が引かれあい、やがてぴったりとくっついた。
 ざわりと兵士たちがざわめく。
 宥めあうようなそれは、確かに恋人たちの口づけだった。
 クリムヒルト以下数十名、あんぐりと口を開けそれを眺める中で、アードライとエルエルフは肩を竦めどんなフォローをすればいいかと思い悩んでみたりした。



#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い