華家
-HANAYA-
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No.198
その他ウェブ再録 2014.02.09
#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い
「イクスアイン」 呼び止められて、イクスアインは振り向いた。振り向いたそこにクリムヒルトの姿を認め、…
その他ウェブ再録
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「イクスアイン」
呼び止められて、イクスアインは振り向いた。振り向いたそこにクリムヒルトの姿を認め、サッと敬礼を返す。女性ながられっきとした軍人で、カインの下で作戦を忠実に実行する、堅実な女性だと認識している。
「何か御用でしょうか、クリムヒルト少佐」
彼女はなぜか神妙な面持ちでイクスアインを見つめてくる。不思議に思ったが、その理由はすぐに知れた。
「きみは先日、カイン大佐とグリューナウ地区に赴いたのだったな」
「……はい」
「怪我がなくてなによりだった。少し訊ねたいのだが、構わないか」
「私に断る権利があるとお思いですか」
イクスアインはほんの小さなため息を吐いて返す。どうせ彼女も、ハーノインのことを訊ねてくるのだろうと。
あの件は、軍内部に衝撃を走らせた。まさかパーフェクツォンアミーと謳われる特務大尉が裏切り行為を働いていたなんて、と。しかもこれで二人目だ。
おかげでカルルスタイン機関の同期であるイクスアインにも疑いがかかった。しかしイクスアイン自身のカインへのご執心は誰もが知っていたし、それを裏切るようなことはないだろうと思われた。
そのせいか、訊かれるのはハーノインのことだけ。彼が普段どんな行動をしていたか、どんな思想を持っていたか、他に王党派のつながりは垣間見れなかったか。
「これなんだが……」
だがクリムヒルトはハーノインの様子を訊ねもせずに、すっと手を差し出してくる。イクスアインは、今一度目を瞠った。
「それは、ハーノの……!!」
彼女の手のひらの上にあるのは、四つの耳飾り。
心臓が止まるかと思った。見間違えるはずはない。ハーノインの耳を飾ったそれは、何度も何度も触れてきた。ふとした瞬間に、ベッドの中で無意識に、キスをする前に。
「さすがに目敏いな」
「クリムヒルト少佐、あなたはハーノの、……遺体を見られたのですか……!?」
ハーノインが身につけていたものがその手の中にあるということは、何らかの形で接触したに違いないとイクスアインは思わず問いかけた。
「……いや、すまない、私も彼の体を確認できたわけではないんだ。裏切り者の所持品として、処分されそうになっていたこれを、なんとか引き取ってきただけでな」
だが、クリムヒルトの口からはすまなそうに否定が返されるだけ。イクスアインは眉を下げ、そうですかと呟いた。
「これをどうするかはきみの判断に任せる。ただ、その……裏切った彼を責めるのは少な目にしておいてほしい」
クリムヒルトは四つのピアスをイクスアインの手の中に落とし、どうか、と願う。ほんの少しの間だが、意志を共有した男だ、親友に責められるのは手痛い仕打ちだろう。それがクリムヒルトの、ハーノインへの手向けだった。
「ハーノを責める気持ちはありません……」
イクスアインは手のひらの中のピアスたちを眺め、静かに呟く。形見になってしまったそれをそっと握り込み、
―ハーノ……!
「逢えた……」
大切そうに、指へと口づけた。
クリムヒルトはそれ見て目を瞠る。イクスアインはこんなに柔らかで切ない表情をする男だったのかと。
彼らの仲が良かったのは聞いている。ハーノインと【お茶】をした時、何度も何度もイクスアインの名が出てきたことも、まだ鮮明に思い出せる。
「イクスアイン……」
よほど大切に想い合っていたのだなと、純粋に心臓が痛む。戦いとは、そんな友情もなにもかも飲み込んでいくのだと。
「あっ、も、申し訳ありません少佐、ハーノインのものは……処分されてしまって……端末も押収されたので、何もなかったんです」
イクスアインはハッと我に返り、慌てて弁解をする。気づかれてしまっただろうか。ただの友人ではなかったことを。
「いや、ハーノインのことは、本当に残念だった」
クリムヒルトはその奥の真実には気づかずに答える。もう少しでも話せる機会があれば、任務上のよいパートナーになれただろう男の死を、心の底から無念に思って。
「少佐、カイン大佐と同じことを仰るのですね……ハーノがお二人にとって惜しんでいただける部下だったということを誇らしく思います」
「カイン大佐と?」
イクスアインが太腿の横で拳を握ったとほぼ同時に、クリムヒルトの片眉が上がった。イクスアインはそれに気づいて、
「傍にいるとやはり、似てしまうものなんでしょうか」
クリムヒルトの思惑には気づかないで、付け加える。彼女はカインの腹心の部下だ、意識が似てしまってもおかしくないと。
「……どうだろうな」
クリムヒルトは、今はまだ自分の真実に気づかれるわけにはいかないと曖昧に言葉を濁す。
いくらイクスアインがハーノインと仲が良かったからといっても、彼のように自分の意志に同調してくれるとは限らない。それでなくても、イクスアインのカインへの盲信は耳に聞こえているというのに。
―ハーノイン、彼の傍でカイン大佐を疑って探るのは難儀なことだったろうに。
この様子を見るに、イクスアインは何も知らないのだなとハーノインに同情さえした。
「カイン大佐はどんな様子だった?」
「え?」
カイン・ドレッセルを不審に思っている、などと彼には言えるはずもない。だが、カインが度々グリューナウ地区に赴いていた理由は探りたい。なにしろ、それを知ったかもしれないハーノインは、もういないのだから。
「カイン大佐……ですか? いつもと変わりはなかったように思いますが」
「会合の内容は、やはり知らないだろうな」
「はい、私は待機を命じられましたので……その……非常に言いづらいのですが」
イクスアインが口ごもる。クリムヒルトの目が鋭く光った。何か決定的な背任行為でもあれば糾弾できるのだ。だが、その期待は空回る。
「申し訳ありません、カイン大佐の護衛を仰せつかりながら、その、途中意識がなく……」
軍人として情けない、処罰も覚悟の上だとでも言わんばかりに、イクスアインは険しい表情を晒した。クリムヒルトは、望んでいたような情報ではなかったものの、別の方向からの不審に驚く。
「意識がなかった? 何かあったのか」
「分かりません……いえ、私の気が緩んでいたに過ぎないのですが……護衛が眠りこけるなど、カイン大佐に何かあったら申し訳も立たないというのに……!!」
イクスアインは真面目すぎるのが玉に瑕なんだとハーノインが言っていたのを思い出す。確かにその通りだ。そして、思った以上に自分の周りが見えていないように思う。
意識がなかったということを失態と感じるより、その不審さに気がついてほしい。
「心当たりはないのか? 何かを飲んだとか食べたとか、部屋の空調がおかしかったとか」
イクスアインは少しだけ考え込んだが、ややあってふるふると首を横に振った。彼にしてみたら自身の失態が前提にあるのだから、何か他に原因があっても見落としてしまうかもしれない。クリムヒルトはそうかとだけ返すが、不審はさらに募っていった。
「ただ―」
「ただ?」
「カイン大佐はなぜあの日に限って護衛に私をお選びになったのか……」
普段は下士官を複数名連れていかれるのにとイクスアインは続ける。複数名分の価値がイクスアインひとりにあると思えば、バッフェの無駄な出動を控えたと思えばいいのかもしれないが、なぜ今さらなのだと感じないでもなかった。
「いえそもそも私ごときが護衛になど就かずとも、カイン大佐はお強いのに」
「―イクスアイン、カイン大佐の護衛に就いた士官は命を落とすことが多い。その意味を考えたことは?」
「え?」
首を傾げるイクスアインに眉を寄せ、クリムヒルトは足を踏み出す。険しい顔をしたクリムヒルトが、すれ違う瞬間囁いた。
「カイン大佐には気を許すな、イクスアイン」
イクスアインは目を見開いて彼女を振り向く。腹心の部下である彼女が、気を許すなとはいったいどういうことだと。だがそれを問いただす暇もなくクリムヒルトの背中は小さく遠ざかっていく。
「どういう……ことだ……?」
イクスアインはただ把握しきれずにそこに立ち尽くし、手の中のピアスをもう一度眺めなおした。
#革命機ヴァルヴレイヴ #ハノイク #ハーノイン #イクスアイン #両想い